予兆詩第112番

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予兆詩第112番(旧102番) 1564年10月について

原文

La bouche & gorge1 en fervides pustules,
De sept grands2 cinq, toux distillante nuire.
Pluye si longue, à non mort tournent3 bulles.
Le grand4 mourir, qui trestous faisoit luire. *1

異文

(1) gorge : gorges 1668P
(2) grands conj.(BC) : Grands T.Eds.
(3) tournent : tourment 1668P
(4) grand conj.(BC) : Grand T.Eds.

(注記)1589Rec はジャン=エメ・ド・シャヴィニーの手稿『散文予兆集成』の異文。この年向けの予兆詩は、初出に当たるフランス語版の暦書どころか英語訳やイタリア語訳すら確認されていないため、復元にあたっての底本は1589Rec になる。

日本語訳

口と咽喉に火傷による膿疱ができる。
七人の偉人たちのうち五人を、咳と鼻炎が害する。
非常に長引く雨。水疱は致命傷にはならない。
万人を輝かせていた偉大な者が死ぬ。

訳について

 fervides pustules は、マリニー・ローズによれば、熱によって生じた小さな膿疱を指す医学用語だという*2
 同じく、toux distillante は「鼻風邪を伴った咳」と理解したローズの読み方に従った*3。なお、distillant(e) は通常 distiller (蒸留する、一滴ずつたれる)の現在分詞と理解されるが、アナトール・ル・ペルチエはラテン語 distillatio から、「カタル、風邪」の意味に理解していた。

信奉者側の解釈

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーはそのまま1564年10月に位置付け、1行目と2行目は国王の財政を取り仕切っていた者たちのうち何人かが処刑されたことと解釈した。3行目は文字通りその月が雨ばかりだったことを指すという。
 4行目の偉人の死は翌年のことだと述べている。それについて詳述していないが、ベルナール・シュヴィニャールは、ピウス4世の死を想定していたのだろうと推測している*4

同時代的な視点

 1行目はまだしも、2行目を政治的な話にひきつけるシャヴィニーの解釈は考えすぎに思える。単純に有力者の間で風邪が流行ることを言ったものではないだろうか。
 フランスの10月頃は一般に曇りがちである。小氷期に当たっていた当時なら、なおさら長雨と風邪を組み合わせる予言が的中する可能性は高かったものと思われる。


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最終更新:1970年01月01日 09:00