L'ARC1 du tresor2 par Achiles3 deceu4,
Aux procrees5 sceu la6 quadrangulaire7:
Au faict Royal8 le comment sera sceu9,
Corps10 veu pendu au veu11 du populaire
1行目 deceu をジャン=ポール・クレベールは mort (死んだ)と現代語訳し、ピーター・ラメジャラーは文を能動態に書き換えて conceal (隠す)と英訳している。しかし、それらの語学的根拠が今ひとつ不鮮明なため、ここでは LAF や DMF でも一般的な「欺く、騙す」の意味で訳した。
4行目の2箇所の veu は「校訂」の節で触れたクレベールの読み方に従っている。
大乗訳1行目「アキレスをだまして宝の弓は」(*1)は誤訳。「アキレスによって騙されて」の部分は受動態である。ただし、arc を「弓」と訳すのは直訳としてはむしろ正しい。当「大事典」ではラメジャラーの読みに従い、archeと同一視している。ロジェ・プレヴォのようにアーチ状建造物と読むことも可能である。
同2行目「方形の繁栄をまし」も誤訳。ヘンリー・C・ロバーツの英訳 Shall show to posterity the quadrangle(*2)の posterity を prosperity と見間違えた上で構文を取り違えたものであろう。
クレベールは3行目の le fait Royal を切妻壁(fronton)、comment を碑文についての言及とし、procees はアウグストゥスの孫二人に同定しうるとした。
ただし、死者記念塔の碑文がアウグストゥスの孫二人に関するものだとする見解は当時知られておらず、ノストラダムスも誤って理解していたことがしばしば指摘されている(*13)。現在の正しい碑文の読み方をこの詩に持ち込むことは、妥当なものとは言いがたいように思われる。