百詩篇第6巻51番

原文

Peuple assemblé1, voir nouueau expectacle2,
Princes & Roys par plusieurs3 assistans :
Pilliers faillir, murs, mais4 comme miracle,
Le Roy5 sauué6 & trente des instans.

異文

(1) assemblé : assamblé 1590Ro, assemble 1672
(2) expectacle : exspectacle 1605 1649Xa, spectacle 1590Ro 1672, espectacle 1650Ri
(3) plusieurs : plusieus 1557B
(4) murs, mais : murs, mis 1557B, murs : Mais 1627
(5) Roy : roy 1590Ro
(6) sauué : sauve 1649Xa 1672
(注意)1588-89では、3-4-1-2の順でIV-14に差し換えられており、収録されていない。

日本語訳

新しい見世物を見に集まった人々。
王子たちと王たちも多くの支持者たちのために。
柱と壁は崩れるが、奇跡のように
救われた王と、居合せた人々のうち三十人。

訳について

 4行目は「王とその場の三十人は難を逃れる」*1などと訳されるが、sauvéが王だけでなく30人にも掛かるかは微妙である。ノストラダムスがしばしば用いた変則的な活用からすると、そうも読める。
 ただし、「王は三〇人の味方によって救われる」*2と読むのはかなり苦しい。原書でのロバーツの英訳でも“The King saved, and thirty of the standers-by”*3となっており、解釈を交えて訳しすぎなのではないかと思われる。

信奉者側の見解

 ヒトラー暗殺未遂事件(1939年)の予言*4と解釈される。ほか、19世紀のルイ=フィリップの襲撃事件と結び付ける者もいる*5

同時代的な視点

 ピエール・ブランダムールエドガー・レオニ詩百篇第6巻37番とプロットが似通っていることを指摘している*6

 ロジェ・プレヴォは1305年にリヨンで即位式を行ったローマ教皇クレメンス5世と結び付けている。この即位式にはフランス王、アラゴン王をはじめとする諸侯が列席したが、壁の崩落事故が起こり、ブルターニュ公らが亡くなったのである*7
 プレヴォは詩百篇第2巻97番も関連があると見ており、こうした説はピーター・ラメジャラーも支持している。


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  • レーニンと支持者30人を乗せた封印列車。見世物は同時期のファティマ預言。"柱と壁は崩れるが"はロマノフ王朝の終焉の比喩。 -- とある信奉者 (2010-07-24 10:44:59)

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百詩篇
最終更新:2010年07月24日 10:44

*1 山根和郎訳『ノストラダムス全予言』p.224

*2 大乗和子訳『ノストラダムス大予言原典・諸世紀』p.188

*3 Roberts [1947/1949] p.196

*4 Cheetham [1990], Hogue [1997]

*5 Hutin [1978]

*6 Brind’Amour [1993] p.229, Leoni [1982]

*7 Prévost [1999] pp.43-44