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野村総合研究所懸賞論文応募草稿

「外部負経済と格差の拡大を是正する第二の通貨――環境保全通貨という未来」

  

 価格競争での優位性で地方の小規模店舗が大資本に勝つための商店街統一ポイントカード

 

cf.  大規模小売店舗立地法後の大規模店舗の進出、地方の小規模店舗の売上高推移、地方商店街の空室率推移、仙台市における規制条例、ポイントカードの導入、非統一ポイントカードの問題点、ソーシャルベンチャーの基本理念、ソーシャルベンチャーへの優遇策、流動性という点における貨幣との違い(ケインズ)、地域性の必要性(旧ソ連系東欧地域、アルゼンチン、ケインズ)、減価性の必要性(ポイントカード、オーストリア)、背景性(排出権取引、実価貨幣)、労働から生まれる有効需要であることの大切さ(今回の金融危機、アメリカの一部、旧ソ連系東欧地域)

 

 一九九七年、アメリカの対日要求書の概要に沿った形で、大規模小売店舗立地法が施行され、その後、地方都市の郊外地域における大規模店の進出はますます顕著になった。こうした店舗の進出は、地域商店街の空洞化を招いたばかりか、採算が取れない場合には早期に撤退をする態度から、場合によっては地域の商店がひとつ残らず無くなる事態を招いた。

 こうした潮流への抵抗として、仙台市では大規模店舗を規制する独自の条例を施行した。しかし、そもそも規制によって小規模店舗の客足が伸びるのかという疑問もあり、こうした行政主導の取り組みは商店街の活性化にとってかならずしも有効ではないという声もある。

 消費者の中には別の見方もあり、たとえば市民団体の「市民政策調査会ミヤギ」が、川平団地という小規模商店街と大規模店舗を抱えた団地の住民・二百五十人にアンケートをとった結果、半数以上の人が商店街の必要性を感じつつも、大規模店舗を利用すると答えた。大規模店舗を利用する理由としては、さまざまな店舗が一箇所に集積していることが最も多く挙げられた。これは、価格競争によるものとする商店街の小規模店舗経営者や、自由競争におけるサービスなどの質の違いとする自由化論者の意見とは一線を画するものである。

 こうした結果から、都市部の大規模店舗では旧来の地権者などへの配慮から、そういった人々に対して安くテナントを提供する動きもある。しかし現状において地域商店街のわずかな利用者は高齢者であり、彼らは身体的な理由から行動半径が狭いため、果たして集積化がいい結果をもたらすかについては疑問符がつく。特に、これから高齢化率が三割に迫ろうとしている地方都市の郊外団地において、将来的にみてそのような試みがうまくいくとは思えない上、福祉の観点からみても高齢者の行動半径内にある商店を守ることは社会的コスト負担を減らすことにつながる。また、小規模店舗に見られる高齢者へのきめ細やかなサービスは、たしかに魅力のひとつではあるのだが、先進的な取り組みも利益なくしては永続性に欠ける。たとえば、鹿児島県阿久根市の地元資本による大型スーパーでは、送迎・宅配サービスなどを行い、大規模な駐車場を用意しつつも、トイザラスやウォールマートという米国大資本とは一線を画した発展を見せている。つまり、税金という形で地方に利益を還元しているのである。しかし、これも永続的な利益があるからこそ可能な取り組みである。
 サービスの質は自助努力の範疇だが、集積性や価格競争といった点での劣位を挽回するためには、そうした利点に代わる新たな価値の創造が必要不可欠だといえる。
 たとえば、よく見られる試みとしてはポイントカードがある。日本の国内総生産は六百五十兆円あまりで、このうちの三百兆円あまりが内需部分だとされる。驚くべきことに、さらにこのうちの一兆円あまりはポイントカードのポイントとして流通している。しかし、こうした取り組みにもさまざまな問題点がある。統一性、地域性、減価性、兌換性の四つの視点から問題点を論じ、解決策を提言したい。
 まず、第一に統一性の問題が挙げられる。これは、個々の店舗がそれぞれにポイントカードを発行するため、管理が煩雑であるという欠点である。この問題を解決するためには、地域商店街が大同団結をして統一のポイントカードを作る必要性がある。個々の店舗にとっては、短期的な利益は減るのだが、長期的に見れば、統一ポイントカードの価値の高さと便利さから客足は伸びるだろうと予測される。
 第二には、地域性である。これは、先に述べたことと矛盾するようではあるが、統一ポイントカードの適用する範囲は一町内か一自治体内に限るべきであって、広い範囲での利用を可能にすべきではない。こうしたポイントカードがあまりに広い範囲で流通すると、利益を享受できる層が広がりすぎて、個々の業者の利益、しいては商店街全体の利益が少なくなるためである。
 第三には、減価性である。現在のポイントカードは「二〇一〇年五月まで有効」というように、ある特定の時期において、その価値がゼロまで下落することもめずらしくはない。これは、その時期までの利用を促すことによって、消費マインドを高めようというものなのだが、一方である時期の価値がなくなることで、それ以降の時期において消費マインドを刺激しえないという問題点もある。そうではなくて、デイビットカードのような仕組みをポイントカードについても構築して、その月ごとの減価率を設定し、ポイントが獲得後の時間とともに少しずつなくなるような仕組みを構築すべきである。これは、オーストリアにおいて成功事例のあるポイント式減価紙幣をモデルとしている。
 第四に兌換性である。先にも述べたように小規模店舗には、大規模店舗のような価格競争に打ち勝つ資本力がない。ポイントカードにおいて、ポイントにあたる部分を捻出するにも、個々の店舗の企業努力には限界が見られる。そこで、ポイントカード部分の価値を行政が生み出し、なにかしらの価値とポイントを交換できる保証を与えるのが良いのではないかと考えている。
 具体的には、ポイントと排出権の交換ができるような仕組みを整えることを私は考えている。排出権とは近年見られるようになった価値であり、それまではそのような概念はなかった。これは、生命保険の誕生と同じような革命的な出来事だと私は考えている。二十世紀において生命保険会社や年金機構が国際的な金融取引の中でも大資本としての力を発揮するようになったように、二十一世紀においては排出権取引が金融取引の中心を担うのではないかとも考えている。こうした、新しく創造された価値とこのポイントに兌換性を持たせるためのポイントを以降で述べたい。

 

 排出権チケットベーシックインカム制で個人間・企業間の格差是正

 

cf.  社会保障としてのコストが低いベーシックインカム・負の所得税(ミルトン・フリードマン)、、米国の勤労所得税額控除(Earned Income Tax Credit: EITC)、消費税、GDP内需部分一割三十兆、排出権ベーシックインカム、消費税免税装置、相続税、個人金融資産千五百兆、二十五年分割、フラットタックス五割、三十兆、二つあわせて六十兆で、国民全員に世帯単位平均所得の所得保障、排出権取引市場の拡大、市民排出権取引市場の設立、排出権それ自体の価値変動、ポイントそれ自体の減価、所得別電気・ガソリン・水道・ガスなどの公共インフラ利用量、地域別利用量、外部負経済の概念従来型産業の淘汰、情報技術・次世代最先端技術産業への集積、数兆円規模の支出リスク

 

 ところで、社会保障として最も給付コストが低いのは最低所得給付制度や給付金付所得税免除制度である。なぜなら、生活保護や年金のように受給資格審査などの業務のために公務員を必要としない上、税金の口座引き落としなどを利用して口座に振り込めばよいからである。また年金基金のように年度をまたがった賦課方式ではなく、単年度での運用であるために不正な流用などもほとんど起こらない。しかし、たとえば国民全員に無条件で一人当たり八万円のベーシックインカムを給付しようとするならば一年当たり百二十兆の財源が必要である。これには、消費税を二十五パーセントにすることによって生まれる特定財源・一年あたり約六十兆円(消費マインドの低下を加味して国内総生産の内需部分より試算)と、相続制度をなくし全額国庫回収とすることで生まれる財源・一年当たり六十兆円(一千五百兆円の個人金融資産を二十五年で回収するとして試算)が必要となる。仮にアメリカで導入されている所得別給付金付所得税免除制度(Earned Income Tax Credit: EITC、マイナス所得税ともいう)を導入した場合にも、先の試算の三割から五割にわたる負担は必要不可欠で、その場合の負担増は消費税にして十五パーセント、相続税は現在の一億円以上の五十パーセントの相続税から、フラットタックスで五十パーセントの相続税を回収しなければならなくなるだろう。法人税・所得税については少子高齢化と成長の鈍化から減少することが予測されるのでここでは考えないものとする。さらには、先にも述べたようにこのほかに数兆円規模の排出権購入義務リスクがある。
 一方で最低所得給付制度や給付金付所得税免除制度には利点もある。それは、失業による生活の破綻の恐れがなくなり、最低限の生活がすべての国民に公務員人件費だけが嵩む審査なしで保障されるために、公務員の大幅な人員削減と失業対策用の予算出動の必要性、最低保障年金(国民年金部分)がなくなることである。年金:10兆円、福祉・その他:4兆円、公共事業の雇用対策部分:3兆円、防衛費の雇用対策部分や思いやり予算など:3兆円、中小企業対策、地方交付金等々の社会保障的部分:10兆円、農業完全自由化:5兆円、特別会計のムダな部分:15兆円で計五十兆円の削減が見込まれる。これを財源としては意味が無いので、むしろ利上げリスクの高い国債費に転化し、余剰削減部分をもって均衡予算を目指し、あるいは減税路線に踏み出すこともできるようになる。
 これらの検討から、最低所得給付制度や給付金付所得税免除制度の財源負担を避けつつも利点を享受できる方法がもっとも理想的であることがわかる。そのために私が考えたのは、排出権ポイントによるベーシックインカムである。
 仕組みはきわめて単純である。まず、国民全員が地域商店街の統一ポイントカードとしても機能するデイビットカードを所有する。次に政府が、国民一人一人と、企業体には雇用人数に応じた排出権ポイントを配布する。もちろん、それぞれに割り当てられた排出権以上の排出をする人がいるのも折込済みである。超過分に関しては、市内の金融取引市場で排出権を買うことができる。一般に、貧しい層はあまりエネルギーを消費しない生活をしているものだし、企業にしても、情報産業や、次世代エネルギー産業はこうしたエネルギーを浪費することが少ない。そうした観点から、これは外部不経済や格差の是正にもつながる政策である。これにより、経済活動と環境保護の調和を図り、持続可能な発展を目指すことができる。

 加えて、これは環日本海地域の全体的な発展に寄与する政策でもある。第一に、それは日本は国土の七割を森林が占める国家であり、そうした美しい自然を守り、資源として活用する産業が台頭し、自然を崩壊する産業が淘汰されていくことは国際競争力を高めるからである。第二に、中国や民主化後の北朝鮮では、鉱山資源系の工業を中心とした汚染が広がる懸念が強い。日本がこうした近隣諸国に自然を守る技術を提供し、かわりに排出権を受け取ることで、日本人はますますこのポイント制度が豊かに利用できるようになる上、諸外国の市民は環境汚染な悩まされずに済むからである。

 こうして、日本は世界一の環境保全国家として世界から尊敬される国に生まれかわる。
 さらに、このポイントは地域の商店街の一割引ポイントとして利用することができるので、少なくとも消費税の逆進性による貧困層への負担はこれによりほとんど解消することができる。また、排出権それ自体の価値変動と、ポイントそれ自体の減価の二つの値動きを注視しつづけることで国民の政治・経済への参加意識を高め、投機熱を加速させることができる。日本人の金融資産の三割が貯蓄以外の形で資産運用されれば国内総生産は四パーセント上昇するという試算をさわかみ投信が発表しているが、排出権ポイントによる日本人の経済観念をも変化は必ずや金融市場全体に活気をもたらすだろう。
 こうして政府による数兆円規模の排出権購入リスクを回避することができ、リスクを価値に転化することができる。

 そればかりでなく、環境問題という大局的判断を迫られる課題において、政府や地方自治体が毅然としてリスクを最小化し、むしろ価値に転化したということは、企業や個人に対して多少の負担増を生んだとしても意味のあることである。これは、経済学的に立証されたことで、非ケインズ効果と呼ばれる。これは、社会保障や総合安全保障により生まれた安心感の増大が、負担増の下でも消費マインドを刺激するというものである。
 たとえば、イギリスではブレア政権時に、サッチャー内閣から続いてきた医療費削減の方針を改めた。十年間で医療費を倍増させたため、少なからぬ負担を生んだものの、このあいだイギリスでは年率にして三パーセントから四パーセントあまりの力強い経済成長率を維持し続けた。このように、絶対的な安心感をもたらせば、景気が低迷期にあったり、社会全体が十分に成熟し、需要がある程度飽和した段階のイギリスにおいても経済成長を成し遂げることができるのである。
 また、政府が環境問題のような難しい問題から逃げずに取り組んだことは、国民の政府に対する安心感を生み、実際の最低所得給付制度や給付金付所得税免除制度が生む負担を引き受ける覚悟さえ生むだろう。現在の日本において、先進国の中では低い租税負担であるにもかかわらず重税感が蔓延しているのはひとえに統治機構への不信が原因である。環境問題を足がかりに政府が信頼を取り戻すことで、社会保障のような負担増が避けられない問題についてもしっかりとした制度を設計することができるようになると私は見ている。