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Web2.0は「敗北の政治」を変えるか
仙台第二高等学校 林 直人 Your Manifesto!@wiki 主宰
http://www42.atwiki.jp/0ny0ny0ny/
目 次
二つの不参加 選挙への不参加 政策立案への不参加
二つの反論 楽観論への反論 悲観論への反論
二つの疑問 既存運動の国家主義的傾向 双方向性の不活用
二つの特性 リナックス的連帯 社会主義モデル
二つの目標 希望を与える 負担のかからない実現
二つの展望 分断から統合へ 組織票の崩壊が民主主義を成熟ざせる

選挙への不参加
 たとえ一票を投じたとしても、それは果たして選挙に参加したといえるのだろうか。
 大統領選挙の結果は、市民の政治参加が「人民の、人民による、人民のための政治」の基礎であることを明確に示した。しかし、日本の選挙活動の実情は、アメリカのそれとは程遠い。「選挙」という映画が話題になってから久しいが、日本の選挙はいまだ利害関係によって結びついた後援者が、騒音と資源ごみをばら撒くイベントに過ぎない。
 時代は、アメリカでみられる「ムーヴ・オン」のような新しい大衆組織を求めている。こうした流れから、既存政党のなかにも、動画チャンネルを設置するなどの動きがみられるが、彼らはWeb2.0という最も基本的なネット社会の原理を十分に理解していないため、おそらくこのままではネットを十分に活かしきることはむずかしい。
政策立案への不参加
 そもそも、日本では市民が政策立案に関わることが極めて困難である。これは、Web2.0の原理である双方向性が政治の世界ではほとんど失われているためである。たとえば、安倍政権時代に特にさかんに開かれていた諸会議の議員は選挙の洗礼を受けていないだけではなく、国家公務員ですらない。業界の利益を代弁する彼らが、国民の大多数が関わるであろう分野の政策立案に対してかなりの影響力をもっていることが、多くのひずみを生んできた。規制緩和による弊害も、実際にそこに生きる人々、――たとえていうならば、渋滞問題の解決には、現場から離れて久しい交通政策の専門家を呼ぶよりも、抜け道を良く知っているタクシー運転手を呼んだほうが効果的であるように――の政策立案に対する積極的な関与があればほとんど防げたはずである。
楽観論への反論
 もっとも、根拠のない楽観論は、国民の意思を無視した政策立案や政権運営を続ける政府による「敗北の政治」からの脱却にはまったく役に立たない代物である。オバマ氏の勝利を単純にネット世代の勝利と考えることには、大きな危険性がある。
 参議院議員の桜井充議員が、市民による政策立案を目指して設立した「市民政策調査会ミヤギ」の勉強会をたずねたことがあるが、フォーラムと勉強会を重ねても、政策立案までには多くの壁があり、結局勉強会の形にとどまっているとのことだった。
 「大田総理」という番組が好評を博したが、あのような大型の財政出動を必要とする無謀な政策を実行に移すのは困難であり、大衆迎合主義の限界すら見せつける。
 しかし、ネットを利用した政治活動はそれ以上の問題をはらんでいる。
既存運動の排外主義的傾向
 従来のネット空間で大きな盛り上がりを見せた活動は、いずれも排外主義的なものに限られてくる。人権擁護法案の改正や、チベットの独立問題、国籍法の改正などの運動が代表的な例である。しかし、私たちはひとつの事実を忘れてはならない。偏狭な思想に依拠したあらゆるイデオロギー闘争は、一杯のどんぶりすら生まない。
 これらの活動は、人々の日々の生活とはあまりにも遊離しすぎていたがために、ネット社会以上での広がりに欠け、ネット発の政治運動に対する一般人の拒否感を生んだ。アメリカの「ムーブ・オン」などは、生活に密着した話題を取り上げることで、支持をネットを見ている十代の選挙権すらない若者から、七十代になった彼らの祖父母にまで広げた。そうした広がりのある運動のためには生活に密着していることが第一の条件である。
悲観論への反論
 一方で、ネットを利用した運動への不信感は、日本社会においていまだ根強い。特に、世界中のどこにいる人とでも通信でき、相手の素性がわからないという特性は、そうした感情をより強固なものにしてきた。2ちゃんねるでの政治的キャンペーンに煽動されるのはほとんどが社会経験のない若者であり、それはムーブメントにはなりえていない。
しかし、地元にいる仲間や、同好の友人を探すことの出来るSNSは、いままでの「あまりにも広がりすぎたネット空間」の弊害を解決した。オバマ陣営は、独自のSNSシステムと、既存のSNSに活かしきり、強固なコミュニティーを形成し、結果として大統領選挙での勝利をつかんだ。進歩したweb2.0の技術が、今までのネット社会に対する不信を払拭し、政治活動にも耐えうるものに生まれ変わらせたのだ。
双方向性の不活用
 一方で政治家は、いまだこうした変化についていくことができないであるらしい。というのも、たとえば民主党のサイトを見ても、候補者がランダムに表示されるだけで、たとえばIPアドレスからおおまかな居住地を割り出して当該選挙区立候補者の宣伝をするなどの細やかな工夫にかけている。また、情報の発信方法があまりにも一方向的であり、双方向性を活かし、現実に即したマニフェストを当事者と作り上げるという誠実さに欠けている。こうして、現実には到底実現不可能な夢物語ばかりが政権公約となる。
演説にしても魅せ方が重要である。誰に何を伝えたいのかが不明瞭な演説の動画が、あまりにも多すぎる。そうした欠点を解消するために私は、政策別・業種別・地域別の三つの観点から市民が提案した政策を書き留めておく倉庫としてのサイトを立ち上げた。
リナックス的連帯
 友人と自習をしていた放課後、一人の友人が国籍法改正についての議論を持ちかけた。思いがけずこの議論は白熱し、他の仲間のブログをも巻き込んだ論争に発展したため、一連の流れをまとめたサマリーをつくった。掲示板では反対派が大勢を占めたものの、クラスの議論では反対派の優勢がだんだんに崩れた。このサイトは掲示板上でもそれなりの反響を生み、次々と法的な観点からの議論がよせられた。
 私たちは、一種の熱狂状態にある人々とは一線を引き、あくまでも独立した主体性をもつ個人の連合として、討論をし、それぞれ自分なりの国籍法に対する理解をまとめていった。議論のベースとして最初からあるものはごく限られた一次資料のみで、不備を修正する形で、資料を出し合い、私たちはサイトをよりよいものにしていった。
社会主義モデル
 こうした流れは、現在最も信頼性の高いOSとして知られるリナックスの開発過程においても見られる動きである。現実社会においては金銭の交換があって、初めて何らかの意見が出され、プログラムが組まれ、人々がそれを動かしていくものである。しかし、リナックスの開発においては、人々はまったくの無報酬で、おどろくべき規模の仕事を成し遂げた。ネット社会の持つ気風として、こうした無償かつ公共性の高い労働を、少なくない犠牲すらいとわずに提供するというものがある。これは、まさしく「一人は万人のために、万人は一人のために」という、かつて理想とされたシステムである。かつて若者は「連帯を求めて、孤立を恐れず」という理念の下に社会を変えようとしたが、いまやネットを利用した「孤立を求めて、連帯を恐れず」という運動は現実味を帯び始めている。
希望を与える
負担のかからない実現
分断から統合へ
組織票の崩壊が民主主義を成熟ざせる