債券クオンツ運用


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特徴

  1. フォワードレート(キャリー+ロールダウン)へのエクスポージャーを連続的、且つ効率的に変化させる事で、超過収益を獲得します。
  2. クオンツアクティブ・フルシステム運用です。前日終値に手数料を加味して、そのまま執行可能な個別債券取引データを自動生成します。
  3. 全てをプログラムで制御する為、どのような状況でも同一の緻密さで判断をする事が出来ます。
  4. 経済状況を先読みしませんし、Alternative Packの一部を除き、経済指標も使いません。入力データは債券時価のみです。よって経済情勢と金利水準のような、1:1では無い、安定しない関係に深く依存する事は有りません。
  5. あらゆる経済状態に耐えうる運用を目指し、長期間かつ全世界で同一の計算方法で運用します。
  6. 長期間のバックテストを日次で実施しています。JGBは1983年から、米独伊仏英西白蘭希加墺葡は1996年-2000年から、日本のスプレッドプロダクツは1998年-2003年からですから、膨大な計算量です。分析データは510万件に及びます。
  7. 時系列分析をしていませんので、インサンプル・アウトサンプルの問題は発生しません。将来に渡って、パフォーマンスの高い再現性が見込めます。
  8. 教科書・論文・実運用の経験に基づく運用を過去から一貫して適用したら、どのようなパフォーマンスになるだろうか、という疑問の検証ツールとしてスタートしました。よって、出力結果が通常の主観的判断と大きく異なる事は有りません。
  9. 当戦略に基づく先物・オプション活用版Alternative Packもあります。
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着眼点

  1. イールドカーブを滑らかに引いて、債券毎に割高・割安度合いを計算します。
  2. フォワードレートを計算し、イールドカーブ上に織り込まれている、将来の政策金利予想の歪みに着目して、割安な年限に重点的に投資します。
  3. イールドカーブの形状は、経済状態に応じて変化する為、金利水準に比べてトレンド観測が容易です。これを利用して、フォワードレートへのエクスポージャーを変化させ、収益の安定と向上を目指します。
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投資哲学

  • ファイナンス理論や行動経済学的アノマリー等の知見に基づく運用戦略が、長期間かつ継続的かつ反復的に超過収益を生み出すと考えています。
  • 市場が本源的に提供するリスクプレミアムを捕らえる事が、超過収益を生み出すと考えています。
  • 一貫した運用スタイルの確保が、将来に渡る継続的な超過収益を生み出すと考えています。
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運用スタイル

  • 全世界・全発行体の債券を同じ方法・パラメータで運用します。
 人間が相場を動かしている限り、その行動パターンは世界共通です。もちろんそのパターンが顕著であるが、そうではないかの差は有りますが、JGBで上手く行く運用戦略が、Bundsでは上手く行かないという事は有りません。日本人もドイツ人も、両者の発想に天と地程の差が有るとは思えません。1980年代の日本も、現在の日本も、最近まで金融立国を謳歌していたイギリスも、金融危機に苦しむ米国も全く同じ様に扱います。
  • Alternative Packの一部を除き、回帰計算・時系列予測・マクロ経済予測をしません。
 主成分分析や経済指標と金利の相関等を利用して、将来の金利水準・イールドカーブ形状を予測する運用戦略が有りますが、それらとは対極にある運用です。どの期間で計算するかによって計算結果の異なる回帰計算に頼った運用は、現在の経済状況が将来も続くと仮定しています。これでは超過収益の再現性に障害をもたらしますので、ここではその仮定を極力排除します。
 本運用では、将来の金利予測をせずに、クロスセクショナル分析に基づき、常に割安な債券に投資を続ける事で、超過収益を獲得して行きます。現時点で割安な債券の組み合わせが、一定期間後の割安な債券の組み合わせと異なっていれば、割安な債券が中立或いは割高に変化している事になりますので、これが超過収益に繋がると考えています。
 後に記す通り、本運用にはデュレーションフリー版も有りますが、それは金利予測をしている訳では無く、現時点で割安と判断される年限がどこか、という事実を示すのみです。
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運用プロセス

  1. イールドカーブを構築します。債券価格からゼロレートと瞬間フォワードレートを求めます。
  2. ゼロレートから個別債券の割高割安度合いを判定し、個別銘柄に対してα値(1と呼称します)を求めます。
  3. 瞬間フォワードレートからリスクプレミアムを計算し、個別銘柄に対して別のα値(2と呼称します)を求めます。
  4. リスクプレミアムの変化の方向と速度を加味しながら、α1とα2の合成割合を変化させながら統合し、これを最終的な個別銘柄α値とします。合成割合を変化させる事で、リスクプレミアムに対するエクスポージャーを、コントロールしている事になります。
  5. 個別銘柄α値に対して閾値を設定し、これを越えた時に、割高銘柄に対する売りトランザクションと、それに見合う割安銘柄に対する買いトランザクションを出力します。
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リターンの源泉

  • フォワードレートから推定されるリスクプレミアム
 リスク中立的な世界に生きる投資家は、政策金利予想=フォワードレートとなるまで債券を買って、金利を低下させて行きますが、現実の投資家はリスク回避的である為、金利水準は政策金利予想≦フォワードレートに留まっている事が多い様です。この特性を利用して超過収益を得る為には、政策金利予想とフォワードレートのズレと、その確かさを評価する必要が有ります。
 そもそもズレの成分は何なのでしょうか。ここでは、将来の不確実な政策金利を担保するためのリスクプレミアムだと考えます。リスクプレミアムとは、そのリスクを取る事で得られる上乗せ利回りです。リスクプレミアムの大きさは、市場環境によって変化して行きます。
 本運用では、リスクプレミアムが大きな時には、リスクを取ってリターンを稼ぎ、リスクプレミアムが小さな時には、上乗せ利回りを払ってリスクを抑える事で、ポートフォリオを保全します。
  • どのような時にリスクプレミアムが大きくなり、また小さくなるのか
 将来の政策金利予想がフォワードレートの大部分を決定しますので、足元の政策金利予想が変化すれば、将来の政策金利予想の変化へと繋がって行きます。特に据置→利上げ→据置→利下げの各フェーズの変化点では、リスクプレミアムの変化は大きくなります。
 一般的に利下げ局面では、リスクプレミアムが大きくなる傾向が有ります。つまり投資家の利下げ予想は、ほぼ確実に現実よりは少な目です。これはそれまでの金利低下の反転リスクを、現実よりも大きく認識することや、利益確定の動きが出る事と、関係が有るからかもしれません。また財政政策出動に伴う、財政リスクプレミアムが生じているからかもしれません。
 逆に利上げ局面では、リスクプレミアムは小さくなる傾向が有ります。つまり投資家の利上げ予想は、利下げ予想と同じく、ほぼ確実に現実よりも少な目です。これは利回り上昇による値ごろ感からの買いがある事が原因でしょうか。債券ですから買えば金利収入が入って来る訳で、現金で置いて置くよりも良いとする判断が、入ってもおかしくは有りません。また財政リスクプレミアムの剥落が有るからかもしれません。
  • イールドカーブの動きからリスクプレミアムの大小を数式で評価
 ここは最も重要な部分ですが、それほど凝った事をしている訳では有りません。プログラムにして10行位でしょうか。ここに書いた事から導き出される事をプログラムにしているだけで、過去のデータから最も上手く行く組み合わせを、探した訳では有りません。最も上手く行く組み合わせを探しても、今後、最も上手く行く訳は無いでしょう。
 リスクプレミアムへのエクスポージャーのコントロールによる超過収益(運用プロセス4)の寄与分は、市場環境に応じて大きく変化しますので一概には言えませんが、概ね70%程が目安となります。
  • 個別銘柄の割高割安(運用プロセス2)も源泉の一つです
 イールドカーブを作る際には、全年限に渡って滑らかに作っていますから、個別債券の割高割安とは言っても、例えば3年債と4年債を見比べて、どちらが有利か判断をする事が出来ます。こちらの寄与分は概ね30%程になります。
  • デュレーションニュートラル版とフリー版があり、それぞれの運用戦略は異なります
 ニュートラル版の収益源は、必然的にバタフライトレードが中心になります。イールドカーブの変動成分の中で、最も変化に乏しい部分ですので、超過収益を得る機会は、フリー版に比べると少なくなります。因みに本運用では、ベリーとフライの年限をイールドカーブの形状によって連続的に選択をする事で、ベリーの中にウェイトの濃淡が出来たり、それが複数に分かれる事も珍しくは有りません。精緻な計算による連続的な年限選択を行う点は、他の運用戦略との違いとして指摘をしても良いでしょう。
 一方でフリー版の収益源は、デュレーションの制約が無い分、バタフライトレードよりも、パラレル成分やスロープ成分に、多くを依存しています。
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制約条件

  • デュレーション
 ニュートラル版は制約をインデックスの±1%以内としています。乖離状況は日々管理しており、乖離時に強制的に中央値へ揃えるトランザクションを起こします。この際に、α閾値には満たないけれども、最も有利な割高割安入れ替えになるように銘柄選択をする事で、ニュートラル化コストを最小化します。
 フリー版は制約を設けてはいませんが、概ね1σの乖離は±10%、2σは±20%程となっています。
  • コンベクシティ
 制約は有りません。
  • 年限ウェイト
 制約は有りません。
  • 個別銘柄のウェイト
 インデックスの3倍までとしています。よって、ポートフォリオ中の銘柄数は、インデックス構成銘柄の1/3程度となります。こうした理由は主として3点有ります。
 まず1点目は、バックテストの制約による物です。特徴の項で述べた様に、日次の時価という数百万件のデータを扱う事になると、その中のデータエラーは無視出来ない物となります。即ちデータエラーによる割高割安が有ると、実際の運用では得る事の出来ないリターンが、計上されてしまう事になります。これではテストの意味が無いばかりでなく、将来に渡るパフォーマンスの再現性に、大きな疑問符が付いてしまう事になります。様々な条件でスクリーニングをして、データエラーを極力排除はしたものの、完璧とは言えない以上、個別銘柄のウェイト制約を厳しくする事で、データエラーによるアブノーマルリターンの影響を、極小化しようと試みた次第です。
 2点目は、実運用のサイズを1兆円と想定した時に、個別銘柄のマーケットインパクトを、現実的な範囲に抑える必要が有る事です。
 3点目は、流動性の劣る債券に、パフォーマンスを左右されない様にする為です。流動性は、概ね発行残高に比例すると見なす事も可能です。発行残高に対するウェイトを制約する事で、出力された取引銘柄が、実際には取引不能であったとしても、ポートフォリオのパフォーマンスに与える影響を、最小限に留める事が出来ます。
 乖離状況は日々判定ですが、制約をするのは銘柄入れ替え時のみです。買入消却等でウェイトが低下しても、割高銘柄として売却するまでは、超過状態が継続します。
  • 売買回転率
 制約は有りません。実態としてはリターンの源泉の項で述べた様に、金融政策の転換点では、リスクプレミアムの変化が大きくなりますので、それに合わせて、売買回転率も上昇します。例えばJGBですと、量的緩和解除に至る局面では、通常平均の2倍近くの回転率となりました。一方で、ここ1年のJGBは、本運用にとって、イールドカーブの動きが少ないと見なせる年で、回転率は20-30%と少なくなっています。
 通常の売買回転率は、デュレーションニュートラル版で年平均60-70%程度、フリー版では140-150%程度と、他の運用に比べて高めになっています。
  • スプレッドプロダクツへの取り組み
 本運用は、債券時価から求めたイールドカーブを用いて超過収益を得る運用ですから、スプレッドの変化による超過収益を、追い求める運用では有りません。超過収益源では無い以上、発行体の選択はしない訳ですが、デフォルト懸念の有る債券や、本運用にそぐわない債券を持ちたくは有りませんから、次の制約条件を満たすネームのみ採用する事にしています。
  1. カーブ上の発行残高が概ね1,000億円相当以上かつ銘柄数は5銘柄以上ある事(流動性の観点から)
  2. 主要な格付機関による格付がA格以上である事(BBB格は市場に占める残高が少ない為)
  3. 2年債から10年債まで満遍なくある事(イールドカーブを描ける必要がある為)
  4. 劣後性債務では無い事
 この条件を満たす比較的大きなネームに、デフォルトが無いかどうかは分かりませんが、もしデフォルトが有ったとしても、その影響は大きい筈で、他の運用においてもデフォルトが発生している事と思います。つまり他の運用との比較である超過収益は、守られる訳です。しかしデフォルトが発生する事を容認するかのような立場は如何な物か、とのご意見を頂戴するかもしれません。しかし昨今の状況を見ても、デフォルトから完全に逃れる事は出来ません。どうしても逃れる必要が有るならば、国債やそれに準じた安全資産での運用に特化する必要が有ります。勿論本運用は、国債だけでも十分に超過収益を上げる事が出来ますから、そういったニーズへの対応は、とても容易い事です。
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本運用を構成する思想の数々

一般的なイールドカーブ仮説との関係

  • 純粋期待仮説
 この仮説が成立するならば、10年の投資期間を考えた時に、10年債で運用をするのと、1年債をロールしていく運用との利回りの差は、無い事になります。よって年限選択によるアクティブ運用の超過収益は否定される事になります。学術的な見地からの証明は専門の方にお任せしますが、本運用では、純粋期待仮説を支持しません。
  • 市場分断仮説
 債券は調達資金(負債)のヘッジツールとして利用されます。銀行のような短期資金運用ニーズの有る主体と、生保のような長期資金運用ニーズの有る主体等が、それぞれの自己バランスシート分析(ALM)の結果に応じて、債券を売買しています。市場分析よりも、自己分析に基づく運用を行わなくてはならない運用主体が有る以上、年限毎に市場が分断されている様に動く事は、自然なのかもしれません。ここまで述べればもうお分かりかと思いますが、本運用では市場分断仮説を支持します。
 一般に、自己にメリットがある、リスクを削減出来る売買には、コストが掛かります。フリーランチは有りません。この運用では上記のような運用ニーズから、割安になった年限に重点投資をする事でリスクを取り、払われたコストの部分を超過収益に結び付けます。このような運用主体が存在し続ける限り、この収益は継続的に得られる事が期待出来る為、本運用では、運用プロセスの2番目で恒常的に取り入れています。
  • 流動性プレミアム仮説
 イールドカーブが右肩上がりになっている局面が多い事の説明に、取り上げられる事が多いのですが、概ね10年位までの期間において、しばしば観測されるという程度の物でしょう。本運用では、部分的に流動性プレミアム仮説を支持します。部分的とは、常に支持する訳では無いと言う意味です。
 先にも触れた様に、リスクプレミアムは市場環境によって大きく変化しますので、リスクテイクをする事で、いつでも超過収益を得られる物では有りません。リスクテイクをした後で、リスクプレミアムが上昇してしまえば、損失が発生します。よって本運用では、運用プロセスの4番目に書いた工夫をした上で取り入れています。

効率的市場仮説の尊重とその利用

 一般的には、ウィークフォームは成立、セミストロングフォームは微妙、ストロングフォームは法廷でのみ検証可能といった所だと思います。一般的な運用戦略と同様に、セミストロングフォーム程には、市場は効率的では無いとの立場です。市場が効率的で有れば、全ての分析は超過収益に結び付かない事になりますが、本運用では、市場が提供するファクターリターンは、分析分野毎にほぼ0からある程度の大きさまで様々に分布し、しかも時間の経過と共に変化していると考えています。よって、分析担当者が多く、分析も比較的容易で、市場が効率的で有ると思われる分野では、市場をそのまま受け入れ、より分析担当者が少なく、分析が比較的困難な分野で、多くの超過収益を得る事を重視します。
 債券運用において、セミストロングフォームレベルの分析は、マクロ経済分析が相当するでしょう。先にも記した通り、本運用では、マクロ経済分析を行いません。ところが一般的には、マクロ経済分析の結論を元に、金利水準やイールドカーブの形状を予測し、ポジションを構築する事で超過収益を得る運用が、殆どではないかと思います。しかし市場が効率的である程、この選択には問題が有るかもしれないと、思われるかもしれません。なぜならば、このタイプの運用は余りにも多くの人々が、ほぼ同一の視点で、超過収益を血眼になって探している訳ですから、市場に残っている超過収益は、殆ど無い事になりますし、仮に有ったとしても、多くの人々の間で激しい奪い合いが起こる為、超過収益の大きさも小さな物となってしまいます。
 本運用では、マクロ経済分析に基づく投資家が多い事を利用します。このタイプの投資家が多ければ、イールドカーブは極めて効率的に経済状況を織り込んでおり、イールドカーブの裏にある経済分析をする必要は無くなります。いわば市場を通じて、経済分析をアウトソースしているとも考える事が出来ます。もちろんそのアウトソース料は、この分野での超過収益を諦める事に相当します。そして、このコストを払った上で、フォワードレートリスクプレミアムの分析に注力します。このリスクプレミアムは、単に債券の時価を眺めてみても把握する事は出来ません。ある一定の分析能力が必要です。そしてこの観点で投資を行う投資家は、マクロ経済分析に基づく運用をする投資家よりも圧倒的に少ない為、超過収益機会に多く恵まれるばかりでなく、奪い合いによる希薄化も避ける事が出来るのです。

順張りと逆張り

 学説を2つ続けて挙げてしまうと、俗っぽさが目立ってしまいますが、実務的には超過収益の多寡を決める重要なポイントです。
 基本的に収益を上げ易いのは順張りです。相場の上昇、或いは下落といったトレンドについて行って、反転した時に反対売買をすれば良い訳です。もちろん利食いと損切りのタイミングにより運用の巧拙が出ますが、順張りでうまく稼げる事が、相場の世界での第一歩と言えるでしょう。
 一方で、逆張りは成功したときの格好良さから憧れる向きも多い様ですが、残念ながらリスクの割に収益が伴わない事が殆どです。逆張りは何かの均衡点が見えていて、均衡点に収斂していく過程で収益を上げる物ですが、その殆どは均衡点からの乖離のピークを当てる事は出来ません。ピークを当てて大きく収益を上げた話が取り上げられる事が有りますが、そういった話が個別に出て来るという事自体、当たる確率が少なく、特別なニュースになり得る程だと言う事でも有ります。ただ、逆張りも欠点ばかりかと言うとそうでも無く、均衡点に合理性が有れば収益の源泉となり得ます。もちろん合理性が有れば有る程、乖離の幅は小さい筈ですから、得られる収益には限界が有ります。
 さて、本運用に当てはめてみましょう。本運用では運用プロセス2は逆張りです。個別銘柄の割高割安はその均衡点が見えやすい分だけ、逆張りでもリスク対比リターンに、ある程度満足する事が出来ます。一方で、運用プロセス4は順張りです。これはイールドカーブの形状変化について行きます。経済情勢を分析しない訳ですから、常に判断が一歩遅れる様に思われるかもしれませんが、実際には経済情勢の変化よりもイールドカーブの形状変化の方が先である事が多い様に思います。それ程市場は効率的に見えるのです。
 例えばirrational exuberanceと前議長の発言が有ったのは1996年12月でしたが、後から振り返ってみればrationalで有ったとも言えます。またconundrum発言は2005年2月でしたが、住宅市場を巡るその後の混乱を織り込んでいたとすれば、恐ろしい事です。
 元に戻りましょう。イールドカーブの形状の動きは、金利水準の変化に比べてトレンド観測が容易である事は既に述べました。よって、行動が一歩遅れても、その後十歩位は、トレンドが出来ますから、その最初の一歩を当てる事に血眼になるよりも、最初の一歩を間違えるリスクを減らす事が、超過収益の向上に貢献すると考えています。

ガンマ

 前項を少しアカデミックに表現してみましょう。順張りか逆張りかは、つまるところ、ガンマをロングとするのか、ショートとするのかという戦略と近くなります。通常は
  • ガンマロング  勝率よりも損益を極大化する事に注目した運用(オプションの買いポジション)
  • ガンマショート 損益よりも勝率を極大化する事に注目した運用(オプションの売りポジション)
 となる傾向が有ります。全世界的に見ても債券運用では、ガンマショートタイプの運用の方が多いと思います。この運用方法は典型的には、国債をアンダーウェイトとし、代わりにモーゲージや社債をオーバーウェイトとし、高い利回りの債券に重点を置いて投資します。この運用ですと勝率を7-9割程度にする事も困難では有りませんので、運用サイドだけでは無く、スポンサーサイドとしても心地良く感じられる事になります。これ程勝率が高くなるのは、もちろん理由が有って、勝利した時の勝ち幅を小さく、敗北した時の負け幅を大きく設定する事になるからです。しかし、事前に負け幅を適切に想定する事が出来る人は少なく、10年に1度は今回のような金融危機時に、予想以上の大損失に見舞われます。もちろん、それまでの累積収益を吹き飛ばす事も、珍しい事では有りません。過去5年程度の運用成績が安定的に推移して表彰されるファンドが有りますが、10年超の景気循環を経て、居たたまれないパフォーマンスになるファンドも多数あります。気を付けたい点です。
 一方で本運用は、運用プロセス4がガンマロングの部分です。この勝率は5割を上回る程度ですが、経済情勢の変化の方向について行きますので、情勢の変化が大きければ大きいほど、大きな収益源となります。そして、もうお分かりの様に運用プロセス2はガンマショート戦略です。先にも記した通り、両者の収益源の割合は概ね7:3ですから、本運用は債券運用には珍しい、ガンマロングタイプの運用だと言える訳です。

フォワードレートとコンベキシティー

 誤解を恐れずに言えば、債券運用においてはフォワードレート(キャリー+ロールダウン)とコンベキシティーの二者択一しかありません。少なくとも本運用はその相場観を元に作成しています。債券の日々の運用収益はフォワードレートに等しくなります。つまりフォワードレートの高い年限に集中投資していれば超過収益は簡単に上げる事が出来そうです。しかしこの世にフリーランチはありません。一般的にはベリーがフォワードレートの高い年限となりますが、ボラティリティーも高い事が多く、リスク調整後のリターンでうまく調整されている事になります。ボラティリティーの低い部分は一般的にはウィングです。ウィングはベリーに比べてフォワードレートが低いもののコンベキシティーが高い分、金利水準のシフトに絶大な効力を発揮します。
  • ベリー  キャリーテイクのコンベキギブアップ(高キャリー・低コンベキシティー) レベルシフトに弱いが、キャリーは多い。
  • ウィング キャリーギブアップのコンベキテイク(低キャリー・高コンベキシティー) レベルシフトに強いが、キャリーは少ない。
 この微妙な取り合わせをうまく選択するのは、運用プロセス4の役割です。そしてベリー・ウィングの年限選択は、運用プロセス2と3に拠ります。

ロスカットルール

 先ずはロスカットルールとは何かを整理する必要が有ります。ロスカットルールとは、運用結果たる超過収益のマイナス幅がある閾値を越えた際に、強制的にニュートラルポジションに戻す物であるとするならば、本運用にはロスカットルールは無いという答えになります。ポイントは、分析結果ではなくて運用結果に基づく取引であると言う事です。市場分断仮説の議論を思い出しましょう。市場分析に基づかない自己都合ルールに拠る取引に超過収益など望める筈は有りません。それどころか大きな損失を被る事になるでしょう。また、ロスカットルールが発動されるような大きな市場変動がある時程、市場にはたっぷりとリスクプレミアムが載っています。そんな時に市場にリスクプレミアムをばら撒いては本末転倒です。すでに述べた通り、本運用では割安と判断するポートフォリオを持ち続ける事のみを目的とした取引しか行いません。
 しかし、ロスカットルールとは、人間心理の弱さ、即ち負けていても主観的判断に拘り続け、損失を拡大してしまうのを防ぐ為の物だと言う事であれば、本運用はロスカットルールの塊であるとも言えます。通常求められるロスカットルールをプロフィットテイクルールに摩り替える事を意図して設計しましたが、それがうまく行っているかどうかはご判断を待ちたいと思います。
 ロスカットルールが無いとはいえ、本運用を支えるのは、
  • 適切な制約条件
  • 多彩且つ大量のテスト
  • 基礎分野からの理論・経験の積み上げ
です。慎重であることは最優先課題です。
 一般的に、ロスカットルールに抵触するような運用をするマネージャーに優秀な成果を残す人はいません。そのようなマネージャーは、市場変動の大きさを侮ったか、自己の取り得るリスクを適切に判断する事が出来なかったかのどちらかです。リスク評価はマネージャーの第一歩です。リターンを追い求めてリスクを取り過ぎれば、その結果は前項のガンマショート戦略と同じ末路を辿る事になります。

構造モデルと統計モデル

 クオンツ或いはシステム運用と呼ばれるモデル運用は、大きく分けて構造モデルと統計モデルに分類されます。
 構造モデルとは、市場に対する運用設計者の強いビューや相場観から、経済構造を仮定し、その説明に有効であろうファクターを選択して投資判断をします。超過収益の源泉はマネージャーのビューですので、通常のジャッジメンタルな判断を計算機を用いて自動化しているに過ぎません。このタイプの運用はマネージャーの相場観の正しさこそが命となります。
 一方で統計モデルとは、多くのファクターと収益率の統計的関係から、有効であろうファクターを選択し投資判断をします。選択されたファクターはマネージャーのビューと一致するとは限りません。むしろビューを入れないことを超過収益の源泉とする事も多くあります。このタイプの運用はマネージャーの相場観よりも統計的事実を重視します。
 勿論、どちらが正しいとか優れているという事は一概には言えません。個々のモデルの個性がより重要です。本運用は勿論、構造モデルです。構造モデルを指向したのは、設計者のビューの正しさを証明する事を起点とした為です。

国債とスプレッドプロダクツを同一の方法で運用することの是非

 フォワードレートリスクプレミアムが、政策金利の転換点で大きく変化し易い事は、既に述べました。しかしこの性質を、政策金利を反映し易い国債ばかりでは無く、ユーロ圏で言えばドイツ以外の国々、或いは国債以外のスプレッドプロダクツのような、政策金利だけを反映する訳では無い発行体に、同じ様に適用するのは如何な物か、というご意見を頂戴する事が有ります。しかし、本運用では国と企業を同一視する事に、全く問題は無いと考えています。
 イールドカーブとは何かを、原点に立ち返って考えてみます。本運用では、イールドカーブは、資金の調達サイドと運用サイドの間での、各調達年限における需給の均衡点として捉えています。
 独立した金融政策を持つ国の資金調達金利が、景気過熱に比して上がって行くのは、ごく自然の事です。需要に応じて資金量を増やしてしまうと、インフレを招いてしまいますので、出来れば資金量を直接コントロールすべきですが、そうすると資金需給により、金利が必要以上に乱高下してしまいます。そこで資金量のコントロールをある程度諦め、インフレやデフレのリスクを少し取る事で、実体経済に必要以上の悪影響が出ない様に、需給が均衡するような水準を公定します。この事から、本運用では政策金利は、その字面ほど能動的にコントロール出来る物では無く、平均的資金需給から受動的に決定される物として扱います。政策金利ですら、所詮イールドカーブ上の一点に過ぎません。
 企業はどうでしょうか。事業の継続性に疑問が付いた時を想像してみます。この時、企業の資金調達ニーズは、特段高まる訳では無いと思いますが、貸し手が減少する事で景気過熱時と同様、資金需要超過となり調達金利が上昇して行きます。イールドカーブの動きは、資金需給により定まるとの視点に立てば、景気過熱時の国債と同様の変化を遂げる筈です。ですからイールドカーブの変化に対応する投資行動は、国債と同一の物で全く問題無いと考えています。

開発にあたっての試行錯誤

 どんなスタイルの運用にせよ、それが確立する迄には、何がしかの試行錯誤は必ず発生します。試行錯誤自体は、全く否定する物では有りませんが、知らず知らずのうちに過去データに最も適合する様に、最適化をしてしまうリスクが有ります。よって本運用のリスクを判断するに当たって、どのような開発過程を経たかを説明する必要が有るでしょう。試行錯誤をした部分に、将来への再現性に対する脆弱さが紛れ込むからです。
  • イールドカーブの構築
 イールドカーブを描く方法はいくつか有りますが、これは最初から決め打ちでした。瞬間フォワードレートに着目して運用すれば、うまく行くであろう事は、教科書に学ぶ段階から想像できましたので、開発に当たっては瞬間フォワードレートを滑らかに描ける事が絶対条件でした。瞬間フォワードレートさえ滑らかに描いてしまえば、その平均であるゼロレートも滑らかになりますので、個別銘柄の割高割安も試行錯誤する事無く、決め打ちが出来る訳です。
  • α1とα2の合成割合
 イールドカーブさえ出来てしまえば、個別銘柄のα1もリスクプレミアムを評価するα2も一意に定まりますので、こちらにも試行錯誤は有りません。
 最大のポイントは、この性質の異なる2つのα値の合成に有ります。市場分断仮説により常に有効であろうと思われるα1に対して、市場環境によって変化の大きいリスクプレミアムα2を、どの様に混ぜ合わせるか、という点に若干の試行錯誤が有った事を告白せねばならないでしょう。しかし、リスクプレミアムの変化は、決してランダムでは無いという発想に至るのには、時間はかかりませんでした。これは市場参加者にしてみれば常識の類です。いわばアクセルとブレーキのタイミングをどう定義するかですが、ここにも試行錯誤は有りません。
 試行錯誤は最後の最後の部分。アクセルとブレーキを平均してどのような割合にするか、が問題となりました。試したのは3パターンです。先ずはアクセルとブレーキの平均を0とする方法です。ある意味当たり前の試行です。次は平均を1とする方法です。変化の激しいリスクプレミアムといえども、平均してアクセルをちょっと踏み気味にすれば、超過収益が上がるであろう事は容易に想像が出来ます。では2とか3とか…は、やっていません。これで例えば2.35が一番良いという結論が出たとしてどうします? 今後、最も超過収益を上げられる合成割合は、確実に2.35では無いでしょう。これこそがインサンプル・アウトサンプルの問題です。では問題の3パターン目。これが結論ですが、イールドカーブの形状を入力データとする、ある関数形だとお答えする事で、ご勘弁願いたいと思います。このパターンが最も大きな超過収益を生み出す訳では無いのですが、人間として実感に合った形である事は事実です。説明のしやすさ。これが決定のポイントです。

究極のリスクならびに収益源

 本運用を否定するような発想で、もう一度振り返ってみましょう。投資哲学として3点挙げましたが、実は最初の2点と3点目はその意味する所に違いが有ります。
 最初の2点は運用設計者としての理念です。これは今後も変化させる部分では有りませんので、本運用の相場観と言っても良いでしょう。当然の事ながら相場は思い込み通りに動くとは限りません。動きがおかしい期間が、数ヶ月や長くても1年といった、比較的短期間なら良いのですが、数年間続く事も、場合によっては5年以上続く事も有るかもしれません。幸いバックテストの結果を見れば、超過収益の上がらない期間は、長くても1年程度の様です。しかしこの相場観への拘りこそが、究極のリスクです。であるからこそ、この部分の元ネタは、教科書や論文に掲載されるほど長期間、かつ多数の人に検証されたという普遍性に頼る訳ですし、全世界・長期間の日次バックテストの結果に頼る訳です。もちろん、本運用は教科書通りでも論文通りでも有りません。元ネタに手を加えている以上、設計者の相場観を排除する事など不可能ですし排除してしまえば、超過収益は無くなる筈です。
 本運用について否定的に考えられる方と、肯定的に考えられる方の分岐点は、つまる所、このリスクを許容するかどうかに懸かっています。裁量に基づく運用とルールに基づく運用のどちらが好ましいか、いわばケインジアン対シカゴ学派の論争にも似ているかもしれません。どちらのサイドも、正しいとも間違っているとも言えません。否定派は、相場観が硬直的で有ることは危険で有り、経済情勢に従って柔軟に対応すべき、つまり人間がその都度判断すべきで、それこそがリスクの最小化とリターンの最大化に資すると考えます。
 一方で肯定派は、経済情勢の変化に従って、柔軟に対応しているつもりでも、それは実際には不可能で有ると考え、一貫性こそがリスクの最小化とリターンの最大化に資すると考えます。否定派・肯定派と、なにやら物騒では有りますが、その意見は時代や立場等に拠って変わる物です。勿論、本運用の立場は変わりませんが、設計者はどちらかと言えば、肯定派に近いという程度です。
 クオンツに頼らない運用では、投資哲学の3点目を貫徹する事は困難です。そして、維持困難な一貫性への挑戦と否定派の存在が、究極の収益源で有り、リスクで有ると言える訳です。

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