テスト結果

テスト結果(2010年4月末まで)

  • 本運用のロジック完成は2007年2月です。よって現在までの3年間は、バックテストというより、転がしテストと捉える事が出来ます。
  • デュレーションフリー版よりも、ニュートラル版の方がリスクは小さいですが、ニュートラルを保つ為に割高な債券も買う事になりますので、超過収益は小さくなります。
  • ニュートラル版とフリー版は、任意の割合で混合する事が可能です。リスク許容度に応じた割合を選択する事が可能です。
  • フリー版の一部は超過収益どころか超過損失を被っています。フォワードレートが、将来の金利水準を先読みする物では無い以上、予想された結果ではあります。幸い、そうした傾向を示す発行体は限られていますので、そういった発行体に対してはニュートラル版で対応することが出来ます。
  • 一方で、ニュートラル版で超過収益を得られていない発行体は、ベンチマークと発行された債券の加重平均デュレーションが合っていない場合が殆どです。この場合にはフリー版で対応する事が出来ます。
  • 全て取引コスト控除後です。取引コストは片道金利で、日西白蘭希加は1bp、米独伊仏英は0.5bp、墺葡と日本のスプレッドプロダクツは2bpとしています。
  • 流動性の欠如に伴う取引コストの上昇による影響は、それなりに甚大で、仮に取引コストがバックテスト全期間において2倍になったとすると、超過収益の水準は3割ほど低下します。このような状況は、時と共に解消されるという前提に立つならば、バックテスト期間に占める低流動性期間はそう多く無い為、影響度はそれ程大きく無くなります。
  • 何らかの危機が起こり流動性が欠如する時には、市場のボラティリティーが上昇します。経験的には、取引コスト節約の為に取引を削減するよりも、コストを払って無理にでも取引をする方が、超過収益に結びつき易い様に思います。もちろん限界は有りますが、計算通りに取引をしない事で、情勢変化について行けず、不測のリスクテイクをしてしまう事を避ける方が賢明です。
  • 以下のグラフは月次で表示していますが、特徴の項で述べた通り日次でテストしており、全ての銘柄の売買動機・日次残高・日次厳密法パフォーマンス・ポートフォリオリスク指標・グリッドポイントセンシティビティー等を保管しています。
  • スプレッドプロダクツはモノありきの世界で有る為、計算結果に従った取引は困難です。その為、超過収益の大きさとそのリスクを例示する為の計算と位置付けています。

JGB

  • JGBは当初は7年債での発行(1966年1月28日の700億円が最初)でした。10年債での発行は1972年1月20日の3,726億円(うち資金運用部引受が2,426億円)が最初でした。この債券の償還日は1982年2月20日です。
  • JGBの歴史において最大の暴落は、ロクイチ国債大暴落(1980年4月)ですが、その時点では10年債の残存期間が、十分に短くなっていない事と、1979年から発行された2年債や、その前年から発行された3年債の時価を取得出来ない為、本運用を充足するイールドカーブを描く事が出来ません。残念ながら、バックテストの範囲外となります。
  • この暴落は、第二次オイルショックによる急激なインフレと、それに対応した急激な金融引締めによる物でした。これにより銀行の保有する国債が逆ざやになると同時に、景気後退による財政政策発動による国債増発が重なって、当時としては最低の6.1%クーポン債は暴落しました。しかし、イラン・イラク戦争の勃発もあり、結果的に債券価格は急激に戻す事になります。このような経過を考えますと、本運用の損失は当初大きかったものの、その後回復し、運用の根幹を揺るがす事にはならなかったであろうと言えるでしょう。
  • ちなみに、当時と現在とでは世界経済の結合度合いは違うと考えられる方も多いかと思われますが、この債券大暴落はほぼ世界同時に起こりました。当時も現在も市場の動きは共通です。80年代のバックテストを軽視すべきでは有りません。
  • JGBの標準受渡日は10日決済、5,10日決済、T+5ローリング決済、そして現在のT+3ローリング決済と変化していますが、本運用では一律にT+3ローリング決済として扱っています。
  • 現在も残る利払い前3営業日の受渡禁止期間も考慮していません。残念ながら、このような変則受渡ルールが残るのは本国のみです。無論、受渡日が異なれば当然時価を調整しなくてはいけない訳ですが、超過収益に比べ少額である為、現在は無視しています。結果を見ても決済慣行の変化点で超過収益の出方が変化している様には見えません。
  • ここまで長いテストですと、どんな経済状況のときにどのようなふるまいをするのかが、手にとる様に分かります。
  • もちろん10年以上前に片道1bpで取引が出来たとは思いませんので、90年代までのパフォーマンスの「傾き」は当てになりませんが、「上下のブレ」は今後の動きを知る上での大きな目安となります。
  • ロクイチ国債後を俯瞰すると、プラザ合意はあまり大きな影響は無い様ですが、タテホショックの影響は大きくなっています。10年金利が2.5%から6%超まで僅か4ヶ月で上昇したのですから当然です。このときの金利急上昇局面は5回もありました。今起これば生き残る事が出来るファンドマネージャーは僅かでしょう。次は資金運用部ショックです。これも10月の0.8%から2月の2.5%までの急激な金利上昇です。最後にVaRショックです。同じく6月の0.44%から9月の1.7%までです。
  • お気づきかもしれませんが、円高不況・アジア通貨危機・金融危機と、それぞれ大きな景気後退を反映した、あるいは金融緩和による過剰流動性から発生した行き過ぎた金利低下が有って、その修正過程で起こった事です。
  • 今回の金融危機もまたじりじりと金利低下、そしてどこかで債券バプル崩壊が起こるかもしれません。この運用は3回の危機に遭っていますから、今度もきちんと乗り越えられると思います。

JGB超長期債

  • 本運用は投資対象を特定の年限に制限した運用にも適用する事が出来ます。
  • 所謂、年金ALMやLDIに対応する超長期債特化型運用も可能です。
  • 2004年までは余り芳しいパフォーマンスでは有りませんが、ここ数年は超過収益が出る様になっています。
  • これは、30年債が20年債に近接し、年限毎の超過収益が得やすくなった事、さらに、活発な流動性供給入札やバイバック(このところは曰く付の債券ばかりですが)によるイールドカーブの変化が本運用に沿う形となって来た事による物でしょう。
  • また、年金や生保が超長期債投資に傾斜して行けば行く程、イールドカーブが市場分断仮説的な動きをする為、本運用にとっての収益機会は拡大して行く事となります。
  • 1,000億円程度迄であればClosing Orderを使って事実上0コストでの取引が可能です。取引コストが無い時の累積パフォーマンスは以下のグラフに対して、ニュートラル版で+511bp、フリー版で+1195bp加算された数値となります。そうです。取引コストを節減することで、大きく超過収益を得ることが出来るのです。

道路関係団体

  • 日本のスプレッドプロダクツの中で、現在は最も発行残高の多い団体です。
  • 分割後も重畳的債務引受で事実上連結されている為、関係団体の発行する債券はここでは全て一体として扱います。
  • 道路関係団体のみのインデックスは存在しない為、政保債インデックス対比で表示をしています。
  • 時価データのアベイラビリティーから、テストは2003年からとなっており、VaRショックをまともに受けてのスタートとなっています。
  • デュレーションニュートラル版も有りますが、あくまで道路関係団体の発行する債券を時価総額ウェイトしたデュレーションに対してニュートラルであって、政保債インデックスに対してニュートラルな訳では有りません。道路関係団体は発行する債券の平均年限が約8年と長い為、ニュートラル版で有ってもベンチマーク対比デュレーションは長くなっています。
  • 2003年の急激な金利上昇により、フリー版の劣後が目立ちますが、2006年の金利上昇局面でニュートラル版との差が縮まっている事が分かります。

JFM

  • かつては長い間、日本のスプレッドプロダクツの中で、最も発行残高の多い団体でした。
  • 2009年4月より地方債に分類されますが、ここではバックテスト当初より地方債対比で表示しています。よって、政府保証債と地方債のスプレッド分だけ不利に表示されています。
  • 日本のスプレッドプロダクツは、片道金利で2bpの取引コストを払うと、デュレーションニュートラル版では全く見合いません。

共同発行地方債

  • 都債を追い抜いて、発行残高3位の座に有りますが、残念ながら本運用の対象にはなりません。
  • 発行開始は2003年4月ですが、10年債の発行しか無い為、最も償還まで短い債券でも、残存期間が4年超となっています。
  • この発行体を組み入れるのは、最初に発行された債券の残存期間が、十分に短くなる2011年9月末です。

都債

  • JFMと同様デュレーションニュートラル版では超過収益を見込む事が出来ません。
  • アクティブ運用は取引コストが生命線で有る事が良く分かります。

東京電力

  • 事業債もきちんと超過収益を得る事が出来ます。
  • 僅か東京電力だけでも、事業債インデックス対比でトップクラスのパフォーマンスを出すことが出来ます。
  • 勿論、2007年8月以降はサブプライム危機によるスプレッドの拡大が、結果として収益源になっていますので、ここは割り引いて考える必要があります。

JFC

  • 旧各公庫とも統合して扱います。非国債は組織変更がある場合が多いですからテストというよりも、殆ど概念上のシミュレーションになってしまいます。
  • この発行体のデュレーションは短めです。道路債とセットでほぼインデックス並となります。
  • 片道2bpの取引コストと短いデュレーションを勘案すれば、十分なパフォーマンスと言えるでしょう。

商工中金

  • 数も少なくなった金融債の中で唯一10年債を発行していますので、対象となります。
  • しかしここ1年以上10年債の新規発行がありませんので、数年後には対象外となるリスクがあります。

みずほ

  • 事業債対比になりますので、パフォーマンスは大幅劣後しています。デュレーションが短いので仕方ありません。

Treasury

  • 米国債は世界最大の流動性を持ち、その上に乗っているスプレッドプロダクツの残高もまた世界最大で有り、多様な投資主体がそれぞれの思惑で取引しています。その思惑の逆ポジションを取ることで、他国以上にリスクプレミアムを獲得する事が出来ます。
  • この市場は指標債(2,5,10,30年)の取引量が、他の年限に比べて比較にならない程大きく、市場分断仮説的な動きがしばしば観測されます。

Bunds

  • ドイツ国債は米国債と同様に、ユーロのベンチマークとしての役割を負っている訳ですが、イールドカーブの動きは大分ゆったりとした物となっています。これは米国のようなモーゲージ市場が存在しない事と、各年限の債券が米国に比べて均質である事に起因しています。

BTP

  • 同じ通貨に統合された後でも、ドイツ国債と超過収益の出方が違うのは、ドイツ国債対比スプレッドが年限毎に変化し、これも超過収益に結びつく事と、銘柄の残存構成の違いが影響している物と思われます。
  • 昨今のギリシャ財政危機を受けてユーロ圏各国のイールドカーブが別個に動くことが多くなっています。本運用のように各発行体をスプレッドではなく、別個に扱う事に拠る有利さが今現れています。この柔軟性こそが本運用の命です。

OAT

  • ニュートラル版ではあまり超過収益が取れていません。おそらく割高割安の年限構成と発行されている債券の年限構成が、うまく合わないからだと思われます。
  • 計算上割安だとされた年限に債券が存在しなければ、その債券を実際に買う事は出来ません。この様な時には、ポートフォリオの平均割安度合いは、あまり大きな物とならず、パッシブ運用のような形になってしまいます。
  • こういった場合、国別の環境を考慮してパラメータを最適化すると、さらに超過収益は上がるのですが、将来の再現性を極力担保する為、そのような方法は採りません。画一的な方法で運用する事で、再現性を優先させる事が、本運用の特徴です。

Gilt

  • この市場は特異な市場です。つい先ごろまではイールドカーブはほぼ常にフラットで、中期ゾーンがハンプしていました。さらに発行残高は、20年債のラダーのような形になっていますので、インデックスのデュレーションも他国に比べて長くなっています。
  • 他国との違いが際立つこの国においても、全く同一の計算できちんと超過収益を獲得できているという事は、本運用が頑強である事を示唆しています。

Bonos

  • これより先は所謂周辺国市場で、その重要度もこれまでの数分の1になりますが、取引コストを多めに見積もった上で、主要国と同様にテストしています。

OLO

  • 取引コストが多めなせいか、超過収益は少な目です。

DSL

  • 債券市場規模もだいぶ小さくなってまいりました。時価の粗さも有り、パフォーマンスが崩壊しています。
  • しかしながら、ニュートラル版では取引コストを回収出来る位のリターン、フリー版では若干の超過収益が有る様にも見えます。

Greece

  • デュレーションフリー版のパフォーマンスは悪いです。ここもとのパフォーマンスの悪化の理由は明白です。
  • この運用の性質上、イールドカーブが最も立った年限に多くの投資をしますが、2009年は2-3年ゾーンがこれに当たり、デュレーションが短くなっています。
  • カーブを俯瞰すると長期ゾーンに魅力が無い事は確かであり、修正局面が訪れてもおかしくないと考えていましたが、財政リスクが顕在化したために混乱に陥ってしまいました。
  • 脇道に逸れますが、ギリシャが危機に陥っているのは財政が悪いからではなく、経常収支が大きく赤字であるからです。
  • ISバランス(民間貯蓄-民間投資+財政収支=経常収支)を見れば明らかです。日本の財政収支赤字を問題にする向きが多いですが、日本は1965年以降ほぼ一貫して経常黒字にあり、ギリシャと同様の議論は有り得ません。
  • 現在はISバランスの悪化を財政支出で埋め合わせている訳ですが、この発想は間違っているとも言えません。国債発行開始時期が経常黒字化定着時期と一致しているのは偶然でなく、この埋め合わせが無ければ、ISバランスの調整を貯蓄縮小で辻褄を合わせる、つまり国民所得の縮小で埋め合わせるしかありません。
  • しかしながら経常収支を超える財政支出は危険であることと、経常収支が減少に向かう際には、財政削減を進める必要があるのは事実です。
  • これは将来の苦痛と現在の幸福とを単純に交換しているだけですから、現金を用意してから家を買うのか、家を買ってから借金を返すかの違いだけと言えます。
  • ギリシャに戻ります。この混乱では教科書通り、また本運用の意図する通りベアフラットしましたので、運用プロセス4の示す通り、現在ではキャリーをギブアップしてコンベキシティーを買いに行っています。デュレーションフリー版ではデュレーションが長くなっています。
  • 格付けからすると投資対象外となりましたが、計算は今後も続けます。

CAN

  • 同様にデュレーションフリー版は崩壊しています。フリー版は全く商品にもなりません。
  • この様になる原因は思い当たらないのですが、何か新しい発見につながる可能性もありますので継続的に調査を続けます。

RAGB

  • これより先は更に市場規模が小さいため取引コストを2bpと大目に見積もっています。

OT

  • ギリシャ同様の経常赤字国ですから、いつ格下げの憂き目に遭っても不思議ではありません。
  • イタリア・スペインも同列に扱う向きもあるようですが、経常赤字のレベルが違います。今回の財政危機はポルトガルまでで止まるものと思います。

最終更新:2010年05月04日 14:38