「第7話」(2010/12/25 (土) 20:27:01) の最新版変更点
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「天ちゃん、待ってよ~」
「ここでし!早く来るでし!」
二人の泊まる宿はその名もMrs.マリンパラダイス。このマリンデザートでも一級の宿屋らしい。
巨大な巻貝を背負ったその宿屋は、屋根の大きさに比べて随分短く細い木の柱に支えられていて、今にも潰れそうに見えた。
巻貝の屋根には、色とりどりの小さな巻貝が埋め込まれていて、暗くなるにつれ発光する仕組みらしい。
でこぼこした柱には、その目に沿って青や赤の光筋が往復しており、不思議な美しさがあった。
宿屋の入り口右端には流木で作られたボロイ小さな屋台があり、台の上には透き通った小箱に真っ赤に燃えるキャンディーや、
黄金に輝くグミ、白く光る星の埋め込まれた渦型のチョコレートが詰められていた。
この宿屋はお菓子売りもやっているのだろうか?
狭い入り口を腰を屈めて入ると、外見と不釣り合いに中はとんでもない広さであった。
小さな色とりどりの光の球が宿屋の中をゆっくりな速度で渦巻いており、明はその美しさに心奪われた。
宿屋の中央は地下から吹き抜けとなっており、地下から吹く上がる風の渦に乗って、
小さな水玉が上に行ったり下に行ったりしている。どうやらこれが空調システムなっているらしい。
涼しい風が明を撫でて行く。
宿屋上階では風のソウルマスター達が、ロッドに腰掛けて、あっちへこっちへと飛び交っていた。
明と天使の前にクルクルと踊りながら、うさぎの耳をつけたメイドが飛び出してきた。
「いらっしゃいました!天使さんご一行!」
天使が胸を張ってずいっと前にでる。
「いらっしゃいましたでし!」
そういって、後ろの明にウィンクする。
「もえ様よりご予約を承っておりました!ささっ!五階に御案内しましたっ!」
メイドさんがお皿を下から支えるようなポーズを取ると、ボーイがさささっと出てきて、2人の荷物を預かろうとキョロキョロした。
「大丈夫でし!ポシェットしか持ってきてないでしゅ!」
ボーイはがっかりして、頭を垂れた。
「あふん。荷物運びはぼ~くのおっしごとなぁ~のにぃ。」
一方明は、熱心に建物の中を眺めていた。
「こんな高そうな宿屋を取れるなんて、さ、さすが天使のご主人様です・・・」
2人は風のスロープに体を滑らせて、メイドと共に部屋へと上っていった。
案内された部屋の入り口は、薄い水の膜のようなもので閉じられており、縁は青と銀色の大きさがまばらな半月型の貝で装飾されていた。
入り口にメイドが手を触れると、さっと水の膜が開き、部屋の中から花の香りが零れてきた。
部屋は白と水玉のデザインで、家具や小物も同じデザインであった。
(ただ、ティーポットやカップなどは、水玉が反転していた。)
「素敵な部屋じゃない!」
明は興奮気味にいった。
「地下3階から地上1階まで食品街、現在春の美味しいもの決定戦祭りを行っておりました。
地下4階から地下10階まではショッピングモールおよびアミューズメント広場となっておりました。
地下11階以降は従業員のみ立ち入りが可能になっていました。お気をつけ下さいました♪
何か御用がありましたら、天井に向かってささやきましたら、最寄の従業員がお伺いしました。
では、ごゆっくりおつくろぎ下さいました♪」
メイドはクルクルと舞って、ポーズを決め、明と天使に向かってウィンクしながら、人差し指を立ててポーズを決める。
「イエス☆ マイアイエルン!☆」
「オールフォーマイプリンセス★でしっ!」
天使が同じ動作ですかさず返す。
そして、メイドは部屋から出て行った。
天使「この辺りの人たちは旧大陸出身者が多いのでしっ!さっきのは彼らの皇族を称える挨拶でしっ!」
明(・・・懐かしい響きのような・・・)
だが、明は思い出すことができなかった。
(中略)
ここで3つの選択肢が表示される。
1)推理型にして、次の物語へのフラグを立てておく。
1→Mrs.マリンパラダイスの地下探索へ
2)冒険型にして、新しいフラグを建てながら、既存のフラグの回収も行う。
2→ショッピングモールで骨董商マスターモンキーから、桜ペンダントと共鳴する黒曜ペンダントを手に入れ、
浮かび上がったドリル君マークから、これらのペンダントがドリル王マルクトの子孫であることを証明するものであることを知る。
3)バトルものにして1話完結型にする。フラグ回収を始める。
3→小説参加者が少ない場合は、3もあり。
プレイヤーは「3」を選択。
深夜、明と天使は突然のアラートで叩き起こされた。
宿屋のあちこちに赤い警告のスライドが表示される。
「メガロポリス総督府がお知らせします。タバスコ火山にて魔物のB規模出現を確認。トリックスター候補生は直ちに出動してください。繰り返します。メガロポリス総督府が・・・」
明は突然のことにオロオロした。
「これは何なの?!」
警告スライドの近くに次々と魔法陣が出現し、本の形をした木の塊がぽんっと飛び出た。
それらはがちゃがちゃと音を立てて変形し、中が空洞の十六角形を作った。
これらはアストラルゲントと呼ばれるワープゲートの一種らしい。ただワープゲートと違い、空間移動だけでなく、
”あちらの世界”への次元移動を可能にする。
「大丈夫でし。時々、カバリア諸島に魔物が侵入しようとするでしよ。でも、トリックスター候補生がいれば安心でしっ!」
そういって、天使はまたベッドに潜り込んだ。
明「トリックスター?ん~トリック・・ス・・・・っ痛(っつ)!!」
明の頭の中で、”真っ赤の夕日と荒廃した街を背景に、仮面をつけた大鎌のピエロと対峙する、自分と仲間らしき3人の姿”
がフラッシュバックした。
明「これは一体・・・」
ベッドに腰掛け、明は頭を抱えた。
この星で3番目に大きな月”デザル”が南東の空に見え始めたころ、再びアラートがなった。
”マリンデザート街内に魔物”萌えもん”がF規模で侵入。待機しているトリックスター候補生は直ちに迎撃してください。繰り返します。・・・)
明「これもトリックスター候補生に任せておけばいいのね。」
だが、宿屋の1階エントランスがどうも騒がしい。
天使も起きてきて、部屋の外の手すりからエントランスを眺める。
「不味いことになったかもでしっ。」
明も手すりから体を乗り出す。
40人程度であろうか、宿泊者が大声をあげながら、宿屋からでようと必死になっていた。
メイド達は混乱している宿泊者に落ち着くよう呼びかけをしていた。
だが、その流れも途中で何かあったらしく、逆方向に宿泊者が走り出した。
「あれ。入り口に殺到してた人が逃げていくよ?」
ドォォォォーーーン!!
宿屋の入り口が轟音と共に吹き飛ばされる。
「萌え~~~~~~!!!」
叫び声と粉塵と共に宿屋に入ってきたのは、くらげ型の砂の魔物”萌えもん”だ。
マリンデザートの砂漠の色と同じ美しい黄金色の体をしており、サラサラと砂を零しながら、唇を尖らして辺りを見渡している。
「やばいでしっ!トリックスター候補生が出払ったところを狙ってきたんでしねっ!
窓から逃げるでしよ!明!」
天使は部屋に戻り、窓を開けようと、黄色のレバーをガチャガチャといじる。
「明!早くいくでしよ!明!・・・・明ってばっでしっ!」
天使は大声をあげたが、明には聞こえていなかった。
”萌えもん”を目の当たりにした明の心臓は張り裂けんばかりに高鳴っていた。
「明!!」
天使が明の袖を掴んだが、明はそれを振り払って1階へと駆け出した。
「なっ、何をしているでしかぁぁぁぁ!!」
風のスロープを駆け下りる明の心に不思議な声が響く。
(目覚めよ。)
明はカッと目を見開き、宿泊者が逃げ惑う、砂だらけになった1階に飛び込んだ。
(目覚めよ。ファーストセクシー!)
飛び込んできた明に、”萌えもん”の大群の中でも一際大きいBOSS"萌えもん"がずいっと前に出た。
BOSS"萌えもん"は砂の頭をグルグル回し、零れ落ちる黄金の砂を空に舞わせ、空中で体を回転させながら、
腕で舞い上がった輝く砂を上手くコントロールして幻想的に踊ってみせた。
地面に降り立つとともに砂の腕でハートマークを作り、「あはんっ☆」とポーズを決める。
他の”萌えもん”や、逃げ惑っていた宿泊者からワッと拍手が巻き起こった。
小さな"萌えもん"達が飛び出してきて、点数をつけた。
「9」「8」「9」「10」「9」「10」
お~~!とどよめきが起こった。
どや顔するBOSS"萌えもん"を見て、明はふふっと笑みを零す。
腕を可愛らしく曲げて、相手から見て一直線になるように肩を交互に前に出しながら進む。
指でスリーピースを作り、腰を使って、大きな円を描いたと思ったら、くるりと右周り1回転半し、
ムーンウォークを魅せた後、地面に背中から倒れこむ。
だが、完全に倒れる寸前に手で体を支え、そこから逆立ちへと展開し、2本の足でスーパーヒーローの変身ポーズを再現した。
その瞬間、背景ではドドンと紫の花火と煙が上がり、キラキラと決めポーズを美しく演出した。
再び、小さな"萌えもん"達が飛び出してきて、点数をつけた。
「10」「10」「10」「9」「10」「10」
わお・・・・
宿泊者達は頬を赤く染め、熱い吐息を零した。
”萌えもん”の大群の中にも、興奮と衝撃で気絶するものが何体もいた。
嫉妬でBOSS"萌えもん"は顔を真っ赤にして萌え上がっていた。
(戦闘BGMが始まる)
羊のもえちゃんのカットインが入り、明のテーマソングがもえちゃんによって歌われる。
(☆に恋した私の気持ち♪つながってほしい愛の形♪
感動を生んだポーズの数だけ♪新たな衝撃が広がってゆくの♪
ちぇくちー♪ちぇくちー♪HOOO!HOOOO!)
BOSS"萌えもん”が砂の腕を鞭のように飛ばし、明に襲い掛かる。
明は円を描くようにステップを踏みながら、軽やかにかわしつつ、
一気に距離を詰めていく。外れた腕はフロアでバサァと大きな音を立てながら、土柱を立てていった。
土柱の砂で砂まみれになった宿泊者は悲鳴を上げていた。
「当たらないわ!」
するりとBOSS"萌えもん”の脇に滑り込み、明は投げキッスを飛ばした。
衝撃を受けたBOSS"萌えもん”は頬を赤く染め、ぐらりと倒れた。
「BOSS!!」
手下の”萌えもん”が大勢駆けつけ、倒れたBOSSを抱えて逃げ帰っていった。
「ナイスセクシーっっ!!!」
宿泊者から歓声が起きた。
「明・・・一体何者なんでしか。。。」
天使が呆然とする中、今度は宿屋の外で大きな音が聞こえた。
たくさんの”萌えもん”が合体し、マリンデザートの砂を吸収しながら、
BIG"萌えもん”へと変身を遂げたのだった。
BIG"萌えもん”が歩くたびに、マリンパラダイスにある白い巻貝の屋根の民家は、ギシギシと圧壊していった。
「このままでは済まさん萌え~!」
壊れた入り口から、モデルウォークで外にでる明。
「いいわ。なかなかおもしろい展開じゃない。」
(明オリジナル処刑用BGMが始まる。)
明は人差し指を空に掲げ、ポーズを決めた。
大空から、そして大地から、そしてお花畑から、小さな光がブワッと数え切れないほど生み出された。
マリンパラダイスの住民の皆が裏ピースを目に当て、腰をくいっと出した。
「HOOO!HOOO!」
住民達からはピンク色の小さな光がブワッと生み出された。
BIG"萌えもん"は、腕の先端を球型にして、明を押しつぶそうと高く掲げた。
明は空に掲げた人差し指を振り回した。すると、たくさんの小さな光が超高速で指先へ集結していった。
「セクシィィィィィイイイイイイイイイイイイ!!!」
明は地面に頭がつくのではないかと思うほど、胸を反らせて、高速で回転した。
砂が舞い上がり、光の輪が幾重にも明を包む。
そして、明は両手を前に突き出した。
「ビィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーム!!」
激しいピンクの光が放たれ、BIG"萌えもん”の頭をパーンと貫き弾き、空へと直線を作った。
(ビーム発射時のカットが3方向分繰り返される。)
BIG"萌えもん”が倒れるのを背景に、明は腰を曲げ、人差し指を口元に当て言った。
「セクシー??」
「ちぇくちいいいいいい!!!」
マリンパラダイスの住民は上着や帽子を空に放り投げ、歓喜の叫びを上げた。
(エンディング曲)
(次回予告)
「明は一体何者でしか~!?」
叫ぶ天使。
「ドン・カバリアの遺産が動き出したか。」
謎の黒ローブの集団。
次回の物語もみんなで楽しく見よう!
つづく。
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