湧きだした灰色の雲は、たちまち空を覆い、まだ昼だというのにたちまち辺りは暗くなった。胸騒ぎがしてチチは家の外へ出た。
なんということだろう。つい先程まで青々と茂っていたパオズ山の木々も、チチが丹精こめて作った畑の野菜も、花壇の花々も、みな枯れて赤茶けている。
「なにがあったんだべ・・・」
 悟空も悟飯も帰ってこない。二人の身にまた何か起こったのではないかと、チチの不安は募る。

 ガサ!ガサガサッ!
枯れた木々の触れ合う音がしてチチは茂みの方に目を向けた。茂みから左右に大きく跳ねた奇妙な髪型が飛び出していた。
「悟空さ!」
チチは夢中で茂みの方に駆け出した。が、すぐに足を止めた。木々を掻き分け茂みから出てきたのは ―
両腕と両足がむき出しになったサイヤの黒い戦闘服に身を包んだ「悟空」だった。左目に赤いスカウターをつけ、ザクロのような実をかじっている。細長い尻尾が上下に揺れていた。


「悟空さ・・・?おめえ、悟空さじゃねえべ?」
姿形は似ているが、夫とは違う空気を漂わせるその人物にチチは恐る恐る声をかけた。
「ゴクウ?・・・ああ、カカロットは地球じゃそう呼ばれてるんだったな。」
口調こそ違うものの、悟空と同じ声にチチは益々戸惑った。
「おまえ、カカロットの知り合いか?」
 赤い果実を齧りながら、その男はチチに歩み寄った。
 「・・・おめえ、悟空さじゃねえな!」
 「俺の名はターレス。カカロットと似ていて驚くのも無理はないぜ。サイヤ人の顔のタイプは少ないからな・・・」
 ターレスの言葉も終わらぬうちにチチは駆け出した。
 (助けて!悟空さ、助けてくんろ!)
 早くこの場から離れなければ。足に纏わりつくチャイナ服でチチは懸命に逃げようとしたが、急に何かに足を取られてチチはその場に倒れた。
 見ると、右の足首に木の蔓のようなものが巻きついている。その蔓を取ろうとチチが手を伸ばしたとき、地面から数本の蔓が飛び出してきた。それらはまるで蛇のように動き、みるみる内にチチの両手両足に巻きつき、倒れたチチを立たせた。
 両手両足をとられチチは身動きできないチチに、口を歪めながらターレスが近づいてきた。


 「カカロットはどこだ?」
 息がかかるほど顔を近づけターレスは聞いた。
 「知らねえ!」
 チチはターレスの顔に唾を吐きかけた。
 「教えない気なら体に訊いてみるか?」
 顔についた唾をぬぐい、ターレスは口の片端を上げて下卑た笑い方をした。
 地面から、また二本の枝が土を割って飛び出してきた。その枝はチチの目の前で蛇が鎌首をもたげるように動くと、チチのチャイナ服の襟に、人が指を立てるように枝先を置き、左右に勢いよく引き裂いた。
 布の破れる乾いた音。チチの胸が露わになった。チチは慌てて胸を隠そうとしたが、両手首に枝が巻き付いているので手が動かせない。
 露わになった胸を隠そうと必死にもがいているチチを、ターレスはニヤニヤ笑いながら見ていた。チチの上着を引き裂いた枝は、またチチの胸元に来ると、ツンと上を向いた乳首に巻きついた。


「いたっ!!」
乳首を噛まれたような激痛にチチは声をあげた。
「これでも、まだカカロットの居場所を教える気にはならねえか?」
「知らねえだ!たとえ知っていても、おめえなんかにゃ教えねえだ!」
「俺は気の強い女は好きだ。これでも、まだ教えねえか?」
地面からまた何本かの枝がチチに向かって伸びてきた。両手両足ばかりか腕、腰、太腿と巻きつき、チチはますます身動きがとれなくなった。
枝はチチの体に巻きつきながらもウネウネと動き、あるものはチチの体を締め付け、あるものはチチの服を裂く。服の裂け目からは白い肌がのぞき、ところどころ血が滲んでいる。
「いい格好だなあ。」
ターレスは手を伸ばし、チチの乳首に巻きついた枝をむしり取ると、代わりに指で乳首をつまんだ。
「な、何するだ!は、離してけろ!」
「あんた、カカロットの女房だろ?かわいい奥さんがこんな目に遭ってりゃ、カカロットが助けにくるんじゃねえかと思ってな。」
破れたチャイナ服をターレスは乱暴に剥ぎ取った。

「何するだ!いや!放すだ!」
もがくチチを四方八方から木の蔓が巻きつき押さえつける。身動きできないチチにターレスが迫ってきた。チチは唯一動く首を背けたが、ターレスはチチの顎を押さえ、無理矢理、自分の方に向けさせた。ターレスの顔が迫る。汗と土埃の匂いがした。
 ― 悟空さと同じ匂いだ・・・
チチがぼんやりと考えた瞬間、口を塞がれ、唇と歯を割って、ターレスの舌がチチの咥内に入ってきた。
チチはカッと目を見開き、慌てて首を振りターレスから逃れようとしても、枝が体に巻きつき、頭はターレスに押さえられておりどうすることもできない。
ターレスの舌は苦くて虫唾が走った。悟空にしか許したことのない唇を奪われたと思うと、チチは猛烈に腹が立った。チチの舌を器用に巻き取り、自分の口に引き込もうとするターレスの舌に、チチは思い切り歯を立てた。
痛みのあまりに離れてくれるかと思ったが、ターレスはチチに口づけたまま、ニヤリと笑った。唾の糸を引きながら唇を離すと言った。
「俺の舌を噛み切って殺そうって魂胆か?サイヤ人をなめるなよ。下等生物が。」
ターレスが右手を振り上げたのでチチは思わず目をつぶった。

だが、挙げられた手はチチの頬に優しく下ろされた。
「おまえのような下等生物、殴ったらひとたまりもねえだろうな。それに・・・」
右手はチチの頬から首筋をなぞり、剥きだしになった乳房を包んだ。
「殺すにゃ惜しい。」
ターレスはチチの乳首を口に含んで、舌先でこねくり回した。
「いやあー!!放してけろ!!助けて、助けて!悟空さ!悟空さあ!」
ターレスは乳首を弄びながら、右手をチチの腰の帯に手をかけた。外そうとしたが幾重にも巻かれた帯は簡単に外れない。
「チッ!面倒くせえもの着てやがるぜ。」
ターレスは帯を解くことを諦め、枝に捲し上げられたスカートの中に手を入れた。チチの太腿を撫で上げ、下着の上から溝のあたりにすっと指を立てた。
チチの体に電気が走った。体がピクンと脈打った。
「感じてるのか?地球の女もココを触ると弱いのか?」
ターレスはチチの顔を覗きこみ、下着の上かチチの敏感な部分を下から上にツーッ、ツーッとなぞる。そして下着をいとも簡単に破り捨てると、谷間に直接触れた。
(悟空さ!)
ターレスの指がチチの股間に触れた瞬間、チチの貞操は短絡的に一つの行動を選んだ。チチが口中で自らの舌先に歯を当てたとき、口に汁気を含んだ果実がねじ込まれた。

「おーっと。ヘタなマネはすんなよ。」
チチの微かな異変を感じ取ったターレスが、齧りかけの神精樹の実を押し込んだのだ。
「親にも見捨てられたクズに、そんな操を立てることもねえと思うがな。」
(悟空さはクズじゃねえ!)
そう叫ぼうとして、チチは口に詰まった果実を飲み込んだ。
「ぐっ・・・」
強い酒を飲んだように、喉が熱くなり腹の中が熱くなった。そしてターレスに弄られている股間を中心に体温が一気に上昇した。熱はターレスの指にも伝わった。
「おまえの体に巻きついているのは神精樹だ。地球中の養分を吸い尽くし、実をつける。おまえがさっき食べたのは神精樹の実だ。」
イブにリンゴを勧める蛇のような目でターレスはチチの前に神精樹の実を差し出した。
「この実を食べればとてつもない力を宿すことができる。」
ターレスは一口齧りとった。
「地球人にとっちゃ別の効能があるのか?」
人差し指と中指がチチの肉壷に入り込んだ。
「はあっん・・・」
チチが喉をのけぞらせた。

「ククッ・・・いい声で啼くなあ。俺も神精樹の実にこんな力があるとは知らなかったぜ。媚薬ってやつか?体が疼いてしょうがねえんだろ?・・・ほら、グショグショじゃねえか。」
グッとチチの中に挿れていた指を引き抜くと、テラテラと光る指先をチチの顔の前にかざし、その指をターレスはねぶった。
「乳首もこんなに勃ってるぜ・・・おまえの体は素直だな。」
小指の先程に固く尖ったチチの乳首をターレスは指先でピンと弾いた。
「んんふっ」
チチは息を洩らした。今は体中、どこを触られても達してしまいそうだが、声を上げそうになるのを堪えて唇を噛んだ。潤んだ目で必死になって堪えているチチを眺めてターレスは愉快そうだ。
「なにを我慢してんだ?気持ちよけりゃ声を出したっていいんだぜ。どれ、どんだけ濡れてんだ?」
ターレスはチチの股座に顔を近づけた。生暖かい息を股に感じ、チチは両足を閉じようとしたが、足に巻きついた神精樹の枝がそれを許さない。
「おい、足、もっと開けよ。」
ターレスの命に従うかのように、枝はチチの体をフワッと高く差し上げると、足を左右に大きく広げた。ターレスの眼前にチチの秘部が迫った。

「指と舌、どっちが気持ちいいんだ?」
ターレスはチチの割れ目に舌を差し入れ、上から下へと舐め上げた。
「あぁッ!」
強烈な刺激に歯を食いしばる力もなくチチが嬌声をあげた。
「口でヤられるといいだろ?ほら、こうか?」
陰唇を指で左右に広げ、赤く充血した突起を口に含んで転がした。
「やっ、やめ・・・はああ・・・」
こんな辱めを受け、チチはまた舌を噛み切ろうと思うのだが、体はターレスが舐め易いように腰を前に突き出してしまう。
ターレスは熱い汁が湧き出る泉の中に舌を差し入れ汁を啜った。
「どうだ、まだ物足りねえだろ?」
ターレスは顔を離し、チチの愛液にまみれた口元を手の甲で拭った。
「今、お待ちかねのモノをくれてやるぜ。」
ターレスは戦闘服を脱ぎ捨てた。鍛え抜かれた逞しい身体と、屹立した男性自身がチラと見え、チチは目を瞑った。神精樹の枝はチチの足を地面に下ろした。十字架に磔になった格好のチチの背中にターレスは腕を回し、その厚い胸板を押し付けてきた。
「女を抱くのは久しぶりだ。」
ターレスはチチの肩膝の裏に手をかけて持ち上げると、先程まで舌先を入れていた蜜壷に下から己自身を突き立てた。

「―っ!!」
頭の先から爪の先まで電気が伝わるような刺激を堪え、チチは喉まで出かかった声を飲みこんだ。
ターレスはチチの肩を抱き、腰を突き上げる。
「はあ、は・・どうだ・・・?旦那にソックリな男に犯される感想は・・・?」
ターレスが荒い息交じりの意地悪な質問をする。チチは柳眉を逆立て、涙の溜まった目でターレスを睨みつけた。
「いい顔だ・・・俺を殺したいくらい恨んでるんだろ?でも身体は俺を欲しがってるから悔しいんだろ?・・・そんな顔を見ながら犯るのは堪らねえな。」
チチの体に残った服の切れ端を破り捨てると、纏わりついていた神精樹の枝も一緒に引きちぎられた。ターレスは自由になったチチの両手を自分の首に回した。
「俺につかまれ・・・もっと強くだ。」
チチの身体を支えながらターレスは腰の動きを早めた。時に浅く突き、時に子宮口を貫くのほどの勢いで突く。チチは漏れる声を殺そうとターレスの首に顔を埋めた。
声を殺しても快感は殺せない。夫と同じ顔をした男に犯されて身体が火照ってしまうのは、あの神精樹の実を食べたせいだ、どうかそうでありますように、とチチは必死で願った。
ターレスはチチの乳房を鷲づかみにした。しっとりとした肌がターレスの手に吸い付き、揉めば弾力のある肌が手を押し返す。肌ばかりではない。身体の奥の肉襞さえ、中で暴れるターレスに吸い付き、包みこむ。
「くっ・・・俺が悪いんじゃない。おまえが俺を離さないんだ。」
チチの足を更に高くあげ、ターレスは満身の力を以って男根をチチにねじ込んだ。チチは体の中心に悟空以外の熱い飛沫がかかるのを感じ目を閉じた。耳の横でターレスが息を洩らした。その吐息すら悟空と似ていて、チチはターレスの背中に回した手に力を込めてしまった。

ターレスがチチから自身を抜くと、ドロリと白い液体がチチの太腿にこぼれた。倒れそうなチチを抱きかかえ、地面に横たえると、ターレスはその上に体を重ねてきた。
「まだ、おさまらねえ。おまえだってそうだろう?」
ターレスが再びチチの体を開こうとしたとき、スカウターが光った。
「チッ!カカロットの奴、まだ生きてやがったのか・・・」
忌々しそうに呟くと、ターレスは立ち上がり戦闘服を着け始めた。戦闘服を着けながら足元に虚ろな目をして仰向けに横たわるチチに言った。
「俺の女になれ。」
チチは驚いてターレスを見上げた。ターレスはチチの横にひざまずいた。随分と乱暴な物言いだが、この言葉を悟空本人の口から聞けたら、どんなにいいだろう。
ターレスはチチの手をとると、しげしげと眺めた。
「おまえは汚い手をしてるな。」
恥ずかしくて、チチはターレスの手を振りほどくと、指先を見せないように拳を握った。日々の家事でチチの指は赤くひび割れている。
「俺と一緒にくれば、こんな貧乏暮らしとはおさらばできるぜ。うまい物を食い、うまい酒を飲む。こんな手をしなくてもいい。」
ターレスは立ち上がり、スカウターの数値を読み取った。
「カカロットを倒したらすぐに戻ってくる。俺があのクズに負けると思ってんのか?たとえ負けても、地獄の底からでも戻ってくる。」
だから、待ってろ。ターレスは身を屈めてチチに口づけると、大地を蹴って黒い雲の中へ飛び去っていった。チチはその影が点になり、そして消えていった空を見つめていた。

どのくらい時間が経ったろう。雲の切れ目から光が差し込むと、空を覆っていた雲は掻き消え、青空が広がった。赤茶けた木々に新芽が芽吹いている。
チチはよろよろと立ち上がり、半裸のままで家に入るとボロボロの服をゴミ箱に捨てた。服以上に心がズタズタに裂かれていた。

戻ってきたのはターレスではなく、道着をボロボロにした満身創痍の悟空だった。

チチはターレスのことを悟空にも誰にも言わなかった。後ろめたさもあったが、言えば悟空はあっさりと許し、同情してくれそうなことが却って怖かった。悟空が悋気を起こして、頬の一つでも叩いてくれた方が嬉しいとさえチチは思っていた。

チチが悟空の求めに応じたのは、それからしばらく経ってからだ。
布団の中でチチは悟空に尋ねた。
「悟空さ。おらの手、そんなに汚ねえだか?」
「誰かが、おめえにそんなこと言ったんか?」
チチは余計なことを口にしたと背中に汗が流れた。
「別に汚くなんかねえさ。チチはいつも頑張って、飯作ったり、洗濯してくれてんだからさ。ちっとも汚くなんかねえぞ。」
チチは悟空の胸に顔を埋めた。たとえ嬉し泣きにしろ、泣き顔を見られるのがどうしようもなく嫌だった。



(終り)

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最終更新:2008年11月27日 15:58