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数日間続いた嵐がようやく去った。
パオズ山の空はわっと青く晴れ渡り、雲ひとつなかった。
悟空は、自分の体の何十倍もある恐竜のしっぽを掴んで、雨上がりのぬかるんだ道をいっぽいっぽ歩んでいた。
そしてずいぶん来たところの木陰で足を止め、額の汗をぬぐった。涼しい風が吹いた。見上げると、生き生きと茂った木々の葉が、風にあおられて裏や表をみせていた。
むっと香る濡れた土や花の匂いが悟空の鼻腔を刺激した。それはそのままパオズ山の生命力のようだった。
「悟空さー!」
遠くにチチの姿が見えた。悟空は片手を上げてみせた。「よお」
枝枝や葉の影絵が落ちた道を、チチはゆっくりやってきた。腹はだいぶ大きくなっている。
チチは「こっただもんでも、二日と持たねぇんだから」と、巨大な恐竜を見上げ「まったく悟空さの胃袋ときたら・・・」そう言って両眉を上げるあきれた顔をした。
家からここまで歩いてきたせいか、チチの頬は赤らんでいた。悟空はそれを見て、さっきよりゆっくりしたペースで進みながら言った。
「チチィ、あんま無理すっといけねぇぞ」
「分かってるだ」
チチは所々にできた水溜りを避けながら歩いた。二人とも黙っていた。
来年の今頃、赤ん坊を抱えてこの道を散歩している風景を、お互いにぼんやり思い浮かべてみたがどうにも実感は沸かなかった。
ただ、どこかふわふわした雲の上を歩いているような幸せのようなものを、お互いに感じていた。
頭の上には、しばらく雨とは無縁の空がひろがっていた。

おわりです