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sizimi」(2007/10/25 (木) 20:13:38) の最新版変更点

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30年もバイク屋やってると、色んな客と出会うんだが 今でも印象に残ってるのは、マグナ50を買った高校生の少年だね あれはマグナ50が発売された頃だったかな うちの店にもマグナ50を置いたんだよ ハーレーやリッターマシンに乗ってるような大人たちは 見向きもしなかったんだけど、その少年だけは毎日、店の前からマグナ50を見てたんだ 雨の日も雷の日も、熱心に通ってるもんだから、声をかけたんだ 「いらっしゃい。マグナ50が気に入ったのかい?」 少年は一瞬驚いたような顔をしたけど、照れくさそうに笑って言った 「はい。マグナ50って原付なのにかっこいいから」 「跨ってみるかい?」 「いいんですか?」 「もちろんさ」 マグナ50に跨った少年の手は微かに震えていて 「うわぁ…かっこいい!すげぇ~!」 って感動してやがんだよ。その姿を見てると、俺も初めてバイクに跨ったときはこうだったな… なんて思い出しちゃってさ(笑) 「バイトして買います!」 そう俺に宣言してからも、少年は毎日マグナ50を見に来てたな バイトの帰りだとかで、閉店10分前に来るのが日課になってた そんな少年に心打たれたのかな、ある日、マグナ50を店の前から移動させたんだ その日も、少年はバイト帰りにマグナ50を見に来たんだけど 昨日まであった場所にないもんだから、えらくオロオロしてた。そんな少年に声をかけた 「こっちに来な」 店の奥に案内すると、そこにあるマグナ50の姿を見て、少年はホッとした様子だった 「こいつはお前に売るって決めたぜ  だからお前が迎えに来るまでは、売らずに置いておくからな」 『売約済!跨らないでね!』の貼り紙を見た少年の目はウルウルしてたよ それから半年後くらいかな ついに少年が、マグナ50を手に入れる日が来たんだ いざエンジンをかけて、跨ろうってときに、少年が泣いちまってさ そのとき店にいた常連たちも、みんな立ち上がって拍手してた マグナ50に乗って帰っていく少年の背中は、ちょっと大きくなった感じがしたよ それから1ヵ月後くらいだったかな 少年がマグナ50に乗って、店に来たんだ 「愛車の調子はどうだい?今日はオイル交換か?」 そう尋ねる俺に、少年は申し訳なさそうにこう言ったよ 「マグナ50って糞バイクですね…。買い取ってほしいんですけど、査定してもらえますか?」

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