アーカイアの「通俗」

サイドストーリー


ブラウフェルト


概要

 リービッヒ伯領ブラウフェルト(Blaufeld Mark Liebeg)はトロンメル国南東部、レンツ地方の隣国シュピルドーゼとの国境を臨む要衝である。エステルハージ公国時代から続く辺境貴族であるリービッヒ家によって現在も管理、統治されている。
 南に奇声蟲のはびこる樹海「インゼクテン・バルト」、北に海賊の多発する牙の海に挟まれる、トロンメル国内でももっとも危険な地域であるが、海賊の母港でもあるこの地域は、その当の海賊によって経済的に恵まれ、リービッヒ伯が自ら組織する自警団の活躍と、エステルハージ公国時代から連綿と受け継がれる工業力でもって安寧を維持し続けている。主産業は造船と漁業。人口の大部分をパッサウ人が占める。公用語はアーカイア語、パッサウ語、“王国”トロンメル語であるが、外交用語としてアーカイア語を用いることが多い。現世人、トロンメル人を含めた公用語はアーカイア語である。

公用語:アーカイア語、パッサウ語、“王国”トロンメル語
人口:総計1274人(月霜暦674年9月現在)パッサウ人85%、トロンメル人13%、他


機奏英雄の身分

 本ルールでは機奏英雄は公的な身分としては、現世で言うところの「国際公務員」に該当し、各国は200年前の「歌姫大戦」の際に一部の機奏英雄を私的な兵力として囲ったことに端を発し、その身分を定めて各国がそれぞれの政争に利用しないことを旨とした「ポザネオ条約」が月霜暦503年に発効された。その条約を元に特別措置法として月霜暦674年9月に「英雄条約」を発効、その管理は各国軍の軍属となるが、階級を付与せずに技官扱いとされた。ただし、奇声蟲の女王種を駆除した後に起こった「白銀の歌姫の叛乱」以降、各国軍に与する現世人には、それぞれの国で武官(下士官待遇)としての地位を与えられた者も存在し、中には士官、将校として各国軍の中枢で腕を振るった者もいた。
 現世から召喚された現世人は漏れなく機奏英雄としての身分を保証されたが、奏甲に搭乗することなく、現世で得た知識をアーカイア世界に還元する者も多く、財を成す者もいれば、文官、学者、果ては政治家として登用される現世人も存在した。
 一方、国や評議会に所属せず、現世騎士団や自由民ら、ゲリラ勢力に所属するものは各国軍から掃討の対象として追われる立場ともなった。

歌姫の身分

 本ルールでの歌姫の身分は機奏英雄とほぼ似たようなもので、その身分や階級を保証する統一組織として評議会の下部組織が保証し、結果として国際的に保証されていることとなっている。更に、「技能検定」と称される定期的な技能試験を義務付けられており、年に一度のライセンス更新の必須条件となっている。なお、出産を経験すると歌姫としての能力が失われる事でライセンスを失効する事もあった。また、性交渉を通じて歌姫の能力が失われる事象も頻発しており、そのことについてアーカイア人の処女性の価値の上昇に一層拍車を掛けることとなった。
 なお、「白銀の歌姫の叛乱」後は必ずしも「軍籍」を付与されることは無かったが、機奏英雄と共に各国軍に与した一部の歌姫や、そもそも軍籍を持っている歌姫については再度軍籍を付与された。

アーカイア世界における「男性」「女性」の社会的立場

 本ルールでは全アーカイア人に比すれば実に僅かな数でしかない現世人の、その9割5分以上が女性で占められていた訳だが、その存在はアーカイア人からは奇異な存在として目に映っていたようだ。同時に、かつての「歌姫大戦」の伝承が影響し、プライドの高いアーカイア人からは「単なる掃除屋」として、全く異質の生物として捉えられていた。その一方で機奏英雄と関わりを持つ歌姫や、その周囲のアーカイア人が初めて目にする「異性」に大きな関心を持っていたことも少なくは無い。
 そして、そんなアーカイア世界に気の毒ながら召喚されてしまった不運な現世人の多くにとってアーカイア人は「自らの厄介事を押し付けて、その為に命を掛けることを強要した」悪魔のような存在で、大多数を占めていたアーカイア人の現世人に対する「冷やかな目」は、現世人にとってのアーカイア世界を「地獄の一丁目」と誤認せしめた。その中で暴挙に出る者も存在し、アーカイア世界の彼らに対する差別視と、彼ら自身の孤立感は益々強まる傾向にあった。

アーカイア世界の恋愛感

 本ルールでは「アーカイア世界旧来の恋愛」、つまり同性愛が、この世界における恋愛の「ノーマル」であって、現世人との異性愛は「アブノーマル」に分類されている。その理由は、アーカイア世界では女性しか存在せず、「牡」「牝」が存在するのは猛禽類や昆虫類のみとの価値観が主流である。「異性」という二つの性の番いによって生命を生み出す行為、つまり「生殖」とは猛禽類とはかけ離れた存在である人間の行為ではないと、教義的価値観での背徳とされている。
 非常に奇特な事象ではあったが、一部の差別主義的アーカイア人が、自身の飼う奴隷階級のアーカイア人と現世人に強制的に性交渉させるという見世物を催していた事も後に報告にあがっている。

アーカイア人の通俗

 本ルールではアーカイア人の価値観は、現代と比すれば中世から近代にかけてのそれであり、共和制を以て運営される国家はいまだ存在しない。その社会を支える為に強固な身分制度が根付いており、上は王族、僧侶、下は奴婢と厳密な身分階層を維持している。
 また、アーカイア世界では職人は低い身分層ながらも、その職責と積み上げた伝統と工芸品により尊敬を集めるが、純粋に女性趣味の強いアーカイア世界では「華美な職業」が好まれる傾向にある。なお、職業軍人や政治家など、何かと権威色の強い職業は華美ながらも正確的に男っぽい女性に好まれる。同様に、職人もそんなタイプが多い。これらの人々は総じて好色の傾向も強いとの統計もある。
 また、貞操観については強烈な処女信仰が残っており、それは「歌姫」崇拝の影響を多く受けているためである。また、ノクターン発動後に世界から幻糸の大部分が消滅し、歌姫の大部分が無能力化しても、その貞操観は当分弱まることはなかった。

アーカイア人の「機奏英雄」

 アーカイア人に多数ではなかったが、奏甲を奏従することのできる者がいることが解った。適性者は直ちに軍籍を付与され、現世人の機奏英雄と同じく下士官待遇以上で迎えられた。歌姫と違って処女性は関係がなかったとされる。

アーカイアの科学技術水準

 本ルールではアーカイアは幻糸機関とは別に、その科学技術水準を「産業革命」程度に進んでいるものとします。蒸気機関までは完成している。小銃は弾丸が開発され、ライフリングが施されている程度までは発達しているとする。また、航空機は搭載可能な動力機関の開発に成功しておらず、また、アーカイア人の操縦適性者では扱える幻糸機関のクラスが高過ぎる為に開発に成功していない。同様に、艦船を稼動させる程の出力を誇る幻糸機関もアーカイア人では動かせない為に、艦船に搭載されていない。各国の海軍艦艇や、大型の商船は動力機関として蒸気機関(蒸気タービンではない)を採用している。しかし、この蒸気機関もまだ小型化に成功しておらず、蒸気機関車は存在しない。
最終更新:2009年02月14日 13:21