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吸入麻酔薬 - (2009/12/07 (月) 00:46:23) のソース

ガス麻酔薬 [編集]
亜酸化窒素(笑気)
現在用いられている唯一のガス麻酔薬である。常温でガスであるので当然、気化器は不要である。呼吸、循環に対する作用は殆どないが長期連用(3日位)で骨髄抑制が起こることが知られている。MACが105と高値であり、麻酔作用は弱いものの、血液/ガス分配係数は極めて小さく導入は極めて早い。鎮痛作用は強く、無痛分娩、歯科麻酔への応用がある。通常、単独で麻酔をかけることはできないので、他の麻酔薬と組み合わせて用いる。50%程度の濃度で用いて手術終了まで投与を続ける。近年は亜酸化窒素不要論が展開されている。その根拠は2次ガス効果の存在までも否定する意見が近年出つつあるからである。
閉鎖腔に対する効果
体内の窒素と置換されて麻酔作用を持つと考えられている。体内に閉鎖腔が存在すると窒素より亜酸化窒素の方が拡散が速いため閉鎖腔の拡大を招く。イレウスや気胸、副鼻腔炎、中耳炎などでは注意して用いる必要がある。
● 笑気吸入鎮静法の禁忌症
・ 妊娠初期
・ 体内に閉鎖腔のある患者(中耳疾患、ブラ、気胸など)
● 笑気吸入鎮静法の適応外症例
・ 風邪、アレルギー性鼻炎、アデノイド
・ 協力の得られない患者
・ 過換気症候群
・ ヒステリー症候群
・ 気管支喘息
拡散性低酸素症
亜酸化窒素終了時、大量の亜酸化窒素が肺胞内に出てくることで肺胞内酸素分圧が低下する。そのため亜酸化窒素終了後は5分以上の純酸素投与が必要と考えられている。

笑気吸入鎮静法の特徴
【利点】
・ 調節性に優れる。
・ 回復が速い。
・ 術者に技術があまり要求されない。
・ 緊急時には酸素投与ですばやく覚醒できる。
・ 快適な覚醒が得られる。
・ 患者の協力が得られる。
【欠点】
・ 室内汚染
・ 鼻マスクによる会話や治療の抑制。
・ 導入に時間がかかる。
・ 気管支喘息患者には使用できない。
・ 鎮痛効果が不確実な場合がある。
揮発性麻酔薬 [編集]
エーテル(物質名としてはジエチルエーテルであるが、慣習的にエーテルといわれる)
爆発性があるため、電気メスと併用ができないため現在は用いることがない吸入麻酔薬である。逆に電気メスといった器具が登場する以前は、愛用する医師が多かった。血圧、脳圧の上昇、血糖値の上昇といった交感神経刺激作用があるものの不整脈は起こしにくい。気管支拡張作用はあるものの気道刺激性が強く喉頭痙攣をおこすことがある。非脱分極性筋弛緩薬の作用を増強することが知られている。クロロホルムと同様、ドラマでハンカチにしみこませて意識を失わせるという場面で登場するが、他の吸入麻酔薬と同様、導入は遅いためそのような使い方はできない。現在は実験動物の麻酔で用いられるくらいである。
ハロタン(ハロタン、フローセン)
爆発性のない吸入麻酔薬である。気管支拡張作用が吸入麻酔薬の中で最も高い。エピネフリンとの併用によって不整脈が起こることが知られている。ハロタン肝炎と呼ばれる肝毒性が知られることとなり、使用されなくなった。また悪性高熱症の発生頻度が多いことも知られている。
メトキシフルラン(ペントレン)
非爆発性のエーテルと形容される吸入麻酔薬である。非爆発性であるため電気メスとの併用が可能であり大いに期待された麻酔薬であったが腎毒性が明らかとなり発売中止となった。
エンフルラン(エトレン)
ハロタンとよく似た性質をもち、肝毒性を克服した吸入麻酔薬である。イソフルラン、セボフルランの出現で使用されなくなってきた。非脱分極性筋弛緩薬との共同作用だけでなく、単独で筋弛緩作用をもつ。
イソフルラン(フォーレン)
エンフルランの構造異性体であり、エンフルラン同様、ハロタンの欠点を補うようようにデザインされた吸入麻酔薬である。血液/ガス分配係数が高く、また刺激臭を有するため導入には使いづらい。麻酔維持の目的で亜酸化窒素併用化で0.5~1.5%で用いられることが多い。脳圧、脳代謝抑制作用を持つため、脳神経外科の領域では非常に好まれる。ハロタンと比べ、肝毒性は極めて低くなったものの肝障害の患者には使わない方が良いとされている。ハロタン同様に悪性高熱症をおこすことがあるといわれている。頻脈をおこすことがセブフルランと対照的である。
セボフルラン(セボフルレン)
2007年現在、最も導入が早く、覚醒も早いといわれる揮発性麻酔薬である。血液/ガス分配係数は0.63であり、亜酸化窒素の0.47にかなり近い。エンフルランより強い筋弛緩薬との共同作用をもち、気管支拡張作用を持つため、気管支喘息の患者にも使いやすい。一部が麻酔回路中のソーダライム(ソーダ石灰)と反応し腎障害をおこすとされているコンパウンドAを生成することが知られている。このため腎障害の患者には使わない方が良いとされている(腎障害は殆どないとされているが)。イソフルランのような刺激臭もなく、導入にも維持にも用いることができる。緩徐に2~3呼吸ごとに0.5%ずつ濃度をあげていき5~8%まで上げていく緩徐導入(5~8分)やいきなり5~8%の高濃度を吸入させる急速導入のどちらでも使用可能である。刺激の少なさと合わせて、小児領域の麻酔では非常に好まれる。除脈をおこすことがイソフルランと対照的である。
デスフルラン
おもに米国で使用される吸入麻酔薬である。血液/ガス分配係数は0.42で亜酸化窒素よりも低い。取扱いが難しい。日本では2007年現在、未発売である。


吸入麻酔薬→一回換気量低下→脳血流量増加
脳外では過換気にしてPaCO2を下げて脳血流量を下げる