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4.4 細胞の酸素化の評価と混合静脈血酸素飽和度 PaO2、SaO2、Hb、心拍出量などは、いずれも細胞の酸素化という目標を考える上ではお互いに切り離して考えることはできない。 こうした細胞の酸素化の程度をもっと直接に評価することができるならば、より有効な治療ができるかもしれない。 4.4.1 高濃度酸素は肺にとって有害 高濃度の酸素投与が、人体に対して有害であることは良く知られている。 高濃度の酸素投与は、肺胞の虚脱により無気肺を生じ4.5、かえって患者肺の換気面積を奪ってゆく。 また重篤な肺疾患、特にシャント率が30% 以上に達するような重症肺炎などでは、酸素濃度をいくら増しても、 動脈血酸素分圧はほとんど上昇せず、組織への酸素供給量を保つには何か別の方法を考える必要がある。 病気に傷害された肺はスーパーオキサイド4.6に対する抵抗力も低下しており、 健康な人よりも高濃度酸素による肺胞障害を生じやすい。 4.4.1.1 容認できる低酸素血症 現在動脈血酸素濃度については、SaO2が90% 以上となる、60mmHgまでは容認しても良いという合意が得られている。 しかし臨床の現場では、この値を達成するにも高濃度に酸素吸入を行なわなくてはならないことがあり、 より低い酸素濃度による管理の可能性が求められている。 酸素濃度の低下をある程度まで容認しても良いならば、人工呼吸管理中の高い吸入酸素濃度や、 高い気道内圧による弊害を避けることが可能となるかもしれない。このためには、体の酸素化の程度を 正確に測定する必要がでてくる。 4.4.2 混合静脈血の評価はさまざまな応用が効く SvO2は、肺動脈カテーテルの先端からの逆血(混合静脈血)を測定することで、得られる。 #image(http://medt00lz.s59.xrea.com/kokyuukannri/img33.png,http://medt00lz.s59.xrea.com/kokyuukannri/img33.png) 図 4.5: 代表的なスワンガンツカテーテル カテーテルの種類によっては、この値を連続して計測することも可能である。 SvO2は、動脈血酸素供給量(DO2)から組織酸素需要を引いた値に比例し、 直接に計測できる値としては、細胞の酸素化を論じるのに極めて有利な性質を持っている。 例えば、敗血症などの酸素の利用障害のない患者で、酸素分圧を変えずに心拍出量を変えたり、 輸血をしたりすることで、SvO2を上昇させることができる。 一方、発熱などにより組織の酸素消費が亢進すると、(通常は心拍出量が増大することでこれを代償するが)SvO2は低下する。 さらに、高濃度酸素投与などで、動脈血酸素分圧を、例えば300mmHgなどとしても、SvO2はほとんど変化しない。 4.4.2.1 かなり理論どおりの反応をするが、欠点もある この値は、患者の体が、どの程度酸素化されているのかを評価するには非常に便利であるが、一方で以下の2つの弱点がある。 1つめは敗血症や、肝肺症候群などの、全身のシャント性疾患(心疾患も含む)の場合には、この値の評価が難しくなる点、 もう一つは、DO2が低下してくると、これにともなって組織酸素需要もある程度まで低下してしまい、 この両者が完全に独立した値として評価できない点である。 このような、全身状態が悪い場合には、SvO2が正常値であっても組織の酸素化が不十分であり、 嫌気性の代謝が行なわれる可能性がある。 この欠点については、体内の乳酸濃度が上昇してこないことを確認しながら全身管理を行なうことで、ある程度補える。 4.4.2.2 混合静脈血酸素飽和度の正常値 混合静脈血酸素飽和度は、健康な人間においては通常75% である。この値が低下すると、 組織への酸素供給と酸素需要との差が小さくなってくることになるが、通常60% までは臨床的には大きな問題にはならない。 しかしこの値が40% を切るようになると組織の嫌気性代謝が始まるという報告があり、この値では明らかに酸素不足である。 4.4.3 混合静脈血酸素飽和度を用いた全身管理は、予後が改善する 例えば血圧や、心機能の安定している重症肺炎の患者であっても、 50% 以下の酸素濃度ではSaO2が90を切るような人は、まずは肺動脈カテーテルを挿入し、 混合静脈血を採取して酸素化の程度を評価する。 こうした人では動脈血酸素濃度の値をあげる努力とは別に、心拍出量の改善や貧血の改善、 鎮静の強化や解熱などを通じてSvO2を60% 以上に保つ努力を行う。 こうした考えを実践していけば、低酸素の改善、という行為はもう少し総合的な治療戦略を取れるかもしれない。 4.4.3.1 臨床試験でも、効果が証明された 実際、敗血症性ショックの患者に、救急外来でスワンガンツカテーテルを挿入し、そのときの混合静脈血を参考に、 治療を試みたスタディがある。"混合静脈血の正常化"を全身管理の目標においたグループは、普通の全身管理を行った グループに比べて輸血量が多く、また昇圧剤の使用量も多かったが、生命予後はむしろ改善したという。 このスタディでは、今までの全身管理だと、敗血症の初期治療が甘すぎていた可能性を指摘している。 安静時と比較して、激しい運動では身体は酸素を10倍以上もつかう。トレーニングを積んだ運動選手では、20倍の酸素消費を何時間も続けることができる。 しかし、心臓が打ち出せる心拍出量の増加は普通人で5倍、運動選手でも10倍未満である。 「心臓が打ち出す血液量は5倍しか増さないのに、どうして10倍の酸素を使えるか?」 この秘密が、「安静時の混合静脈血酸素飽和度75%」にある。 運動時にはこの値が50%未満に低下する。したがって、同じ血流でも2倍の酸素を運べる。心拍出量が5倍にしか増さなくても、酸素消費量が10倍にできるメカニズムである。 このお蔭でヒトは、働き遊びセックスして充実した生活をおくれる。 #image(http://www.acute-care.jp/document/bloodgas-museum/スワンガンツ.gif,http://www.acute-care.jp/document/bloodgas-museum/スワンガンツ.gif) スワン・ガンスカテーテル 「スワン・ガンスカテーテル」は開発した人の二人の人名。スワンは外科医、ガンスも医師だが、実質的には技術者として活動。 内容:肺動脈へブラインドで挿入できる。 先端にバルーンがついて、血流に乗って流れる。さらに、熱希釈法による心拍出量測定の装置も組み込まれている。 「バルーンつきカテーテル」自体は、1953年に生理学者のラテゴラとラーンが開発して発表している。この時は動物用。 スワン・ガンスカテーテルの開発時の1969年には、プラスティック工学が進歩し、一方肺動脈圧や心拍出量の測定への医師の要求も高まっていた。 #image(http://www.acute-care.jp/document/bloodgas-museum/スワンガンツ_1.gif,http://www.acute-care.jp/document/bloodgas-museum/スワンガンツ_1.gif) スワン・ガンスカテーテルの構造と断面 断面は、4腔に分かれている。温度計用の電線(図のサーミスター)、バルーンを膨らませる空気注入管。圧測定用の管(図の「先端ルーメン」)、心拍出量測定用に冷却生理食塩水を注入する管(図の「注入用ルーメン」)である。図の「バルン拡張用バルブ」とは、空気を注入してそのまま維持したり脱気したりするためのコックである。

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