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アシネトバクター( Acinetobacter )は、土壌や水の中によく見られる細菌です。医療従事者など、健康な人々の皮膚にも見られることがあります。アシネトバクター属(genus Acinetobacter )には、病原性のあるいろいろな"種(しゅ:species)"が属していますが、アシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )という"種"による感染例が、アシネトバクター感染症の報告例の約80%を占めます。 アシネトバクター-バウマニによる肺炎が病院以外で発生することは少ないですが、アルコール依存症患者、喫煙者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者、糖尿病患者、肺がん患者、腎不全患者、肝硬変患者、高齢者などで見られることがあり、致死率は40-64%と高いです(参考文献2、3)。咳・発熱・呼吸苦で発病し、急激に呼吸不全・ショックへと進み、敗血症ショックや多臓器不全などで死に至ることがあります。  アシネトバクター-バウマニは、暖かく湿っぽい環境を好むとされ、アシネトバクター-バウマニによる肺炎の発生は、熱帯・亜熱帯の国(オーストラリア・クウェート・トルコ・台湾・タイ・パプア-ニュー-ギニア)で多く、また、暖かい季節(北半球では4-10月)に多いです。  また、アシネトバクターが健康な人々の皮膚等で保持されている率も季節により差があり、香港の看護学校新人生および医学生では、冬季の32.2%に対して、夏季では53.4%と高率でした(参考文献9)。下の表1を参照してください。 表1. 香港の看護学校新人生および医学生におけるアシネトバクターの検出の夏季・冬季比較 (参考文献9を参考に作成) | | |夏季|(1997年10月) |冬季|(1998年2月)| |||人数 |% |人数 |%| |対象者 | |133 |100 |59 |100| |アシネトバクターが検出された人| |71 |53.4 |19 |32.2| |下記の検査5部位中のアシネトバクター検出部位数 |0部位 |62 |46.6 |40 |67.8| ||1部位 |40 |30.1 |14 |23.7| ||2部位 |21 |15.8 |5 |8.5| ||3部位以上 |10 |7.5 |0 |0.0| |アシネトバクター検出部位 |前頭部の髪の毛生え際 |44 |33.1 |14 |23.7| ||足の第4指と第5指との間 |20 |15.0 |4 |6.8| ||そけい部 |16 |12.0 |6 |10.2| ||鼻腔前部 |17 |12.8 |0 |0.0| ||咽頭部 |15 |11.3 |0 |0.0|  近年、アメリカ合衆国におけるアシネトバクター-バウマニ感染症患者において、イラクやアフガニスタンで戦った帰還兵が増えています。アメリカ合衆国の軍隊におけるアシネトバクター-バウマニ感染症患者の増加は、イラクにおける戦闘開始直後の2003年3月から見られました。外傷を負ったアメリカ合衆国軍の兵士の多くは、ドイツのLandstuhl区域医療センターやアメリカ合衆国のWalter Reed陸軍医療センターへ搬送される前に野戦病院で応急的な処置を受けます。アシネトバクター-バウマニ感染症は、これらの医療センターで入院時あるいは入院後まもなくの検査で明らかになっています。外傷を負う前に皮膚にアシネトバクター-バウマニを保持していたか、外傷を負った際に土壌からアシネトバクター-バウマニを得た可能性があります。野戦病院内の環境中からも物品等の表面からアシネトバクター-バウマニが分離されていて、遺伝子的な分類でも、患者から分離されるアシネトバクター-バウマニと合致するものでした。野戦病院内でアシネトバクター-バウマニを得た可能性もあります。  上記のアメリカ合衆国での状況と似た状況が、アフガニスタンで外傷を負ったカナダ軍の兵士たち、イラクで外傷を負ったイギリス軍の兵士たちでも見られています。 アシネトバクター感染症には、肺炎、敗血症、尿路感染症、髄膜炎、創傷・火傷の感染などがあります。アシネトバクターによる肺炎の症状としては、発熱、悪寒、咳などが見られます。一方で、傷口や気管切開の部分に、存在していても、何の症状も起こさない場合もあります。  アシネトバクター感染症の治療には、抗生物質が使用されます。しかしながら、よく用いられる抗生物質の多くが無効な場合 (多剤耐性)がしばしばあり、注意が必要です。多剤耐性(multidrug resistant : MDR)のアシネトバクター感染症の治療は難しいです。病巣から分離されたアシネトバクターに有効な抗生物質を使っての治療が原則となります。  平成21 年(2009 年) 1 月23 日、日本のある大学病院から、多剤耐性(複数の薬が効きにくい)アシネトバクター(Acinetobacter baumannii)による“院内感染”の発生の報告(参考文献4)がありました。  3 ヵ月の間に大学病院の救命救急センターの集中治療室を中心に複数の患者が多剤耐性アシネトバクターに感染しており、2008 年10 月から2009 年1 月までに23 名の患者から多剤耐性アシネトバクターが分離されました。感染が確認されたアシネトバクターは日本で利用可能な一部の抗菌薬(ミノサイクリン、イセパマイシン)で治療が可能ですが、他のほとんど全ての抗菌薬に耐性を示しています。 アシネトバクターは環境中に普遍的に存在する菌である事から、2 回にわたる環境調査を大学病院は行いました。2 回目の環境調査の結果、人工呼吸器装着2 日目と4 日目の2 名の患者の装着器材(バイトブロック)より、多剤耐性アシネトバクターが検出されました。この他、消毒済みのバイトブロックからもアシネトバクターが検出されました。大学病院では、標準的な感染対策に基づき、同器材を消毒後に再生使用をしていましたが、環境調査の結果判明後、個別使用に切り替えました。  少なくとも25%の健康な人が、アシネトバクター属(genus Acinetobacter )の細菌を皮膚に保持しています。特に湿りがちな場所である、わきの下、股間、足指の間などに保持しています。健康な人の口の中や気道から検出されることも、ときに、あります。しかし、入院患者以外で、皮膚以外の場所からアシネトバクター属の細菌が検出されることは通常は少ないです。  入院患者が、アシネトバクター属(genus Acinetobacter )の細菌を保持している率は高いです。アシネトバクター感染症の集団発生が起きているようなときには、より高いです。  アシネトバクター属の細菌は、遺伝子での分類では19の"種(しゅ:species)"に分類されます(参考文献5)。よく分離されるのは、分類No.2のアシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )です。他には、分類No.3(該当の種の命名なし)、分類No.7の Acinetobacter johnsonii 、分類No.8のAcinetobacter lwoffii 、分類No.5のAcinetobacter junii などが、比較的多く分離されます。  アシネトバクター(Acinetobacter )の英字の綴りについては、a(非)cineto(運動性の)bacter(桿菌)という意味です。aについては、「欠く」、「ない」の意味です。cinetoについては、ギリシャ語のkineo(動く)に由来し、kineto-では「動きのある」の意味です。アシネトバクターは、鞭毛を欠き、動きがありません。形としては、増殖サイクルの増殖期には丸みをおびた短い棒状の桿菌ですが、定常期には球菌のような球状の形態となることもあります。球状の形態が連なって双球菌のように見えることもあります。  病原体のアシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )の英字の綴りについては、baumannii の部分が誤って綴られていることがよくあります。baumanii 、baumanni 、baumani などと誤って綴られていることがあります。Coccidioides immitis (コクシジオイデス症の真菌の病原体: Coccidioides の部分が、Coccidiodes 、Coccidoides 、Cocidioides 、Coccidioidis と綴りが誤られることがあります。)、Coxiella burnetii (Q熱の病原体:burnetii の部分が、burneti 、burnetti 、burnettii と綴りが誤られることがあります。)、Tropheryma whipplei (Whipple病の病原体:whipplei の部分が、whippelii 、whippleii 、whippeli と綴りが誤られることがあります。)などと並んで誤られやすい綴りとされます(参考文献6)。  多剤耐性のアシネトバクター-バウマニ(Multi-drug resistant Acinetobacter baumannii ) については、 MDRABと略称されることがあります。  アシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )のバウマニ( baumannii )については、アシネトバクター( Acinetobacter )の研究で功績のあった、アメリカ合衆国の夫婦二人とも微生物学者のPaul and Linda Baumann夫妻の栄誉を称えての命名です。Baumann夫妻に因んでの微生物の命名は、他に、Oceanimonas baumannii とCandidatus Baumannia cicadellinicola があります。  また、アシネトバクター( Acinetobacter )の研究で功績のあった、John L. JohnsonとElliot Juniの栄誉を称えて、Acinetobacter johnsonii とAcinetobacter junii が命名されています。 健康な人が、体力・免疫力の弱まった人へ病原体のアシネトバクターを運んでしまうことが心配されます。  アシネトバクターは、乾燥にも強く皮膚や環境中で数日間は生存可能です。乾燥した平面上で黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )と同等あるいはより長期に生存することがあります。乾燥したろ紙上での観察によれば、生存期間は、大腸菌や緑膿菌が24時間以下、アシネトバクターが6日まで、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )が7日でした。(なお、ブドウ球菌はグラム陽性でアシネトバクターはグラム陰性であり、まったく違う細菌ですが、似ている点もあるため、アシネトバクターを「グラム陰性のブドウ球菌」とたとえる研究者もいます。)  アシネトバクター感染症の集団発生中の小児科集中治療室での観察によれば、電話受話器・ドアの押し板・患者のチャート・卓上などでアシネトバクターが認められ、医療スタッフの手によってアシネトバクターが運ばれたと考えられました。  アシネトバクターが手に付着して運ばれてしまうことが心配されます。手をよく洗うことは、予防のために役立ちます。  アシネトバクターは、通常、70%エタノールや50%以上の濃度のイソプロピルアルコール等のアルコール系消毒薬により死滅します。  空気がアシネトバクターで汚染してしまうことがありえます。あるアシネトバクター感染症の集団発生では、加湿器がアシネトバクターで汚染していました。加湿器から10メートル離れた場所の空気からもアシネトバクターが検出されました。医療の場で使われる機器の衛生管理は適切に行いましょう。  アシネトバクター感染症に対する予防接種(ワクチン)は、存在しません。
アシネトバクター( Acinetobacter )は、土壌や水の中によく見られる細菌です。医療従事者など、健康な人々の皮膚にも見られることがあります。アシネトバクター属(genus Acinetobacter )には、病原性のあるいろいろな"種(しゅ:species)"が属していますが、アシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )という"種"による感染例が、アシネトバクター感染症の報告例の約80%を占めます。 アシネトバクター-バウマニによる肺炎が病院以外で発生することは少ないですが、アルコール依存症患者、喫煙者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者、糖尿病患者、肺がん患者、腎不全患者、肝硬変患者、高齢者などで見られることがあり、致死率は40-64%と高いです(参考文献2、3)。咳・発熱・呼吸苦で発病し、急激に呼吸不全・ショックへと進み、敗血症ショックや多臓器不全などで死に至ることがあります。  アシネトバクター-バウマニは、暖かく湿っぽい環境を好むとされ、アシネトバクター-バウマニによる肺炎の発生は、熱帯・亜熱帯の国(オーストラリア・クウェート・トルコ・台湾・タイ・パプア-ニュー-ギニア)で多く、また、暖かい季節(北半球では4-10月)に多いです。  また、アシネトバクターが健康な人々の皮膚等で保持されている率も季節により差があり、香港の看護学校新人生および医学生では、冬季の32.2%に対して、夏季では53.4%と高率でした(参考文献9)。下の表1を参照してください。 表1. 香港の看護学校新人生および医学生におけるアシネトバクターの検出の夏季・冬季比較 (参考文献9を参考に作成) | | |夏季|(1997年10月) |冬季|(1998年2月)| |||人数 |% |人数 |%| |対象者 | |133 |100 |59 |100| |アシネトバクターが検出された人| |71 |53.4 |19 |32.2| |下記の検査5部位中のアシネトバクター検出部位数 |0部位 |62 |46.6 |40 |67.8| ||1部位 |40 |30.1 |14 |23.7| ||2部位 |21 |15.8 |5 |8.5| ||3部位以上 |10 |7.5 |0 |0.0| |アシネトバクター検出部位 |前頭部の髪の毛生え際 |44 |33.1 |14 |23.7| ||足の第4指と第5指との間 |20 |15.0 |4 |6.8| ||そけい部 |16 |12.0 |6 |10.2| ||鼻腔前部 |17 |12.8 |0 |0.0| ||咽頭部 |15 |11.3 |0 |0.0|  近年、アメリカ合衆国におけるアシネトバクター-バウマニ感染症患者において、イラクやアフガニスタンで戦った帰還兵が増えています。アメリカ合衆国の軍隊におけるアシネトバクター-バウマニ感染症患者の増加は、イラクにおける戦闘開始直後の2003年3月から見られました。外傷を負ったアメリカ合衆国軍の兵士の多くは、ドイツのLandstuhl区域医療センターやアメリカ合衆国のWalter Reed陸軍医療センターへ搬送される前に野戦病院で応急的な処置を受けます。アシネトバクター-バウマニ感染症は、これらの医療センターで入院時あるいは入院後まもなくの検査で明らかになっています。外傷を負う前に皮膚にアシネトバクター-バウマニを保持していたか、外傷を負った際に土壌からアシネトバクター-バウマニを得た可能性があります。野戦病院内の環境中からも物品等の表面からアシネトバクター-バウマニが分離されていて、遺伝子的な分類でも、患者から分離されるアシネトバクター-バウマニと合致するものでした。野戦病院内でアシネトバクター-バウマニを得た可能性もあります。  上記のアメリカ合衆国での状況と似た状況が、アフガニスタンで外傷を負ったカナダ軍の兵士たち、イラクで外傷を負ったイギリス軍の兵士たちでも見られています。 アシネトバクター感染症には、肺炎、敗血症、尿路感染症、髄膜炎、創傷・火傷の感染などがあります。アシネトバクターによる肺炎の症状としては、発熱、悪寒、咳などが見られます。一方で、傷口や気管切開の部分に、存在していても、何の症状も起こさない場合もあります。  アシネトバクター感染症の治療には、抗生物質が使用されます。しかしながら、よく用いられる抗生物質の多くが無効な場合 (多剤耐性)がしばしばあり、注意が必要です。多剤耐性(multidrug resistant : MDR)のアシネトバクター感染症の治療は難しいです。病巣から分離されたアシネトバクターに有効な抗生物質を使っての治療が原則となります。  平成21 年(2009 年) 1 月23 日、日本のある大学病院から、多剤耐性(複数の薬が効きにくい)アシネトバクター(Acinetobacter baumannii)による“院内感染”の発生の報告(参考文献4)がありました。  3 ヵ月の間に大学病院の救命救急センターの集中治療室を中心に複数の患者が多剤耐性アシネトバクターに感染しており、2008 年10 月から2009 年1 月までに23 名の患者から多剤耐性アシネトバクターが分離されました。感染が確認されたアシネトバクターは日本で利用可能な一部の抗菌薬(ミノサイクリン、イセパマイシン)で治療が可能ですが、他のほとんど全ての抗菌薬に耐性を示しています。 アシネトバクターは環境中に普遍的に存在する菌である事から、2 回にわたる環境調査を大学病院は行いました。2 回目の環境調査の結果、人工呼吸器装着2 日目と4 日目の2 名の患者の装着器材(バイトブロック)より、多剤耐性アシネトバクターが検出されました。この他、消毒済みのバイトブロックからもアシネトバクターが検出されました。大学病院では、標準的な感染対策に基づき、同器材を消毒後に再生使用をしていましたが、環境調査の結果判明後、個別使用に切り替えました。  少なくとも25%の健康な人が、アシネトバクター属(genus Acinetobacter )の細菌を皮膚に保持しています。特に湿りがちな場所である、わきの下、股間、足指の間などに保持しています。健康な人の口の中や気道から検出されることも、ときに、あります。しかし、入院患者以外で、皮膚以外の場所からアシネトバクター属の細菌が検出されることは通常は少ないです。  入院患者が、アシネトバクター属(genus Acinetobacter )の細菌を保持している率は高いです。アシネトバクター感染症の集団発生が起きているようなときには、より高いです。  アシネトバクター属の細菌は、遺伝子での分類では19の"種(しゅ:species)"に分類されます(参考文献5)。よく分離されるのは、分類No.2のアシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )です。他には、分類No.3(該当の種の命名なし)、分類No.7の Acinetobacter johnsonii 、分類No.8のAcinetobacter lwoffii 、分類No.5のAcinetobacter junii などが、比較的多く分離されます。  アシネトバクター(Acinetobacter )の英字の綴りについては、a(非)cineto(運動性の)bacter(桿菌)という意味です。aについては、「欠く」、「ない」の意味です。cinetoについては、ギリシャ語のkineo(動く)に由来し、kineto-では「動きのある」の意味です。アシネトバクターは、鞭毛を欠き、動きがありません。形としては、増殖サイクルの増殖期には丸みをおびた短い棒状の桿菌ですが、定常期には球菌のような球状の形態となることもあります。球状の形態が連なって双球菌のように見えることもあります。  病原体のアシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )の英字の綴りについては、baumannii の部分が誤って綴られていることがよくあります。baumanii 、baumanni 、baumani などと誤って綴られていることがあります。Coccidioides immitis (コクシジオイデス症の真菌の病原体: Coccidioides の部分が、Coccidiodes 、Coccidoides 、Cocidioides 、Coccidioidis と綴りが誤られることがあります。)、Coxiella burnetii (Q熱の病原体:burnetii の部分が、burneti 、burnetti 、burnettii と綴りが誤られることがあります。)、Tropheryma whipplei (Whipple病の病原体:whipplei の部分が、whippelii 、whippleii 、whippeli と綴りが誤られることがあります。)などと並んで誤られやすい綴りとされます(参考文献6)。  多剤耐性のアシネトバクター-バウマニ(Multi-drug resistant Acinetobacter baumannii ) については、 MDRABと略称されることがあります。  アシネトバクター-バウマニ( Acinetobacter baumannii )のバウマニ( baumannii )については、アシネトバクター( Acinetobacter )の研究で功績のあった、アメリカ合衆国の夫婦二人とも微生物学者のPaul and Linda Baumann夫妻の栄誉を称えての命名です。Baumann夫妻に因んでの微生物の命名は、他に、Oceanimonas baumannii とCandidatus Baumannia cicadellinicola があります。  また、アシネトバクター( Acinetobacter )の研究で功績のあった、John L. JohnsonとElliot Juniの栄誉を称えて、Acinetobacter johnsonii とAcinetobacter junii が命名されています。 健康な人が、体力・免疫力の弱まった人へ病原体のアシネトバクターを運んでしまうことが心配されます。  アシネトバクターは、乾燥にも強く皮膚や環境中で数日間は生存可能です。乾燥した平面上で黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )と同等あるいはより長期に生存することがあります。乾燥したろ紙上での観察によれば、生存期間は、大腸菌や緑膿菌が24時間以下、アシネトバクターが6日まで、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )が7日でした。(なお、ブドウ球菌はグラム陽性でアシネトバクターはグラム陰性であり、まったく違う細菌ですが、似ている点もあるため、アシネトバクターを「グラム陰性のブドウ球菌」とたとえる研究者もいます。)  アシネトバクター感染症の集団発生中の小児科集中治療室での観察によれば、電話受話器・ドアの押し板・患者のチャート・卓上などでアシネトバクターが認められ、医療スタッフの手によってアシネトバクターが運ばれたと考えられました。  アシネトバクターが手に付着して運ばれてしまうことが心配されます。手をよく洗うことは、予防のために役立ちます。  アシネトバクターは、通常、70%エタノールや50%以上の濃度のイソプロピルアルコール等のアルコール系消毒薬により死滅します。  空気がアシネトバクターで汚染してしまうことがありえます。あるアシネトバクター感染症の集団発生では、加湿器がアシネトバクターで汚染していました。加湿器から10メートル離れた場所の空気からもアシネトバクターが検出されました。医療の場で使われる機器の衛生管理は適切に行いましょう。  アシネトバクター感染症に対する予防接種(ワクチン)は、存在しません。 http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/acinetobacter1.html

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