思考の障害は、思考形式の異常と、思考内容の異常に区分する。思考形式の異常は、さらに思考過程(思路)の異常と、思考体験様式の異常とに区分する。

概念

思考障害は概念的には思考形式の障害と思考内容の障害とに2大別されるが、臨床的には思考障害といえ ば思考形式の障害を意味し妄想など思考内容の障害は別扱いにするのが一般的である。 思考形式の障害はさらに思考過程(思路)の障害と思考の体験様式の障害の2つに分けられる。
分類
思考形式の異常
思考過程の異常
思考体験様式の異常
思考内容の異常
症状
思考過程の障害による症状
自生思考

脈絡のない考えが自己の意志によらず,次々と自動的に生起する。
観念奔逸

関連する観念がなかば随意的に,なかば自動的に次々と生起する 。
滅裂思考

観念群の間に脈絡が失われる。
思考抑制

思考過程にブレーキがかかり,その進行が渋滞する 。
思考途絶

突然に思考の流れが停止し,会話が中断する。
迂遠思考

一々の細部の陳述にこだわり、話が回りくどいこと。てんかんや痴呆で見られる。
思考の体験様式の障害
強迫観念: 「考えずにはいられない」という体験
作為思考: 「他者から考えさせられる」という体験(させられ思考)
思考吹入: 「考えが吹き入れられる」という体験
思考奪取: 「考えが奪い取られる」という体験 
思考伝播: 「考えついた途端にまわりに知られている」という体験
思考察知: 「自分の考えが他人に知られてしまう」という体験


a させられ体験とは、意思の障害であり、自分のなす行為を他人からさせられていると感じることをいう。統合失調症に多くみられる。させられ体験の一つとして、思考の体験様式の異常があるが、これは「させられ思考(作為思考)」と呼ばれている。思考吹入、思考奪取、思考干渉などをまとめてさせられ思考と呼ぶ。

b 連合弛緩は、思路の障害の一つであり、思考の全体にまとまりがなく、話がわかりにくいが、何とか了解できる程度のものをいう。この障害の程度が強くなると、滅裂思考と呼ばれ、思考のつながりがなくなり,前後の連絡が途切れてしまい了解が困難となる。統合失調症にみられる。

c 観念奔逸とは、思路の障害の一つであり、観念が次々に湧き起こり、刻々と変化して、外部からの刺激により容易にずれてしまう状態をいう。躁病にみられる。

d 保続は、思路の障害であり、一度頭に浮かんだ観念が繰り返し現れ、次のテーマに移れない状態をいう。脳血管障害、前頭側頭型認知症にみられる。

e 迂遠は、これも思路の障害の一つであり、思考の目的はとらえているが、一つ一つの観念にとらわれて回りくどく、なかなか思考目的に達し得ない状態をいう。てんかん性精神障害の代表である。

させられ体験とさせられ思考との区別が紛らわしい。させられ思考(作為思考)は明らかに思考の異常であるが、その上部概念である「させられ体験」は意思の障害に分類する方がよい。「させられ思考」は統合失調症に普通にみられる思考体験様式の異常であり、もちろん思考の異常である。
最終更新:2009年08月16日 14:09