※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

2009年3月版の変更点

前年度版から変更した主要な箇所には黄色のマーカーを付してある。以下に、
2009年3月版で変更・追記した主要なポイントを挙げる:
血中HIV RNA量の測定に現在用いられているTaqMan PCR法は、従来のアンプ
リコア法の検出限界(50コピー/ml未満)値付近での、アンプリコア法の測定値
との乖離が臨床的な問題となっている。この事情をIII章とVI章で解説した。
無症候患者の治療開始時期の考え方は、AIDSを発症させないという目標から、
非AIDS合併症のリスクもできるかぎり減らす方向へと動いている。本ガイド
ラインも昨年からCD4数が350/μL以下の患者には治療を行うことを積極的な推
奨としており、その根拠となるエビデンスをIV 章で再整理した。CD4 数が
350/μL以上の患者でも必ずしも待機は推奨されず、個別に判断となるが、その
判断のポイントに関しては2008 年8 月のIAS-USAガイドラインの推奨を参考に
記載した。ただし、以前のガイドラインのもとで、CD4数が250-350/μLで治療
を待ってきた患者に急に治療をしなければいけないと告げることは混乱を招く
可能性も考えられ、そのようなケースでは「長期成績についての最近の知見や
治療薬の進歩を説明し、HAART開始について再度相談する」ことを勧める一
文を今回も残してある。
初回治療の推奨処方は、バックボーンのNRTI2 剤に、NNRTIもしくはリトナビ
ルでブーストしたPIをキードラッグとして組み合わせる3剤併用療法が現在の
基本形であるが、選択薬は各国のガイドライン間で若干の相違があり、本ガイ
ドラインは原則的に米国DHHSガイドラインに準拠する形で推奨処方を提示し
てきた。ただ、2008年11月発行のDHHSガイドラインが推奨処方にあげたダル
ナビル1日1回投与は、現在まだ国内では初回治療の適応が承認されておらず、
1日1回用の剤形も国内未承認であることから、今回は推奨処方に入れなかった。
また、同じDHHSガイドラインが推奨処方からはずしたABC/3TCについては、
他の海外ガイドラインや国内の事情も鑑みて(過敏症を起こしやすいHLA
B*5701陽性者は日本人では極めて稀である)推奨処方に残すことにし、本文中
でDHHSガイドラインがABC/3TCを代替処方とした理由を解説しておいた(V
章)。
今年度はラルテグラビル、エトラビリン、マラビロクの3剤が国内新薬として
加わった。ラルテグラビルとマラビロクは今までになかった作用機序の薬剤で
あり、「薬の作用機序と薬物動態」(VII章)で解説を行った。これらの薬剤の
使用に関しては、現時点では、原則的に治療失敗時(他の抗HIV薬にて十分な
効果が期待できない場合、又は忍容性に問題があると考えられる場合)の使用
となるため、「治療失敗時の対応」(VI章)で使い方に関する注意点を概説した。
薬剤耐性検査(遺伝子型)の考え方については、「HIV感染症の医療体制の整備
に関する研究」班(濱口元洋班長)において杉浦亙研究分担者らが「HIV薬剤
耐性検査ガイドライン」を作成しているので、本ガイドライン中での詳説はし
なかったが、治療失敗時の耐性検査の利用の仕方に関しては、当該研究班での
成果を「治療失敗時の対応」(VI章)に挿入させてもらった。無治療患者での
検査適応まで含めた薬剤耐性検査の考え方の詳細は、上記ガイドラインを参照
されたい(アクセス先を巻末に記載した)。
B 型肝炎、C型肝炎、結核の重複感染症がある場合の治療では、薬剤相互作用
などの問題が生じ得るが、今回は特にB型肝炎合併時の治療の考え方を解説す
る章を設けた。これは、①C型肝炎と結核では、薬剤相互作用の問題(や免疫
II
変更点
2
II 2009年3月版の変更点
再構築症候群の問題)はあるものの、基本的には単独感染時の標準治療を行え
ばよいのに対し、B型肝炎では単独感染時の治療ガイドラインが使えないとい
う問題があること、②性感染症によるB型肝炎合併例が増加しており、どこの
施設でも遭遇し得る状況になってきていると考えられたこと、③慢性B型肝炎
の治療は一定期間で終了するものではなく、ずっと継続してHBVを抑えておく
必要が生じること、などを考慮したためである。今後のガイドラインにC型肝
炎や結核も入れたほうがよいかどうかも含めて、利用者の先生方のご意見をい
ただければ幸いである。(なお、治療ガイドラインがカバーする範疇からはや
や外れるものの、性感染症としてのB 型肝炎合併例が増加していることは、
safe sex指導を徹底する必要を示唆するものであることも付言しておきたい)。
「HIVの曝露対策」(XII章)では、各医療機関の環境に応じて準備しておくべ
きポイントが少しずつ異なることへの注意を喚起し、また、曝露後予防の具体
的な薬剤選択に関してもアップデートをはかった。
その他の章にも適宜加筆・修正を行ない、内容をアップデートしている。
今年度版のガイドラインには薬剤の添付文書を付けないことにしたが、抗HIV
薬を初めて使用する際には必ず添付文書に目を通していただきたいので、最新
の添付文書を参照できる医薬品機構のホームページを巻末に掲載した。そのほ
か、治療に関連した科学的なエビデンスを参照できるサイトについてもいくつ
か紹介した。
<付>本ガイドラインで頻繁に用いられる略語
HAART :highly active anti-retroviral therapy、強力な抗レトロウイルス療法
NRTI :nucleoside/nucleotide reverse transcriptase inhibitor、
核酸系(ヌクレオシド/ヌクレオチド系)逆転写酵素阻害剤
NNRTI :non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor、
非核酸系逆転写酵素阻害剤
PI :protease inhibitor、プロテアーゼ阻害剤
unboosted PI :RTV(リトナビル)を併用しないPI
boosted PI :RTVを併用するPI
薬剤名は原則としてアルファベットの3文字略称で表記した(表VII-1参照)

(5)インテグラーゼ阻害剤: INI
HIVインテグラーゼは、HIV遺伝子にコードされたウイルス複製に必要な酵素で
あり、インテグラーゼ阻害剤は、HIVインテグラーゼの触媒活性を阻害する2)。イ
ンテグラーゼはHIV の複製に欠かせない酵素の一つとされ、HIV遺伝子断端を組
み込み反応の基質として活性化処理する3’プロセッシング活性と組み込み酵素活
性の、少なくとも2つの酵素活性があるとされている3)。2009 年3月現在ラルテグ
ラビル(Raltegravir: RAL, 商品名アイセントレス)が承認されている。
(6)CCR5阻害剤
CCR5 阻害剤は、HIVが細胞に侵入する際に利用する補受容体のC-Cケモカイン
受容体5(C-C chemokine receptor 5:CCR5)を阻害する薬剤である。HIV-1がCD4
陽性細胞に侵入する際、まずHIV-1エンベロープ糖蛋白のgp120がCD4と結合する。
続いて、gp120-CD4複合体がCD4陽性細胞の細胞膜上にあるヒトケモカイン受容
体のCCR5またはCXCR4に選択的に結合し、それによってHIV-1エンベロープ糖
蛋白のgp41 の反応を引き起こす。その結果、HIV-1エンベロープとCD4陽性細胞
の細胞膜が融合し、HIV-1 内容物がCD4 陽性細胞に侵入する。CCR5 阻害剤は
CCR5 に選択的に結合してその立体構造を変化させ、gp120-CD4複合体とCCR5の
結合を阻害することで、CCR5指向性HIV-1の細胞内への侵入を阻害する。2009年
3月現在、マラビロク(Maraviroc:MVC, 商品名シーエルセントリ)が承認されてい
る。MVCはCXCR4指向性およびCCR5/CXCR4二重指向性HIV-1の細胞内への侵入
は阻害しない4)。従って、患者の持つウイルスの指向性を検査したうえで使用する
必要がある。





2006年3月版の変更点

1. 平成17 年度の新薬であるエムトリシタビン(エムトリバ®)とエムトリシタビ
ン・テノフォビル合剤(ツルバダ®)の2 剤については2005 年3 月版に既に記
載しており、2006 年3 月版では新規の抗HIV 薬の新たな記載はない。
2. ここ1 ~ 2 年の報告により、HAART の成績がどのクラスのキードラッグ
(unboosted PI, boosted PI, NNRTI)を選択するかによって異なることが明らかに
なりつつある。ウイルス学的治療効果と服薬率低下時の治療失敗率の観点から、
unboosted のプロテアーゼ阻害剤の使用が好ましくない点を記載した(第V 章)。
3. 日本アルトマーク社が実施している市販後臨床検査の集計で、HAART 開始時
のCD4 数と治療後の生存率の関係の解析データ(1997 年4 月~ 2005 年3 月、
2236 名)が発表されたので、これを日本発のデータとして2006 年3 月版に掲
載した。また、最近CD4 数が350/μl 以上での治療開始が好ましいとする報告が
あるのでこれについても言及した(第V 章)。
4. 本邦で実際に使用されているHAART の組み合わせについて、最新の情報に差
し替えた(第V 章)。
5. 「治療失敗時の薬剤変更」の章をこれまでの原則論的なものからより実践的なも
のに大幅な書き換えるとともに、日本の未治療患者の耐性HIV 保有頻度を掲載
した(第VI 章)。
6.「抗HIV 薬の作用機序と薬物動態」の章にTDM の概念を加え、大幅に書き直
した(第VII 章)。
7. 2006 年4 月からの障害者自立支援法の実施にあわせ、「HIV 診療における社会
資源の活用」の章を新たに設けた(第XIII 章)。
<付>本ガイドラインで頻繁に用いられる略語
HAART : highly active anti-retroviral therapy、強力な抗レトロウイルス療法
NRTI : nucleoside reverse transcriptase inhibitor、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤
NNRTI : non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤
PI : protease inhibitor、プロテアーゼ阻害剤
unboosted PI: RTV を併用しないPI
boosted PI : RTV を併用するPI