数日から約1週で発症する急性炎症性脱髄性多発根神経炎(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy: AIDP 別名:ギラン・バレー症候群)に対して、CIDPの発病は急性、亜急性あるいは慢性の時もありますが、経過は2ヶ月以上にわたり緩徐に進行する型(慢性進行型)、再発と寛解を繰り返す型(再発寛解型)があります。

ギラン・バレ-症候群とは異なり、上気道感染、下痢などの先行感染もみられない場合も多く、発症に関する因子も知られていない。

A 副腎皮質ステロイド療法

この治療法は免疫異常を伴う各種の病気に対して広く行われている治療法です。一般に、副腎皮質ステロイド薬を経口で投与しますが、症状が重い時や急激な発症時には大量ステロイド点滴療法(パルス療法)が行われます。これはメチルプレドニゾロン1,000mgを3~5日間、点滴静注する治療法です。多くの場合ではパルス治療後に副腎皮質ステロイド薬の経口投与を持続します。無治療の症例に対してステロイド治療の有効性が実証されていますが、治療に反応しない例もあります。
小児に対してのステロイド治療は、副作用に注意しながら長期にわたり減量、維持療法を行なうと良い治療効果が得られます。
B 免疫グロブリン静脈内投与療法

病気の原因として免疫異常が想定される場合に行われる治療法です。一般にIVIg療法といいますが、平成11年6月から保険診療の適応となりました。この治療法は免疫グロブリン400mg/kg/日、5日間、連日点滴静注する治療法です。IVIg療法は血漿交換(plasma exchange: PE、下記を参照)療法に比べ患者様の負担が少なく、比較的安全な治療法で、PE療法と同等の効果が報告され、本邦では簡便さも手伝って、積極的に投与されています。また小児に対しても治療が可能なため、最近では、CIDPに対してIVIg療法を第一選択されている治療法です。

この疾患の場合、1クールの治療法で劇的な効果から無効まで幅広い報告があります。また、1クールのみでなく、毎月3~5日間施行したほうが良いのか、月に1日のみ施行した方が良いのかについてはまだ結論が出ていません。本疾患の一つのタイプとして多巣性運動ニューロパチー(MMN)がありますが、この疾患はA、C、Dは一般に無効で、IVIg療法が有効な例があります。

IVIg治療を行っても十分な症状の改善を認めない場合、あるいは一旦、神経症状が改善した後に再び増悪する場合では、再度IVIg治療を行います。IVIg治療で治療効果が認められない場合ではパルス療法あるいはPE療法を選択します。
C 血漿交換療法

血液成分の中の血漿に含まれる病気の原因物質を分離、除去し、血液を健常状態に保とうとする治療法です。血漿分離器を用いて血液を血漿成分と血球成分に分け、血漿中に含まれる原因物質(自己抗体)を除きます。特別な医療施設、医療チームを必要としますので、いつでもどこでも出来る治療法ではありません。

体重40Kg以下の小児や高齢者、心、腎疾患を有するヒトでは施行が困難ですが、Bで治療効果があがらない場合はこの治療法を選択することがあります。
D 免疫抑制剤

病気の原因である自己抗体の産生を抑えるための治療法で、他の治療法によっても治療効果が得られない場合において行われる治療法です。免疫抑制剤は単独または他剤と併用し、症状に応じて増減します。

最近ある種の薬剤(タクロリムス、シクロスポリンなど)はCIDPに対して治療効果を認めるとの報告がありますが、一般には他の治療法と組み合わせて用いられることが多い薬です。
最終更新:2009年09月17日 00:02