副甲状腺機能低下症はどんな病気か

 副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌や作用が低下することにより、副甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)とは逆に低カルシウム血症高リン血症などを来す病気です。
原因は何か

 副甲状腺からのPTH分泌が低下した特発性および続発性と、PTH分泌は保たれているにもかかわらずPTHの作用が損なわれている偽性(ぎせい)とに分類されます。前者のうち、続発性には頸部(けいぶ)の手術や外傷による副甲状腺の障害や、先天性の副甲状腺形成異常などが含まれます。これらと違い、原因が明らかでないものを特発性と呼んでいます。
 偽性副甲状腺機能低下症は、PTHによる細胞内シグナルの伝達機構(メカニズム)の障害が原因で、その異常部位によりさらに細かく分類されています。
症状の現れ方

 主な症状は低カルシウム血症によるもので、手足のこむら返り、ぴりぴりするしびれ感、けいれん(テタニー)発作などがみられます。ひどい場合には全身性強直性(きょうちょくせい)(強くこわばる)のけいれん発作が起こり、意識を失うこともあります。このため、てんかん発作と間違えられることもあります。そのほかに白内障(はくないしょう)や大脳基底核(だいのうきていかく)の石灰化などもみられることがあります。
 偽性副甲状腺機能低下症のなかには、オールブライト遺伝性骨異栄養症(いでんせいこついえいようしょう)と呼ばれる低身長、短く太い首、第4、5指の短縮などの特徴的な体型がしばしば認められます。この場合、ほとんどは遺伝性で同じ家系内に発症がみられますが、副甲状腺機能、カルシウムが正常で体型の異常だけが遺伝することもあります。
検査と診断

 低カルシウム血症と高リン血症があり、腎機能低下がなければ副甲状腺機能低下症と診断されます。PTHの分泌が低下する特発性および続発性では、インタクトPTHという測定法で30Pg/ml以下になります。インタクトPTHが30Pg/mlを超える場合には偽性と診断されます。
 偽性副甲状腺機能低下症の場合には、PTHの細胞内シグナルの異常部位により病型を決めるために、PTHを注射して反応をみるエルスワース・ハワード試験という検査を行います。
治療の方法

 アルファカルシドール(アルファロール、ワンアルファ)またはカルシトリオール(ロカルトロール)という活性型ビタミンD製剤を内服します。活性型ビタミンDは、ビタミンというよりは体内でビタミンDからつくられる一種のホルモンで、PTHとともに血中カルシウム濃度を維持するのに大切な役割を果たしています。治療の目的は、低カルシウム血症によるテタニー発作やしびれをなくすことで、必ずしもカルシウム濃度を完全に正常化する必要はありません。
 活性型ビタミンDを内服している副甲状腺機能低下症の患者さんでは、血中のカルシウム濃度に比べて尿中のカルシウム排泄が増えやすくなります。そのため、尿路結石や腎機能低下の予防に注意し、尿中のカルシウム排泄を尿中のクレアチニン排泄の30%以下に保つことが必要です。
最終更新:2009年12月16日 04:10