皮膚の断面図:基底層

基底層は真皮層と波型に接していて、真皮層の山なりになった部分の乳頭体から栄養を受け取って細胞分裂を行っています。
分裂した基底細胞は上へ移動しながら有棘細胞、顆粒細胞と形を変えていき、最後には角質細胞になります。

基底層には樹木を広げたような「メラノサイト」があります。
メラノサイトは、紫外線があたるとメラニン顆粒を作って、枝先を周囲の細胞に侵入させて、細胞内にメラニン顆粒を散らします。
細胞内に散らばったメラニン顆粒は紫外線から核を守るように集まります。

毛のない皮膚には「メルケル細胞」という特殊な細胞があります。
この細胞は基底細胞の間にあり、触覚を感じる細胞です。
圧力を受けるとメルケル細胞は化学物質を放出して神経を刺激し、皮膚に触れた物体が何かという情報を伝達します。
皮膚の断面図:有棘層

有棘層は表皮の中でも最も厚みのある層で、有棘細胞が10層くらい重なっています。
基底細胞は有棘細胞の上の方へ移動するにつれて平坦になります。

有棘細胞の表面は多くの細かい棘状に覆われていて、細胞どうしが密接に連絡しあっています。

有棘層には、有棘細胞の他に「ランゲルハンス細胞」があります。
この細胞は表皮全体の2~8%を占め、有棘層の上部に最も多くあり、外部から侵入した病原体や異物に対して免疫応答する重要な細胞です。
皮膚の断面図:顆粒層

顆粒層は平坦な顆粒細胞が1~2列並んだ層です。
顆粒層の中には、光を強く屈性する「ケラトヒアリン果粒(ガラス状の果粒)」があり、紫外線を反射して内部に入ってくるのを防いでいます。

顆粒細胞は角化するにつれ扁平になり、やがて細胞内にあった核や小器官が崩壊して細胞は死にます。
すると、細胞は水分を失い、顆粒細胞はリン脂質で包まれた、何枚もの密な層を形成します。
皮膚の断面図:透明層(角質層と顆粒層の間)

掌や足の裏などの厚い皮膚には、ガラス状の淡明層が顆粒層と角質層の間にあります。
この層は密に圧迫され扁平で、中にはケラチンが充満しています。皮膚の薄い部分では角質層と区別ができません。
皮膚の断面図:角質層

角質層は扁平な角質細胞が15~30層に重なる層です。
厚い皮膚にも薄い皮膚にもあります。
角質層の下の方は細胞同士密着していますが、上へ行くほど密着が弱まり細胞間に隙間ができ、ある程度まとまってシート状に剥がれます。

重なった角質細胞の間には細胞間脂質や水分があり、角質細胞の接着剤の働きをしています。
角質細胞の中には、アミノ酸や乳酸からできている「NMF(natural moisture factor:天然保湿因子)」があり、角質層の水分を保っています。

角角質層は乾燥しています。
角質層の表面には皮膚に付属している脂腺や汗腺の分泌物によって覆われ、バリアの機能を果たしています。

基底層から分裂した基底細胞が角質細胞になるまでに約14日かかります。
通常さらに約14日間、角質層に留まり、やがて剥がれ落ちます。
この丈夫な角質層により表皮の深層は保護されています。


皮膚の断面図:真皮

表皮を下から支える真皮は膠原線維と弾力線維、そしてその間を満たす基質から構成されます。
①乳頭体②乳頭下層③網状層の3つに区別されます。
膠原線維はコラーゲンという蛋白質の白いヒモです。
これが網目状に真皮層を満たし、そのヒモの交点にあるのが弾力線維のエラスチンです。
エラスチンも蛋白質からできています。
基質

基質は、ヒアルロン酸やコンドロインチン硫酸などのムコ多糖類のほか、コラーゲン、アルブミン、グロブリンといった蛋白質、無機塩類のミネラルなど水分をたっぷり含んだゲル状の物質です。
各線維や細胞の間の水分を保持します。

真皮を構成している膠原線維や弾力線維、基質は線維芽細胞からつくられます。
この細胞は5~6年で生まれ変わります。
真皮には汗腺や脂腺、毛、多くの血管、リンパ管、神経があり、皮膚への栄養・代謝・感覚といった皮膚機能を担っています。
乳頭体

基底層と接した真皮側に突き出ている乳頭体と、そのすぐ下にある乳頭層は細かな結合線維と毛細血管からできており、たっぷり水分を含んでいます。
乳頭層は表皮へ栄養補給を行い、表皮から情報キャッチします。
老化により乳頭層の波型が扁平になると、表皮が薄くなって栄養が十分行き渡らずタルミの原因になります。
網状層

膠原線維や弾力線維が密に網状に並んでいることから網状層といいます。
真皮層の中で一番厚い層です。
皮膚の強さと運動をつかさどる皮膚の弾力を担います。
老化に伴い線維が変性したり、切断されたり、減少してシワの原因になります。
皮脂腺の機能と構造
役割

皮脂は、皮脂腺より分泌され、毛をつたって出てくる脂肪のことです。
表皮に出た皮脂は汗と混ざり合い皮脂膜をつくります。
皮脂膜は皮膚や髪にうるおいを与え、外部からの刺激から守る役目をします。
また、皮膚が弱アルカリに傾いて湿疹やカブレを起こさないよう、弱酸性に保つ働きをすることで、有害な菌の繁殖を抑制します。
構造

皮脂腺は毛包(毛を包み込んでいる筒状の部分)に排泄管の口が開いており、皮脂は毛をつたって表皮に出ます。
管の底は丸い巣状で、脂腺細胞の中で皮脂は作られます。
最終は細胞が破れて排泄管から分泌されます。
そのため皮脂には脂質ばかりでなく、蛋白質やスクアレンなどが含まれ、その他にも細胞そのものが壊れた残骸、細胞膜が角化されたものも含まれます。
分泌

皮脂腺は全身に分泌していますが、頭部や顔、鼻の周りや胸、背中の中央に沿ったところに多く分布しています。
皮脂の分泌は人種・性別・年齢・季節・食べ物によって左右されます。
皮脂腺は毛包とつながっているので毛のない手や足の裏にはありません。


皮脂膜
乳化

皮膚表面で皮脂と汗がすばやく乳化して皮脂膜をつくります。
この乳化状態には2つの型があります。
水中油型(O/W型)水の中に油滴が分散している状態
油中水型(W/O型)脂質の中に水滴が分散している状態
※O:Oil W:Water

皮脂膜は通常、油中水型で、皮膚は油性の膜で覆われていますが、状況によって水中油型に変化します。
例えば、運動をして汗をかくと、汗が早く蒸発するように水中油型になり、汗がひくとまた油中水型に戻ります。
皮脂膜は気温や体温など、わずかな変化も見過ごすことなく常に皮膚の状況に適応しています。
※皮膚全体が乳化されているとは限りません。


SQ:スクワレン
TG:トリグリセライド
DG:ジグリセライド
MG:モノグリセライト
FFA:遊離脂肪酸
CH:コレステロール
CHE:コレステロールエステル
CE:セラミド
SP:スフィンゴシン
皮脂分泌量の変化
ホルモンとの関係

皮脂の分泌量は男性ホルモンに支配されます。
当然、女性より男性の方が分泌量は多くなります。
女性は副腎皮質由来の男性ホルモンによるもので、男性の85%の量です。
しかし、女性ホルモンの一種の黄体ホルモンは皮脂分泌を亢進しますから、月経前は皮脂分泌が多くなる傾向があります。

皮脂の分泌は男性ホルモンによって亢進され、女性ホルモンにより抑制されます。
年齢との関係

皮脂腺の活動が活発になるのは男女とも16~20歳です。
その後、徐々に減少し、更年期には大きく減少し始めます。
男性は50歳前後でも一時的に亢進する場合もありますが、それは一過性であり、徐々に減少していきます。
季節との関係

季節で見ると、春から夏にかけて分泌が増加し、秋から冬にかけて減少します。
しかし、最近では家庭でも会社でも室内エアコンにより、一定の気温の中で生活しているため季節的な変動はあまり見られません。
1日の分泌量

1日の皮脂の分泌量は、約1~2gですが、個人差や生活面に影響されることが多々あります。
皮脂は絶えず一定に分泌されているわけではありません。
一定の量に達すると皮脂腺に圧力を加えて分泌を抑えるようになります。
皮膚とpH
pH値

物質が酸性か、アルカリ性かを具体的な数値にしたのが0~14までに分けられたpH値です。
7が中心で、数値が小さくなるほど酸性が強くなり、数字が大きくなるほどアルカリ性が強くなることを表します。

皮膚のpHは皮膚そのもののpH値ではなく一般的には、皮脂膜のpHを示しています。
皮脂膜は皮脂の中に含まれる脂肪酸や汗に含まれている乳酸やアミノ酸の影響でpH4.5~6.5の弱酸性を示します。

肌質や環境により個人差がありますが
脂性肌(ニキビ・脂漏性湿疹)/皮膚の汚れ→酸性に傾く
乾燥肌(アトピー・老化)/汗をかいた後/アルカリ洗浄使用後→アルカリ性に傾く


アルカリ性

角質層はケラチンという蛋白質でできています。
蛋白質は、酸には強いのですが、アルカリには弱いという特性があります。
そのため長時間アルカリ物質が触れていると、角質細胞が次第に溶けて皮膚表面はあれた状態になります。
こうなると、皮膚の抵抗力が落ちるので、過敏になり、湿疹やカブレを起こやすくなります。
復元力

健康な皮膚では表面が一時的にアルカリ性に傾いても、元の弱酸性に戻す働きがあります。
これをアルカリ中和能といいます。
しかし、老化によって皮脂分泌量が減少したり、アルカリ物質が絶えず触れている状態、例えば長時間の水仕事などを続けるとアルカリ中和能が働かなくなり、抵抗力が弱まります。
酸性

皮脂やホコリなどの肌の汚れは時間が経過すると酸化し、過酸化脂質という脂に変化します。
過酸化脂質は刺激物ですから長時間付着していると、カブレや皮膚炎、湿疹の一因になります。
発汗の分類と作用
分類

発汗は汗腺から汗が分泌されることいい、体温維持のためには欠かせない作用です。
感知性発汗
気温が高くなったり、スポーツすると、体温が上昇して汗をかき、皮膚表面に分泌された汗が蒸発する際、気化熱を奪って、体温を一定に保ちます。
このように汗をかいていると感じる発汗を「感知性発汗」といいます。
不感知性発汗
肉眼ではわからない水蒸気となって蒸散する「不感知性発汗」は体温調整と関係なく、常に安静時でも絶え間なく皮膚から蒸発している汗のことです。
1日の発汗量は約1~1.5リットルで、1日の尿量と等しい量です。
汗には体内の老廃物を排出する作用もあります。
汗の成分

汗は無臭・透明な液体です。99%が水で、残り1%に塩化ナトリウム、尿素、尿酸、乳酸、脂肪、アミノ酸などを含んでいます。
pH値は3.8~5.6の弱酸性ですが、皮膚表面に長く留まっていると、次第に弱アルカリ性に傾いていきます。
エクリン汗腺
体全体のほとんどの部位に存在しています。
その数は個人差や移住地の気候風土にもよりますが、200万~300万個のエクリン汗腺をもっています。
体温上昇防止や皮脂膜を形成します。
アポクリン汗腺
わきの下や肛門周囲など限られた部位にあります。汗の分泌量は少なく、体温調整とは無関係です。
毛包に開口していて毛をつたわって表皮に分泌します。


①汗の分泌による水の蒸散
②表皮深層から汗管に吸収されて汗口より蒸散
③角質層内の汗管から角質層に吸収されて蒸散
④表皮の角化の過程で放出される水が蒸散
⑤毛細血管から供給される体液が蒸散
皮膚の生理機能

人間の体には様々な器官がありますが、皮膚ほどいろいろな機能を兼ね備えているものはありません。
いろんな機能が完全であることが美しい肌の条件になります。
呼吸作用

皮膚もわずかですが呼吸をしています。
皮膚で行われる呼吸は、血液と皮膚組織、細胞間で行われるガス交換が主です。
過度な化粧や鉱物油は呼吸を妨げ、皮膚の老化を早めます。
保護作用

皮膚は外部の光や外力、細菌の侵入から体を保護する働きをしています。
機械や物理的な外力からの保護
打撲や圧力に対して、真皮の線維や皮下脂肪・血液・リンパ液などがクッションの働きをして体内を守ります。
化学物質の刺激からの保護
皮膚表面を覆っている皮脂膜と角質層が、水分や化学物質の侵入を防いでいます。
太陽光線からの保護
肌に光が当たると日焼けを起こしますが、これは紫外線が真皮にまで入り込まないように大量のメラニン色素が生成されて起こる生体反応です。
細菌からの保護
細菌の増殖に対して、皮膚表面をpH4.5~6.5にすることで防いでいます。
アルカリ性に傾くと、細菌類やカビ類が繁殖しやすくなり、カブレや炎症の一因になります。
吸収作用

皮膚は水溶性のものを積極的に吸収しませんが、脂肪やアルコールに溶かしたもの、皮脂膜に似たものは肌に良くなじみ、微量ですが毛包を通して真皮や血管内に吸収されます。
特に油脂の溶けやすい女性ホルモンA/D/E/F、硫黄などは経皮吸収されやすいものです。
分泌・排泄作用

皮膚の分泌は、皮脂腺からの皮脂と汗腺からの汗とがあります。
これらは分泌されて皮膚表面に留まり、皮脂膜を形成することが目的です。
同時に体内の老廃物を排泄する働きもあります。
再生作用

健全な皮膚の表面は、表面より古くなった角質細胞が脱落して、基底層より新しい細胞が次々に分裂して、新しい組織に生まれ変わります。
このような表皮の再生は、角化した細胞の脱落することが刺激になって起こるものです。
皮膚の再生能力は極めて高く、大きな傷でも再生、修復されます。
体温調整

外界の温度に関係なく、人間は体温を一定に保つことで生命を維持しています。
特に体温調節に関係が深いのは、毛細血管と汗腺です。
夏は汗をかいて体温の上昇を防ぎ、冬は血管が収縮して体温の放熱を防いで、体温を一定に保っています。
高温時(夏)
○毛細血管の拡張・・・ほてる・血行良好
○汗の分泌増加・・・・・あせも・化粧崩れ
低温時(冬)
○毛細血管の収縮・・・血行不良・皮膚機能低下
○汗の分泌減少・・・・・乾燥・小じわ
知覚作用

皮膚は五感器の1つです。
外界からの刺激に対して神経抹消が反応して、痛感覚・触覚・冷覚・温覚・圧覚などの知覚を感じます。
特に温覚は緩慢で、痛覚には鋭敏です。
痛覚の軽いものが痒みです。
皮膚が痒みを感じるのは、痛みが来る前の前触れと言えます。

女性は触覚に優れています。
お化粧の使用感の「のび・つき・なめらかさ・まろやかさ・しっとり・さっぱり」など細かい点で商品価値を判断します。
表情作用

皮膚そのものが、人種・性別・個人の区別を表すほか、皮膚の下にある顔面筋肉の動きや目・唇の動きで喜怒哀楽を表現します。
中和作用

皮脂膜は弱酸性ですので、表皮のアルカリを中和します。
また、皮膚内部も酸やアルカリを中和する機能をもっています。








手掌多汗症

交感神経が敏感
オドレミンは、日邦薬品工業株式会社の製品であり、塩化アルミニウムを含んだ制汗剤です。塩化アルミニウムが13%の割合で含まれています。
ボトックスとは、ボツリヌス菌由来の神経毒素複合体のうちから、A型という血清型毒素だけを
精製して取り出した製剤です。
手掌多汗症における薬物による治療は、大きく分けると精神安定剤と
神経遮断薬の2つ
「腔鏡下胸部交感神経遮断術」「ETS」
  • 代償性発汗
 代償性発汗とは、手のひらや足の裏から汗がでなくなる代わりに、ほかの場所から出る汗の量が 
 多くなることを言います。代償性発汗は胸の下の汗が多くなるようです。
  • 頭痛
  • 喉の渇き
  • 手から汗が全く出なくなることによるひび割れ
  • etc・・・

顔面播種状粟粒性狼瘡

乾酪壊死(かんらくえし)(チーズ=乾酪に似た黄白色で乾燥性の壊死)を伴う肉芽腫性の変化
テトラサイクリン、DDS(レクチゾール)の数カ月間の内服
区別すべき疾患としては、(じんじょうせいざそう)、ステロイド酒、アトピー皮膚炎、脂漏性(しろうせい)皮膚炎

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最終更新:2009年09月05日 08:35