1.
クリアするまで脱出不能、ゲームオーバーは本当の死を意味する―――
剣と魔法の世界を旅するオンラインゲーム、オリジンオンラインに取り込まれて二年。
ようやく脱出したこの世界では、全く時が流れていなかった。
あれはすべて夢だったのか?
あの戦いもすべて幻だと?
力を失い、ただの学生として生きる日々。
だが、そんな折―――
彼は見た。
まるでゲームの中のような異能同士の戦いを。
そして逃れようのない死が迫った時、かつての己のPCと、その力が蘇った。
まるで彼らが現実であるかのように―――



2.
ずっと幸せだった。
いつもいつも、人生において失敗も挫折もあったけれど、それ以上にまわりに愛され、生きてきた。
友達を作り、学校でも成績優秀で先生に褒められ、順風満帆な人生。
そんな自分とずっと昔からいつも一緒だった、大切な友達、瞳。

ほんの些細な偶然だった。
彼女が存在しないと気づいたのは。
自分の人生が作られたものだと気づいたのは。

全ては己の力、己の精神の分身である瞳が作り上げた虚構の世界。
超常の力で常に周りの人間の認識を操作し、環境を書き換えてきたのだ、瞳は。―――自分は。

気づいたとき、絶望した。自分は人の心を操って幸せを得てきたのかと。
親友だと思っていたのは自分自身だけだったのではないのか、と。

だが―――街で己と同じ存在が事件を起こしていると気づいたとき、チャンスだと思った。
ひょっとしたら、己の過ちを償える機会が来たのかもしれない、と……
最終更新:2009年09月13日 22:17