食物アレルギーというのは厄介なものだ。
たとえばうちの母は牡蠣アレルギーなのだが、牡蠣を食べるとおえぇ、と吐き出してしまう上に、しばらくの間蕁麻疹に悩まされる事になる。
で、だ。自分もアレルギーがある。
まず卵。魚介類。果物。牛乳。
ほとんどの美味いものがこれでは食えない。
食ったことがないので本当にうまいのかどうかは知らないが。
そういった理由で、普段学校で自分が摂る食事は弁当だ。
だが、今日はそういうわけにはいかない理由があった。
弁当をいつも作ってくれる母がダウンしたのだ。インフルエンザだった。
看病で徹夜した。起きたら朝の8時。
遅刻しなかったのが奇跡だ。
なので今日は、自分で弁当を作るという選択肢すらなく、購買を使う事になる。
何を売ってるかは、入学時に確認したんで大丈夫。
が。自分が食べられるものが一つしかない。焼きそばパン。それだけだ。
唯一それだけが、ミルクも魚介類も卵も果物も利用していない食べ物なのだった。
これを確保できるかどうかで、自分の運命が変わる。
さて。間もなくチャイムが鳴り、昼休みに突入する。
……きーんこーん……
挨拶が終わる寸前、幾人もの猛者たちがすでにドアへ殺到した。
しまった、出遅れた!
普段購買での食料争奪戦に参加しないが故の失策だ。
慌てて廊下に飛び出ると、人の流れがまるで洪水のよう。
何とかかき分けて先に進むと……
DOOOOOOOOOOOON!
爆風。見よ、人がゴミのようだ!
……って何があった!?
「ふわぁはははははっ!見たか!私の前を遮るからこのような目に遭うのだ!!今の私は機嫌が悪いぞ。腹が減っているからな!!」
白衣を着た女の子の後ろ姿が!
あれは……マッドサイエンティスト部の部長!?
チャンス!!
勝ち誇った彼女の真横を走り抜ける!
10m先は購買だ!!
「ぬ?こらぁ!待てぇぇぇっ!!」
ひゅっ!
なんかかすめた!?
と思う間もなく、爆発。
DOOOOOOOOOOOOOOOM!
「……購買が……!?」
ない。
購買が……ない!!
これじゃ……これじゃ焼きそばパンが食えないじゃないか!?
朝から何も食ってないのに!!
許さん……断じて許さん!!
「あー……まぁこういうこともある。な?許せ先輩」
女部長の弁解するかのような発言。だが許さん!!
「こうなれば……」
「む?」
「こうなればお前をバラして食う!!」
だがその時。
ガタッ
背後で何か音がした。
振り返るとそこには……
購買のおばちゃん!生きてた!!
……おお、おお!!
その手には焼きそばパンが!!
「あれが最後のようだな、先輩よ」
「よし。あの焼きそばパンをかけて勝負だ!」
「いいだろう、来るがいい!!」
そして、激突。
最終更新:2013年07月23日 17:12