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699 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:50:35 ID:LjD7YQ3b 世の中はクリスマスだったらしい。 俺は年末の忙しさに忙殺され、ケーキなぞ食う時間もなくすでに太陽が昇り始めた高速道路を家へと向かい車を走らせていた。 すでにこの仕事について3年ほどたち、この勤務体制にも慣れてきたが流石に3日も会社で寝泊りを繰り返していると憂鬱になる。 俺一人ではないにしろ、男ばかりの職場なので安らぎもなにもない。 そんな中でやれクリスマスだプレゼントだとはしゃいでいる輩は、俺からすればよく年末に遊んでいられるなといった感じだ。 まあそんな華やかな行事は性に合わないので、逆に今くらいの忙しさが俺にはあっているのかもしれない。 そうこう考えている間に高速道路が終り、国道へと降りた。 そういえばこの近くに新しくコンビニができたなと思い出し、せめて一日遅れのクリスマスを過ごそうとそこでショートケーキを買う事にした。 車を停め、外へと降りる。他に誰も車を停めていなかったが、念のため車の鍵を閉める。 息を吐くと白い湯気が顔の前に立ち上り、すぐに空気と混ざって消えた。冬というもあるが、朝方という最も寒い時間帯だ、いつまでも外にいるのは体によくないと店内に歩を進めた。 700 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:51:22 ID:LjD7YQ3b よく聞くあのなんともいえない電子音と店員のいらっしゃいませという言葉と共に俺は店内に入った。 店の中は温かく、おでんやら中華まんのにおいがした。そういえばろくに飯を食ってなかったと今になり空腹感を覚える。 なにか簡単に食べれるものも買っていくことにした。 レジの脇にある弁当売り場からおむすびを2つ、シャケとオカカを手にとり、そのすぐ隣にある洋菓子などが並べられているコーナーから売れ残っていたのであろうショートケーキをひとつ掴むと、 それをレジへともっていく。 商品をレジに置き、財布をポケットからだす。ふと顔を上げると店員と目が合った。 店員はなにか俺の顔についているのか、最初の数秒まじまじと俺の顔を眺めていたが、思い出したように商品を清算していく。 たしかに最近は忙しくてろくに寝てもいなかったが、まじまじと見られるとそうとう酷い顔をしていたに違いない。 今日と明日は休みを貰ったのでゆっくり休む事にしよう。 会計で475円ですと言われたので、財布から小銭を探す。ちょうどの代金を払い、袋を持ち店をでようとすると袋の中に買った覚えのない栄養ドリンクが入っていた。 「あの、これ買ってないですが?」 そういうと、うっとりとしたような笑みを浮かべながら、 「いえ、これは私のサービスです。ちゃんと休んでおかないと体壊しますよ?」 「はあ、それはご丁寧にどうも。それじゃいただいておきます」 折角相手の厚意でくれるというのだから貰っておく事にした。それに夜勤明けで断る体力もなかったともいえる。 こんなご時世だから人と人との助け合いが大切なんだろうな、これからはあそこのコンビニをひいきにしようと名もしらぬ店員の優しさをかみ締めながら家へと帰ることにした。 不思議と外の寒さも気にはならなかった。 しかし、家についた俺はせっかくもらった栄養ドリンクやショートケーキも口に入れる事なく布団へ倒れこんだ。 予想以上に疲れが溜まっていたらしい、俺の意識はすぐに夢の中へと堕ちていった。 701 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:52:08 ID:LjD7YQ3b 変な夢を見た、俺に娘ができる夢だ。しかも5歳くらいの娘がだ。 朝から晩まで俺の後をテコテコついてきてなにをするにも一緒である。 娘はとても可愛らしく、俺の遺伝子をどういじくればこんな子供ができるのだろうというくらい可愛らしかった。きっと母親が美人なのだろう。 だが、夢のなかにその母親はでてこず、家の中に俺と娘とでふたりきりだった。 おままごとだったり、お馬さんごっこだったり、とにかく時間が経つのも忘れずっと娘と戯れていた。 しかしふと思い出したように、俺は仕事をどうしたのだろうという気になった。夢の中でも俺は社畜なのかと嫌気がさしたが、 夢の中でも今の会社に勤めていたのだったら他の人に迷惑をかけていることになる。課長にはよくしてもらっているのでなおさらだ。 いまから一度会社にいってくると娘に告げると娘は頑なに拒んだ、小さな瞳を涙で潤ませ、俺の目をみていやいやをするのだ。 母親がこの夢にはいないのでひとりになるのはこの娘も嫌なのだろう。 娘は俺の手にしがみつき、俺を仕事にいかせまいと必死である。さて、どうしたものかとしばらく困り果てていたが、これは夢である。 そうであれば、別に無理に仕事にいくこともないかと先程の決意をあっさりと曲げ、今日はこの娘と一緒にいることにした。 俺が諦めるのを感じ取ったのか娘は俺の手を放し、またさっきのようにコロコロと笑い出した。しかし本当に可愛い、嫁にだすのが今から惜しいと思うほどだ。 色々と気になることもあるが、今はこの娘と戯れる事にしよう。そう思い、俺はまた娘と遊び始めた。 視界がごろんと回転し、夢から覚める。せっかく娘とオムライスを作っていたというのに。 俺はベットから上半身を床に投げ出す格好で目が覚めた。 そのままズリズリと下半身も床に落とし、体が天井へ仰向けな格好になる。 ガバッと勢いよく体を起こす。不味い、時計はどこだ、完全に遅刻だ。急いで目覚ましを引っつかみ時間を確認する。15時21分。 いったいなんでこんな時間まで寝てたんだ、俺は。目覚ましのアラームは、なんで今の今まで俺は寝てたんだ。 俺を起こさなかった目覚ましを乱暴に放り、軽いヒステリックを起こしながら駆け足で洗面所に向かう。 幸いスーツのままで寝ていたので着替えに時間をとられることはない。 あとは髭をそってさえ行けば大丈夫なはず、飯は昨日買ったおむすびがあるはず。 ん?おむすびを昨日買った?そんで昨日はクリスマスで、俺はショートケーキを買って… ふう、とため息をつく。なんだ、そういえば課長が俺に気を使って2日間の休みをくれたんだ。 だがこんなに血相をかいて飛び起きたりするなんて、やっぱり日ごろの習性ってのはなかなか抜けないもんだ。 いくら休みだと頭に言い聞かせても、体はいつものようにしっかりと動く。 だが、これじゃまるで仕事が俺の人生みたいじゃないか。 確かに、仕事は辛いが給料はいい、だが金を溜めたところで特に使う道もなく、毎日体をすり減らして働く。いつからこんなに夢がない人間になったんだろうな。 「なにやってるだろうな。俺」 だれもいない、寝て起きるだけの部屋で俺は独り言を漏らした。 「なら、やめましょうよ。無理に疲れて生きるより、自由に素直に幸せに生きましょうよ」 突然、誰も居ないはずの俺の部屋から返事が返ってきた。本当に唐突のことだったので、体がびくりとはねる。 そしてゆっくりと声がした方向へ体を向ける、そこには見覚えのない女性が立っていた。 「おはようございます、ゆっくり眠れましたか?」 「きみは誰ですか?どうやってこの部屋に入ったんですか?なんで俺の部屋に?」 もっともな質問が口からでる、そりゃ見知らぬ人間が自分の家に居て、突然自分の後ろに立っていたら驚くだろう。 物騒な世の中だ、なんの目的もなく他人の家に入りはしないだろうし、要件次第じゃ警察を呼ぶ事も考えにいれておいた。 「そんなに矢継ぎ早に質問をされても困っちゃいますが、一つずつお答えします。 まず最初の質問ですが、私は久野巴です。さっきまでコンビニで正社員をしてましたがやめちゃいました。 次の質問ですが、玄関の鍵が閉まってませんでしたよ?そんな無用心だから簡単に部屋に入れちゃいました。 最後の質問ですが、好きだからです、このさい私と結婚しましょう」 一応俺の質問に全部答えてくれたようだけど、どこかずれている気もする。 一部おかしな返答もあったし、なんなんだろう。やはり警察に通報した方がいいのだろうか。 考えるにも、こういう手合いの人間は初めてだ。だから俺はとりあえず 「まあ、立ち話もなんですし。座って話しましょう、コーヒー飲みますか?」 コーヒーを交えて、話し合うことにした。 702 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:53:15 ID:LjD7YQ3b 飯台の反対側に久野さんを座らせ、今後の俺たちの関係をどうするか話し合うことにした。 一応コーヒーはドリップ式で結構値の張るものを使っている。湯を二人分のカップに注ぎながら俺は再度久野さんに質問をした。 「いつから俺の部屋に入ったんです?というより赤の他人の、しかも男の部屋に躊躇なく入るってどういうことですか。若い女性がそういうことしちゃいけないですよ」 「あなたが寝てからしばらくしてからですかね。家の鍵も空いてたので駄目だとは思いつつやっぱり入っちゃいました。 あと、実はなんどか会ったり話したりしてます。たぶん覚えてないと思いますが。だから赤の他人とはいいません。それに私貞操観念硬いですよ、未だに純潔です」 たとえ純潔でも、数回会っただけの男の部屋に入ってる時点で十分軽いのではないだろうかと思うが、どうなんだろう。 それにこの会話のかみ合わなさ、なにか事情があるのだろうか。 コーヒーを蒸らしながら次の質問をする。 「好きってどういうことですか、さっき聞いたぶんには俺に惚れる要素なんて皆無じゃないですか」 「そんな、人を好きになるっていう事に時間とかを持ち出すなんてナンセンスですよ。 しいて言えば最初は生き生きしていた貴方の顔が日を重ねるごとにやつれていくのにですかね。その顔をみていたらぞくぞくしてきちゃって、 どうしようもなくあなたと幸せになりたくなりました」 やっぱりどこか感性がおかしい人だ、と思いながらコーヒーが出来上がったので久野さんにお出しした。 「どうぞ」 「どうも、温かいですね。こんなに温かい飲み物を入れることもできるんですね。真心がこもってます」 そういうと、顔に満面の笑みを浮かべながら、久野さんはコーヒーをすすった。 「そういえばさっきから私が質問に答えてばかりですね、そろそろ私が質問をしてもいいですか?」 まあ、たしかに変な人だけど悪い人じゃなさそうだと思い。俺はその要望に応じる事にした。 「変に俺の過去に突っ込んだ質問でなければいいですよ」 「それじゃあ、なんで私がプレゼントした栄養ドリンクを飲んでないんですか?」 栄養ドリンク?はて、そんなもの貰った覚えはない………と思ったが、確かに貰ったな。あの店員は久野さんだったのか。 「ああ、あの店員さんは久野さんでしたか。家に帰ったらすぐに寝ちゃったのでまだのんでませんよ?」 「やっぱり覚えてないんですね。予想はしてましたが、いつだって私はあなたの目を見て話してるのにそれに気づきもしない。私は寂しいです」 久野さんはおもむろに立ち上がり、それでその栄養ドリンクはどこに置いたんですか?と訊ねてきた。 「それならコートの下のレジ袋の中に」 それを聞くと久野さんは俺のコートをとり、いったん綺麗にたたんでからレジ袋の中の栄養ドリンクを取り出した。 「まったく、私が色々と元気になってくれるように作った特性のドリンクをなんですぐに飲んでくれないですか」 少し怒ったような口調でカリカリとドリンクのキャップを開けてながら、俺の隣に座る久野さん。 703 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:53:54 ID:LjD7YQ3b 開けおわったキャップを飯台におき、グイッと自分の口に入れる。俺に飲ませるためにくれたのではなかったのかと疑問に思っていると、 久野さんの顔が俺の顔に重なり、唇を奪われた。 あまりにとっさのことだったので反応しきれず、そのまま唇をこじ開けられる。 久野さんの舌がドリンクと共に口内に入ってくるのが分った。駄目押しに鼻をつままれる、こばもうととするも、息苦しさから長続きせず、そのまま口の中のものを飲み込んでしまう。 飲み込んだのを確認したのか、鼻をふさぐ指は解かれたものの、唇は重なったままだった。 人付き合いが苦手でいままで彼女なんてできなかった俺が、女性とディープキスなぞできるはずもなく、俺の唇はただ彼女に蹂躙される。 むさぼるように唇を求めながら彼女は俺の口内のいたるところに舌を這わせ、何度も何度も俺の舌を吸い上げた。 ひとしきり、キスをしつづけた後、唾液の糸を引かせながら唇をはなす。それを俺の唾液ごとすするように飲み込んだ。 「飲みましたね?ちゃんと飲み込みましたね?私とキスしてくれましたね?私も初めてだからうまく出来たか分かりませんがとにかくキスしましたね。 いいんですうまく出来たかなんてことは、これから二人で上手になっていけばいいだけなんですから。でもちゃんとあなたからも求めて欲しかったです。 今度はちゃんとあなたからもキスしてくださいね?」 そういうとぽかんと開いたままの俺の口はまた彼女の唇でふさがれた。 求めろといわれても、こんなムードもへったくれもない状況でどう求めればいいのか分らなかったが、とにかく相手の舌に動きをあわせてみようとした。 もとより性欲が強いほうではなかったが、仕事仕事の毎日で俺のなかにも溜まるものは溜まっていたらしく、彼女とのキスで俺の男もその存在を主張しはじめていた。 俺の舌の動きを感じた彼女も、俺を押し倒し俺の頭を両手で抱きしめてきた。心なしかさきほどより彼女の体が熱を帯びてきたように思えた。 いや、駄目だろ。普通であったばかりの男女がこんなことしちゃ、風俗じゃあるまし。常識から逸脱している。 手遅れながらも働き出した理性で、俺の顔に張り付いてる久野さんの顔を引き剥がす。むぅと艶のある声で抵抗されても構いはしない。 「どうしたんです、途中からのりのりだったのに。いきなりやめちゃうなんてムードぶち壊しですよ」 「いやいや、やっぱり駄目でしょう。それに久野さんはこの状況にムードを感じてたんですか?」 久野さんは唇を指で拭いながら、恍惚とした表情で 「久野さんだなんて、他人行儀ですね。巴でいいですよ。それにふたり一緒ならいつでもムード満天じゃないですか?」 やっぱりこの人どこかおかしいですよ、部屋に入り込まれた時点で外に追い出すべきだった。 「もうやめましょう、帰ってください。俺は好きでもない人にこんなことされても嬉しくないです。それにこういうことを軽い気持ちでする人は嫌いです」 「嫌い?私のこと嫌い?そうなの?」 「はい、俺はそういう人が大嫌いです」 そっか、とつぶやき久野さんの顔に笑みが張り付く。昨日俺に栄養ドリンクを渡した時のような妖艶な笑みだった。 「しかたないよね。そう、しかたない。でも大嫌いとまでいわれちゃと流石に傷ついちゃなあ」 笑みを浮かべながらおもむろに尻ポケットを探る久野さん。次の瞬間何かを腹に押し付けられたと思うと、鋭い刺激が走りみるみるうちに俺の意識は混濁していった。 視界が完全に閉じる瞬間に見えた久野さんの瞳は暗く濁り、その色が暗転した俺の意識と混ざっていく。 意識が夢に落ちていく間際、大丈夫絶対幸せにするよ?、という囁きが聞こえた気がした。 704 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:54:28 ID:LjD7YQ3b ああ、またこの夢か。俺はまた自分の娘と戯れていた。 娘は俺の膝の上にちょこんと座っており、俺はこの娘に本を読み聞かせていたようだ。 そういえばまだ、オムライスを作ってなかったな。時計を見るとちょうどお昼時、よし今度こそ作ろうか。 俺がそういうと、娘は大きくうなずきキッチンへとかけていく。転ぶとあぶないぞと声をかけながらそれを追いかける。 キッチンにいくと、内装こそ変ってないがやはり食器や調理道具が増えている。実際の俺はパスタをゆでる深鍋なぞ買っていなかった。 冷蔵庫を開けると、都合よく卵やその他野菜類が置いてある。流石夢だな、欲しいものが事前にそろっているとは。 娘と一緒に野菜を切りそろえていく、包丁も鉄の出刃包丁ではなくプラスチックの可愛らしい奴だ。 身長が足りてないので、小さな脚立を使いながら器用に包丁を使う娘。こういう手先の器用さは俺に似るのだなと思い、にやりとする。 野菜を炒める段階になり、娘がやりたいといいだすが、流石に火を使わせるのはまだ早いだろうと思いそれを制止する。 渋りながらも了解する娘。このどことない強情さは母親に似たのだろうか?俺はもう少し聞き分けがいいと自分では思っている。 てきぱきと野菜をいためていき、そこに1人前強のご飯を入れる。あとは男の料理でコンソメとケチャップをぶち込む。 出来きた似非チキンライスを皿に盛る。次は卵だねと、娘に卵を割らせてやることにした。 幼いながらも卵を慎重にひびをいれ、カパリと割る。やっぱり器用なところは俺に似たなと、親馬鹿じみた考えが浮かぶ。 夢の中なのにいやに現実感があるなと疑問を抱きながらも娘が割った卵を溶き、再加熱したフライパンに落とす。 高温のフランパンで急速に固まっていく卵を崩しながらフライパンの端によせ、ひょいひょいとオムレツ状にしていく。 昔は自炊もしてたが、最近ろくな飯をくってないなとふと現実にもどされそうになるが、夢の中くらい現実を忘れようと出来上がった半熟オムレツを似非チキンライスの上に乗せる。 さあ食べるぞ、と飯台へとオムライスと運ぶ。娘にはスプーンを二つ持たせてだ。 ここでも一つ気づいたが、俺の家には丸型のクッションなぞ置いてなかった。それも丁度3つ。はて、この娘の母親はどうなったんだろうか? そんなことを考えていると、娘が早くたべようと膝の上から俺の襟を引っ張っていた。 そうだねと笑顔で返し、いただきますを言う。作法も小さい頃からしっかりとせねばな。 オムライスのオムレツの部分をスプーンで割っていく、こうすれば半熟のオムレツがとろけるように自らの重さでチキンラスを包むはず、はずなのだ…… しかしこのオムレツは半熟ではなく、完全に固まったオムレツに成り下がっていた。きっと余熱で固まったんだなと自分を擁護する。 「パパ駄目だね」という娘の心無い一言が胸に刺さる、こういうぶっきらぼうなところまで俺に似なくていいのに思う。無駄に現実感あるんだよな、この夢。 「パパ頑張ったけど上手く作れなかったよ、でも味は一緒だから食べようか?」 気を取り直して食べようと膝の上の娘の顔を覗き見る。うん、と元気よく返事をした娘の顔が俺の顔を見つめ返した。 眉や顎のラインはたしかに俺に似ているが、この目じりがやんわりとさがりった目元は母に似たのだろうか? そう思うと何か心あたりがあるように思え、しばらく娘の顔をまじまじと見る。ここまで出掛かっているのに、見覚えがありながらも思い出せない。 もどかしさを覚えながら、頭の上に『?』マークを浮かべている娘の目を見る。この目、目なのだ。きっとこの目が最大のヒントだろう。 そう思いもっとよく見ようと顔を娘の顔に近づけようとした時、 俺の意識は覚醒した。 705 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:55:45 ID:LjD7YQ3b まずいつもの天井があった、味気の無い俺好みのベージュの天井。この色に惚れてこのマンションに契約を決めたのだ。 しかし色々とおかしな夢ばかりみたものだと思い、体を起こそうとして俺は自分の手足がベットの四隅に貼り付けにされているのに気がついた。 いつから俺は自分を縛り付けなきゃ寝れなくなったのだと思い首を真横に傾けると、夢の一部は夢でなく現実であったと気づかされた。 両手で頬杖を付いた久野さんの顔がそこにはあった。意識を失ったときに見たあの笑顔のまま、今も俺を見つめているのだ。 「起きました?どうです、体の方も調子がいいでしょう?」 「貼り付けられた状態で、どうやって体の状態を確認しろっていうんだよ」 「あ、その口調。敬語じゃなくなってますね。少し私たちの関係進展ですね」 さらに顔を緩ませ、嬉しそうに微笑む久野さん。いや、もう「さん」は要らないな、久野で十分だ。 「でも、もっと進展しますよ。なにせ私たち結婚するんですから、夫婦のスキンシップは大切です。 さっき体の状態なんて分らないっていってましたけど、ちゃんと目に見えるくらい元気ですよ。ほらこんなにいきり立ってるじゃないですか?」 そういうと久野は、俺の分身をさすり上げる。なにか寒いと思ったら、俺は全裸だったのかとその原因に納得する。 しかしいつからこの状態なのか、さすがに凍死はしないだろうが衰弱くらいしていてもおかしくはない。 でも今の俺の状態を見るに、そんな様子は毛ほどもない。久野の栄養ドリンクが本当に効いているのだろうか? 「あの栄養ドリンクになにを入れた?真冬に全裸でいて肌寒いとしか感じないなんて異常だぞ?」 「普通の栄養ドリンクをベースに、巷で話題の精力増強剤を各種混ぜ込んでます。味もちゃんと飲んでも美味しいように結構頑張りました。実際美味しかったですよね?」 あんな無理矢理なディープキスをして飲まされたもの味なんて覚えてるわけないだろう。鼻だってつままれてたしな。 それにおかしいぞ。混ぜ込んだってそれなら普通蓋を開けるときにキャップがガリガリとはいわんぞ。 「普通に工場の人に頼んだらやってくれましたよ?」 頼んだって、さっきから普通普通とこともなげに危ないことを言われてもな。一般人の頼みを聞いちゃいけないだろ、俺の系列の会社に頼んでなきゃいいがな。 「ラベルだって私のオリジナルなんですから、手作りです。さっきは軽いとか言われましたが、これでも軽いとか言いますか?」 たしかにただの一般人がここまでのことはしない、それこそ普通は。だが言動の節々から薄々久野が普通の人間じゃないってことには気づいていた。 いままでの人生で唯一好意を寄せられた人間がこんなアブノーマルな奴だったとは、笑い話にもならない。 「はあ、流石です。思ったとおりです。こんなに大きくてグロテスクだと逆に惚れ惚れしちゃいますよ。これで沢山子供を作りましょう。いえ、授かりましょう」 そういうと、さっきから寒い室内でもその勢いを衰えさせない我が分身をしごきだす久野。 気を失う前に飲まされた精力剤のせいか、かなり敏感に反応する愚息。 「やっぱり興奮してくれてるんですね、じゃなきゃこんない汁が出るわけないですもんね。でもまだ駄目です。ただ何もないところに精子をぶちまけるのは許しません」 そういうと、彼女は俺の体の上にのしかかり、腰にまたがる。 「そこからでも見えます?キスしてからだいぶ時間が経っているのにずっと下着の中がぐしょぐしょです。さっきから切なくて切なくて早く繋がりたいっていってるんです でもちゃんとあなたにも感じて欲しくてずっと我慢してたんですよ?もうおあずけされるのは沢山です」 下着をわずかにずらし、秘部をあらわにさせそのままゆっくりと腰を落としていく。 先端から徐々に自分が久野の中に包まれていく。彼女の秘部は大量の汗をかいたように濡れぼそり、溢れ出る愛液が触れ合う肌を通して自分へと伝ってくるのが分った。 706 :名無しさん@ピンキー [sage] :2008/12/28(日) 03:56:15 ID:LjD7YQ3b 「感じますよ、ちゃんと感じます。少しまだほんのさきっぽだけなのにこんなに気持ちいいですよ。んぁ、もう一気にいっちゃいます」 すとんと一気に腰を落とす。同時に自分の全てが包まれた感覚になり、それが快美な波となり押し寄せた。 久野の顔は初めての性交で痛みを感じているのか、頬を引きつらせながらか細い声で小さくうめいた。 「くぅ、やっ…ぱり、い…たいです…ね。でも、これ…で繋がった…んですよね。夫婦になったんですよね?」 繋がった状態で体重を俺に預けながら、久野は俺を抱きしめる格好になる。 久野の乳首は硬くなっており、それが自分の胸板に擦れる。 「でも、やっぱり痛いからキスしながらしましょう。それなら私耐えられます。いい…ですよね?」 上目づかいで俺を見つめる。頼りなささげに眉をさげながらそんなことを言われると、俺の気持ちは揺らいだ。 それに初めての性交で、繋がったまま。久野は痛いといってはいるが、さっきから俺の分身は彼女の中で締め上げられており、早く動きたいと脈打っていた。 「わかった…から、動いてくれ。もう…どうにかなりそう、だ」 その顔を見て満足したのか、妖艶な笑みを浮かべた久野は再度俺に唇を重ねた。 すぐさま、舌をねじ込ませ俺の舌を求める。舌を絡ませ吸いたてながら、互いの唾液を貪りあう。 荒い呼吸をしながら、重なり、互いがそこにいるかを確かめ合うように求める。 俺は腰をまるで獣のように久野の膣に突き立て、久野はそれに応えるように受け止めた。 心臓が早鐘のように脈打つのがわかる、それは久野も同様だった。 重なり合った胸の鼓動が、しかと感じられた。抱き合って分ったのだが、久野もやはり女性。その体は柔らかく華奢で手荒く扱えば壊れてしまいそう気がした。 意識すればするほど、自分が熱くなるが分る。俺は欲望に身を任せひたすらに久野を求めた。 自分から行為に及んだとはいえ、やはり痛みがあるのか久野は涙をこぼしながら、俺の体をしっかりと抱きしめてくる。 いったん唇をはずし、大丈夫かと声をかける。 「痛くないのか?駄目ならやめてもいいんだぞ?」 「巴、巴って呼び捨ててください。名前を呼ばれるだけで私は気持ちよく慣れるんです。それだけで我慢できます。だからいっぱい呼んでください」 自分が一番辛いのに、それを隠すように弱さを見せない久野、もとい巴のいじらしさが俺にはとても愛しく思えた。 「クッ、もう限界だ。出すぞ、巴」 名前を呼んだ瞬間、膣の中が勢いよく締まり、射精感がさらに高まる。 「でますか?でるんですね?いいですよ、来てください。私を貴方のものにしてください、もっと貴方の色に染めてください」 ピクピクと肉茎が脈打ちながら、関をきったように精液をはきだす。俺は巴の中で果てていた。 「やっと名前で呼んでくれましたね。でも、これくらいでへばってちゃ駄目ですよ。今までお預けをくらっていたぶんをたっぷり返して貰いますからね」 そういうと、射精して間もない俺の肉棒を抜くことなく、またリズミカルに動きはじめる。 「私もアソコで気持ちよくなりたいので、とりあえずそれまで頑張ってください」 たとえそうなったとしても終わらせる気なぞ微塵も感じさせない顔で、巴は幸せそうに微笑んだ。 その顔を見て、俺はあの夢の娘の母が誰なのか分ったようなきがした。 艶めかしい声を上げながら何度も何度も腰を打ち下ろす。あれからすでに何度射精したかなぞ覚えておらず、何時間この状態かも分らない。 それでも巴は俺を求めつづけた。小刻みに腰を揺すりたて、肉壁をきつく締め上げ、何度も何度も。 「まだ、だめです。もっとください。もっともっともっともっともっともっと、いっぱい赤ちゃん産みます。一生気持ちよくしてあげます。 だからもっと私に愛をください。ふたりで愛を育みましょう。少し遅めの私からのクリスマスプレゼントです。 くふっ、うふふふふふふふあははははははははは」 精力剤の効果なぞとっくにきれていたが、射精を終え息子が萎えるとそのたびに前立腺に指を突きたてられ、何度も何度も性交をし続けた。 射精感はあるものの、精子はとっくに打ち止めになっていただろう。それでも巴は求め続けた。より確実に俺を虜にするため。 「幸せにしてあげます。幸せになります。もうやつれなくてもいいんですよ?もう寂しくないですよ?これからはずっと死ぬまでいっしょです」 俺は幸福がなにかは分らなかったが、確実にいえることはこのままではいつか俺は干からびるということだ。 それでもなんとなく、こんな生き方も悪くないのじゃないか、と思い始めていた。

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