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26 :お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] :2009/02/08(日) 15:11:05 ID:6wXpe8Cc  第4話『ゴミ漁り』  るんるん♪ るんるん♪ るんるん♪  と、軽く鼻歌を歌いながら私は忍さんに食べてもらうための料理を作っていました。 毎日、コンビニ弁当ばかりだと栄養に悪いです。そんなもん食っていると早死にしますよ。  そんな他の女が手を加えたかもしれないコンビニ弁当よりも、私が作った愛情たっぷりのお弁当を食べて欲しい。  男の人は女の子の手作りのお料理に弱いと聞きます。私と忍さんは何の接点もないし、会う機会すらもないに等しい。 だけど、隣人の私が少し多めに作った料理を彼に差し入れしても、別に不自然ではない。  隣人と良い関係を築くことは大切。更にステップアップして、友人というカテゴリーに入れば問題ないですし。  それに、忍さんを放っておけなかった。  モニターの画面でテレビも付けずに寂しく食べている彼の姿なんて見たくなかった。  一人で食べる御飯が美味しくないのは私がよく知っているから。    よし、頑張って。作ったこれを手渡そう。  大丈夫。きっと、受け取ってくれるはずだから。  私は勇気を出して、インターホンを押した。  今晩の夕食を食べている最中にインターホンが鳴り響いた。こんな夜更けに一体どこの誰が俺に用があるのだろうか。  冷静に考えても、この時間帯のアパートの外門は完全に締めているのでババアや  このアパートの住人の彩さん以外の来訪者が訪れることはできない。  となると、来訪者は。  俺は急いでドアを開けると、予想通りの人物がそこにいた。 「あ、あ、あの。これちょっと多めに作りすぎちゃったんで。よかったら、どうぞ」  彩さんは朝も着ていたピンク色のエプロンを着て、更に両手にはお鍋みたいなものを持っていた。 「いいんですか?」 「ええ。女の子の独り暮らしだもん。そんなに食べれませんから」 「本当に助かります。ありがとう」 「いいえ。どういたしまして」  俺の今まで人生を振り返っても、女の子がわざわざ手作りの料理を渡しにやってきたことはあっただろうか?   青春時代に起きなかった伝説のイベントが発生していることに心から歓喜する。 「周防さん。そのコンビニ弁当ばかり食べていたら、体に毒ですよ。もう少し健康に気を付けてください」 「う、うん?」 「また、たくさん作っちゃったら。食べてくださいね」 「ええ。いつでも持ってきて」 「では。お休みなさい」 「ああ。お休み」 27 :お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] :2009/02/08(日) 15:14:33 ID:6wXpe8Cc と、二人は就寝の挨拶を交わした。  俺は彩さんから受け取った鍋を持ちながら、少し疑問に思ったことがある。  どうして、彼女は俺がコンビニ弁当ばかり食べていることを知っているんだろうか。  昨日、出会ったばかりなのに。  まあ、独り暮らしの男性が食べる寂しい夕食は大抵はコンビニ弁当とか買ってきた物が多いかもしれない。 「気のせいか」  俺は彩さんから差し入れた料理を有難く食べていた。  その最中に携帯が鳴り響いた。  着信主は、バイト先の女の子だった。  バイト先の女の子から連絡が来るのは本当に珍しい。仕事関係の都合上、  何かの連絡があるからバイト仲間から電話番号とメルアドを互いに教えていたのだが。  こうやって、何かの連絡が来るのは滅多にないことだ。  ともあれ、食事中だったので仕事関連の話題は避けたかったが。仕方なく出ることにした。 「もしもし」 「あっ。先輩!!。私です。瑞葵ですよ」 「どうしたの? 相沢さん」  バイト先の仲間である相沢瑞葵(あいざわ みずき)さんから電話をくれるとは一体何事であろうか。  よからぬ予感がする。 「私、もう我慢ができません。あの店長を東京湾の冷たい水をお腹一杯飲ませてやりましょう。  混沌の海の中で暗黒のスカイダイビングです!!」  海の中ではただのダイビングだと突っ込む前に瑞葵の早口言葉はその隙を与えることなく続いていった。 「いいですか。あの店長は女の敵です。私の数億の価値にあるお尻を嫌らしい手で触ったんですよ。  本気で万死に値する!! 店長には雇われ店長の価値もないので、鋸とやら鉈とか用意したので  先輩が殺人許可さえあれば、今すぐに殺しに行きます!!」 「行かなくていい!! ってか、数億のお尻じゃねぇだろう」 「うふふ……。胸の内から溢れてくる乙女の想いを消し去るなら、ロケットランチャーとか、対人戦闘用兵器を用意しないと無理。  後、それなり現実的な金額があれば3秒ぐらい落ち着きますよ」 「頼むから落ち着いてくれ」 「店長バラバラ殺人事件の主犯になってくれるなら、私は喜んで冷静で知性的な女性になろうと思います」 「誰がそんな事件の主犯になるか」 「ちっ。とんだチキンだぜ!!」  何が悲しくて後輩が勝手に犯した事件の主犯にならなきゃいけないんだ?   すぐに電話を打ち切って通信拒否にしたい気分になったが、当の本人から用件を聞いていない。 「ただのアホ話なら付き合わんぞ」 「あっ。待ってください。今日は先輩にお礼を言いたかっただけなの!!」 「お礼と言われても、あの店長に無理矢理に口説かれている所を助けただけだぜ」  今日、あの店長に5回も叱られた内の一つに、後輩の相沢さんを助けたことも含まれている。  セクハラに近い行為を行っていたので、ワザとらしく邪魔をしてやった。それだけのことである。 「すみません。私のせいで店長に目を付けられることになってしまって」 「いつものことだ。気にしなくていい」 「先輩。店長がどれだけあなたに酷い噂を流しているのか知っていますか?   あいつは、親を殺して少年院から出て来た殺人犯なんてことを言っているんですよ」 「そんな噂を誰も信じないって」  バイト先の店長が俺の事情を自分の情報網で調べ上げたのであろう。  多額の借金を抱えて自殺した両親などと言った話題はすぐに耳に入るはずだ。このような話題を少し改変し て流す理由は簡単。働くバイト先は主に女の子の方が多い。  少しだけ女の子に格好いい所を見せたいと思う、店長のくだらない自己顕示欲が強いおかげで、  他のバイトの男性達をバカにする傾向がある。女の子たちの前で男性従業員たちの失敗談を語り、  自分がどれだけ優れていい男なのか語りだす。  正直、聞かされている側はかなり嫌なのだが、社長の甥にあたる店長に逆らえる人間はいない。  当然、そんな環境で辞める人間はたくさんいた。  すぐに代用品が補充されるので、何事もなく店長の独裁は続いている。 「でも、私はそんなの嫌です。初めてのバイトで緊張していたばかりの私をいろいろと助けてくれた先輩が悪く言われるのは本当に嫌」 「別に助けてもらったと言われても、相沢さんの研修を俺が無理矢理に押し付けられただけなんだけどな」 28 :お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] :2009/02/08(日) 15:15:38 ID:6wXpe8Cc 「それでも、先輩は私が一人できるようになるまで最後まで色々と面倒を見てもらいました。  ゆえにその先輩を傷つけるあのクソ店長に伝説の瑞葵スペシャルをお見舞いしようと思います!!!!」 「また、そこに話が戻るのか……」 「私たちが殺人犯だ!!!!」  これ以上は共謀罪が適用される展開に発展するのを恐れて、  俺はとっと携帯電話の電源を消した。  瑞葵よ。  もし、あの店長を殺すと言うならば、俺は裁判所でこう証言してやろう。  相沢瑞葵の殺意は本物だ!!  と。  電話をしている間に隣の彩さんから頂いた料理が冷めていた。  相沢さんと喋っているといろんな意味で疲れる。夕食を食べる気力を失ったので、  朝食にでも温めて食べるとしよう。  それに明日はゴミの日だから、今の内にまとめて捨てておこう。カラスがゴミ袋を破ったとしても俺の責任じゃないし。  と、俺はせっせとゴミを捨てに行っていた。 29 :お隣の彩さん ◆J7GMgIOEyA [sage] :2009/02/08(日) 15:17:37 ID:6wXpe8Cc  むむむむむむっっっっ。  これは。  一体、何事ですか!!!!  忍さんが私の愛情を込めた料理を食べて、好感度が急上昇する予定だったのに。  あの電話のせいで目論見は完全に崩されました。  これは許してはいけない。許すわけにはいきません。  携帯電話の主と忍さんの会話は盗聴器のおかげで内容はほとんど把握しているけど。  あの女め。  私の忍さんに馴れ馴れしく長話しやがって……。  私だって、忍さんにそんな風に親しく話したことはないんですよ。ただの隣人。それだけの関係。友達にもならない存在だから。  忍さん。あの子のことが好きになのかな?  私と一緒にいる時よりも楽しそうに喋っていた。明るそうな表情を浮かべているところなんて、今まで見たことがなかったよ。  バイト先の先輩と後輩の関係。  隣人と隣人の関係なんて紙屑のようだ。 「負けません。相手が誰であろうとも。私は忍さんの事が好きです。大好きだから、他の泥棒猫なんかに渡したくないもん」  今まで何かに執着することはなかった。何を望んでも、欲しい物は手に入らなかったし、私ごときが何かを望むのは滑稽だったから。  だけど、忍さんのことだけは絶対に譲らない。  例え、神様であろうとも。  神様は私に残酷な果実だけを私にくれる。他の者には絶対的な幸福の果実を与えるくせに。  ならば、私の幸せは自分で掴まないとダメだ。  私を不幸のどん底に突き落とす神なんかいらない。  そんな、神なんて。  消えちゃえ。  殺すには武器が必要です。神を殺す程の強力な武器が。   「もしもし、鋸を20丁ぐらいお願いしたいんですけど。はい。金属は伝説のオリハルコンでお願いします。  主に殺傷性の方を強化してください。人の首をたやすく切れるように」  さて、武器は1週間以内に届くことでしょう。これさえあれば、鬼に金棒です。  おや。  しばし、監視していない間に忍さんはゴミ分別をしていた。  そういえば、明日はゴミを捨てる日だったんですね。昨日引っ越してきたばかりの私ではゴミの収集日なんかわからないし。  はっ。  ゴミ!!  よくよく考えると忍さんの個人情報がたっぷりと入ってるはず!!  私にとってはゴミではなく、生涯の宝物です。  深夜。  誰にもバレないように忍さんを捨ててきたゴミをこっそりと自宅に持ち帰った  私はお腹を空かせたどら猫のように漁っていた。ゴミ袋の中はコンビニ弁当や冷凍食品やインスタント食品ばかりが入っていた。  本当に忍さん。こんなものばかり食べていたら、体に悪いですよ。  私が毎日栄養のあるおかずを差し入れしなくちゃいけませんね。  ある程度漁っていると携帯の支払い請求書が目に入ったので、中身を見てみると。  忍さんの携帯電話番号とメルアドがそこに書かれていた。  ( ̄ー ̄)ニヤリッ  電話番号とメルアドGETだぜ!!

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