「依存監禁 後編」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

依存監禁 後編」(2009/03/13 (金) 12:23:52) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

474 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:19:43 ID:uW+JVrvT 泣き声が聞こえる。透歌さんの声だ。 僕は暗闇の中、そっと目を開く。 ベッドの上には僕と透歌さんの二人。二人とも、事後のまま全裸。 僕の手足の拘束は解かれていた。どうやら僕が眠りに入った後、手足の拘束を解いてくれたらしい。 代わりに、いつも通りに、首に首輪がはめられていて、首輪に繋がれたロープがベッドの端にくくりつけられている。 透歌さんは僕が逃げ出してしまう事を、極端に恐れる。 僕がどれ程、透歌さんに対して何処へも行かないことを約束しても駄目だ。 透歌さんは僕に繋いだ拘束を解きはしない。 「雄一・・・捨てないで・・・行かないで・・・」 透歌さんがベッドの端ですすり泣いている。 こうやって時々、透歌さんは夜中に泣き出す。 雄一に捨てられた悲しみに心が耐え切れず、病んでしまった彼女の心が悲鳴を上げる。 「透歌さん・・・大丈夫?」 僕は透歌さんに声を掛ける。透歌さんはベッドの端で身体を丸くして、すすり泣いている。 僕は透歌さんの肩に手を置き、肩を震わせて泣いている透歌さんに寄り添う・・・。 「雄一?雄一なの?」 振り向いた透歌さんは、涙でボロボロの顔を僕に向ける。 僕はその透歌さんの泣いている顔を見つめながら、あの時の事を思い出さずにはいられない。 あの日、心配になった僕が、透歌さんをこの部屋で、部屋の隅で蹲って泣いているのを発見した日。 あの時も同じように、僕は透歌さんに声を掛けた。 そして、今この時のように透歌さんは虚ろな瞳のまま、涙を流し続け、雄一を呼んでいた。 「僕はここにいるよ、透歌さん。何処にも行かないよ・・・」 僕はあの日、あの時と同じように最愛の人に対して残酷な嘘を吐く。 僕は雄一。透歌さんがずっとずっと人生をかけてまで尽くしてきた幼馴染。 透歌さんが昔から恋焦がれてきた人間。 透歌さんの愛情を一身に受けてきた人物、佐伯 雄一。 そう、自分をだまし続ける。 「雄一ぃ・・・。どうして私の元から居なくなったりしたの?雄一は私が居ないと何も出来ないじゃない。 雄次ちゃんもそう言ってたでしょ?雄一は私の傍にいるのが幸せなの。 居なきゃいけないの。私と、雄一と雄次ちゃんと3人で、ずっとずっと過ごしていくの」 透歌さんの言葉に自分の心が酷く痛むのが判る。 475 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:23:14 ID:uW+JVrvT じゃあ、この状態はなんだ?どうしてこの部屋に居るのは透歌さんと雄一だけなんだ? 雄次は?雄一の弟は何処に居る?・・・何処にもいやしない。 透歌さんをずっと慕っていた雄次という人間は、透歌さんを手に入れる代償に、彼女から認識されなくなってしまった。 「ごめんね、透歌さん。あの子の事は気の迷いだったんだ。 僕には、透歌さんがいればそれでよかったのにね。・・・本当にごめん」 僕はやさしく透歌さんを抱きしめる。 透歌さんは身体を少し震わせた後、僕の胸に顔を埋めて、嗚咽を吐き出し始めた。 「雄一ぃ・・・。どこにも行っちゃ駄目だよぉ・・・。雄一の面倒は私がずっと見続けるんだから・・・。 雄一はずっと私の傍に居なきゃだめだよぉ・・・雄一は一人じゃ何も出来ないんだから・・・私がいなきゃ駄目なんだから」 その言葉に、僕は胸に込み上げる感情を必死に押さえ込む。 下手すれば透歌さんを罵ってしまいそうなる。それだけはやってはいけない。 ・・・でも、どうしても思ってしまう。 “透歌さんこそ雄一に依存しているんだ”と、“雄一が居なくなっちゃ駄目なのは透歌さんじゃないか”と。 透歌さんが雄一に逃げられたのは、その依存心のあまりの強さだ。 こうして、透歌さんに監禁されるようになってからは良くわかる。 透歌さんは口では雄一が自分に依存しているような事を言っているが、実際、雄一に強く依存しているには透歌さんだ。 依存され続けている方は、その重さに耐え切れなかった。 だから兄の雄一は、透歌さんの自分への気持ちを知りながら、別の女の子に走った。 「雄一の為なら何でもしてあげる。雄一の望む事なら何でもしてあげられるよ。 ね、だから何処にも行かないでね?」 透歌さんは顔を上げる。 相変らず、その瞳には僕の姿は映っていない。暗く濁っているだけだ。 僕は、目の前にある透歌さんの唇を思わず奪ってしまう。 普段は、奪うばかりだからか、透歌さんはわずかに瞳を開き、驚く。 僕は、透歌さんの唇を奪いながら、思い出す。 俺の名前は雄次だ。 俺は2歳年上の幼馴染、透歌姉さんが一人暮らしをしているアパートの一室の前に来ていた。 透歌姉さんとは子供の頃からの旧知の仲だ。 昔、我が家の近所に住んでいた透歌姉さんは、何かと家を留守にしがちな俺たち兄弟の親に代わり、世話を焼いてくれた人で、俺にとっては本当の姉のような存在だ。 476 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:25:52 ID:uW+JVrvT 昔から色々と世話を焼いてくれる透歌姉さんの事が好きだった。 何事にも完璧。器量よしで性格良し。お淑やかで物腰が柔らかで。加えて容姿端麗と来ていれば非の打ち所が無い。 そんな超絶美女が昔から自分の世話を焼いてくれるのだ。好きにならないわけが無い。 ・・・が、俺は知っている。透歌姉さんが世話を焼くのは、俺の為じゃない。 あくまで、透歌姉さんが愛する俺の兄、雄一の為だ。 兄の雄一と俺は正反対の性格だ。 2歳の年の差がありながら、容姿も、身長も全くうり二つな俺たち兄弟だが、性格はまるで正反対だ。 雄一は、何事も引っ込み事案で優柔不断。頼りない、というのがぴったりな性格。 生活力なんか皆無でいつも透歌姉さんに世話を焼かれている。 透歌姉さん曰く、「雄一はお兄さんなのに危なっかしくて見ていられない。だから私が面倒を見てあげなくちゃ生きていけないの」だそうで。 対する俺はその正反対。 口は悪いが、やる事はやる。はっきりすっきりした性格。 昔から透歌姉さんに手取り足取りどっぷり世話になっていた雄一とは違う。 透歌姉さんを少しでも助けようと、掃除、洗濯、料理を覚え、透歌姉さんの手伝いを進んでやってきた。 精神的にも家庭的にも自立している俺は、透歌姉さんに依存せず生きてきた。 ・・・しかし、よくよく考えてみれば、自分が居なきゃ生きていけそうに無い兄の雄一と、自分が居なくても大抵の事が出来る弟の俺。 世話好きの透歌姉さんが、どちらをより愛するようになるかは自明の理だ。 透歌姉さんは雄一が好きだ。自分を必要としない俺なんかより、自分を必要とする雄一を愛してる。 世話を焼き、毎日、スキンシップという名の過剰なアピールをかける。 俺はそれを毎日眺めながら、失恋の痛みに胸を苛まれつつも、大好きな姉と兄の二人を憎めない。 兄の雄一はあんな性格だが、それでも世間一般の兄弟とは違って仲はよかった。 なんだかんだ言って3人で支えあって生きてきたのが大きかったのかも知れない。 俺は自分の気持ちを胸に押し込め、二人がいつか結ばれるのを影ながら応援してきた訳だ。 その俺は、いま、透歌姉さんの住むアパートのドアを前に立ち尽くす。 チャイムを押しても返事は無い。 ・・・意を決して、ドアを開ける。鍵は掛かってない。 部屋の中は薄暗い。俺は透歌姉さんの姿を探す。 ・・・いた。透歌姉さんの寝室の隅、薄暗い室内で蹲っている透歌さんがいる。 477 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:27:54 ID:uW+JVrvT 透歌姉さんは泣いていた。肩を震わせて。 俺は透歌姉さんのその姿を見て、自分の予想が的中したことを知った。 ・・・透歌姉さんは大好きな雄一を、別の女に盗られてしまった。 最初に、兄の雄一が彼女を作ったと本人の口から聞かされた時、俺はそれが透歌姉さんの事だと思い、嬉しいような、悲しいような微妙な気持ちになったのを覚えている。 が、それが透歌姉さんの事では無く。何処とも知れない同級生の女生徒だと知ったときは唖然とした。 その事を本人に確認した俺は、雄一の口から、 「僕の付き合っている人は透歌さんじゃないよ・・・同じ部活の女の子だよ」 と聞かされた瞬間、発作的に雄一を殴り飛ばした。 ・・・許せなかった。 雄一だって解っていた筈だ。透歌さんが自分を好きなことくらい。 透歌さんが自分を必要としていることくらい。 透歌さんは自分が居なきゃ生きていけない人だって事くらい。 が、奴はあろう事か、 「ごめん、雄次。透歌さんの気持ちは知ってるし、雄次が透歌さんを好きなことも知ってる。その上で、僕と透歌さんを応援してくれた事も」 俺は頭に血が上って冷静ではいられないまま、雄一の胸倉を掴むと、憤怒の形相のまま雄一に叫んだ。 「俺が、透歌姉さんを好きだから、俺に透歌姉さんを譲ってやるってか!?ふざけんじゃねえぞ!!てめぇ、透歌姉さんの気持ちを何だと思ってやがるんだ!」 確かに俺は、透歌姉さんの事が好きだ。もしも、彼女が雄一ではなく、俺のほうを見てくれたら・・・と思ったことは何度もある。 けれど、透歌姉さんが好きなのは雄一だ。 それは変えられない事実。そして、無視してはいけない透歌姉さんの気持ち。 だから、俺は透歌姉さんを傷つけないために、自分から身を引いたんだ。 なおも激昂する俺に、アイツは胸倉を掴まれたまま、すまなさそうな表情を浮かべ、俺の言葉にゆっくりと反論してきた。 「違うんだ。そうじゃないんだ、雄次。そういうつもりじゃあ無いんだ。僕が・・・僕が透歌さんの気持ちに応えられない・・・疲れたんだ。 透歌さんに依存されるのが。重いんだよ。彼女の気持ちが」 俺は、その場で絶句した。 ・・・重い?何を言ってるんだ、こいつは。 透歌姉さんの気持ちが重いだと?・・・万年、透歌姉さんに世話をされているお前が? 透歌姉さんが居ないと、まともに生きていけそうに無いお前がか!? 「ふざけんな!」 478 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:30:46 ID:uW+JVrvT 俺は感極まって、再び雄一を殴りつけると、その場を後にした。 その時、俺が考えていたことは、もう遠慮はしない。という事だった。 雄一が透歌姉さんを捨てても、俺は絶対に透歌姉さんを捨てない。 そうだ、透歌姉さんが雄一の事が好きでも、その気持ちは絶対に叶わなくなった。 だったら、俺が何とか透歌姉さんを振り向かせる事もできるんじゃないか? 透歌姉さんだって失恋したんだ、こっちを見てくれてもいいんじゃないか? ・・・なんて、自分の考えが甘いと知るのに、時間はかからなかった。 台所の隅ですすり泣く透歌姉さんに駆け寄ると、俺は、透歌姉さんの肩を掴み、声をかけた。 「透歌姉さん・・・大丈夫か?」 振り返った透歌姉さんの顔は涙で酷い状態だった。 心がギシリと痛む。これほどになるまで透歌姉さんは、心を病むほどに雄一のことを愛していた。 雄一から彼女が出来た事を聞かされた直後の透歌姉さんは、最初こそ動揺していたが、すぐにいつもの透歌姉さんに戻っていた。 曰く、「雄一の事だから、数日もしないうちに彼女に捨てられるに決まってる。だって、雄一は私が居ないと駄目なんだもの」らしい。 目は笑っていなかったが、数日のうちは、いつもの透歌姉さんのままだった。 俺は、雄一が透歌姉さんのもとに戻って来ないのを願いつつ、どうやって姉さんを振り向かせようか考えていた。 ・・・振り返った透歌姉さんの目は暗く、濁っていた。 「雄一・・・?雄一なの?」 透歌姉さんが、俺と雄一を見間違えた事なんて全く無い。 赤の他人が見ればそっくりで見分けの付かない俺たち兄弟であっても、 ずっと昔から一緒だった透歌姉さんにかかれば、容易に見分けが付くものらしい。 その透歌姉さんが俺と雄一を見間違える。 俺はそれに動揺を隠すことが出来ない。 「透歌姉さん、俺は・・・雄次だよ。あはは、姉さんが見間違えるなんて珍しいよね・・・」 さらに俺は、目の前の透歌姉さんの異様な様子にも動揺していた。 俺の事を雄一と誤認しただけじゃない。 普段の手入れの行き届いた綺麗な黒髪は乱れ、透歌さんがお気に入りだと言っていた服は汚れている。 どれくらい泣いていたのだろうか、頬には涙の後がくっきりと残っていた。 そして、透歌姉さんの手には、包丁が握られていた。 479 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:32:30 ID:uW+JVrvT 「あはははは。雄一、なに言ってるの?私が雄一と雄次ちゃんを見間違える訳無いじゃない。 雄一はわたしの事が心配で、私の元に戻って来てくれたんだよね?あの子を捨てて。ね?そうだよね?」 雄一は透歌姉さんが期待していたように、戻って来る事は無かった。 後から知った事だが、雄一とあの子が付き合い始めたのを知ってから、透歌姉さんは二人で過ごしている様子を度々監視していたらしい。 その、つまり、雄一をストーキングしていた訳だ。 「ね、あんな子より私の方がいいよね?あんな子とエッチな事するんだったら、私に言ってくれればもっと気持ちよくしてあげられるよ?」 透歌姉さんは二人の同棲先を突き止め、そこに無断で進入し、二人の生活を覗いていた。 ・・・透歌姉さんの予想を外れ、幸せそうな雄一を見ているうちに、透歌姉さんの心は見事に壊れてしまったらしい。 そして、その雄一を認めたくない透歌さんは、心の中から雄次という存在を消し、自分に惚れている俺を雄一として置き換えた。 「あははは。もし雄一が私の事を捨てたままで戻って来なかったら、この包丁で死ぬつもりだったんだよ? ・・・でも、雄一はちゃんと私の元に戻ってきてくれた。やっぱり私がいなきゃ雄一は駄目だよね。 今回の事は忘れてあげるから、もう絶対、私の元から離れちゃ駄目だよ?」 そして俺は、透歌姉さんの手首に残った複数の躊躇い傷を見て・・・自分の選択肢が、たった一つしかないことを理解した。 俺が、いや、僕が雄一になればいい。 それが最善の選択だ。 透歌さんだってそれを望んでいる。 僕は透歌さんが欲しい。 だったら、拒む理由も無い。 僕は透歌さんが好きだ。だったら、なんの問題も無いじゃないか。 例え、透歌さんの心が病んでいても、僕に透歌さんを拒むことは出来ない。 僕は透歌さんの身体を抱きしめると、耳元で囁いた。 「ごめんね、透歌さん。もう二度と透歌さんの傍を離れたりしないよ。・・・僕には、透歌さんさえ居ればいいから」 そうだ。雄次なんて人間はいなかったんだ。 僕はこれから雄一として生きていく。 「ありがとう。雄一。ずっと一緒だからね・・・ずっとずっと絶対に離さないからね?」 透歌さんが涙交じりで、でも心底安心しきった声で僕に語りかける。 僕は透歌さんの顔を見つめる。 その眼は焦点があって無い淀んだ瞳で。 480 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:34:50 ID:uW+JVrvT 泣きとおした涙の筋は、透歌さんの顔を汚して。 髪はボサボサで、美しかった透歌さんの顔は、雄一に捨てられたショックでひどく汚れていた。 ・・・けど、その表情は心底安らいでいて、僕は例え自分を騙してでも、この表情を守った甲斐があるような気がした。 「透歌さん、立てる?・・・包丁は置いておこうね」 僕は透歌さんが持つ包丁に手を向けると、透歌さんはおとなしくそれに従ってくれた。 包丁を台所に置くと、こんどは透歌さんに手を差し出す。 透歌さんは差し出された僕の手を見て、微笑みを浮かべる。 そして、すがりつくように僕の右腕につかまる。 「とりあえず、顔を洗おう?・・・服も着替えないとね」 透歌さんは、僕の右腕にすがりついたまま、何も言わずにただ黙って頷いてくれた。 僕は、透歌さんの体を支えながら、洗面所に向かう。 ・・・洗面所で顔を洗う透歌さんを見ながら、僕は自分の愚行を悔いていた。 透歌さんは、雄一の事が忘れられずにストーカー行為に及び、さらにはそれによって、本当に雄一が自分の元を去ったのだという現実を知り、ひどく打ちのめされ、こうして心を病んでしまった。 それなのに、自分はこの数週間、透歌さんをいかにして自分の方に向かせるか、という命題に固執し、肝心の透歌さんの異変に気づけないでいた。 本当に馬鹿だと思う。 大切な女性を振り向かせたいばかりに、大切な女性の異変に気がつかなかった。 だから、これは罰なのだ。 僕はこれから雄一を演じていく。透歌さんが望む雄一を。 そして、いままでの鈍感な雄次を消去する。それが、僕なりの彼女への償いだ・・・。 「・・・透歌さん?」 ふと、洗面所の方を見ると、そこで顔を洗っているはずの透歌さんがいない。 顔を洗い終わったのかな? 僕は透歌さんの姿を探す。 ゴスッ。 鈍い音と共に、自分の頭部に鋭い痛みが走る。 衝撃に僕の体は床に崩れ落ちる。 「ぐっ・・・はっ・・・」 何だ!?何が起こったんだ? 混乱する僕は、床に突っ伏しながらも、顔を見上げ、自分の頭を痛打した人物を見上げる。 見れば、透歌さんが手に花瓶を持っている。 それで僕の頭を殴ったのだろうか? 481 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:36:43 ID:uW+JVrvT 「もう二度と放さないよ、雄一。これからは私がずっと面倒見てあげる。雄一は私がいなくちゃ生きていけないんだから。そうでしょう?・・・だから安心して。 朝から晩まで、ううん。これから雄一が死ぬまで私がお世話をしてあげる。 ・・・だから、雄一は私だけを見て、私だけを愛して? ・・・ご飯も私の作ったものだけ食べてね。あんな子の作ったまずいご飯なんて口にしないで。 ・・・エッチも私とだけしよう?私、まだ処女だけど、絶対にあんな子より雄一を気持ちよくできると思うの。 ・・・これからは私とだけ話そうね。もう雄一は周りに気を使うことも、他人との関係に悩んだりする必要もないよ。 ・・・トイレもお風呂も私が一緒に行ってあげる、欲しいものがあったら私が全部買ってきてあげるよ? ・・・あ、でもエッチなのは駄目だからね?そういうのは私だけがいればいいんだからね? ・・・これからずっと一緒だよ。ずっとずっと・・・絶対にあんな子に渡さない。渡すもんですか! 雄一は私のモノなの、ずっとずっと・・・あははっ、ははははははっ! あはははははははははははははははっ!あはははははははははははははははははははっ!」 意識が遠のく。 薄ら暈ける視界に映った透歌さんは、狂喜の表情で笑い続けていた。 僕は透歌さんの狂笑を耳に、意識を手放していった。 透歌さんに口づけしながら、今の自分がこの現状に陥った原因を思い出していた。 と、僕の両肩に透歌さんの両手がかかる。 ぐい、と透歌さんをやや押し倒し気味にしていた僕の体が押し戻される。 僕と透歌さんの唇が離れて、今度は逆に透歌さんに僕の体が押し倒される。 「雄一はキスしたいの?だったら、雄一は何もしなくてもいいの。私がいっぱいキスしてあげるから・・・ね?雄一は私に甘えてるだけでいいんだから」 そういって、透歌さんは僕の体を押さえつけたまま、唇を奪う。 まるで僕の意思なんか関係ないと言わんばかりの、凌辱にも似た口づけ。 透歌さんは、雄一に捨てられて以来、過剰に僕に奉仕する。 いや、奉仕というより、ただ僕という人形を相手に、お世話ごっこをしているだけだ。 「んはっ・・・。どうかな?気持ちよかった?次はどうしたい?まだまだキスしたい? それともいつものように・・・する?あはは。雄一が望む事だったらなんでもするよ?」 僕が望むこと、それは昔の、憧れだった透歌さんに戻ってほしいという事。 そして・・・出来れば雄一としての僕では無く、雄次としての俺を愛して欲しいという事。 でも、きっとそれは叶わぬ夢だ。 482 :依存監禁 後編 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/03/13(金) 00:39:29 ID:uW+JVrvT 僕はこれほど透歌さんを愛している。尽くしている。 こうやって透歌さんに監禁されている今でも、透歌さんを憎んだことはない。 だから、報われてもいいんじゃないかと思う。僕の思いに答えてくれても良いと思う。 けど、きっとこの思いは報われない。 だってそうじゃないか。 あれほど雄一に尽くしてきた透歌さんでさえ、その思いが報われなかったのだ。 「僕は・・・ずっとずっと・・・透歌さんの傍に居たいよ」 だったら、せめて虚構の現実であっても、透歌さんには、彼女が望んでいたものをあげたい。 雄一は透歌さんと、いつまでも一緒にいることを選んだ。依存されることを望んだ。 そういう、透歌さんが望んだ世界を。 ・・・僕の言葉に透歌さんがはにかむ。 相変わらず病んだ、くすんだ瞳で僕に笑いかける。 「ありがとう、雄一。ずっとずっと一緒だよ」 透歌さんの唇が、再び僕の唇に重ね合わされる。 ・・・いつまで、この関係が続くのかはわからない。 ある日、不審に思った家族が訪ねてきて、事が露見する可能性。 ある日、透歌さんが僕を雄一として認識しなくなり、俺が捨てられる可能性。 ある日、透歌さんが俺を雄次として愛してくれる可能性・・・は無いかな。 でも、僕は決して透歌さんから離れない。・・・絶対に。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: