「Chains of pain第六話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

Chains of pain第六話」(2009/04/26 (日) 22:00:25) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

384 :Chains of pain [sage] :2009/04/26(日) 02:59:53 ID:guM7tZHm いつもと何ら変わらない朝。 僕はいつもの様に窓の外を見た。 外は晴天、今日は憂鬱にならなくて済みそうだ。 さて、朝七時ジャスト、いつもよりも三十分は早い。 ゆっくりしていても十分間に合う時間だ、 このままもう一度寝てしまっても良いが折角早起きしたのだ、 落ち着いた朝を過ごすとしよう、とりあえず着替えることにする。 体を動かした瞬間、自分の指が何かに触れた。 「…………って、優花、どうしたの!?」 そこにはパジャマ姿の優花が幸せそうに寝息を立てていた。 優花は寝返りを打つと、僕の腕にしがみついた。 「……う……ん、えへへ……お兄ちゃん……すー……」 そういえば優花は寝ているときいつも僕の名前を呼んでいる気がする。 別に不快ではないが、時々考えることがある、優花は普段一体何を 考えてすごしているのか、だ。 僕の記憶の中で、優花が友達の話をした事は滅多にない。 優花に友達がいる事は知っている、というか多すぎるぐらいだ、 妹のこの性格を考えると、誰からにでも好かれることだろう。 しかし、寝言にしてもいつも口にするのは僕について、 まさか学校でさえそうとは思わないが、それでも時々わからなくなる。 そもそも反抗期とは家族から反抗したくなる時期だ、 親が普段家に居ないとはいえ、僕だって例外ではない。 本来であれば優花は僕を鬱陶しく思って目も合わさないだろう。 しかし、なぜかそうはしないのだ。それどころか日に日に優花の 僕への接し方は別な意味で変わってきている。 具体的に言うと、最近では家に居る限り優花は必ず僕の傍にいる。 大体三日前だろうか、僕がソファーに座ってテレビを見ていると、 優花は飲み物を持って僕の隣に座った。 それに二日前にしてもそうだ、僕が昼寝をしていると、 優花も同じ布団に入って昼寝を始めた。 さすがに違和感を覚えて、その時試しに僕は優花に質問してみた。 『なんでそんなに優花は僕にべったりなの?』と…… すると優花は、 『あたしがお兄ちゃんにべったりしたら嫌、かな……』 なんて悲しそうな顔をしながら言った。 僕はそのとき『別に嫌じゃないよ』なんて笑いながら言ってあげたけど、 正直僕には不快という感情よりも疑問に感じた方が強かった。 果たして優花は僕のことをどう思っているのだろうか、 親への愛情が僕に向いてしまっているだけ? それとも裏があるのだろうか? まさか恋愛感情? ……いや、それは百パーセントありえない。 しかし、それを今考えたところで、本人に聞かない事には答えなんて 知ることは出来ない。 今はただ、普段通りにすごす他ないのだ。 「優花……ほら朝だよ、優花だって学校あるんでしょ?」 優花を起こそうとするが起きる気配は全くない。 「……う~ん、ダメだよお兄ちゃん……」 優花の夢の中で僕は一体何をしているのだろうか…… ふと僕は、優花の目の下にうっすら出来ているクマに気がついた。 (優花がクマ? 珍しいな……) 普段何時に起きているのかは知らないが、優花がこんな時間まで 寝ているのは珍しい気がする、さては夜更かしをしたのだろう。 だとしたら優花を起こすのはなんだか悪い気がしてくる。 僕は着替えて朝ごはんを作っておくことにした。 385 :Chains of pain [sage] :2009/04/26(日) 03:00:17 ID:guM7tZHm フライパンを熱して油を薄く引いて卵を割って、水を少し入れてすぐふたをする。 一番簡単な目玉焼きの作り方だ。これはさすがの僕でも知っている。 しかし、それだけでは少ないと思うので、お味噌汁も作ることにした。 朝を三十分早く起きたのは正解というか、ついていたというか…… もし、いつも通りに起きていたら間違いなく朝ごはんはなかっただろう。 そんなこんなで作り終えると、既に七時四十分になっていた。 炊いてあったご飯をお茶碗に盛り付け、二人分をテーブルに並べると、 丁度そこに眠そうな優花が下りてきた。 「……あ、優花。おはよう」 眠そうに目をこすりながら優花はその二秒後に驚いた表情と共に声を出した。 「えっ……もしかしてお兄ちゃんが、なんで……」 そこまで驚かれるとさすがに傷つくなぁ。 「今日は僕が朝ごはんを作ったんだ……自信ないけどね」 驚いた顔のまま目玉焼きと味噌汁と僕を交互に見る。 「お兄ちゃんが……あたしの為に……嘘、だよね……」 そこまで僕は信用がないのだろうか、 僕だって何にも作れないわけではない。 「お兄ちゃんが……あたしの為に……あたしの……」 急に泣き出す優花に、僕はどうしたらいいかわからなかった。 「な……どうしたの、優花? 僕、酷い事しちゃったかな……」 どうしたらいいかわからず、優花に駆け寄った。 優花に座り込んで泣く優花の肩に手を乗せると、優花は僕に抱きついた。 「……ゆ、優花! 本当にどうしちゃったの!?」 「あ、ありがとう……ありがとう、お兄ちゃん……」 何がなんだか良くわからないまま、泣きじゃくる優花の頭を撫る。 しばらく泣いた優花は落ち着き、朝ごはんを幸せそうに食べた。 「うん、おいしいよ、お兄ちゃん」 「……そう? ありがとう、優花。それでも僕はまだまだだね」 「ううん、本当においしいよ、それにお兄ちゃんが作ってくれたんだもん」 そう言われるとなんだか急に照れてくる。 「……お兄ちゃん」 「なに? 優花……」 「ありがとう、お兄ちゃん」 その優花の笑顔が、この晴天の朝より綺麗に見えた。 マンションの一室…… 少女は一人、パソコンとにらめっこをしていた。 そこに映るのは春斗家全ての部屋、様々な角度から映されたその映像に、 死角など存在しなかった。 少女はイヤホンをつけ、その映像を笑いながら見ていた。 もちろん、先ほどの出来事も全て…… 「…………春斗君……」 握り締めた左手で机を思いっきり叩きつける。 部屋に響き渡る鈍い音、そして少女は歯を食いしばった。 「優花ちゃん……あのね、この世界(私と春斗君)にはね、妹でも許されない 事があるんだよ?」 少女は立ち上がる。 そろそろ行かなければならない、春斗を迎えに。 そして少女、七海は予感していた、いつかは自分は優花を…… 現れたデスクトップには笑顔の春斗がいた。 それから数ヵ月後、優花は桜の舞う中、高校の校門をまたいだ。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: