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785 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 15:57:47 ID:1JuYGTjx 「娘を探していただきたいのです」 それが、しがない探偵である私への依頼内容だった。 差し出された写真には、綺麗な黒髪の美少女が写っていた。 名前は小野田春香。今年高校生になったばかりだという。 依頼してきた両親は、年の差が20もあり、二人で建設会社と営んでいるという肩書きをもち、 その印象といえば、父親の方は社長という肩書きには似つかわしくない頼りない感じの髪の薄い初老で、 娘がいなくなったことでかなり動揺しているのか、 その不安げな表情がまた頼りない感じに拍車をかけていた。 それとは、逆に母親の方は凛とした表情が似合う若々しい美女だった。 気品が漂うクールなキャリアウーマンといった印象で、 娘がいなくなったことにも冷静に対応し、私の娘に関する質問にもすべて母親が答えていた。 「娘さんがいなくなってどれぐらいたちますか?」 「一ヶ月ほどです。家出することは何度かありましたが、 これほどまで長い期間はありませんでした。」 「警察には届けを出しましたか?」 「いいえ、私どもの勝手な都合ですが、 経営している会社のイメージや従業員の目もありますので、 この件は穏便に済ましたいと思っています。 ですから、探偵さんもこの事はできるだけ内密にお願いします。 その分の報酬を用意させていただきますので」 まるで、ビジネストークのような口ぶりの母親に、少々面食らいながらも、 私はこの依頼を受けることにした。 誘拐などの可能性もなくはないが、身代金の要求などがないことからみて、 ただの家出騒動で終わるだろうとタカをくくっていたし、 提示された報酬も魅力的な額だった。しかし、一番の理由は、 この「小野田春香」という少女に、 10年前に別れた妻に引き取られた当時6歳の私の娘の面影が浮かんだせいだろう。 だが、この安請け合いが後悔に変わることを、その時の私は知る由もなかった。 786 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 16:06:49 ID:1JuYGTjx 小野田春香の年齢から見て、この手の家出の原因といえば、 思春期にありがちな親への反抗。 もしくは学校でのいじめや進路の問題。 あと考えられるは金か男か?そんな思考を巡らしながら、 依頼主である両親が、参考になればと置いていた娘のアルバムやスケジュール帳に目を通していた。 アルバムは幼少のころからごく最近のものまであり、「小野田春香」の成長の過程が刻まれていた。 しかし、ところどころのページには貼ってあった写真を抜き取ったあとがあり、 その抜き取られたであろう写真の共通点は安易に想像ができた。 このアルバムには娘と父親が一緒に写っている写真が一枚もないのだ。 きっとこれが家出の原因の一つなのだろう。 父親への嫌悪感。年頃の娘ならだれしもがもつ感情だ。 そういえば、両親と面会したあの日、去り際に父親がヘラヘラした苦笑いを浮かべた表情で 「娘がいなくなったのは私のせいかもしれません。私に対する感情が異常なんですあの子は・・・このころはあんなに素直だったのに・・・」 とアルバムの最後のページに貼られた、おそらく「小野田春香」が子供の時にかいたであろう父親の顔と 「将来の夢はパパのお嫁さんになること」という文字を見つめ語っていた。 異常なのは父親を理解できない娘なのか、それとも娘を理解できない父親なのか? それを判断するのは私の仕事ではない。 しかし、同じ親という立場ならどうだろう? 机の上にかざってある幼き日の自分の娘の写真を見ても、 その答えは返ってこなかった。 787 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 16:22:05 ID:1JuYGTjx この町は狭いようで広い。 この町を、いやこの町にいるさえわからない「小野田春香」を私一人で人探しなど途方もなく骨の折れる作業だ。 手がかりは彼女のスケジュール帳に登場してくる人物に手当たりしだいに調べて回ることぐらいしか私には思いつかなかった。 彼女のスケジュール帳に登場してくると思わしき人物は大きく分けて4人。 「父」「母」「友美」そして、最後が「F」という人物だった。 私は「F」という英語で書かれた人物が気になったが、名前がはっきりしている「友美」という人物に目をつけ、調べを続けた。 その結果、「友美」とういう人物は「小野田春香」のクラスメイトの「坂上友美」である事が比較的簡単に調べることができた。 私は彼女の高校に張り付き、下校途中の彼女に狙いをつけ「警察の方からきたものですが・・・」という使い古された言い回しで、 コンタクトをとり、「小野田春香」さんについて話が聞きたいと、カフェに誘導ことに成功した。 「ハルちゃん、ずっと学校きてなくて心配していたんですぅ。もしかしてなにかの事件に巻き込まれたんですかぁ~?」 舌足らずな物言いで坂上友美は心配そうに、その大きな瞳をウルウルさせながら、私に質問を投げてくる。 坂上友美の印象は、まさに今時の女子高校生といった感じで、薄い顔に濃い化粧をして、そのふくよかと表現するには、 軽すぎる太い足を組みかえながら私を見つめている。 「今、それを調べているところなんだ。一番最近、彼女にあったのはいつごろ?」 「えっーと、確か。あの病院いった帰りだからぁ~一ヶ月前ぐらいかな?」 「その時、彼女に変わったところはなかったかい?」 「えー?一ヶ月も前のことなんか覚えてないよー」 「そうか、じゃあ、この彼女のスケジュール帳に書いてある「F」って誰のことかわかる?」 「あ~それはね・・・おじさん、これ内緒だよ?「F」はハルちゃんの彼氏の藤原太志君!」 「藤原太志君・・・「F」。藤原君って君達と同じ学校?連絡とかとれる?」 「友美とハルちゃんと太志君は中学のツレなんだー。携番は知ってるけど、今は無理!」 「無理?どうしてだい?」 「太志君、今、第一病院に入院してるから」 「入院!?どうしてだい?」 「さぁー知らない。自分で調べれば?警察なんでしょ?おじさん」 「あはは、それもそうだね。ありがとう。参考になったよ。あっこれ、おじさんのケーバン。なにかわかったらここに電話してくれないかな?」 「まじ?警察の携番GETだぜー!私、助手やりたいー」 「あはは、高校卒業したら考えてもいいけどね。それじゃあ、頼んだよ」 そういって、彼女のカプチーノ代より大目の金額をテーブルに置けば、私は藤原太志が入院しているという病院にいくために席を立った。 外から店の中の坂上友美を見れば、楽しそうに携帯を取り出ししゃべっているが見えた。 つづきますが、少し時間があくかもしれません。すいません 788 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 17:36:37 ID:1JuYGTjx 坂上友美から得た情報。 スケジュール帳の「F」なる人物が入院している第一病院。 その「F」こと藤原太志は、この病院の外科病棟に入院していた。 彼にくだされた診断結果は、右足首の腱の断裂。 あともう少しで歩けなくなる一歩手前だったらしい。 原因は本人曰く「家の雑草を鎌で除草していた際に誤って足首に刃が当たってしまった」らしいとのことだった。 そんな下調べを入院患者や看護師相手に病院内でおこなったのち、 私は彼の病室を訪ねてみた。 坂上友美にもつかったように、「警察の方からきたものですが・・・」という言葉と共に。 しかし、右足が吊られた彼は私の言葉に反応もせずに、 雑誌のクロスワードパズルをただ無表情に黙々と解いていた。 そんな彼の横に座り、私は静に言葉を続けた。 「藤原太志君だね?少し聞きたいことがあるんだ。小野田春香さん知っているね?」 彼は答えない 「実は彼女、ご両親のもとからいなくなっちゃたんだ。なにか知ってることないかな?」 彼は答えない 「これ彼女のスケジュール帳なんだけど、この「F」って君のことだよね? だいたいどの月も一週間に3回は君の名前がついているんだけど、 これってなんの日なんだい?デートした日とか?彼女なんだろ?春香さんは・・・」 彼は答えない。 私はしびれを切らし、彼のために買ったフルーツの詰め合わせをベッド脇に置き 「なんか悪い事きいちゃったかな?・・・あっ、これお見舞い。怪我早くなおるといいね。お大事に・・・」 そういって席を立とうすると、 徐に彼が私に先ほどのクロスワードパズルの雑誌を差し出してきた。 「なんだいこれ?」 彼が問題を解いていたページを見れば、そこには6マスのパズルのマスに「Fは僕じゃない」 そして、5マスのパズルのマスに「ビデオ見て」と書かれていた。 そして、彼のベッドの布団の隙間からビデオテープが私の手に渡される。 その表情は先ほどの無表情とは違うなにかに怯えた表情だ。 彼の行動からこの部屋が誰かに監視されているのは容易にわかったが、 ここはあえて彼の演技に合わせることが今できる私の務めだろう。 「それじゃあ、私は行くよ。お大事に。またなにか気がついたことがあればここに電話してくれ」と、 自分の携帯番号をテーブルの上に置き、私は彼を心配しつつも病室を後にした。 渡した己の携帯電話の番号が彼への助け舟になることを祈りながら、 最後にみた彼の表情は微かに笑っていた。
785 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 15:57:47 ID:1JuYGTjx 「娘を探していただきたいのです」 それが、しがない探偵である私への依頼内容だった。 差し出された写真には、綺麗な黒髪の美少女が写っていた。 名前は小野田春香。今年高校生になったばかりだという。 依頼してきた両親は、年の差が20もあり、二人で建設会社と営んでいるという肩書きをもち、 その印象といえば、父親の方は社長という肩書きには似つかわしくない頼りない感じの髪の薄い初老で、 娘がいなくなったことでかなり動揺しているのか、 その不安げな表情がまた頼りない感じに拍車をかけていた。 それとは、逆に母親の方は凛とした表情が似合う若々しい美女だった。 気品が漂うクールなキャリアウーマンといった印象で、 娘がいなくなったことにも冷静に対応し、私の娘に関する質問にもすべて母親が答えていた。 「娘さんがいなくなってどれぐらいたちますか?」 「一ヶ月ほどです。家出することは何度かありましたが、 これほどまで長い期間はありませんでした。」 「警察には届けを出しましたか?」 「いいえ、私どもの勝手な都合ですが、 経営している会社のイメージや従業員の目もありますので、 この件は穏便に済ましたいと思っています。 ですから、探偵さんもこの事はできるだけ内密にお願いします。 その分の報酬を用意させていただきますので」 まるで、ビジネストークのような口ぶりの母親に、少々面食らいながらも、 私はこの依頼を受けることにした。 誘拐などの可能性もなくはないが、身代金の要求などがないことからみて、 ただの家出騒動で終わるだろうとタカをくくっていたし、 提示された報酬も魅力的な額だった。しかし、一番の理由は、 この「小野田春香」という少女に、 10年前に別れた妻に引き取られた当時6歳の私の娘の面影が浮かんだせいだろう。 だが、この安請け合いが後悔に変わることを、その時の私は知る由もなかった。 786 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 16:06:49 ID:1JuYGTjx 小野田春香の年齢から見て、この手の家出の原因といえば、 思春期にありがちな親への反抗。 もしくは学校でのいじめや進路の問題。 あと考えられるは金か男か?そんな思考を巡らしながら、 依頼主である両親が、参考になればと置いていた娘のアルバムやスケジュール帳に目を通していた。 アルバムは幼少のころからごく最近のものまであり、「小野田春香」の成長の過程が刻まれていた。 しかし、ところどころのページには貼ってあった写真を抜き取ったあとがあり、 その抜き取られたであろう写真の共通点は安易に想像ができた。 このアルバムには娘と父親が一緒に写っている写真が一枚もないのだ。 きっとこれが家出の原因の一つなのだろう。 父親への嫌悪感。年頃の娘ならだれしもがもつ感情だ。 そういえば、両親と面会したあの日、去り際に父親がヘラヘラした苦笑いを浮かべた表情で 「娘がいなくなったのは私のせいかもしれません。私に対する感情が異常なんですあの子は・・・このころはあんなに素直だったのに・・・」 とアルバムの最後のページに貼られた、おそらく「小野田春香」が子供の時にかいたであろう父親の顔と 「将来の夢はパパのお嫁さんになること」という文字を見つめ語っていた。 異常なのは父親を理解できない娘なのか、それとも娘を理解できない父親なのか? それを判断するのは私の仕事ではない。 しかし、同じ親という立場ならどうだろう? 机の上にかざってある幼き日の自分の娘の写真を見ても、 その答えは返ってこなかった。 787 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 16:22:05 ID:1JuYGTjx この町は狭いようで広い。 この町を、いやこの町にいるさえわからない「小野田春香」を私一人で人探しなど途方もなく骨の折れる作業だ。 手がかりは彼女のスケジュール帳に登場してくる人物に手当たりしだいに調べて回ることぐらいしか私には思いつかなかった。 彼女のスケジュール帳に登場してくると思わしき人物は大きく分けて4人。 「父」「母」「友美」そして、最後が「F」という人物だった。 私は「F」という英語で書かれた人物が気になったが、名前がはっきりしている「友美」という人物に目をつけ、調べを続けた。 その結果、「友美」とういう人物は「小野田春香」のクラスメイトの「坂上友美」である事が比較的簡単に調べることができた。 私は彼女の高校に張り付き、下校途中の彼女に狙いをつけ「警察の方からきたものですが・・・」という使い古された言い回しで、 コンタクトをとり、「小野田春香」さんについて話が聞きたいと、カフェに誘導ことに成功した。 「ハルちゃん、ずっと学校きてなくて心配していたんですぅ。もしかしてなにかの事件に巻き込まれたんですかぁ~?」 舌足らずな物言いで坂上友美は心配そうに、その大きな瞳をウルウルさせながら、私に質問を投げてくる。 坂上友美の印象は、まさに今時の女子高校生といった感じで、薄い顔に濃い化粧をして、そのふくよかと表現するには、 軽すぎる太い足を組みかえながら私を見つめている。 「今、それを調べているところなんだ。一番最近、彼女にあったのはいつごろ?」 「えっーと、確か。あの病院いった帰りだからぁ~一ヶ月前ぐらいかな?」 「その時、彼女に変わったところはなかったかい?」 「えー?一ヶ月も前のことなんか覚えてないよー」 「そうか、じゃあ、この彼女のスケジュール帳に書いてある「F」って誰のことかわかる?」 「あ~それはね・・・おじさん、これ内緒だよ?「F」はハルちゃんの彼氏の藤原太志君!」 「藤原太志君・・・「F」。藤原君って君達と同じ学校?連絡とかとれる?」 「友美とハルちゃんと太志君は中学のツレなんだー。携番は知ってるけど、今は無理!」 「無理?どうしてだい?」 「太志君、今、第一病院に入院してるから」 「入院!?どうしてだい?」 「さぁー知らない。自分で調べれば?警察なんでしょ?おじさん」 「あはは、それもそうだね。ありがとう。参考になったよ。あっこれ、おじさんのケーバン。なにかわかったらここに電話してくれないかな?」 「まじ?警察の携番GETだぜー!私、助手やりたいー」 「あはは、高校卒業したら考えてもいいけどね。それじゃあ、頼んだよ」 そういって、彼女のカプチーノ代より大目の金額をテーブルに置けば、私は藤原太志が入院しているという病院にいくために席を立った。 外から店の中の坂上友美を見れば、楽しそうに携帯を取り出ししゃべっているが見えた。 788 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/20(水) 17:36:37 ID:1JuYGTjx 坂上友美から得た情報。 スケジュール帳の「F」なる人物が入院している第一病院。 その「F」こと藤原太志は、この病院の外科病棟に入院していた。 彼にくだされた診断結果は、右足首の腱の断裂。 あともう少しで歩けなくなる一歩手前だったらしい。 原因は本人曰く「家の雑草を鎌で除草していた際に誤って足首に刃が当たってしまった」らしいとのことだった。 そんな下調べを入院患者や看護師相手に病院内でおこなったのち、 私は彼の病室を訪ねてみた。 坂上友美にもつかったように、「警察の方からきたものですが・・・」という言葉と共に。 しかし、右足が吊られた彼は私の言葉に反応もせずに、 雑誌のクロスワードパズルをただ無表情に黙々と解いていた。 そんな彼の横に座り、私は静に言葉を続けた。 「藤原太志君だね?少し聞きたいことがあるんだ。小野田春香さん知っているね?」 彼は答えない 「実は彼女、ご両親のもとからいなくなっちゃたんだ。なにか知ってることないかな?」 彼は答えない 「これ彼女のスケジュール帳なんだけど、この「F」って君のことだよね? だいたいどの月も一週間に3回は君の名前がついているんだけど、 これってなんの日なんだい?デートした日とか?彼女なんだろ?春香さんは・・・」 彼は答えない。 私はしびれを切らし、彼のために買ったフルーツの詰め合わせをベッド脇に置き 「なんか悪い事きいちゃったかな?・・・あっ、これお見舞い。怪我早くなおるといいね。お大事に・・・」 そういって席を立とうすると、 徐に彼が私に先ほどのクロスワードパズルの雑誌を差し出してきた。 「なんだいこれ?」 彼が問題を解いていたページを見れば、そこには6マスのパズルのマスに「Fは僕じゃない」 そして、5マスのパズルのマスに「ビデオ見て」と書かれていた。 そして、彼のベッドの布団の隙間からビデオテープが私の手に渡される。 その表情は先ほどの無表情とは違うなにかに怯えた表情だ。 彼の行動からこの部屋が誰かに監視されているのは容易にわかったが、 ここはあえて彼の演技に合わせることが今できる私の務めだろう。 「それじゃあ、私は行くよ。お大事に。またなにか気がついたことがあればここに電話してくれ」と、 自分の携帯番号をテーブルの上に置き、私は彼を心配しつつも病室を後にした。 渡した己の携帯電話の番号が彼への助け舟になることを祈りながら、 最後にみた彼の表情は微かに笑っていた。

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