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11 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/21(木) 22:56:04 ID:BrYHOeni 春香は「安心できるまでここにいる」と、建設現場から出たがらなかった。 そして翌日、私は春香の母親を事務所に呼び出していた。 「どうしたんですか探偵さん、急に私だけ事務所に来てほしいだなんて。 春香は?春香は見つかったんですか?」 「奥さん、落ち着いて聞いてください。結論から言って、 春香さんは見つかりました。しかし、一つ大きな問題があります」 「本当に春香は見つかったんですね?無事なんですね?・・・・問題?」 「これを見ていただきたいのです。」 私はそう言葉少なめに、母親にあのビデオテープを差し出した。 おそらく、私がいくら性的虐待のことを言葉で説明しても、 この悲惨さは伝えられないだろう。 母親には辛い事だが、今起こっているすべてを直視してもらわなければ 春香は救えない。 私はビデオをセットし、静に部屋の外へでた。 母親と一緒にビデオを鑑賞する気などなれなかったからだ。 「見終わったら呼んでください。」 そう言葉をかけ、ビデオは回りだした。 そして約3時間後、私は母親に呼ばれ、部屋に入った時、 そこには、焦点の定まっていない仄暗い瞳をした母親がいた。 無理もない話しだ。人生をともにした旦那にこのような形で裏切られたのだから 「奥さん、しっかりしてください。 辛いかもしれませんが、あなたがしっかりしなければ春香さんは救えないんですよ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・春香に会わせてください」 壊れたおもちゃのようにぎこちなく首をこちらに傾け、 長い沈黙のあと、そう一言だけ言葉を発しった 私は、早急に春香に連絡をとった。 「やっと、ママが春香のところに来てくれるんだ。よかった。 これで私の夢が叶う。いまからさっそく準備しておかなくちゃ。 本当にありがとう。探偵さん」 「ああ、これで家に帰れるんだ。 大丈夫だから、今からすぐ迎えにいくよ春香」 母親は気分が悪いと私の事務所のキッチンの流し台に手をついたまま 焦点のあわないその瞳で、小窓からの外の景色をただ眺めていた いつもの凛とした表情はもうなくなり、少し歪んでみえた。 12 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/21(木) 22:59:50 ID:BrYHOeni 「春香、いるのかい?君のお母さんと一緒に向かえにきたよ」 建設現場の最上階に母親と一緒にきた私はそう声をかける。 すると、物陰からスッと春香が姿を現した。 「探偵のおじさん。本当にママをここまで連れてきてくれたんだね。 ・・・・ママ、やっときてくれた・・・春香ずっと待っていたんだよ」 その大きな瞳に涙をいっぱいため、母親見つめる春香。 しかし、それとは対照的な暗い瞳をした母親の瞳に私は違和感を覚えた。 母親の様子がおかしい、歯をカチカチとならしながら、その目は怒りに変わっている そして、醜く歪んだその表情のまま・・・・ 「春・・・香・・・ダメじゃない・・・急にいなくなっちゃ・・・・心配したのよ。 あなたはいつも、いつも、いつも!いつも!いつも!私に迷惑をかけてばかり!! なぜ?そんなに私が憎いの?それにあのビデオはなに?パパを私から奪ってたのしいの? パパの妻は私!私なのよ!春香あんたじゃない!!あんたはただの薄汚い泥棒猫! パパが本当に愛しているのはこの私なの?わかる?わかってんのかよーこのくそ女!! もうこれ以上、パパに付き纏うな!喋るな!触れるな!パパが汚れるだろーが! そうか!そうか!そうか!そうか!あんたが誘惑したんでしょ?そうでしょ?そうなんでしょ?上等じゃないの!あんたがその気なら私にだって覚悟あるんだよ!・・・・・殺してやるよ!!春香―!!」 そういって母親は、ハンドバックから包丁をとりだす。 あの包丁は、私のキッチンと同じものだ。まさか・・・あの時からすでに殺意が! 私の頭の中で警戒音が鳴り止まない。 春香を助けなければ、それしか頭に浮かばなかった。 私は母親と春香の間に立ちふさがった。 「奥さん!あなたは、なにを言ってるか判っているのか? 春香さん・・・春香が誘惑した?本気でそんな事をいっているか? 春香は今まで1人で戦ってきたんだぞ! 幼少の頃から、誰にも言えず、一人で父親の虐待から!! それに気がつけなかったあんたが、そんな事を言う資格なんてない!」 頼みの綱だった母親がこうも狂っていたなんて・・・・ まさか、私に春香を見つけさせたのも、殺すため? もし、そうなら私はとんだ間抜けだ。 みすみす春香を危険な目に合わしてしまった。 今、私の背に隠れるこの子はどんな表情でいることだろう? 父親の性欲のはけ口となり、母親の嫉妬心から蔑まれる。 もう、この子を守ってあげられるのは私しかいないのだ。 ―――――その時、私の身体に熱さが走った。 なにが起こったのか判らない。 今まで経験したことのない熱さ。 その熱さはどこからきている? 私の・・・・・背中から? 私は、その熱さの原因を確かめようと後ろを振り返る。 そこには春香の美しい顔があった。 そして、私の背中には刃物がめり込んでいた。 「・・・・おじさん、邪魔」 地面に倒れる間際にみた春香の瞳は暗かった。 13 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/21(木) 23:02:29 ID:BrYHOeni なにが起こったのか判らない。 なぜ私が春香に刺されなければいけないのか? なぜ春香が私を刺したのか? ワカラナイ 私は背に走る痛みで地面をのたうち回りながら、聞こえたのは春香の声。 「おじさん、痛かった?ごめんね・・・でもね? やっと、やっと、やっとこの日がきたんだよ! この女を殺して、私の夢が叶う日が! やっと、ママもぉー本気になってくれたみたいだしー ねぇー?ママ!!殺しちゃっていいよねぇーママのこと」 ワカラナイ・・・何を言っているかワカラナイ 「ごちゃごちゃうるせぇー!てめぇーなんかにあの人を!あの人を! パパを渡すわけねぇーだろ!ホラ、かかってこいよ!雌豚!」 私はこの親子がなにをいっているかワカラナイ そして、その親子は互いに刃物を向けあい、傷つけあっていた。 その目の前に広がる残酷な光景は、私には現実と思えなかった。 「美しい光景だろ?」 その言葉にハッとなり、その声のする方に視線を流すと、 そこにはあの父親が立っていた。 私は背中の痛みに耐えながら、必死に声を荒げ 「どうして・・・どうして・・・お前がここにいる?」 「ああ、妻から連絡をもらってね。「今から春香を殺すから見にきて」とね」 「だったら、なぜ止めない! 目の前で妻と娘が殺し合っているに、なにも感じないのか!」 「感じているさ。私は今まさにこれほどにない幸せを感じているよ」 「幸せだと?」 「妻と娘が私を狂おしいほど愛し、私を奪いあい殺しあっている これほどの家族愛があるものか」 「狂っている・・・それに春香はお前のことなど愛していない。 お前がした虐待のせいでああなってしまったんだ」 「虐待?探偵さん本当にあのビデオをみたのかい? あのビデオに映っていた春香の表情はとてもうれしそうだっただろ? あれは春香自身が望んだことなんだよ」 私はビデオを最後まで見ていない。いや見れなかった。 本当にそうなのか?あのビデオに映っていた行為は春香が望んだことなのか? 「なぜこんなことをさせる。私を雇った理由はなんだ!」 「もちろん、妻と娘に殺し合いをさせるためですよ。 私は末期のガンを患って、もう先が長くない。 妻と娘、両方の愛に答えるのには時間がなさすぎる。 だから、生き残った方を愛そうと考えた。 君を雇ったのは。この究極の愛の目撃者になって欲しかったからですよ。 妻と娘に愛されすぎている私を、妻と娘に愛想をつかれた惨めな君に 自慢したかった」 「ふざけるっ・・・・・!」 「ヒャハーーーーーーーーー!!」 そう、怒鳴り散らそうとした私の声に割ってはいってきたのは、 奇妙な雄叫びのような笑い声だった。 14 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/21(木) 23:05:06 ID:BrYHOeni 「ひゃはっははは!死んだ!やった!やってやった!ざまぁみろ! 私の勝ちだ!これでパパはアタシのものだ!」 そこには母親の身体に馬乗りなり、包丁を振り上げ、 腹に何度も何度も刺突し続け、返り血で真っ赤に染まった春香の姿だった。 そして、春香は自分の父親の姿を見つけると満面の笑みを浮かべ 小走りにかけてくる。まるで子供のように・・・ 「パパーパパーやっと会えたー!!ねぇ、見てた?見てた? 計画通りあの女殺したよ?春香偉い?パパ、褒めてくれる? パパに会えなかったの辛かったけど我慢したよ? パパの事を嫌いになった演技もがんばってしたんだよ? 夜はさびしくてあのアルバムから抜き取ったパパとの写真をずっと眺めてたんだよ?」 「春香、よくやったな。えらい、えらいぞー」 「やったー!パパに褒められた。これで私の夢叶えてくるよね? 「パパのお嫁さんになる」って小さい頃からの夢叶えてくれるよね?」 「ああ、いいよ、春香・・・」 春香とその父親は、誓いの口付けとばかりに、 その唇を重ねあっていた。 私は間違っていた。最初から間違えてしまっていたのだ。 「どうして・・・春香・・・どうして・・・どうしてなんだ・・・」 「あれ?おじさん、いたの?ゴメン忘れてた~。アハハ。 おじさん、聞いて。これ私とパパで考えた計画なんだー。 あのアルバムも、スケジュール帳も~、あと~パシリの友美を使ったたりー 藤原君は嫌っていたから、足首きっちゃった。でもなんとか脅して 協力させたんだよー。あれは大変だったなぁー。 ビデオも綺麗に撮れていたでしょ? これも全部、全部。パパのため! あと、あの女をその気にさせるために計画したんだ。 あの女ったら、何回も挑発しても全然のってこないんだもん。 でも、今回はおじさんのおかげで、私の事、殺る気になったみたいだけど やっぱ、赤の他人から私達のラブラブビデオを見せられたのがよかったのかな? ほら、殺すだけなら簡単じゃん!やっぱ戦って勝ってずたずたに殺して パパの愛を勝ち取ってこそ、本当の愛だと思うんだよねぇー」 私は今まで春香の手の中で踊らされていたのだ 私の言葉はもう出なくなっていた。 その代わりに私の瞳からはとめどない涙が溢れていた 「おじさん、背中痛いの?ごめんね? 泣かないでおじさん、私が慰めてあげるよ これは私からのお礼・・・・」 そういうと、春香はスカートを履いたまま下着を脱ぎ捨て 私の身体の上に乗り、腰を振り続けた。 私はその狂った世界でただ赤子のように泣くしかなかった。 そして、彼女の中で果ててしまった。 「探偵さん、あなたには生きてもらいますよ。 このすばらしき愛の目撃者としてね・・・ 今、救急車を呼びましたから安心してください。 これは今回の報酬です。ありがとうございました それでは・・・」 「おじさん、バイバイー!またねぇー!」 父親と娘は、母親の死体と銀色のアタッシュケースを残し 闇へと消えていった。 16 :狂っているのは誰? [sage] :2009/05/21(木) 23:09:51 ID:BrYHOeni ―――三ヶ月後。 私の日常はまた静かな生活が戻っていた。 背中の傷の治療のため入院中にした病院に何度も警察がきて事件のことを聞きにきたが 私は私の知っていることをすべて話した。 しかし、まだ春香とその父親の行方はわかっていなかった。 そんな中、私の元に差出人不明の小包が届けられた。 中にはビデオテープが一本、入っていた。 そのビデオを再生してみると、そこに映っていたのは春香だった。 「やっほーおじさん元気!春香は元気にやってるよー 実はおじさんに報告があって今、ビデオとってまーす。 ちゃんと映ってるかな?へへへ~ 実はね、あれからパパの病気が悪化しちゃってさ、 パパ死んじゃったんだ。すごく悲しかったよ。私も死んじゃおうとおもったんだ でもね・・・死ねなかった。だって・・・・あは、恥ずかしいなぁ~ あのね、おじさん、実は春香のお腹には赤ちゃんがいます。 おじさんとの子供だよ!あっ、赤ちゃんができたからもうおじさんじゃないね 「パパ」だね。春香は「パパ」のお嫁さんだね。 また会いに行くね「パパ」アイシテイルヨ、「パパ」」 私は静に画面の春香に指先で触れ 「ワタシモ アイシテルヨ ハルカ」 狂っていたのは誰? 完

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