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197 :そして転職へ:2009/08/02(日) 21:55:34 ID:sQhePDYG 「極楽だぁ~。」 さっきまで地獄にいた自分としては、この言葉のありがたさが 実に身にしみる。 ここは王国でもっとも由緒ある宿屋の一室。極上羽根布団のベッドに 筋肉痛寸前の体を投げ出した僕は、天井を見上げた。 奇跡的なことに、死者はいなかった。重傷者は数名いたが、発見後の 処置のおかげでリハビリすれば元通りになるそうだ。 僕を蹴っ飛ばしたあのお姉さんは、駆けつけてきた兵士達と 何やら話し込んでいたみたいだが、その後兵士たちとともに どこかに行ってしまったみたいだ。お礼を言いたかったのに。 それにしても…僕は振り返る。 あの時使われた呪文は、確かに雷の呪文だった。 ディン系と総称される雷の呪文は勇者など限られたものしか使えない。 …ならば、あの人は女勇者? 違うだろうな、と僕は思う。勇者は戦闘時に先陣切って戦わねばならない。 しかし、あのケシカラン衣装は明らかに対呪文用の呪衣だった。 打撃中心の魔物が多い中、あれでは不便だろう。 「となると、魔法使いか賢者のどちらかなんだけど…。」 あの人はその後治療活動にあたっていたが、薬草や包帯を使った ごく一般的な応急措置だった。攻撃と回復の両方にたけた賢者ならば 回復呪文を使っただろう。 となれば魔法使いとなるわけだが、普通魔法使いは雷の呪文は使えない。 少し考え込んでいると、部屋のドアをノックする音。 あいていますよと答えると、僧侶ちゃんが入ってきた。 …血染めの修道服で。 198 :そして転職へ:2009/08/02(日) 21:56:20 ID:sQhePDYG 「勇者さん…マッサージはいかがです?」 微笑みを浮かべながら近づいてくる僧侶ちゃん。展開のあまりの シュールさに言葉の出ない僕を促し、ベッドにうつ伏せにさせる。 …流されちゃだめだ!ここは男として突っ込みを入れるべきだろう。 あの、どうして血みどろでイラッシャルンデスカ? 「ああ、これですか?皆さんの手当をしていたその時の血が… え?あっ…あああああああ!」 僧侶ちゃんが慌てふためく。ようやく自分の恰好がいかに ありえないか気づいたようだ。 …ネタじゃなくてマジだったのか。火事場での活躍で、 そうとう疲れているんだろうな。 呪文詠唱には精神力がものをいう。回復呪文を連呼した彼女は相当 精神が疲れているはずだ。そんな中でマッサージに来てくれるなんて やっぱりありがたい娘だな。 「ご…ごめんなさいいいいいいっ!すぐ脱ぎますから!」 修道服を脱ぎ捨てると、その下から布の服が現れた。ゆっくり息を吐いた 彼女は再び僕に笑みを向ける。 「勇者さんも危険な中、本当にご苦労様でした。大切なお役目もあることですし、 ぜひマッサージさせてください。」 僕に選択権はない。今までの経験からいって、もし僕が断れば彼女は ほとんど半泣きで『わかりました。でも、もし気が変わったらいつでも言って 下さい。私待っていますから。』と言って僕の部屋の前で膝を抱え、 ドアノブを見つめながらずっと待っているはずだ。たとえ夜になろうと、 僕の部屋から寝息が聞こえてこようと彼女なら待つだろう。 さらには、彼女の申し出をうけると彼女はすごくうれしそうになる。 …野暮な修飾抜きで、かわいい。 そんなわけで、彼女のマッサージが始まった。 199 :そして転職へ:2009/08/02(日) 21:57:24 ID:sQhePDYG 「気持ち良いですかぁ…?」 僧侶ちゃんの声が頭に染みわたる。こころがふわふわ踊っているようだ。 すごく…気持ち良いです。 体中のこわばった筋肉はすでに弛緩しきっている。あまり緩めすぎると 翌日にリバウンドするというが、そんなことはもうどうでもいい。 彼女からくる快楽を永遠に貪り続けたい!そんな気持ちになっている。 羽根布団のクッションもいい。あまりにも疲れていたので、勇者の特権を 発動して一流の宿屋に泊めてもらったが…本当にやばい。癖になるかも。 もちろん、勇者は民を救うのが役目。あまり経済的な負担を強いるのも よくないことだ。加えて僕はそもそも魔王(?)バラモスを倒す意思がない。 豪遊した揚句『魔王討伐の話はフカシ』だったら、あっという間に リンチの憂き目にあうだろう。 「勇者さんの顔…日向ぼっこしているネコみたいで…かわいいです。」 心なしか僧侶ちゃんの声に艶が出てきた気がする…何故に? 僕は僧侶ちゃんにお礼を言おうとして、うつぶせになっていた顔を後ろに… その途中、妙なものが眼に入ってきた。 ぬののふく。 そう、まぎれもない布の服が血まみれの修道着とともに脱ぎ捨てられているのだ。 …あれ?何で? 答えはわかりきっている。いつのまにか彼女が脱いだのだ。うん。 いや、いやいやいやいや。そんな馬鹿な。いまはマッサージ中だぞ。 マッサージ中に僧侶ちゃんが服を脱ぐなんてそんな必要が…大体、服を 脱いで行うマッサージなんてあるはずが…待てよ。 恐ろしい仮説が頭の中で組み立てられていく。 この世界には『PAHUPAHU』というものが存在するらしい。 あえてこの場での説明は控えるが、確かにこれなら今の状況もうなずける。 …ダメ、絶対! 僕の中で妙なフレーズが駆け回っている。 据え膳食わぬはなんとやらとは言ったものの、僕は僧侶ちゃんに そんなふしだらな女性だというイメージを抱きたくない。 まあ確かに若干抱きつき癖はあったけど、君はそんな娘じゃないだろう? だからお願いだ。僕は今から後ろを振り向くけど、その僕の目に とんでもないものを見せないでくれ。後生だから。 おそるおそる僕は彼女を見ようとふりm… 200 :そして転職へ:2009/08/02(日) 21:58:40 ID:sQhePDYG 「危ない!」 一瞬の出来事。僕は僧侶ちゃんを抱きかかえ、そのまま跳ね起きた。僕の 頭がさっきまであった場所にナイフが突き刺さる。 どこからだ!? 部屋の隅に僧侶ちゃんをほとんど押し飛ばすような感じで隠した僕は ベッドの脇に置かれていた短剣を手に取る。 その刹那、再びナイフが僕を襲った。あまりの速さに僕はかわしきれず、 ナイフは僕の腕に赤い一筋を残し、壁に突き刺さった。 しかし、僕は二撃目で襲撃者の影をとらえている。窓の外に怪しい人影が 消えていった。 突然の出来事に真っ青になっている僧侶ちゃんにここで待っているように 伝える。彼女は何か言いかけようとしたが、その時にはもう僕の姿は なかった。 襲撃者の足はかなり速かった。路地裏をすり抜け、なるべく人気の 少ないほうを選び逃げていく。 追手を撒くのに効果的なのは人ごみに逃げること。これは古今東西 問わずして逃走者のセオリーなのだが、あいにく襲撃者には無理な 注文だろう。やつは頭から踝にかけてすっぽりと薄汚れたフードを 身にまとっている。…目立ってしょうがない。 ただ、そういう僕も不利だ。市街地でまさか地獄のいかずちを召喚 するわけにもいかないが、さっきのマッサージでふにゃふにゃの筋肉で やつに追いつけるとは思えない。 っていうか、さっきのマッサージ、気持ちよかったな…。 そういえば、さっき僧侶ちゃんは胸にサラシを巻いていた。これから それも外すつもりだったと言えばそうかもしれないが、僕は信じてる。 彼女はただ暑かったから服を脱いだんだ! 陽だまりのネコ状態の無防備な僕を見て 『あなたとね。今日がチャンスね。次のステップ進みたいの。』 などということはありえない! 彼女は冬将軍ヒロセでもなければ、ここは雪降りつもる真冬のゲレンデでもない。 …いや。溶けるほど恋はしたいけど、それには手順を踏んで…。 彼女は長い黒髪、おしとやかな物腰、可愛らしい笑顔の大和なでしこだ。 そんな積極的な娘だとは考えられないが…。 201 :そして転職へ:2009/08/02(日) 21:59:20 ID:sQhePDYG 「あの…。」 待てよ。僕は思考する。そもそも僕は彼女の何を知っているというんだ? 僕のことを気にかけてくれているのはうすうすわかっている。ただ、それが 僕への好意からくるものなのかは判別しがたい。人見知り癖のある僧侶ちゃんが 他の人と話す機会はあまりないが、だからこそ僕と他人の比較ができない。 …好いていてくれたらうれしいんだけど。 「ちょっと…。」 その時だった。僕はようやく思い出した。火事場の時に僧侶ちゃんに 感じた一瞬の違和感。もやもやとしていたそれが、さっきの布の服騒動で ようやく姿を現したのだ。 あの時、彼女の服が変わっていなかった。 修道着は所属する教会や宗派で同じデザインで統一される。彼女も同じ 修道着を何枚か持っていても当然のこと。 しかし、火事の現場で見た彼女の服は明らかに王宮前で会った時のそれと 同じもの。雨のシミや、僕に抱きついた時の皺があったはずだ。 彼女は確かに着替えてくると言って僕と別れた。もちろん心変わりした 可能性もあるが、お城から見て酒場と教会は逆の位置にある。 距離と時間的に見ると彼女は教会に戻らずに酒場に行ったことになるが…。 どうしてかと整理してみる。 「もしもーし?」 可能性としては、教会に戻る途中何らかの理由があってただちに酒場に向かった。 あるいは、その時間に絶対に僕に酒場に行って欲しくない理由があり、 着替えてくるよう僕に仕向け、自分は酒場に向かった。 …ん?僕の首元にあるナイフはなんだ? 「私の話を聞け!」 202 :そして転職へ:2009/08/02(日) 22:00:18 ID:sQhePDYG 「全く…突如追っかけまわすのをやめたと思ったら急に一人でブツブツ 呟きだして…。心配したぞ。」 僕は今、怪しげなフードにナイフを突き付けられた状態で説教されている。 ナイフを突き付けて『心配したぞ』はないだろうに…。 「鼻の下のばしてニヤニヤし始めたと思いきや、急にシリアスな 空気が漂い始めたし…。相変わらず落ち着きのない…。」 妙な言い方だな。大体、僕に全身フードの変態じみた知り合いなんて いないぞ。相変わらずって…僕の何を知っているというんだ! あれ?頭がずきずきする。思い出したくないものがあるようなないような。 「お前、私に命を狙われる理由は分かっているだろうな? あの日あの時あの場所でおまえは私を…ぐずん。」 悲しい思い出でも思い出したのだろう。フードの肩が細かく揺れている。 僕はそんなフードにどういった言葉を投げかけていいか分からずに…。 「火炎呪文、メラ。」 火の玉を投げつけた。 フードに火の手が上がる。あわてて挙げたフードの手元を見た僕は、 相手の肘を下から押し上げるようにして動きを封じ、フードで見えないものの、 たぶん相手の鳩尾があるであろう場所に肘鉄をくらわせる。 「胡散臭いフードめ!顔を見せろ!」 僕はその場でうずくまるフードに近づき、燻っているそのフードをはぎ取った! 女の子だった。年は僕とほとんど同じぐらいだろう。顔は汚れていて 化粧っ気など全くないが、元がいいのか可愛らしい。 ショートカットの髪、丸くて大きな瞳、ほっそりとした体躯と 引き締まった手足。ショートカットの髪からのぞくイヌミミはぴくぴく 動き、後ろにはゆらゆらゆれる尻尾 …はあ!? 203 :そして転職へ:2009/08/02(日) 22:01:12 ID:sQhePDYG はるか東にあるという島国、ジパング。 鬼道を操るという太陽の巫女の統治によって成り立つこの国には変わった 風習がある。 その中の一つが地獄思想。そしてさまざまな地獄がある中でも忌み嫌われる ものとして畜生道というものがある。 この国は、悪人に与える刑罰の中にそれが取り入れられているのだ。 体に特殊な刺青を彫られ、魔力を流し込まれた罪人は人としての姿を保てず、 犬や馬、タヌキやシジミなどといった動物に変えられ国外追放されるのだ。 捨て子だった少女はある日、空腹のために盗みをはたらきとらえられた。 この国にある身分制度の禁を犯し、格上の者の食べ物を盗んだ彼女への 罪は重く、この刑が施行され、犬となった彼女は小舟であてもない海に 放り出された。 運が良かったというべきか小舟は大陸に流れ着き、彼女はしばらくは 生きながらえることができた。ゴミをあさり、町人からは野良犬よと 避けられながらも生きてきた。 ゴミから見つけ出した残飯で飢えはしのげた。 でも、愛情が欲しかった。 自分を捨てた顔も知らぬ親、身分ひとつの理由で自分をこのような姿に した制度。冷たくあしらう周囲。 最初は元の姿に戻りたいと願い続けてきた彼女も、次第に目的は 小さくかすかなものに変わっていった。 『ただ、頭を撫でられたい。』 しかし、そんな小さな望みも叶わなかった。 ある日、一人の少年とであう。 誰からも避けられてきた自分に微笑みかけてくれた少年。 おなかだけでなく心も満たしてくれたお弁当。 火サスよろしく脳天に何度も振り下ろされた得体の知れぬ凶器。 犬耳と尻尾だけ残された中途半端な肉体。 命を救った恩義を花瓶の一撃で返された憎しみ。 それらすべてをくれた少年を見つけ出し、シバキ倒す。 イヌミミ少女となった彼女に、生きる目的が出来た瞬間だった。 204 :そして転職へ:2009/08/02(日) 22:02:21 ID:sQhePDYG 「こんな…ムグムグ…ふざけた誠意のみせかふぁ…ングング…で(ゴックン) 私の怒r…ムシャムシャ…おさまるとでも思ったら…あ、これも食べたい!」 目をキラキラさせて注文を入れる目の前の少女を見て、僕はやるせない 気持になっていた。 …全部思い出しました。僕のせいです。本当にゴメンナサイ。 あのフードがまさかこの女の子だったとは…なによりこんなに可愛かったとは。 裏路地にある酒屋に彼女を連れ込み、突如現れた勇者と少女(ほとんど裸)に 困惑する店主に女物の服とありったけの料理を頼んだ僕は、気の利く 女将さんに回してもらった人気のないスペースで、彼女が料理を平らげて いくのを眺めていた。 「ング…すごいな…腐っていない鳥料理とはこんなにおいしいものなのか。 どの料理も温かいな…。…これはなんだ?」 「それ?スコーンっていうものだよ。」 酒場にはあまり見慣れないそれは、店主がサービスとして焼いてくれたものだ。 ガラスの小瓶に入れられた蜂蜜が横に添えられている。 時々むせ返りながら、それでも幸せそうに食器を空にしていく彼女を見ていると、 食べ物の魔力がわかった気がする。言葉や態度はごまかすことができても、 食材やそれに込められた愛情や優しさはごまかせない。本当の幸せっていうのは、 哲学的に語られるようなものではなく食べ物からくるのだろう。 「さりげなく今きれいごとでごまかさなかったか?」 「あれから、ずっと盗賊をして暮らしてきた。」 ぽつりと彼女が語り始める。女将さんから受け取った服がよほど気に入ったの だろうか。辛い話のはずだが、さっきよりも表情は柔らかい。 「ただ、どんなに盗賊で稼いでも、盗賊ギルドに全部持っていかれてしまう。 …今まで残飯以外食べたことがなかった。料理というのは、おいしいものなんだな。 初めて知ったぞ。」 原因は僕にあるものの、彼女の体は生きていくのにつらかっただろう。 今は魔族と争っているこの社会では、彼女がいかに人間らしくてもその 耳と尻尾だけで魔族の仲間とされ、運悪ければ殺されてしまったかもしれない。 容姿をフードで隠し、日蔭者として歩んできたのだろう。 「お前を殺すか…ふふ。本当はそんなことどうでもよかったのだ。 お前に攻撃を仕掛けたら、お前は私を必ず見てくれる。そう思って 今までいろんな町を移り歩きお前を捜した。おまえがあの路地裏まで 追いかけてきたときはすごくうれしかったぞ。どんな理由であれ、 おまえは私をきちんと見据え、追いかけてきてくれた。」 そして、ちょっと拗ねたように 「…途中までは。」と付け加える。 205 :そして転職へ:2009/08/02(日) 22:04:06 ID:sQhePDYG 「おいしい料理をありがとう。こうしてお前にまた一目会えただけでも うれしかった。…でも、私は日蔭者だ。噂だとおまえは勇者なのだろう? ならばいつまでも共にいるわけにもいかないな。」 席を立つ彼女。 「お前を恨んでなんかいないんだ。ただ、私という存在がいたことを 誰かに知っていて欲しかった…。」 最後は泣き笑いのような表情を浮かべた彼女は、その場を立ち去ろうとする。 ギュっ! 僕の手が彼女の腕をつかんだ。一瞬おびえたような表情を浮かべた彼女の腕を 見て、傷口がないことを確認すると、僕は短剣を取り出して自分の腕に 斬りつけた。 「お…おい!何をしている!?」 今度こそ本気でおびえている彼女。僕は自分の腕から滴り落ちる血を、 彼女の刺青だらけの腕に塗り込んだ。 次の瞬間、刺青が紫に光りだしたかと思うと急速に消えていく。やがて 顔以外彼女の全身に彫られていた刺青が消えていった。 うまくいった。 刺青の風習はどこの国でも古来よりあるが、その文様とは一つ一つが 意味を持ち、大切な役割を担っているという点ではどのような刺青も 共通している。 動物化の魔力は変化系呪文モシャス系統に属するもののはず。本来 一時的な効果しか持たぬはずのそれを刺青により体に半永久的に 固定したのだろう。 だが、モシャス系は魔法使いが覚える中でも高位の呪文。その頂点に立つ 竜変身ドラゴラムともなれば、この世界でも使い手は数人程度だ。 いくら刺青を施しても、繊細な呪文を半永久的というのは無理がある。 前のラーの鏡のように、刺青より強力な魔力があればそれに疎外された 文様はその部分から崩れ去るはず。 そして僕の血に宿る呪いはラーの鏡ですら打ち破れぬ強力なもの。 きっと効果はある! 彼女のイヌミミと尻尾がポンと音をたてて消えた。 驚いたように自分の頭とおしりの撫でまわす彼女。やがて…。 「にんげん…人間だ!私は人間に戻れたぞ!」 大喜びする彼女。僕はそんな彼女の頭に手を当てくしゃくしゃと撫でまわす。 「…僕と一緒に旅をしないか?君も新しい自分を見つけてみようよ。」 彼女の返事なんて聞くまでもなかった。 …っていうか聞けなかった。視界が急速に歪みだす。 しまった。調子にのって斬りすぎた。 僕の意識が暗闇に沈んでいった…。                        続く。

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