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427 :題名のない長編その五 第6話:2009/08/13(木) 04:52:43 ID:Hg6QrM4A ――――――――――――- 「…ッ」 ここ…は?俺…なんで椅子に座ってんだ? 確か、メイちゃんからのメール見て…それから… …メール見て…どうだったけな?さっぱり記憶が無い とりあえず立ち上がらないと… ―ギチッ 両手両足に違和感、これは…椅子に縛られているぞ… 気を失って、目を覚ましたら 椅子に針金で手足を縛られて身動きが取れない…ってか なんともマヌケな… 手足の針金がしっかりと何重にも括ってあるのを見る限り、 コレをした犯人は、よほど俺が嫌いらしい とりあえず現状確認を実行 スグ近くに、工事で使うような照明が、俺を照らすように1つ置いてある 周りの様子は殺風景…天井が在るな、建物内ということか… 恐らく建設中のビルか何かだな… 建設中にしては汚いな、あちこちにゴミが散乱している 外の様子は…オレンジ色の空、まだ夕方ということか… 今のところは解るのはコレ位か…な? えーと…あとは・・・えーと…えー・・・ いかん…、思考がハッキリせんぞ…あーが頭イタイ 「ううう…」 痛いぞ…唸ってしまう位に頭が痛い 恐らく鈍器で死なない程度に一発、頭に貰ったらしい… いかん頭がズキズキしてきた… 「あ!おはヨ、タロキチ目が覚めた?元気?…って、そんな訳無いか」 後ろから、声がした 俺をこの状況に陥れた犯人だな… しかし、犯人は俺の知っている人にそっくりな声だなぁ…ははは…はぁ 428 :題名のない長編その五 第6話:2009/08/13(木) 04:54:13 ID:Hg6QrM4A 俺の目の前に犯人が回りこんでくる 犯人の顔が照明に照らされて誰なのかが解る…解りたくないが 「メイちゃん…か」 「あれ?私じゃないと思った?」 「いや…でも」 「こんな事をするとは思わなかった?」 正直に言うと『俺にこういうのが、来るとは思わなかった』なんだが… この際何だっていいだろう…もう事は起きてしまったのだから 目の前のメイちゃんの見た目こそ表情は穏やかだが 穏やかな表情の奥にはメイちゃんの内側からの、黒いモノを感じる 「タロキチは…  私が兄さんを好きなのは解ってたみたいだけれど、  私が『どれだけ』兄さんを好きなのかは知らなかった?  考えもしなかった?」 「…考える価値すらねぇな」 メイちゃんの動きが一瞬止まる ―バシィィィッ!! メイちゃんが力一杯、俺の頬を叩いた 乾いた音が、周囲に響き渡る 痛ッってぇえええ!!!! だが、声には出さないで、やせ我慢… あー…今ので少しは、目が覚めた…意識がハッキリしたが…頭痛い 429 :題名のない長編その五 第6話:2009/08/13(木) 04:55:33 ID:Hg6QrM4A 「…価値がない?どういう事?」 「そのまんまの意味だ」 「この状況で、そんな事が言えるなんてね…言葉に気をつけた方がイイと思うよ」 「うるせーよバカ」 ―バシィィィッ!! 2発目、さっきとは反対側の頬、もちろんフルパワーで 痛てぇ…顔が腫れてきやがった、でも折れない 挑発して、本音と狙いを聞き出せればいいのだが… 危険な賭けではあるが 「兄さんから聞いたよ、アヤちゃんと付き合ってるって…  でも、いつもの兄さんなら、女の子に告白なんか…出来やしないのに  兄さんはアヤちゃんに告白してしまった!」 「…なんでだろうな?」 ―バシィィッ!! 3発目… クソッたれ…痛てぇ… 「…本気で言ってる?そんな事ないよね?タロキチがコレに一枚噛んでるのは  知ってるよ。兄さんが何故告白する気になったのか、何故告白を決心したのか  全部…全部タロキチの所為…兄さんがアヤちゃんの事を好きと思い込ませて  背中を押して告白させたりなんてするからッ!!」 「…俺は思い込ませてなんか」 「うるさいッ!!」 ―バシィィッ!! 4発目か…1番力が入ってた気がする なるほね…俺の行動は筒抜けだったワケか 俺がこうなったワケが大体理解出来た 430 :題名のない長編その五 第6話:2009/08/13(木) 04:56:59 ID:Hg6QrM4A 「このままでは、兄さんが…兄さんが…私から離れてしまう、  私の居場所が…兄さんの傍に居ていいのは私だけなのに…奪われてしまった   私は…私は…そんなの耐えられない、いいえ耐える必要なんてない  奪われたなら奪い返せばイイだけの事、簡単なこと  奪い返すついでに、邪魔モノを駆除しなくちゃ…わるい虫は駆除しないと、フフ」 「…」 おいおい、ヤバイぞこれはヤバイぞ… 頑張ったら説得出来るか…な?   「…メイちゃん」 「何?」 「アツシは兄で、メイちゃんは妹だ…」 「だから?私は兄さんが好き、それだけの事!法律なんて関係ない  私はタダ兄さんが好きなの、コノ思いは誰にも邪魔させない!  タロキチ…次、変な事言ったらいい加減……」 もはや説得が出来る状態では、無いようだ… しかし、俺をココまで椅子に固定する必要はあるのか? 俺に文句言うだけなら…ココまでする必要は無いハズ 一体何故だ? 「あ、もうこんな時間…はやく家に帰らないと、アイツを始末出来なくなる  待っててね兄さん、兄さんには私しか居ないって教えてあげるから…  タロキチにも邪魔されないようにしたし…  じゃあね…タロキチ、全部片付いたら迎えに来るからね」 「ちょっと、待て!!メイちゃん!」 椅子に固定した理由は、邪魔されたくないからか… 俺の呼びかけをヨソに、足早にメイちゃんが去っていく 俺は、その背中を見つめるだけ クソッ…俺の軽はずみな行動、俺の自己満足な行動の結果がコレか… 431 :題名のない長編その五 第6話:2009/08/13(木) 04:57:51 ID:Hg6QrM4A ココで、事の成り行きを唯待つしか出来ないのか… はぁぁぁ… …いや、まだ俺は諦めん!何とかしなければ!! とりあえず、ココから脱出しないと 「うおおおおおおお!!!」 雄たけびを上げて思い切り力任せに椅子から脱出を試みる   「ぬぅああああああああ!!」 何としても、アツシを、メイちゃんを、アヤちゃんを助けるんだ!! 俺は何度も何度も椅子からの脱出を試みた 針金から抜けれないなら、椅子自体を壊せば! この椅子は木製だな…やってやれないことはない!! ―バキッ 1時間程格闘した後 ついに椅子の肘掛の左側が折れた、よしコレで左手が自由になった 早速右腕、両足の針金を外せるぞ よし!コレで!!…針金は意外と簡単に外すことが出来た ん?ふと目をやった折れた左の肘掛は 折れたにしては断面が半分ほど まるでノコギリで、途中まで切ったような断面だ 予め折れ易くしておいたのか…何故? 左腕の針金を外し肘掛の破片を、置いて…あ、何か書いてあるぞ この文字はメイちゃんの文字だな、何て書いてあるんだろうか… 432 :題名のない長編その五 第6話:2009/08/13(木) 05:01:27 ID:Hg6QrM4A 『今、コレを読んでるって事は、  私が…酷い事しちゃったんだよね  先に謝っとく、タロキチゴメンね  私が正気を失って凶行へ走る前に  まだ私の理性がある内に  我侭だけど  タロキチ お願い    助けて   私と兄さんとアヤちゃんを』 そうか、お願いか…コレは、まだ可能性はあるって事だよな? こんなお願いなら、いくらでも聞いてやるよ! 待ってろよ!!急げ俺!!アツシの家へ!! 俺は長時間座っていて固まっていた足の筋肉を軽く伸ばし アツシの家へ向かうべく建物の外へと飛び出した

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