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651 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2009/08/30(日) 04:17:52 ID:/juTAXn9
cinderella & cendrillon 2
~依音side~
「っつう…ふぁあぁぁ…」
なんか彼女に看病されていた夢を見た気がする、夢の中でまで風邪ひいてんのかよ、俺。
ってか、いつの間に寝てたんだ……だめだ、思い出せん……
だめだ、まだ頭がふらふらしてうまく働かん……
「…顔洗ってこよ…」
寝る前ほどの頭痛は無く足取りも心なしかしっかり歩けていた。
我が家の洗面台は1階にある、故に顔を洗うには必然的に階段を降りなければならない。
「うぉっとと、あっぶね。」
やはりまだ風邪は治っていないようで階段の1段1段がつらい。
やっとの思いで1階に降り、洗面台に向かう途中キッチンの方から包丁がまな板を叩く音が聞こえた。
「ひめねぇ? 帰ってきてるの?」
キッチンからの返事はない、ただ一定のリズムでトントンと音が響いてくる。
むぅ、面倒だがキッチンを覗いてから行くか。
「ひめねぇ?」
「あぁ、おはよう、えねちゃん。」
振り向くひめねぇ、いつも通りのチェックのエプロン、いつも通りの髪型、何度か見たことのある白を基調にした服。
なにも変わりないはずなのに動かなくなる足、ダラダラと汗をかく背中、怖いと感じる脳。
何かが、違う……何が違う?……見たくないと、見るなと命令する脳を無視してひめねぇの顔を見る。
「ーっ!」
「…どうしたの? そんな怖がって、嫌な夢でも見たの?」
1歩1歩、ゆっくりと、確実に近づいてくるひめねぇ。
探せ、早く探し出せ、本能が訴える…目だ…目が違う…
いつもの温かい眼差しはそこに無く、あるのは光を失い狂気を浴びせ続ける瞳。
嫌だ、怖い、逃げなきゃ、ここから、1秒でも早く、どこでもいい、ここじゃない場所に。
動け、動け、動け、何で動かない!? 俺の足!
動けという命令にも全く動かない足、あと数歩のところまで歩いてくるひめねぇ。
結局俺は微動だにしないまま、ひめねぇに抱きしめられた。
652 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2009/08/30(日) 04:19:12 ID:/juTAXn9
「……えねちゃん…ひとつ聞いていい?」
「な、なに?」
声のトーンも違う、相手に威圧感を与える、まるで神か悪魔のような。
「……えねちゃん、学校で仲のいい女の子は居る?」
「い、いる、よ?」
「……じゃあ、彼女は居る?」
心なしか抱きしめるひめねぇの腕に力が入った気がした。
「いるの? いないの? 早く答えて?」
答えたくても声が出せない、それほどにひめねぇが怖かった。
「早く答えなさい!」
「っ、いないよ!」
滅多に声を荒げないひめねぇの悲鳴のような声、それだけで俺の硬直は悪い意味で解け、声を出すことに成功した。
「……ホントに? 嘘ついてない? もしも嘘だったら……」
ひめねぇの腕にさらに力が入る、痛い、だけどそれ以上にひめねぇが怖い、さっきから瞬きすらで満足に来ていない。
「ほ、本当だよ、俺がひめねぇに嘘ついたことなんて無いでしょ?」
「……そっか、そうよね、ただの寝言だもんね……」
ひめねぇは俺を開放し、いつもの笑顔にで謝ってきた。
「ごめんね、えねちゃん。 お姉ちゃんちょっと神経質になってたかも、ホントにごめんね?」
……いつものひめねぇだ、じゃあさっきのひめねぇは何だったんだ? 見間違い? 夢?
「あ、うん。 大丈夫、大丈夫だから…。」
俺は顔を洗うことなんて忘れて自分の部屋に戻った。 いや、逃げた。