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600 :愛の亡者と金の亡者 第二話:2010/02/02(火) 00:08:29 ID:LXAX6lBS 月曜日。 それは俺、因幡白兎が最も調子の良い日である。 丸々一週間働き詰めというのは学生にとっては十分なハードスケジュールだ。仕事に支障が出るくらいには。 バイトだけならまだしも、奨学金で学校に通う為には成績も維持しなければならない。 その為俺の日々の睡眠時間は絶望的なものだ。働き出した頃にはよく体調を崩したりしたものだった。 故に、日曜日は俺にとっての爆睡デイとなっている。 閑話休題。 奨学金制度は有るには有るが、それで他の生徒と特に区別されるということもない。 奨学金で通っている奴があまりいないという現状がそうさせている。だから俺のクラスも特別頭の良い奴が多い、真面目過ぎる、なんてこともなく。 そんな普通のクラスの扉を開けると、中学からの友人が声をかけてきた。 「お早う、ハク。君との朝の清々しい時間を削るのは非常に残念なのだが、課題をみせてくれないかい!」 と、朝一番に聞いた言葉がこんなだったら少々気が滅入るような台詞を吐きやがったのは、友人の花水木水華(はなみずき すいか)という。 中学一年からの親友で、学ランを着ていなければ名前と相まって男とは思えないくらいの容姿をしている。 お前本当は女なんじゃないか?と聞いたことがあるが、『さあ、どうだろうね?』とはぐらかされた。体育の時も予め服を着ているし、中学もこの高校も水泳の授業がない。 まあそれは置いといて。 時々こうやって課題を見せてくれとせがまれたり、一緒にテスト対策を打ったりしている。 「別に構わないが、学食奢れよ」 「ぬ・・・しかたない。良いだろう」 メロンパンという出費が出たから取り戻す気でいたが、まさかこうも早く取り戻せるとは。 「で、課題ってなんだっけかな・・・」 「数学なんだが」 「ちょっと待てよ・・・あったあった、これか」 鞄に入っていたノートを取り出しそれに該当するページを出す。 「合ってるかどうかはわからんけどな」 「そう言って大抵いつも合ってるじゃないか。じゃ、早速写させてもらうよ」 そう言って席に着く。隣なので直ぐに返してもらえることだろう。 普段は水華や他の奴らと話しているが、あいつらはまだ来ていないし水華も写しに必死だ。俺は朝のホームルームまで、机に突っ伏してそのまま眠りについた。 601 :愛の亡者と金の亡者 第二話:2010/02/02(火) 00:23:37 ID:LXAX6lBS 朝のホームルームが終わり、一限目の授業に入る。 月曜の最初の授業は、生徒のモチベーションを上げる為、というわけではないのだろうが、俺たちのクラスは体育だ。 つい先日、期末考査が終わったばかりなので、クラスメイトは思いっきり身体を動かしている。 ちなみに、今やっているのはサッカーだ。 「ゴッドハンドォォォォォォ!」 そんな掛け声と共にボールをキャッチしたキーパー。そのうちにゴッドの部分が魔人に変わりそうだ。 「水華ッ、パス!」 水華にパスを渡し走る。 「OK、君からの愛のこもったボール、確かに受け取ったよ!」 容姿が完全に女の子なだけに、そんな台詞を言われるとドキリとするだろうが。 「行くぞ、疾風ダッシュ!」 驚くことに、迫り来る相手選手をどんどんと抜いていく。さっきのキーパーといい、まるで某超次元サッカーではないか。 まあ、かく言う俺も、それに相手チームも言えた事ではないのだが。 激しい接戦の末、最後のロスタイムで水華が、まるで炎を纏ったかのようなシュートを空中でグルグル回りながら決め、試合は終了。 最後はお互いの健闘を称えあい、月曜日の最初の授業からクライマックスな熱気を放っていた。 602 :愛の亡者と金の亡者 第二話:2010/02/02(火) 00:47:20 ID:LXAX6lBS その後の授業は特筆することもなく、平和に時間が過ぎて行った。 ちなみに俺が食堂で奢ってもらったものは特に高くもない、無難な牛丼だったが、なんか癪なのでキムチもつけた。まあ値段はさして変らなかったが。 「じゃあね、ハク」 そう言って俺のアパートの前で別れる。 俺の住むアパートは学校に程近く、少々ボロいが風呂、トイレ完備で家賃二万五千円という家計に優しいお値段だ。 そんなアパートの奥の部屋に入り、洗濯物を取り込んで素早く畳んでから着替えを済ませ、鍵を掛けて外に出る。 今日のバイト先はネットカフェだ。朝の四時までは帰れない。 「おーい、はーくとー!」 バイト先への道を歩く俺を、そんな間の抜けた声が呼び止めた。 振り返ると、この近くの小中一環の学校の制服を着た少女がこっちに駆けてくる。 彼女の名前は木上瑪瑙(きのうえ めのう)。 彼女は孤児院からの付き合いで、運良く近くの家に引き取られた数少ない旧知の仲だ。 「あれれ、白兎今日もアルバイト?」 「ああ、お前は今帰りか?」 「ん、今日は部活がないからね」 「そうか。確か・・・テニス、だったよな。頑張れよ」 そう言うと、瑪瑙は笑顔で頷いた。 「あ、そう言や、珊瑚(さんご)は元気か?お前が小五だから・・・あいつは今は中三か」 「珊瑚お姉ちゃん?」 珊瑚とは、瑪瑙の実の姉貴だ。家庭の事情で預けられたっきり、両親からは一切の連絡が来なくなった。 まあ今はそんなことはいい。 何故か、その珊瑚の話題を出すと、少し表情が陰った気がした。 「うん、元気だよ・・・」 「そうか。・・・ってヤバイ、じゃあ俺はもう行くぞ。また今度な」 「あ、うん、またね・・・」 そう言って別れ、俺はバイト先へと走った。 「また今度、絶対・・・ね」

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