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269 :サトリビト:2010/04/20(火) 18:06:46 ID:0HSRQJj6 私の名前は佐藤陽菜。 私にはみんなには言えない秘密がある。 人の思考が分かるのだ。 科学者たちの間ではこの能力の事やそれを持っている人を総称してサトリと呼んでいるらしい。 このサトリと呼ばれる能力には先天性と後天性の二種類が存在し、後者の方は主にこの能力が未発達で強い感情にのみ力を発揮するようだ。 サトリの多くはこの後天性の方を指している。 だが稀に生まれたときからこの能力を発揮できるものがいる。先天性だ。 先天性には後天性と違う3つの特徴がある。 集中さえすれば頭に響いてくる声の音量を調節できること、感情の起伏に関係なく、頭をよぎった程度の思考さえも聴きとれること、そしてサトリでさえも心を悟ることができないことだ。 これだけを聞くと先天性として生まれた人たちは幸せと思うだろう。実際私も普通の人間として生まれてきたらそう思ったに違いない。 しかし先天性には先天性ならではの大きな悩みがある。 もし自分が先天性のサトリだと周囲に知られたら、人が自分から離れていく。 当たり前だ。誰が好き好んで自分の頭の中がさらけ出されることを良しとしようか・・・ 幼稚園の頃はそんな悩みなんてほとんどなかったが、物心がついてからは毎日が絶望だった。 すこしでも能力制御の気を緩めて男の子と話しただけで、その子のことが好きな女子から死ねっ、と言われた。もちろん頭の中でだが。 それから私は人の心に気を使うようにした。 そのせいで私に付けられた印象は根暗。日に日にクラスで空気になっていく私。 泣きたくて、誰かにすがりつきたかったがそんなことはできない。 「私は人の心が分かるせいでつらいです」って言えるわけないじゃない。 そんなことを言った日には私の居場所はこの世界から消えてなくなる。 どんなにつらくても誰にも助けを求めないで生きていくしかなかった。 そんな私の心情なんか知りもしないで今日もアイツは笑っている。 早川慶太。 一応私の幼馴染だ。一応というのはアイツのことを幼馴染だと認めたくないからだ。毎日一緒にいるのに私のことを知ろうともしない。 それに・・・私とは違い普通の・・・幸せな人間だ。 そんなある日、風邪で学校を休んだアイツの家にプリントを持っていけと先生に言われた。 はっきりいってイヤだったが、人に嫌われることを恐れている私に拒否権はない。 プリントを渡してすぐに帰ろうと思い、アイツの家の前までやって来た。そのとき・・・ (消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!) 突然頭のなかに大きな声が響いてきた。 そのあまりの音量に私は頭を押さえてその場に座り込んだ。 意識を集中させる。徐々に頭の中の声は静かになっていく。 もう少しで消えると思った瞬間、ある言葉が頭に響いた。 (なんで聴こえるんだ!?) 聴こえる? 普段なら気にも留めずに聴き流す言葉だ。しかしこのときはなぜかひっかかった。 試しに心の中で叫ぶ。 (慶太ー!!) しかし慶太のパニックになっている声は聴こえるものの、私の心の声に反応した様子はない。 やっぱり勘違いか・・・ 慶太の家に入り、プリントを玄関に置いて帰ろうとした時だった。 「キャー!!」 (ゴ、ゴキブリー!!) 隣の家からお母さんの絶叫が聴こえた。まったく、ゴキブリくらいで。 私は最後に慶太の苦しんでいる顔でも見ようと、慶太の部屋に向かった。 慶太の部屋に入った瞬間、私はビックリした。慶太の顔が真っ青になっていたからだ。 さすがに心配になって声をかける。 「ちょっと慶太、大丈夫!?」 慶太は私に気付いていない。 しかたなく慶太の心の声に頼ることにした。 (また聴こえた!陽菜のお母さんの声が!ゴキブリって!) 呼吸が止まる。 お母さんは叫び声しか上げていない。ゴキブリなんて一言も口にしていない。 私はあまりの歓喜に体の震えが止まらなくなった。 仲間を見つけた事。 そして慶太がこれから私と同じ苦しみを味わっていくことに・・・ 270 :サトリビト:2010/04/20(火) 18:07:14 ID:0HSRQJj6 それから慶太は学校を休み続けた。そして私は毎日慶太の家に通った。 別に慶太のことが心配だったわけではない。自分と同じ苦しみを慶太も味わっているのが嬉しかったからだ。 慶太の顔には覇気がなく、頭の中は絶望でいっぱいになっていた。 その様子がたまらない。 私はあることないこと慶太に話した。 「今日学校でリサちゃんが~」 「今日休み時間に田中君が~」 私に友達なんかいない。こんな嘘をいっても虚しいだけだ。 分かってはいるのだが、口が止まらない。いつも私がしてきた思いを慶太にも味わってほしい。 ところが効果は逆だった。 慶太の頭の中には私に対する感謝の気持ちと好意ばかりが募っていったのだ。 なんで? 私は躍起になって毎日毎日慶太の家に通い詰め嘘をつき続けた。 このとき私の心の中では、慶太の絶望を感じたいという気持ちに混ざってもうひとつの思いが生まれていた。 慶太が私の秘密を知ったらどうするのだろうか?それでもこうして好意を寄せてくれる?それとも・・・ そこまで考えたとき、私は恐怖で胸が張り裂けそうになった。 今まで色々な人で想像した事はあったが、ここまで怖いと感じたのは初めてだ。 勝手なのは分かっている。それでも慶太にだけは離れて行ってほしくなかった。 慶太は私のことを全然理解してくれない。みんなと同じだ。 だが一つだけみんなと違う事がある。いつも私の味方だった。 私の悪口を考えたこともなかったし、私に何かあるといつも心配してくれた。 なぜ気付かなかったんだろう? その日私は慶太の家からは帰った後、部屋に閉じこもり泣き続けた。罪悪感と恐怖感に苛まれながら・・・ どのくらいの時間泣いたのだろうか。 私はインターホンが鳴る音で今が夜だと気付いた。 家には誰もいない。しかたなく玄関のドアを開けると、そこには引きこもっていたはずの慶太がいた。 そして私を見るなり明日から学校に行くと言ってきた。 私は涙を流した。 今慶太が言った言葉に対してではない。私の頭の中でささやかれている、私のことが好きという言葉。 嬉しかった。 こんな私の事を好きになってくれるなんて。 私はやっと自分の思いに気付いた。 慶太が憎かったのではない。好きだったのだ。好きだから・・・同じ思いを共有してほしかったんだ・・・ それからというもの、私の世界は見違えるほど変わっていった。 人に嫌われる事をそれほど怖いと思わなくなったのだ。 慶太は絶対に私のことを嫌ったりはしない。いつも味方でいてくれる。 それで十分だった。 そう思うとクラスの人に対する振る舞いも自然になり、小学校を卒業するころにはクラスの中心になっていた。 271 :サトリビト:2010/04/20(火) 18:07:42 ID:0HSRQJj6 順風満帆な生活が続くと思った矢先、私は中学2年の途中で転校する羽目になった。 正直慶太のそばを離れるなんて耐えがたいことだったが、当時14才の私にはどうすることもできなかった。 毎日を無気力に過ごし、転校した先でも考えるのは慶太の事だけ。 電話やメール、数ケ月に一度の遊びだけではものたりない。 そんな折、一本の電話が鳴った。慶太からだ。 いつものように無駄話を永遠としていたとき、ふと慶太の口からある名前が出た。 「~でさ、岡田と一緒に・・・」 私は驚いた。慶太の口から私以外の女の子の名前が出たのはこれが初めてだったからだ。 結衣は美人でクラスの人気者でみんなの憧れの的だった。 「ねぇ慶太、いつから結衣ちゃんとそんなに仲良くなったの?」 声が震えているのが分かる。電話だと心が読めない分、怖い。 「ん~と、確か同じ高校に入学したときくらいかな?あ、でも初めて話したのは中学2年の時の運動会で・・・」 運動会は確か10月。私が転校した一ヶ月後だ。 そんなことを考えていたとき、ふとある疑問が浮かぶ。 「あれ?今同じ高校っていった?」 「ああ、岡田も同じ高校だな」 慶太が通う学校は家から遠い。確か電車でも40分かかる距離だ。 そんなところに結衣もいったの? 嫌な予感がしてならない。 「まさか結衣ちゃんがいるからその高校に行ったんじゃないの~?」 私は冗談っぽくおちゃらけた声で聞いた。しかし本心では真剣だ。 「・・・いや、そんなんじゃないよ」 なんで即答しないの? 分かっている。即答しなかった理由は・・・嘘をついたからだ。 嫌な予感が確信になった瞬間だった。 慶太は小学校のことがあってから私一筋だ。これは絶対に変わらない。 となると他に思い当たる可能性は二つ。たまたまそこの高校の偏差値が二人に合っていたか・・・あるいは慶太の同情心を煽ったかだ。 慶太の頭の良さは数学以外は普通。それに比べて結衣は全教科優秀な方だ。 そうすると前者は考えにくい。 中学の友達が誰もないような遠くの学校へ通っている二人・・・ 可能性から考えると確実に後者だ。 ふ~ん、そういうこと・・・私がいなくなった瞬間に慶太に近づいて悲劇のヒロインか何かを演じたってわけ? 私の心に感じたことのない思いが沸々と湧きあがってくる。 ここまで慶太の心に他の女が侵食していたなんて。 私は絶対に使うつもりがなかった切り札を取りだすことに決めた。しかしこれには大きなリスクが伴う。 だがこれからの私と慶太の将来を考えると、ガンは早めに取り除かないといけない。 私はその日両親と家族会議を行った。 「実は二人にお願いがあるの。私、あの家に戻りたい。それも今すぐに。いいでしょ?」 突然の私の発言に両親は唖然としたが、すぐに気を取り戻し反対した。予想どうりの反応だ。 しかたがない、やはり切り札を使うことにしよう。 「お父さん、そんなに部長さんのこと嫌い?毎日毎日悪口言って~」 「お母さんもそんなに和田君のお母さんが嫌い?顔合わせるたびに悪態ついてるし~」 私の言葉に両親は言葉を失った。当然だ。なんせ二人とも私どころか誰にもそのことを漏らしていないはずだから。 「もう一度きくね?私、あの家に帰りたいの。いいでしょ?」 今度こそ両親は首を縦に振った。 272 :サトリビト:2010/04/20(火) 18:09:26 ID:0HSRQJj6 転校した初日、私は笑いが止まらなかった。 なんせあの美人でみんなの憧れだった結衣が、私が戻ってきたことに対して怒りを顕著に表していたからだ。 いい気味だった。だがこれくらいで私の慶太に手を出した罪を許すつもりはない。 私はあえて授業中や休み時間は慶太以外の人と話をした。大好物は最後までとっておく。これが私の流儀なのだ。 放課後になったところで私は大好物をいただくことにした。 「ごめん、さっき先生に呼ばれちゃって・・・先に行っててくれる?」 先生に呼ばれたなんて嘘だ。 私は先生のところに行くふりをして、誰もいなくなっていた隣の教室に入った。そして心の声に集中する。 それにしてもさっきの結衣の心の声は傑作だった。 私と慶太を二人っきりにさせたくないの?でもざ~んねん。私と慶太は幼稚園の頃からずぅぅぅっっと一緒だったんだよ?転校した後も慶太とは何度も二人っきりで遊んだんだよ?それに戻ってこないわけないじゃん!大好きな私が戻ってこないと慶太が悲しむでしょ? 思わず笑いそうになったところで、結衣の悲痛の叫びが聴こえてきた。どうやら慶太が私のことが好きだと言ったらしい。 そろそろいいかな? 私はあたかも職員室から走ってきたように、息を切らせながら教室に戻った。 教室に入った瞬間空気が重いことに気付く。 理由は分かっていたがあえてとぼけてみる。 「どうかしたの?」 「陽菜ちゃんには秘密の話してたの~」 結衣が明るく答えた。 すごいね~結衣ちゃん。フラれたくせにまだ笑っていられるんだ? 私はカラオケに行く道中もしつこくそのことを聞き続けた。 私が質問するたびに結衣の心の声は次第に小さくなっていく。いっそのことそのまま心が壊れてしまえばいいのに・・・ 「陽菜、さっきはくだらない話をしていただけだから」 慶太が突然話しかけてきた。 そうだ!慶太にこの女のとどめを刺してもらおう! 「じゃあ何の話していたのか慶太が教えてよ」 「今日カラオケで何歌おうかって話」 「絶対ウソだー!」 もう・・・じれったいな~。早く言わないとあの女の心が回復するかもしれないでしょ? この時私は結衣の心の声に気を取られ、慶太の心の声にはまったく気付かなかった。 「なんでそんなことで嘘つくんだよ」 「だって嘘っぽいもん!」 「あー、もう、うるさいな!そんなに俺の言う事が信じられないのかよ!」 辺りが静寂に包まれた。 ・・・慶太が怒っている?私に? そんなはずはない。それに・・・怒るなら私の方だ。そもそも慶太がこの女に関わりさえしなければ何事もなかったのに。 そう思うと慶太に対して怒りが込みあがってきた。 「・・・なんで慶太に怒られないといけないの・・・?」 そうだよ・・・あの女が一番悪いけど、慶太にだって非があるんだよ?・・・私以外の女に好かれるなんて!! 「ウソつく慶太が悪いんでしょ!?」 「っ!?だから嘘じゃないって・・・分かった、もういい・・・」 慶太が押し黙った。 マズい。これは慶太が本気で怒ったときの態度だ。 冷静になって慶太の頭の中に集中する。 (陽菜がこんなわからず屋だったなんて・・・) 慶太が初めて私のことを不快に思っていた。 呼吸が止まる。息ができない。あれ、息ってどうやって吸うんだっけ? ようやく呼吸のやり方を思い出したときには慶太はいなくなっていた。 どこに行ったんだろう?トイレかな? (け、慶太のやろーっっ!!こんな危険コンビを置いて帰りやがってっっ!!) コイツは何を言っているんだろう?慶太が私を置いて帰るわけないじゃない。 (そっか!この手があったわ!慶太がこの女のことを嫌いになれば、私が繰り上がって慶太の好きな人に・・・) ふざけんな!慶太が私のことを嫌うはずがない!それに私の次なんていない!慶太が好きなのは私だけなんだ! しかし心のどこかではいつも恐れていた。もし慶太が私のことを・・・ 273 :サトリビト:2010/04/20(火) 18:10:56 ID:0HSRQJj6 「ごめんね、私急に用事思い出したから帰らなきゃいけないの。今日は誘ってくれてありがと~!」 慶太には悪いと思ったけど私は家に帰ることにした。なんせ準備がいろいろと必要だからだ。 9時まで家にいよう。その間に慶太が謝りに来たらすべて許して元通りだ。 9時を過ぎてもこない場合、私が直接慶太の家に行こう。そのときは不本意だが・・・私から謝ることにしよう。それで元通り。 でも謝っても許してくれなかったら?もし私のことを・・・嫌っていたら?そのときは・・・ ふと時計を見る。もう8時半だ。しかし慶太はまだ来ていない。 ・・・あと20分。慶太がまだ来ない・・・ ・・・あと10分。慶太が・・・来ない・・・ そして9時になった。慶太はついに現れなかった。 私は台所であるものを手に取る。帰ってから念入りに準備していたものだ。 もし・・・慶太が私を裏切ったなら・・・これを使って永遠に二人だけの世界へ行こう・・・ それをポーチの中にしまい、私は慶太の家に向かった。 慶太の家に行き、インターホンを鳴らす。 少ししてドアが開けられた。慶太だ。 慶太と目があった瞬間、私はすぐに謝った。 「あ、あの・・・今日はごめんなさい!久しぶりに慶太や結衣ちゃんにあって、私興奮しちゃって・・・」 「いや、こっちこそ!突然怒ったりしてごめん!」 慶太も私に謝る。私と仲直りができてホッとしているのが分かった。 そうだ、慶太が私を裏切るはずがない。 私はいったい何に不安がっていたんだろう?慶太は私のことが大好きに決まっている。 慶太と仲直りをした後、私は早川宅に招かれた。何も変わらない玄関がひどく懐かしく感じられる。 やはり3年も慶太のそばを離れたのは思いのほか大きかったようだ。 靴を脱ごうと視線を下した先にあるものが映った。 ブランド物のブーツ。 これが慶太の家にあるってことはアイツが5年ぶりに戻ってきた証拠だ。 そっか、祥姉も動きだしたんだ。私は臨戦態勢に入った。 ところがリビングに行くと、そんな物騒な事を忘れるほどの楽しい時間が待っていた。 慶太と慶太のお母さんとの会話。昔から好きだった時間。 慶太のお母さんは慶太以外の人間で私が唯一心から大好きと言える人だ。 私のことを本当の娘のように可愛がってくれたし、私の悪口を言っているのを一度も聴いたことがない。心が読めると分かった瞬間に娘を見捨てるような奴らよりもよっぽど母親らしい。 私は久しぶりに心から楽しい時間を過ごした。 274 :サトリビト:2010/04/20(火) 18:11:27 ID:0HSRQJj6 (誰だよ、うっせーな) だがそんな時間も頭の中に聴こえた声によって終わりが訪れた。本当に私の邪魔ばかりをしてくれる。 「お客さんでもきてんのか・・・よ・・・」 奴の声が耳に届いた瞬間、私は先手を打った。 「久しぶりー祥姉ぇ!!」 そのまま飛びついたのだ。 本当はこんな香水臭いやつに顔をこすりつけるなんて吐き気がするが、これも作戦のうちだ。 自分にとって嫌いな人間が抱きついてきたら普通は嫌だろう。悪態もつきたくなるはずだ。 慶太には罵倒を受けながらも健気に愛情を示している私は哀れに映っているに違いない。 そうするとね、慶太は優しいから私に同情するでしょ?つまり同情という点でも私は慶太の一番になれるの!これで同情だけで慶太のそばにいられる結衣の居場所がなくなっちゃえばいいのに♪ 私が今日結衣や祥姉の罵倒に無関心を貫いた理由がこれだ。 まぁ私も言いたい放題言われて黙っているほどお人好しではないが・・・ 「祥姉ぇ今週の土曜の夜暇~?もしも暇だったら神社で行われる秋祭り、一緒にいこ~?」 「秋祭りぃ?」 「うん!慶太も誘って一緒にいこ~よ~」 「なんでコイツも・・・ったくしょうがねぇな・・・わかったよ・・・」 なんて単純な人間なのだろう。おもわず笑いがこみ上げてくる。 秋祭りに誘ったのはそこで反撃をするためだ。 慶太と手をつないでみようかな?腕を組むのもいいかもしれない。 その時の祥姉を想像する。 嫉妬に駆られた祥姉は、どんな醜い言葉を吐くのだろうか?慶太が聴いているとも知らずに――― そもそも血のつながった弟に対してそんな感情抱くなんて気持ち悪すぎ。姉なら姉らしく、弟の初恋の成就でも見守っていなさいよ。 「あっ!もうこんな時間!?それじゃ私帰るね!」 馬鹿の相手に疲れた私は帰ることにする。 そういえば帰り際に慶太が私とのデートだと言って興奮していた。 そんなに私とデートがしたいなら告白してくれればいいのに。 私は慶太が告白してくるまでは何もしないつもりだったが・・・まぁキスくらいは許してあげよう。 もちろん、祥姉の・・・いや『二人』の目の前で♪ あぁ土曜日がたのしみ~。 私は携帯を取り出し結衣に電話をかけた。

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