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35 :悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:23:29 ID:o2jVD3Gz 目が覚めると手足を縛られている寂がいた。 「何しに来た?」目を見開いて聞いたけど返事は無かった。 沈黙が流れる。それを破ったのは綾小路ちゃん。いや、もう「ちゃん」付けはしたくない。しなくてもいいか。 「役者は揃いましたわね。」 綾小路主役の復讐劇の役者にはなりたくない。 「出演料なしじゃやらんよ」 「貴方には500万投資したわ。ちゃんと働きなさい」この手を縛られた状態でどう働けと?ふざけんな。 「それに貴方は今道具なの。道具は道具らしくしてなさい。」足蹴にされる。抵抗したかったが何されるか分かんなかったから甘んじて受ける。 「まあ、それはそうと」綾小路が俯いていた寂に歩み寄る。そして足で寂の腹を蹴った。 「ゲホッ!!!」寂が席と同時に涎を吐き散らす。 「やめ…!!んぐ!」いつの間にか俺の横にいた黒沢の右手で口を塞がれる。 綾小路は足で寂の腹を蹴り続けた。そのたびに寂の呻き声が鼓膜を穿つ。 俺は目を瞑るしかなかった。聞こえたのは肉を蹴る音と寂の呻き声と綾小路の恨みの言葉。 「よくも!!私の涼香お姉様を!!よくも!!!よくも!!!!!ああああああああああああああ!!!」 声と比例して激しくなる音に反応して目を開ける。そこには本人自慢の綺麗な髪を足で踏まれ涎の代わりに血を吐いて衰弱している寂と可愛らしい顔を般若の如く歪ませている綾小路がいた。 俺はどうしたらいいか分からなくなった。頭が真っ白になる。 綾小路が近くに有った寂のリュックサックを漁って中身を取り出して乱暴に投げ捨てる。綾小路が手にしていたのは、包丁。 「随分と切れ味の良さそうな包丁ね。」何する気だよ。 「すぐに終わらせてあげる。」やめろよ。 「終わりよ。さようなら。」やめろって!! 俺は墓より生きてる人間の方が大事なんだ。だから目の前で親しい人間が殺されるのを黙って見てる訳にはいかなっかた。 俺は後頭部を黒沢の顔面目掛けてぶつけてみた。黒沢は予想外のトラブルに対応出来ず口から手を離して壁に後頭部を打ちつけて悶絶した。 その物音に反応して綾小路がこちらを向く。もう遅い。反応するころには俺と綾小路との距離は埋まっていた。 綾小路の右手を蹴ると包丁が手から落ちる。俺は自身の頭のてっぺんを力一杯に使って綾小路の顎に打ちつける。寂ほどでは無いが華奢な体で軽そうな綾小路はふっ飛んだ。 包丁の柄を口で挟む。そのまま綾小路に接近する。馬乗りの体勢になって、綾小路が抵抗しようと行動する前に彼女の両腕を膝で押さえつけて、そして背中を曲げて包丁を左胸に刺した。 綾小路の口から血が漏れる。殺した。殺しちゃった。意識が朦朧とした。 「お嬢様!!」後ろで声が聞こえてすぐに俺は黒沢の手で跳ね飛ばされた。そして死体を抱き寄せて揺すって叫ぶ 「お嬢様!お嬢様!!うああああああああああああああああ!!!!」部屋に悲鳴が鳴り響く。 「くそが!!よくも!!!お嬢様を!!この殺人犯どもが!!死ね!!!」黒沢が胸倉を掴み拳で俺の頬や鼻を殴る。 「殺す!!!殺す殺す殺す!!」俺は抵抗出来ずにいた。胸倉を掴んでいた手が離れて床に叩きつけられた。黒沢は綾小路の胸から包丁を引き抜いてハンカチで刀身と柄を拭く。綺麗好きなんかな。 「もう死ねよ…お前」このまま死ぬのかと思った。けど、予想は外れた。 ギィ…と扉が開く。そこには頭にヘルメットを被って手には金属バットを持った黒ずくめの男が居た。 「楽しそうだね。俺も混ぜてくれよ。」 36 :悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:23:55 ID:o2jVD3Gz この状況を楽しいと高い声で言っちゃう侵入者(危ない奴)が現れた。招かねざる客人に黒沢が敵意を隠さずに発言する。 「お前は誰だ…」 「通りすがりの空き巣かな。玄関のカギはちゃんとしろよお金持ち。」 「いつから居た?」 「あー、君と貧乳娘が愉快にそこの少年を誘拐してたところからかな。因みにあの貧乳娘がそこの巨乳娘を嬲ってたのは巨乳への嫉妬?何?おっぱい戦争かい?」 「ふざけるな…」見れば黒沢の包丁を握る手が震えていた。 「あっちょんぶりけー」おどける侵入者。 「うあああああああああ!!」咆哮と共に黒沢が侵入者に突撃する。が、決着はすぐに着いた。 侵入者のフルスイングした金属バットが黒沢のこめかみにジャストミートして黒沢は数メートル飛ばされて倒れた。床に赤い池を作ってるのを見ると…即死。綺麗好きの人間が血で床を汚して死んで成仏出来るのかな。 「よう、少年。」 「お前マジで誰だよ。声高いな。聞いてて癇に障る」 「これ裏声だ。そして俺の名前は…裏声 ゴエ。空き巣さ…!」いかにもやってやったっていうオーラ出すな。 「今の空き巣界は自己紹介を盗むのが流行ってんのか?ていうかコナンくんより偽名作りが下手だな。」 「まぁとりあえずだ。残るは少年とその巨乳女だけだ。口封じのために死んでくれない?首を横に振っても遂行するけどな。」 滅茶苦茶だな。だが首を横に振ってみた。そして口から紡ぐ。 「俺は良い。寂は殺すな。」死にたくはないが、大事な人と天秤にかければ自分の命の方が軽いと思う俺は寂を守ろうとした。 「ふーん。まあ、巨乳娘の方は気絶してるみたいだしなー。男なら女を守って死ねれば幸せだろうし、いいよ。巨乳娘にはなんの危害も加えない。」 「そりゃどうも。」 「じゃあ、あれだ。行くぞ。なに、怖がらなくて良い。エスカリボルグじゃなくてただの金属バットだから、粉々にはならんよ。」 それを聞いて苦笑いを浮かべる。まあ、今さっき目の前で殴られてたしな。実証済み。 「じゃあな、2年目新人保健委員。」は?おま!まさか!お前何やってんだ!!右きょ… 死にはしないだろ。まあ、力加減考えたし。 「さて、お2人様病院にごあんなーい。っと」篠原のポケットから携帯を取り出してぴぽぱ…TRUUUU…TRUUUUU…ガチャ! 「あ、いきなりなんですけど救急車出して貰えます?綾小路って人の家…そうそう2丁目の無駄にデカイ家。で、2人死亡2人重症。早く来ないと4人死亡になるんでよろしく。」ピッ!ツーツー 「さて、逃げますかね。」玄関に向かいドアを開けて道路を闊歩する。近くに止めてあったマイバイクに跨ってエンジンを掛けて走り出す。じゃあな、篠原。 37 :悪意と好意と敵意 ◆f7vqmWFAqQ :2010/05/08(土) 20:29:23 ID:o2jVD3Gz 「よう篠原。調子はどうだい?」 「ようじゃねーよパパラッチ兼殺人犯。」 「それお前もじゃん。」 「俺は世間的に認知されなかったからな。ついでに寂も。」 「あ、そう。で、調子は?」 「誰かのおかげで頭に18針縫ったわ」 「あら意外と軽いのな。て言う事は今病院か。携帯使っていいの?」 「あー、それが今の病院進んでるんだぜ。携帯を使える病棟があるんだ。」 「そんなのも知らなかったのかお前。ダセェ…。」 「うるせー馬鹿。」 「馬鹿って言った方が馬鹿。」 「お前馬鹿って言われたて自分が馬鹿なのを否定しないのな。」 「まあ、馬鹿じゃ無いならもう少し賢く生きる。」 「ああ、確かに。でさ聞きたいんだけど」 「なんだよ?」 「なんで俺を助けた?」 「離すと長くなるんだよなー。まあ良いや。理由その1。まずお前ん家の借金の原因は俺の親父なんだよ。」 「…」 「あのクソ親父、母さんを亡くしてから呑んだ暮れて、パチンコばっかして借金増やして、その借金をお前ん家に押し付けて自分は逃亡。まあ、お前への罪滅ぼしみたいなの。」 「だから俺の両親は知らなくて良いとか言ったのか。」 「だろうな。まさか保健委員で仲良くなった人間の父親に押し付けたとは夢にも思わなかった。あ、理由その2。俺は天野が好きだったから。」 「お前に寂はやらん。寂は俺の嫁。」 「分かった分かった。まあ、まさかストーキングしてたら京華院先生を殺すとは思わなかった。またストーキングしてたらうちの高校の生徒を立て続けに殺して行って」 「…」 「その度に証拠隠滅を俺がしてたから捕まらなかったんだろうね。そういやあの貧乳娘とその付き人も見掛けたなぁ」 「お前なんかいろんな意味で凄いな」 「誉めるな。」 「誉めたつもりはない!」 「まあ、他の理由は井上先生の尾行に失敗して帰ってたらお前が誘拐されてたとか親父が逃げてロクな生活が出来なくなったからとかこのくらいかね。」 「なるほどな。なんか納得。でさ、お前これからどうすんの?」 「親父を殺して俺も死ぬ。」 「無茶だろ。」 「あーあいつの行く場所は見当着いてるから大丈夫。じゃ、電池勿体ないから、またな!」 「おい、待っ「あ、後お前の担任の井上先生によろしく。」ガチャ! 掛けなおそうにも非通知設定だったから返し様が無かった。

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