「題名の無い長編その十三第六話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

題名の無い長編その十三第六話」(2010/08/22 (日) 14:43:11) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

241 :名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:58:51 ID:gqFXBpYW 俺は今までの人生で一番焦っていた。  警告 警告 非常に危険な状況である。   このままでは咲良にこの惨状を見られてしまう。  脳内では赤いランプとワーニングコール。システム・オールレッドだ。  幸い、と言うべきか。綾は力尽きて眠っている。  意を決して玄関先へ急ぐ。  死ぬ覚悟は・・・できていない。  歴戦の戦士ならまだしも人生経験の浅すぎる一介の高校生に死を覚悟するなどできるものか。  しかしよく考えるまでもなく、これらは自分の責任である。  ・・・俺のモットーは「責任は果たせ」だ。  言い聞かせるように呟いた。  「あ、やっと出てきた。」  咲良の笑顔が恐い。  「何してたの?」  直球ストレート。そう来ましたか。  「あぁ、親父が折角の休みだから家中の掃除やっとけとか言い出してさ。」  嘘ではない。実際にメールが来た。・・・半月前に。  「お義父さんって、海外に赴任してるんでしょ?」  親父・・・・お義父さんだってさ。再来年くらいには孫ができるかもよ?  「来月あたりに帰ってくるらしくてさ、掃除しとけっていわれたんだ。」  「でも明日でもよかったでしょ?なんで今日掃除してたの?約束してたでしょ?」  「・・・・金だよ・・・。」  「え?」  「うぅ・・・オマエは忘れっぽいから今日やっておけ。さもなくば仕送りを絶つ。・・とか言われて。」  これも嘘ではない。ただし期限は今月中だったが。  「でも、やって無くてもバレないでしょ?」  ごまかしも限界かな・・・・  言い訳を諦めようと思ったその時、どこからかペタペタとぎこちない足音が聞こえてきた。  綾だ・・・。  言い訳できなくなった緊迫感が一気に怖気へと変わる。 242 :名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:58:53 ID:LWzXozfZ 四円 243 :名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 22:59:28 ID:gqFXBpYW 脳内シュミレート・・・  綾が来てしまう→咲良に問い詰められる→修羅場  綾を止めに行く→咲良も付いてくる→修羅場  咲良を気絶させる→返り討ち→(ある意味)修羅場    ダメか。俺のコマンドはどれもこれも修羅場ルートだ・・・。  「修二ぃだれか来たの?」  ・・・・・来ちゃったよ。咲良もそうだけどお前が来るともっとマズい状況だよ。  「修二君、なんで三国さんが居るの?」  なんか予想通りすぎて清々しいね。  「掃除を手伝ってもらっていたんだ。」  「私は呼ばれてないのに?彼女なんだから頼ってよ。」  どこか白々しさを感じる言葉。  ヤベェ・・何かあったと勘づいてる  「何言ってるの。修二は私の彼氏だよ?」  「なっ!?」  事の後ではどうしようもないとはいえ、ココでそんな発言しちゃいますか!?  「・・・修二君?」  名前を呼ばれた。それだけだ。  それだけで冷や汗が滲む。  足が痙攣したように微細振動を始め(要するに足ガクガク)、体中が思うように動かない。  ギギギ・・と軋む音を立てるような錯覚とともに頭だけ咲良のほうを向く。  「その・・ふざけた女と何かあったの?」  笑っている。笑っているのに表情が暗い。  「いや・・・えっと・・」  「修二の(検閲により削除)・・・暖かかったよ♪」  言いやがった。人がいかにできるだけ平和な解決法を取れるか思案していたのに。  お前俺を殺したいのか?  「・・・修二君・・嘘ですよね・・?」  言うしか・・ないな。 244 :名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:00:14 ID:gqFXBpYW 「スマン・・咲良、別れよう。」  逆レイプされ、責任を取らざるを得なくなり、恋人と別れることになる。  少なくとも日本では有り得ないとされてきた話。当たり前に司法はそんなことにまで対応していない。  有り得ない筈の事だから。  相手にもよるが、男としては諦めれば済む話だ。もしくは逃げ出せばいい。  当然、高校生ごときに逃げ切る手段は無く、抵抗は法に勝てない。  だが女にとって、遊びでもない限り別れる理由としては残酷極まりないものである。  だからこそ『俺にフラれた』という形にするべきだと思った。  責任は可能な限り果たさないといけない。  「フフッ・・アハハハハハハッなんでそんなこと言うの?・・修二君がそんなことするわけないじゃない。  その女が修二君を襲ったんでしょ?・・・アハハ・・判ってるよ修二君。  だから責任とらなきゃって思ってるんでしょ?  平気だよ、そんな事どうでもいいよ。邪魔なのはその女でしょ?  だから私が消してあげるよ!  アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  どこかで見ていたんじゃないかと思いたくなる程に図星を衝かれた。  事実、俺は綾に襲われた。だが抵抗できなかった俺の責任だ。  何をするのかは予想できた。  咲良が恐らく凶器であろう何かを取り出す物音。  止めに入ろうと咲良に向き直る。  3メートル弱の距離で俺は動けなかった。  そして頭の中で何かが壊れていった。 245 :名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:01:00 ID:gqFXBpYW 敗因を知るのは良いことである。  敗因を知って次に活かす。スポーツの指導員は必ず言うだろう。  俺が敗因を知るのに、3秒も要らなかった。  咲良への理解が浅かったことと、物の行方を知らなかったことだ。  銀色の兜金。白木に藍染めのひもで拵えた柄。鈍色の楕円を描く鍔と鍔止め。  日差しを返す銀色の短い刀身。  記憶に刻まれた『武器』の姿。  過去の記憶が高速で流れてゆく。アレ?走馬灯?  頭に靄のかかった痛みが走り、おもわず頭を抱える。  しっかり者で時々大雑把な父親。  優しくてよく泣きつく度に励ましてくれた母親。  仲の良かった幼き日の少年たち。  切っ先が触れて手に血のしずくが滲んだ少年。  少年が池に落ちる。  水面でもがく少年に必死で手を伸ばす。  届かない。少年のパニックは増す一方で、差し伸べた枝も掴めずにいた。  少年が動かなくなった頃に親が来た。  人工呼吸、心肺蘇生法。その他諸々試したが、少年が息を吹き返すことはなかった。  救急車も間に合わなかった。  周りを囲んだ親たちの顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔 顔。  皺を増やし、笑うことの無くなった父親。  日増しにやつれていき、微笑むこともできなくなった母親。  そして頭の中で何かが壊れていった。  「うっ・・うあっ・・・うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ  あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁああ  ぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」   既に目の前は何も見えない。  目が情報を拒絶していた。  足がもつれてバランスを崩し、体が傾く。  平静を失った意識に鋭い痛みと熱感が叩きつけられ、  誰のとも判別つかない叫び声を聞きながら、意識が途切れた。 246 :名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:01:46 ID:gqFXBpYW しまった。  少し調子に乗ってふざけすぎた。  修二が恨みがましい目でこっちを見てる。  何を言いたいかは解ってるけどあえて反応しない。わざと挑発してるから。  「フフッ・・アハハハハハハッなんでそんなこと言うの?・・修二君がそんなことするわけないじゃない。  その女が修二君を襲ったんでしょ?・・・アハハ・・判ってるよ修二君。  だから責任とらなきゃって思ってるんでしょ?  平気だよ、そんな事どうでもいいよ。邪魔なのはその女でしょ?  だから私が消してあげるよ!  アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」    事実正論だけに理論的な反論が浮かばない。  でも修二は受け入れてくれたから平気だ。  若干、修二の顔が引きつっている。少し前までの私に向けていたのとそっくりな表情。  もしかして私ってあんな感じだったの!?  そんなに狂った顔してなかったよね!?  向こうで雌ネコが何かを取り出しているが、修二の陰でよく見えない。  修二が振り返るのに合わせて向こうを覗く。  取り出されたものが見えると同時に突然固まった修二にぶつかった。  修二の体硬いなぁ・・  そんな暢気な事を考えられたのもつかの間。  修二がうめき声を漏らし、頭を抱える。  顔を見ると脂汗が玉しずくのように浮かび、目の焦点が定まっていない。 247 :名無しさん@ピンキー:2010/05/17(月) 23:02:23 ID:gqFXBpYW 「ッ・・・・・修二!大丈夫!?落ち着いてっ!」  小さい頃から修二が抱えていた悩み。  過去のトラウマからくる刃物恐怖症。  「うあっ・・・うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ  あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」  ぐらり・・と修二の体が倒れかかり・・・  私の脇腹から数ミリのところに銀の刃が通った。修二の胴を貫いて。  途端にあふれ出す赤。紅。朱。  熱を持った鮮血が飛沫のように散り、勢いを増す。  「い・・いやぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」  ワンテンポ遅れて雌ネコが悲鳴を上げた。  ここでは救急車を呼ぶのが正解。そして事情聴取で雌ネコは捕まるだろう。  だけど許せない。いや、許さない。  修二に重症を負わせた雌ネコには考えられる限りの屈辱と苦痛を味わってもらう。  アテはある。  そろそろ貸しを返してもらうことにした。  悪いネコにはお仕置k・・・躾が必要だよね。  待ってて修二。絶対助けてあげるからね。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: