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題名の無い長編その十四第三話」(2010/08/22 (日) 14:44:57) の最新版変更点

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88 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:35:01 ID:Ro73B6ZZ 病室でふと思ったことは「この病気は感染しないのか?」という事だった。 院長に電話をかけてみよう。 『はい。もしもし。院長です。』 ここでしか言えない名乗り方だな。 「あ、院長。俊輔です。」 『ああ、俊輔君。どうしたの?」 「さっき、聞くのを忘れていたのですけれど・・・僕の病気は感染しないんですか?」 『うん、そうだよね。聞きたいことだよね。一応、WHOの発表だと感染はしない・・・っという事になってる。 けど、万全を期すために君に合う人は ・医療関係者 ・家族 だけになっているんだ。まあ、感染はしない、と思ってくれていいよ。』 「あ・・・そう何ですか。ありがとうございます。」 『いや、いいよー。君が電話してくれたおかげで手鏡を使わずにカメラで・・」 「ありがとうございました!」 最後に何を言おうとしているんだ、この人は。 とにかく、感染しないのならいいや。 がんみたいなものか。 と、そう思いたかった。なぜか、感染はしないと言っても心で何かがざわめくような気がした。 89 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:35:33 ID:Ro73B6ZZ ・・・ ・・ ・ 病室でノートPCをいじくってたら晩飯の時間になった。 晩飯・・・・と言ってもサンドイッチと紅茶だけだが。 自分のいる病棟はどうやら隔離病棟と呼ばれているらしい。 今まで親が病棟内のコンビニで物を買ってきていたので知らなかったが、この病棟内のコンビニのレシートを見て知った。 [ローソン ○○病院内隔離病棟内仮説コンビニ] と書いてあった。 だから、廊下・・・いや、他の病室に人がいないわけだ。 まず、院長室に行く時に自動ドアが3重になっている時点でおかしいと思えよ、俺。 院長室にドアが二つあった時点でも、気にならなかったのかという。 笑えてしまうな。つい昨日までは、軽い気持ちで「なんでだろう。」としか思わなかったのに。 今は重い重い物が入ったリュックを背負って人生という道を歩いている気分だ。 しかも、その道は途中で切れていることがわかっている。 ・・・何もやる気が起きなくなった。 そういや、親父とお袋遅いな。 妹の帰国にそんなに時間かかるか? まあ、いいや。けど、暇だな。妹のことでも思い出そう。久しぶりにあうからな。 90 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:36:57 ID:Ro73B6ZZ 妹は前に言ったように超がつくほど天才だ。 なんで、俺の妹がこんなに頭がいいのか本当に不思議である。 お袋が俺と妹が小学生の時、面談の帰りにこんな事を言っていた。 『なんで、あんたは弥子よりもこんなに頭が悪いの!?』 ・・・お袋は妹を本当に大切にしていた。おれなんか、近所の恥だとでも思っていたんじゃねえのかな。 けど、不思議とお袋には怒りの気持ちを持ったが、弥子に対しては全く怒り・・・いや、嫌な気持ちを持ったことがなかった。 どんな扱いを受けても弥子が可愛くて仕方がなかった。 小学生低学年だった弥子と一緒に通学していたとき、酔っぱらい運転の車が俺たちに向かってきたことがあった。 俺は弥子をかばって正面衝突をしたような形だった。たしかあの時は全治5ヶ月とか言われた。 弥子は「ごめんなさい。」と俺を見舞いにくるたんびに言っていたが、 あまりに毎回いうので俺も弥子に謝って欲しくなかったし、自分が弥子を助けるためにやったことが逆に弥子を追い詰めているような気がしてある時、 「お兄ちゃんな、謝ってくれるよりも、いつもの弥子みたいにアホとかいってくれた方がお兄ちゃんにとっては嬉しいんだ。」 とかいう、ちょっと捉え方を変えるとドMが『俺を罵ってくれ!』と捉えれそうなことをいってしまった。 正直、あの時なんで俺はあんな事をいってしまったんだ、と思う。 なぜなら、その直後に 91 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:38:57 ID:Ro73B6ZZ 「えっ・・・・。本当にいいの?いつもの弥子のふうにふるまっていいの?」 「うん。普段どおりの弥子でいてくれればいいって。」 「そ、そう。じゃあ。この兄貴。おかげで友達から『弥子ちゃんのお兄さんってカッコいいんだね!』って言われてしまったじゃない! 何が悲しくてこの豚みたいな兄貴に助けられなきゃいけないのよ。 いちいち兄貴に謝りにくるのそろそろめんどくさくなってきたの。ちょうど良かった。 そろそろ心の奥で思ってることをぶちまけないとおかしくなりそうだったの。明日からは私の話を聞いてね、この下僕の豚。」 と、豹変したように言ってきたのである。その時はすっかり忘れていたんだが、時々弥子はこんなふうにかわいい顔と優しい心をしているのに、 人が変わったように人に・・・いや、俺に罵詈雑言を浴びせてくるのだ。 たいていその時は俺のことを”兄貴”と呼ぶ。 ・・・・ああ。絶対俺がMになったのは弥子のせいだと改めて思う。 普段は弥子の優しい人格でいる弥子が、年に1回はこんな風に俺に言ってくるのだ。 いわゆる二重人格というやつだろう。 そのときの俺は、「ああ、年一回のアレか。」と思っていた。 しかし、いつもは一日で優しい弥子に戻るのに、その日以来俺しかいないときに弥子はドSの人格で話すようになった。 ・・・・いっておくが足をなめたりとかそんなとこまではいってはいない。 寝ている俺の鳩尾を二時間おきに蹴りにきたり、数時間かけて終わらせた課題をわざわざ消しゴムで綺麗に消したり、 俺を椅子替わりにしたり、足で顔を踏んだり、・・・・いや、完璧に後者は違う意味でいってるな。 けど、ヘタレであるとは自覚しているが、どうしても怒れない。 逆に踏んだりしている時とかの俺をいじめている時の弥子の表情が可愛くて仕方がない。 92 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:39:18 ID:Ro73B6ZZ 心の奥でこの表情をもっとみたい、そんな気持ちになったりした。 性的な意味ではないことを付け加えておくが。 けれど、怒ってはないけど、弥子の前で大泣きしたことがあったな。 あれはたしか俺が中学校に入学したときの事だ。 なぜか、俺が初めて教室に入ったとき、クラス全員が俺を凝視してきた。 なぜ登校初日、いや自己紹介も何もしてないのに俺はこんなに見つめられるだ。 そんな事を思いつつ俺は自分の席を見つけ、座った。 荷物を机の中に入れようとした時、俺はあるものを発見した。 それは、封筒に入った小さな紙だった。 気になって出して読んでみると、そこには俺の名前と顔写真、そこに加えて俺の今までの恥ずかしい言動のすべて、 極めつけが弥子に俺が踏まれて笑顔になっている写真だった。 瞬時に封筒の中に戻し、周りを見た。 予想が当たっていればいいが、と思ったが見事その予想は当たった。 その予想は・・・クラスのやつ全員の机の上に俺と同じ封筒と紙が出ていること。 もう、その時点で泣きそうだったのだが、泣き顔を見せたくなく、下を向くと、封筒に目がいった。 よく封筒を見ると小さな字で 「兄貴が友達とか恋人を作ろうと思って、誰かに話しかけると、その人がかわいそうだからね。 みんな同情して友達とかになってくれるかもしれないけど、付き合うのが大変だろうから、 今のうちに近寄らないように警告みたいのをみんなに出しといたよ。」 93 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:39:48 ID:Ro73B6ZZ 俺は登校初日、登校開始から30分で早退をした。 弥子はまだ小学校で、明日が登校日だから、自分の部屋にいた。 俺は弥子の部屋に入って、その封筒を見せて、「弥子がやったのか?」と聞いたら、 それはもう見たことが無い笑顔で「うんっ!」と言った。俺はその場で泣き出してしまった。 弥子は心底嬉しそうに「だって、昨日どっかの人が私に口答えしてきたから、腹がたってね。」 その日の前日に、とあることで弥子と喧嘩をした。 たまたま俺はその時カリカリしていて、つい弥子のいつものおふざけに切れてしまいそうになった。 ・・・・中学校の頃はもう思い出したくないな。 友達から変態と言われ、何か事件が起こると先生も皆俺のせいにしてきた。 そんな中学時代だったので、俺は高校は県外の高校を受け、無事合格し入学式まで1週間となった日。 そんな時だった。弥子が英国に留学することになったのは。 俺は弥子が留学することを前日に知った。 俺はもちろん止めようとしたが、説得も虚しく弥子は留学していった。 あれ。なんか、重要な事を弥子の見送りの時にあったような・・・ まあ、弥子が来ればわかるだろう。 94 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:40:32 ID:Ro73B6ZZ コンコン 「はい。」 「やあ、俊輔君。」 「院長。どうしたんですか?」 「いやぁ、君の病気は政府に報告しなきゃならなくてねぇ。一応この病気は極秘扱いだから。」 「え、なんで極秘扱いなんですか?」 「治療法も発症原因も分からない病気があると報道されたら、世界はどうなると思う?」 「あ。」 聞くまでもなかったような気がする。 パニックになる。そんなこと当たり前だった。 「だから、この病気を知っているのは私みたいな国立病院の院長ぐらいなんだ。」 「そうなんですか。」 「で、診断書の欄に君の捺印がいるんだ。」 「捺印ですか。はい、いいですよ。」 「ありがとうね。ここね。」 ・・・ 「はい、おし終わりました。」 「ありがとうね。これは2回目の提出だから、本人の捺印がいるんだ。」 「2回目?1回目は誰が?」 95 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:40:53 ID:Ro73B6ZZ 「君のお父さんに押してもらったよ。ああ!そういえば、政府もWHOに報告したみたいだ。 で、よくわからないけど、君宛にWHOから封筒が来てるんだよ。 それも、今日の朝発送されたやつが。日本郵政もいつもこのくらい働けばいいのにね。」 「はぁ。で、封筒は?」 「はい、これ。」 確かに、WHOのロゴがでかでかと書いてある封筒だった。 宛先は確かに俺だ。そして、横にICチップがついてた。 「あけていいですか?」 「あ、待ってね。開くときには私のこの端末でWHOに開封許可を申請しないと。」 と、いって院長はPSPぐらいの大きさの端末を出して、封筒のICチップにかざした。 ピッという音とともに、機械音声で開封許可を申請、受理しました。開封できます。と声が出た。 「はい、開けていいよ。」 「どうもです。」 ビリビリと開けてみると、なかには一枚の紙が入っていた。 それまた、WHOの豪華そうな紙だった。わかりやすく言うと、賞状とかで使う紙みたいなものだ。 そこには 96 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:41:20 ID:Ro73B6ZZ WHOより、UDTCS(Undying Desire To Commit Suicide)感染者と本患者収容病院院長への通達 UDTCS感染者様へ 明日(本通達発行日の次の日)より、あなたと病室で面会できる方が規制されます。 あなたと病室で面会可能、あなたのいる病棟に立ち入ることが可能な方は あなたの妹 のみとなります。 他の方と面会を希望される場合は、隔離病棟の面会室をご利用ください。 UDTCS感染者収容病院院長様へ UDTCS感染者を収容している隔離病棟の立ち入り制限を行ってください。 貴病院の隔離病棟へ自由に入ることができるのは UDTCS感染者の妹 のみとなります。 それ以外の方が隔離病棟へ立ち入る事を禁じる措置をとってください。 また、生活に必要なものは隔離病棟内の簡易販売所等へ置き、販売員などは設置しないものとします。 面会は自由ですが、UDTCS感染者が希望する方のみとなります。それ以外の方は面会することができません。 本通達は請願書第XXXXX-XXXにより作成されています。請願書受理日XXXX/XX/XX 本通達有効日XXXX/XX/XX,本通達終了日UDTCS患者死亡時 と書いてあった。 なぜか、俺宛の文章は4行なのに、それすらも理解できなかった。 なぜ、弥子だけが俺の病棟にいられるんだ。Why? 院長はこのことを知っているのだろうか? 97 :名無しさん@ピンキー:2010/06/05(土) 22:41:40 ID:Ro73B6ZZ 「い、院長。」 「ん、なんだい?」 「あの、これを見てください。」 震えた手で、紙を院長に渡す。 「はい。・・・・・・・・・・。WHOがそういうのなら、そうするしか無い。親御さんも立ち入り禁止か。」 えっ。動揺しないの。なんで、俺の妹だけとか。えっ?えっ? 訳が分からない。 「わかった。私は他の医者とここの販売員に話をしてくるから。」 「ちょっ、ちょっと待ってください。なんで僕は妹以外と病室に一緒にいてはいけないんですか?」 「わからない。けど、WHOの指示だ。拒否するわけにはいかない。私は急いで話をつけないといけないし、そろそろ君の親御さんも帰ってくるから、止めないと。」 走って院長は俺の部屋を出て行った。 いや、本当に意味がわからない。

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