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148 :囚われし者 ◆DOP9ogZIvw :2010/06/08(火) 01:12:14 ID:KgUH1mg/ 「何してるの?奨悟。」 そう言いながら、表情のない顔で一歩づつ僕に近づいてくる。 突然声をかけられたこと驚き、朝倉は咄嗟に僕の後ろへ回った。 「えと・・・その・・・」 なんて答えればいい。 というより何処から話して、何を話せばいいんだ。 「誰かと思えば、先輩の幼馴染の周防綾華先輩ですね。」 予想に反して口火を切ったのは朝倉だった。 「あなた誰?というより何で名前知ってるのよ。」 心なしか言葉も刺々しい綾華、それとは対照的に嬉々とした表情を浮かべている朝倉。 「だって、愛しい先輩のことですからね。当然ですよ。」 そう言って、朝倉は僕の背中からでて腕をとった。 「そして、私は先輩の彼女なのです!」 そう綾華に言い放った。 「ちょっ!彼女だなんてそんな・・・」 「わかってますよ、先輩『朝倉の気持ちに気づけなくて悪かった』なんていいながら抱きしめてくれたんです。その意味くらいちゃんとわかってますよ!」 全然わかっていなかった。 「ふざけないでよ・・・」 綾華は震えていた。 「奨悟は私のものよ!あなたじゃない。私の”モノ”なの!」 「先輩をモノ扱いですか、やっぱり世間知らずの高飛車なお嬢様って感じですね。そんな人には先輩は似合いませんよ。」 僕はなんとなく悟った。 これが俗に言う修羅場というものなんだと。 「奨悟!あなたもよ!あなたがハッキリしないからこんなアイドル風情なんかに誤解をまねくのよ!今!ここで!はっきり言いなさい!」 「あ・・・っ・・・・・」 あまりに剣幕に何も言葉がでてこなかった。 「そう・・・そういうことなの・・・」 僕の無言を裏切りだと判断されたようだった。 「お父様に連絡するわ・・・」 そう言って携帯をとりだす綾華。 「どうぞどうぞ、好きなだけお父様にお願いして下さいよ。先輩は絶対にあなたなんか相手にしませんけどね。」 「まっ・・・待って!!」 父親に連絡する。 これはつまり、僕の両親が・・・ 「電話はやめて・・・ください。」 「せっ・・・先輩!何言ってるんですか。こんなのほっておきましょうよ。」 「フッ・・・フフ」 僕の行動が予想から外れていたのであろう、朝倉はさっきまでの余裕をなくし、綾華はその逆だった。 「やっぱり奨悟はわかってるわね。あなたはすぐ流されるけど、結局は私のところへ来るしかないんだから!」 そう言って高笑いする綾華。 「ほら、言いなさいよ。”僕は綾華様の犬です”って、そうしたら電話はやめてあげるわ。」 そう言って携帯をかざす。 綾華は本気だ。 これを言わなければ綾華は必ず電話をかけるだろう。 「ぼ・・・僕は・・・綾華様の・・・い・・・いっ・・・」 「ホラっ!」 「僕は綾華様の犬です!」 「そう、それでいいのよ!」 そして、綾華の勝ち誇ったような高笑いの中、朝倉は完全に余裕をなくしていた。 「うそ・・・こんなの嘘ですよね先輩!あんな女なんてどうでもいいんですよね?」 「朝倉聞いてくれ、僕の」 「黙りなさい!」 そう綾華が命令する。 「余計なことは言わないでいいわ。それにあの女とは二度と会話しないで。」 「そっ・・・そんな!」 そんな僕にまた携帯をゆらつかせる。 僕は何も言えなくなった。 149 :囚われし者 ◆DOP9ogZIvw :2010/06/08(火) 01:12:58 ID:KgUH1mg/ 「そう言えば、あなたにお弁当つくってきたの。教室で食べましょうか。」 そう言って手招きする。 僕はそれに従うしかなかった。 「いや!いかないで先輩!」 屋上の扉からでようとした時、朝倉の声が聞こえた。 (ごめん・・・朝倉・・・) 僕は心の中で謝罪し扉を閉めた。 最後に見た朝倉の顔は、絶望そのものだった。 「何か、言わないといけないことがあるんじゃないの?」 「・・・・・」 放課後、僕と綾華は再び屋上にいた。 「何も言わないのね、やっぱりいいわ。私もあなたから他の女の話をされるなんて嫌だもの。」 そう言って、綾華は僕を抱きしめた。 「あなたは、どうしてそんなに優しいの?」 綾華の声が潤んでいた。 「あなたはいつも優しかった。私が子供の頃、どんなにその優しさに救われたか。」 綾華は子供の頃、今と違い友達はいなかった。 お嬢様としての高飛車な性格が、他の子には受け入れられなかった。 綾華は一人でも平気そうだったけど、彼女が影で泣いているのを僕は知っている。 「一人ぼっちだった私にとって、あなたは唯一の存在だった。」 「・・・」 「ずっと、こんな時間が続くと思ってた。あなたがいて、私がいて、私はそれだけで満足だった。」 綾華が泣いているのがわかった。 「でも、あなたはあの子と・・・あなたの妹と仲良くなって、あなたは妹の事を話すようになった。」 僕は綾華の肩を軽く叩いた。 これは僕が泣いていた綾華をあやすときのやり方、もう何年もやっていないものだった。 「その時に私は気づいたの。私はあなたを取られたくない。そして、これが恋なんだってことに。」 そして、綾華が叫ぶように言う。 「お願い!お金も住むところも愛情も、その・・・私の体も、全部あげる!だから私のモノになって!」 そして、今度は呟くように 「戻ってよ・・・あの頃に・・・私があなたに満たされて、あなたが私で満たされていたあの頃に・・・」 そう言った。 「優も朝倉も、みんな良い子だよ。」 「違うわ!私とあなたの世界に踏み込んだ悪者よ!」 先程とは違い綾華は興奮していた。 「あんな子達は必要ない!私はあなたがいればいい!あなたも私がいればいいの!足りないものは全部用意してあげるから!」 「痛いよ・・・綾華・・・」 「私のところに・・・帰って来てよ・・・」 綾華の頬に大粒の涙がつたっていた。 150 :囚われし者 ◆DOP9ogZIvw :2010/06/08(火) 01:13:22 ID:KgUH1mg/ 「綾華・・・僕は・・・グハッ」 僕は血を吐いた。 突然のことに意味がわからない。 息苦しい、足に力がはいらない、目も霞む。 「しょ・・・奨悟!!」 綾華が僕を抱きとめる。 「ど・・・どうしたの!?大丈夫!?」 綾華の心配そうな顔がかすかに見える。 「う・・・あ・・・・・」 大丈夫だと言おうとして言葉にできなかった。 「兄さん!」 聞きなれた声が聞こえた。 そして、僕の口を何か柔らかいものがこじ開けた。 何か異物が侵入してくる。 その異物に何か固形物を飲み込まされた。 薬の効果は驚くほど早く現れた。 さっきまでの息苦しさは消え、体に力がもどった。先程まで狂ったように暴れていた心臓も正常にもどったようだった。 だけど、それ以上に僕の口に侵入している、綾華の舌は暴れていた。 「にぃ・・・さん・・・・ジュル」 「やめなさい!」 先程まで、僕が突然倒れたことによりパニックに陥っていた綾華が冷静さを取り戻し、優は突き飛ばした。 僕と優の口に銀の橋がかかっていた。 「何してるのよ!」 「何って、薬をのませてあげただけですよ。」 そう言って、優は自分の唇についていた僕の唾液を舐めとった。 「最近、兄さんは薬を飲んでいませんでしたからね、そろそろ発症するのではと探していたのですが、ギリギリでしたね。」 そう言って優は僕に微笑かけた。 「どうやら、必死になって兄さんを口説いてたようですね。」 「・・・・っ」 「でも、無駄ですよ。あなたがいくらに兄さんに語りかけたところで、兄さんは最終的に私を選びますから。」 優は堂々と言い切った。 「そんなはずない!奨悟は私と一緒にいるのが一番幸せなの!」 「違いますね、もし、仮にそうだとしても、兄さんは私を選びます。なぜなら・・・」 そう言って、見たこともない怪しい笑みをうかべた。 「私を選ばないと死んじゃいますから。」 「ど・・・どういう意味よ!」 「さっきの発作。見たでしょう?あれは兄さんのもつ病気によるもの。そして、その発作を止めることができるのは私だけなんです。」 「だから・・・」 「だから、兄さんは私がいないと生きていけないんですよ。」 綾華は真偽を確かめるように僕を見たが、僕の表情でそれが真実だとわかったようだった。 「フフッフフフフ」 僕の予想に反して、綾華はなぜか笑い出した。 「何がおかしいんですか?」 「あなたは何もわかってないわね。」 そして勝ち誇った顔が言う。 「私の家は製薬メーカーよ。あなたが薬を作れるなら、うちでつくれないはずがないわ!」 「・・・・」 「そして、これが完成すれば、あなたが奨悟をつなぎとめるものがなくなる。あなたはお払い箱だわ!」 「無理ですね。」 高笑いする綾華とは対照的に、優はそう言った。 「だって、兄さんの病気は私が作ったものですから。」
148 :囚われし者 ◆DOP9ogZIvw :2010/06/08(火) 01:12:14 ID:KgUH1mg/ 「何してるの?奨悟。」 そう言いながら、表情のない顔で一歩づつ僕に近づいてくる。 突然声をかけられたこと驚き、朝倉は咄嗟に僕の後ろへ回った。 「えと・・・その・・・」 なんて答えればいい。 というより何処から話して、何を話せばいいんだ。 「誰かと思えば、先輩の幼馴染の周防綾華先輩ですね。」 予想に反して口火を切ったのは朝倉だった。 「あなた誰?というより何で名前知ってるのよ。」 心なしか言葉も刺々しい綾華、それとは対照的に嬉々とした表情を浮かべている朝倉。 「だって、愛しい先輩のことですからね。当然ですよ。」 そう言って、朝倉は僕の背中からでて腕をとった。 「そして、私は先輩の彼女なのです!」 そう綾華に言い放った。 「ちょっ!彼女だなんてそんな・・・」 「わかってますよ、先輩『朝倉の気持ちに気づけなくて悪かった』なんていいながら抱きしめてくれたんです。その意味くらいちゃんとわかってますよ!」 全然わかっていなかった。 「ふざけないでよ・・・」 綾華は震えていた。 「奨悟は私のものよ!あなたじゃない。私の”モノ”なの!」 「先輩をモノ扱いですか、やっぱり世間知らずの高飛車なお嬢様って感じですね。そんな人には先輩は似合いませんよ。」 僕はなんとなく悟った。 これが俗に言う修羅場というものなんだと。 「奨悟!あなたもよ!あなたがハッキリしないからこんなアイドル風情なんかに誤解をまねくのよ!今!ここで!はっきり言いなさい!」 「あ・・・っ・・・・・」 あまりに剣幕に何も言葉がでてこなかった。 「そう・・・そういうことなの・・・」 僕の無言を裏切りだと判断されたようだった。 「お父様に連絡するわ・・・」 そう言って携帯をとりだす綾華。 「どうぞどうぞ、好きなだけお父様にお願いして下さいよ。先輩は絶対にあなたなんか相手にしませんけどね。」 「まっ・・・待って!!」 父親に連絡する。 これはつまり、僕の両親が・・・ 「電話はやめて・・・ください。」 「せっ・・・先輩!何言ってるんですか。こんなのほっておきましょうよ。」 「フッ・・・フフ」 僕の行動が予想から外れていたのであろう、朝倉はさっきまでの余裕をなくし、綾華はその逆だった。 「やっぱり奨悟はわかってるわね。あなたはすぐ流されるけど、結局は私のところへ来るしかないんだから!」 そう言って高笑いする綾華。 「ほら、言いなさいよ。”僕は綾華様の犬です”って、そうしたら電話はやめてあげるわ。」 そう言って携帯をかざす。 綾華は本気だ。 これを言わなければ綾華は必ず電話をかけるだろう。 「ぼ・・・僕は・・・綾華様の・・・い・・・いっ・・・」 「ホラっ!」 「僕は綾華様の犬です!」 「そう、それでいいのよ!」 そして、綾華の勝ち誇ったような高笑いの中、朝倉は完全に余裕をなくしていた。 「うそ・・・こんなの嘘ですよね先輩!あんな女なんてどうでもいいんですよね?」 「朝倉聞いてくれ、僕の」 「黙りなさい!」 そう綾華が命令する。 「余計なことは言わないでいいわ。それにあの女とは二度と会話しないで。」 「そっ・・・そんな!」 そんな僕にまた携帯をゆらつかせる。 僕は何も言えなくなった。 149 :囚われし者 ◆DOP9ogZIvw :2010/06/08(火) 01:12:58 ID:KgUH1mg/ 「そう言えば、あなたにお弁当つくってきたの。教室で食べましょうか。」 そう言って手招きする。 僕はそれに従うしかなかった。 「いや!いかないで先輩!」 屋上の扉からでようとした時、朝倉の声が聞こえた。 (ごめん・・・朝倉・・・) 僕は心の中で謝罪し扉を閉めた。 最後に見た朝倉の顔は、絶望そのものだった。 「何か、言わないといけないことがあるんじゃないの?」 「・・・・・」 放課後、僕と綾華は再び屋上にいた。 「何も言わないのね、やっぱりいいわ。私もあなたから他の女の話をされるなんて嫌だもの。」 そう言って、綾華は僕を抱きしめた。 「あなたは、どうしてそんなに優しいの?」 綾華の声が潤んでいた。 「あなたはいつも優しかった。私が子供の頃、どんなにその優しさに救われたか。」 綾華は子供の頃、今と違い友達はいなかった。 お嬢様としての高飛車な性格が、他の子には受け入れられなかった。 綾華は一人でも平気そうだったけど、彼女が影で泣いているのを僕は知っている。 「一人ぼっちだった私にとって、あなたは唯一の存在だった。」 「・・・」 「ずっと、こんな時間が続くと思ってた。あなたがいて、私がいて、私はそれだけで満足だった。」 綾華が泣いているのがわかった。 「でも、あなたはあの子と・・・あなたの妹と仲良くなって、あなたは妹の事を話すようになった。」 僕は綾華の肩を軽く叩いた。 これは僕が泣いていた綾華をあやすときのやり方、もう何年もやっていないものだった。 「その時に私は気づいたの。私はあなたを取られたくない。そして、これが恋なんだってことに。」 そして、綾華が叫ぶように言う。 「お願い!お金も住むところも愛情も、その・・・私の体も、全部あげる!だから私のモノになって!」 そして、今度は呟くように 「戻ってよ・・・あの頃に・・・私があなたに満たされて、あなたが私で満たされていたあの頃に・・・」 そう言った。 「優も朝倉も、みんな良い子だよ。」 「違うわ!私とあなたの世界に踏み込んだ悪者よ!」 先程とは違い綾華は興奮していた。 「あんな子達は必要ない!私はあなたがいればいい!あなたも私がいればいいの!足りないものは全部用意してあげるから!」 「痛いよ・・・綾華・・・」 「私のところに・・・帰って来てよ・・・」 綾華の頬に大粒の涙がつたっていた。 150 :囚われし者 ◆DOP9ogZIvw :2010/06/08(火) 01:13:22 ID:KgUH1mg/ 「綾華・・・僕は・・・グハッ」 僕は血を吐いた。 突然のことに意味がわからない。 息苦しい、足に力がはいらない、目も霞む。 「しょ・・・奨悟!!」 綾華が僕を抱きとめる。 「ど・・・どうしたの!?大丈夫!?」 綾華の心配そうな顔がかすかに見える。 「う・・・あ・・・・・」 大丈夫だと言おうとして言葉にできなかった。 「兄さん!」 聞きなれた声が聞こえた。 そして、僕の口を何か柔らかいものがこじ開けた。 何か異物が侵入してくる。 その異物に何か固形物を飲み込まされた。 薬の効果は驚くほど早く現れた。 さっきまでの息苦しさは消え、体に力がもどった。先程まで狂ったように暴れていた心臓も正常にもどったようだった。 だけど、それ以上に僕の口に侵入している、優の舌は暴れていた。 「にぃ・・・さん・・・・ジュル」 「やめなさい!」 先程まで、僕が突然倒れたことによりパニックに陥っていた綾華が冷静さを取り戻し、優は突き飛ばした。 僕と優の口に銀の橋がかかっていた。 「何してるのよ!」 「何って、薬をのませてあげただけですよ。」 そう言って、優は自分の唇についていた僕の唾液を舐めとった。 「最近、兄さんは薬を飲んでいませんでしたからね、そろそろ発症するのではと探していたのですが、ギリギリでしたね。」 そう言って優は僕に微笑かけた。 「どうやら、必死になって兄さんを口説いてたようですね。」 「・・・・っ」 「でも、無駄ですよ。あなたがいくらに兄さんに語りかけたところで、兄さんは最終的に私を選びますから。」 優は堂々と言い切った。 「そんなはずない!奨悟は私と一緒にいるのが一番幸せなの!」 「違いますね、もし、仮にそうだとしても、兄さんは私を選びます。なぜなら・・・」 そう言って、見たこともない怪しい笑みをうかべた。 「私を選ばないと死んじゃいますから。」 「ど・・・どういう意味よ!」 「さっきの発作。見たでしょう?あれは兄さんのもつ病気によるもの。そして、その発作を止めることができるのは私だけなんです。」 「だから・・・」 「だから、兄さんは私がいないと生きていけないんですよ。」 綾華は真偽を確かめるように僕を見たが、僕の表情でそれが真実だとわかったようだった。 「フフッフフフフ」 僕の予想に反して、綾華はなぜか笑い出した。 「何がおかしいんですか?」 「あなたは何もわかってないわね。」 そして勝ち誇った顔が言う。 「私の家は製薬メーカーよ。あなたが薬を作れるなら、うちでつくれないはずがないわ!」 「・・・・」 「そして、これが完成すれば、あなたが奨悟をつなぎとめるものがなくなる。あなたはお払い箱だわ!」 「無理ですね。」 高笑いする綾華とは対照的に、優はそう言った。 「だって、兄さんの病気は私が作ったものですから。」

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