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90 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:25:30 ID:i0VP7bYw こんにちは。僕は藤川英(フジカワハナ)と言います。 とある高校の二年生をやっています。 そして趣味…まあ趣味ですかね。とにかく何でも屋みたいな物をやっています。 これが意外と最近有名になってきて、色々な依頼を受けるようになりました。 今回はその一つをご紹介しようと思います。 Case1『埋め女』 「埋め女の呪い?…聞いたことないけど」 放課後の生徒会室。 ここが僕ら、何でも屋の本拠地である。先に依頼主の話を聞いていた、 目の前の女の子でメンバーの白川潤(シラカワジュン)に依頼内容を説明してもらっている。 「知らないの英!?一年間ここで過ごしてきたのに!?」 「…むしろまだ一ヶ月しか過ごしてない潤が知っている方が驚きなんだけど」 「女の子は情報網が半端ないの!ま、英には分からないだろうね」 何故か胸を張る潤。…高一でこの発育、日本もまだ捨てたもんじゃないね。 「ははは、確かに女の子は色々知ってるもんね。で、その埋め女の呪いって言うのは?」 「うん。20年くらい前の話なんだけどね…」 随分古いね。そして何故トーンを落とす必要があるのだろう。 「ある日から学校の女の子が毎日行方不明になるって事件が起こったの」 「そりゃあただ事じゃないね」 「さらに同じ日から校庭の大きな庭に数字がかかれるようになったの。10から始まって毎日カウントダウンみたいに刻まれてゆく…」 「それで?」 「日に日に被害者の女生徒と数字が反比例して、ついにカウントダウンが0になると…」 「…なると?」 何故かためる潤。稲川ナントカの真似でも覚えたのだろうか。 「校庭の庭の花が一斉に血のように紅くなって、その庭の中から行方不明だった女生徒達の死体が見つかったの!」 潤はクワッ!と目を見開いて熱演する。最近ホラー映画でも見たのだろう。 91 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:27:03 ID:i0VP7bYw 「わぁ、ビックリだね」 「でしょ!?まさに学校の怪談よ!キタロウもビックリだわ!」 そんなに興奮することなのかな。というかキタロウは何か違う気がする。 「そうだね。それでその恐ろしい怪談が、今回の依頼と何の関係があるの?」 「それがね、依頼人の男子の家の庭が全く同じ状況なんだって!で、怖いから調べてくれっていう依頼です」 満足げに語る潤。…何か胡散臭いよ、その依頼。 「えっと…要(カナメ)は何て言ってたの?」 「"鍛えなきゃいけないからパス"だってさ。本当にビビりなんだから」 …逃げたんだね要。リーダーのくせに。 「じゃあ行こうか!」 「……僕らだけで?」 「こんなの私達だけで十分だよ!さっ、依頼人の庭に行くよ!」 僕は潤に腕を引っ張られて連れていかれた。…まともな依頼だと良いけど。 僕らは依頼人である2年5組、佐藤勇気(サトウユウキ)君の家の庭にいる。 「…確かにこれは数字だね。しかも…」 目の前の庭には大きく1という数字が書かれていた。というか掘られていた。 「もうカウントダウン、後僅かじゃない!」 「し、仕方ないだろ!?だって怪談を知ったのは昨日だし!そ、それにただの悪戯だと思って…」 まあ普通はそう思うだろうね。僕でもそう思う。 「と、とにかく頼んだからね!」 そう言うと佐藤君は家の中に入ってしまった。 92 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:28:14 ID:i0VP7bYw 時刻は12時ちょっと前。結局庭を調べても何も分からなかったため、 犯人がカウントダウンする現場を抑えることした。 「やっぱり張り込みにはパンと牛乳だね」 モフモフとパンを食べる潤。小動物みたいだ。その後ろでは佐藤君が震えている。 「…怖いなら部屋にいた方が良いんじゃないかな?」 「き、気になって眠れないんだよ!」 何だかやりにくいな。しかし本当に来るんだろうか。それよりお腹空いたな…。 「っ!英、誰か来たよ!」 「…本当に来たよ」 「ひぃ!?」 潤の指差す方向には確かに人影が見えた。しかもシャベルみたいな物を持っている。 こりゃあ現行犯だね。 「さ、出番だよ英っ!」 「…やっぱりですか」 「は、早く捕まえてくれっ!」 …佐藤勇気君は名前変えた方が良いかもね。佐藤意気地無し君とかに。 まあ文句を言っていても仕方ないので、犯人に近付く。 「カウントダウンは止めてもらえると助かるかな」 「っ!?」 声をかけると犯人はいきなりシャベルを振り回してきた。 「あらら」 「くっ!ちょこまかと!」 声からして、女の人だった。よく片手でシャベルを振り回せるなぁ。 …ウチの女性陣は別だけど。 「何かっ!佐藤君にっ!恨みでもっ!あるん!ですか!」 シャベルをかわしながら呼び掛ける。 「うるさいっ!彼の名前を気安く呼ぶなっ!今日は私と彼の記念日なんだ!」 「…記念日?」 「英、お疲れ様!」 「なっ!?」 後ろから潤の回し蹴りが犯人に炸裂した。犯人はその場に倒れる。 よく見ると女の子だった。ウチの制服を着ているので、生徒のようだ。 「ふぅ…。もう少し早く助けてくれると嬉しいんだけど」 「だって動機を聞きたかったんだもん。まあ結果オーライだね」 シャベルで追い回される気持ちにもなってほしいんだけど。 「つ、捕まえたのか!?」 佐藤君が近付いてきた。その声に反応したのか、犯人の女の子が立ち上がる。 「さ、佐藤君?」 「えっ?……安藤さん?」 「お知り合いでしたか」 「あれ?呪いは?」 どうやら何かありそうだった。 93 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:29:30 ID:i0VP7bYw 「記念日…ですか」 「わたしと佐藤君が…去年の今日、初めて出会った記念日なんです!」 興奮して話すのは2年4組、つまり僕のクラスメイトの安藤静香(アンドウシズカ)さんだった。 安藤さんはポニーテールを揺らしながら話し続ける。 「わ、わたしずっと前から…さ、佐藤君のことが…す、好きで…で、でも言い出せなくて…。だから気付いて…気付いて欲しくて」 だからって人の家の庭を勝手に掘って良いんだろうか。 「そ、それで…埋め女の話を思い出して…利用しようって」 「…安藤さん」 「き、嫌いに…なりましたよね?」 あれ?何でシャベルを掴んでいるのかな、安藤さん。 「き、嫌いになんてなってないよ!」 「さ、佐藤君?」 「お、俺も前から…安藤さんのこと気になってたんだ!」 「佐藤君…っ!」 「…チッ」 こら、潤さん。さりげなく舌打ちしないの。もっとやりなさい。 「もし良かったら…俺と付き合ってくれ!」 「…はい!」 抱き合う二人。…まあ大事にならなくて良かった。 「じゃあ今日から恋人だね!」 「ああ!」 「じゃあもう隣のクラスの佐川さんとも、同じ部活の中村先輩とも話さないよね!」 「ああ!…えっ?」 安藤さんの抱きしめる力が強くなった気がする。 「それに今週の土曜に約束していた馬場さんとのデートもキャンセルしてね!」 「…な、なんでそんなこと…」 佐藤君の顔が青ざめている。冷や汗も出ているようだった。 「何でって…。大好きだからに決まってるでしょ!絶対に逃がさないんだから!」 「あ、あ…」 何だろうね、安藤さんがポケットから出したあの注射器は。 「…依頼は完了したみたいだし帰ろうか、潤」 「…そだね。何か疲れちゃったよ」 「ま、待ってくれ!助け…!」 立ち去ろうとする僕らを佐藤君が呼び止めるが 「ありがとう!お二人のおかげで結ばれました!」 安藤さんが佐藤君の首に注射をして黙らせていた。 「「お幸せに~」」 結局埋め女の呪いとは関係無かったようだ。 94 :藤川少年の事件簿 ◆Uw02HM2doE :2010/06/29(火) 00:30:28 ID:i0VP7bYw あれから一週間経った。 佐藤君と安藤さんは校内でも有名なラブラブカップルになったようだ。 …佐藤君の目に生気がないのは僕の気のせいだと思う。そして今日も生徒会室へ。 今度こそ、僕の知的好奇心を刺激する依頼が来ていることを願って。 「英、良いところに来たね」 生徒会室には透き通った白い髪が良く似合う、春日井遥(カスガイハルカ)がいた。 彼女もメンバーの一人だ。 「遥一人なんて珍しい。良いところって…もしかして依頼かな?」 「当たり。相変わらず勘が鋭いね」 来た。今度こそ良い依頼であることを神に祈る。 「一体どんな依頼なのかな?」 「その前にね、英」 「何?」 「…埋め女の呪いって、知ってる?」 「…………」 どうやら神は僕を見放したようだった。

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