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307 :僕は自分が大嫌いだ『裏』 ◆3BXg7mvLg0RN :2010/07/18(日) 11:57:47 ID:VORa63DL ある日、兄様はわたしに言いました。 「藍里、僕、明日桜ちゃんに告白してみるよ」 桜ちゃんというのは、兄様とわたしの幼馴染で、大抵の人が見ればかわいいと思えるらしい女の子です。 兄様は、よく「僕、桜ちゃんが好きなんだ」と言ってましたが、わたしは冗談だと思っていました。 しかし、兄様は彼女に告白すると言いました。 ただ、兄様が彼女を自然に好きになるなんてありえません。 おそらく、あの女が誘惑したのでしょう。発情期の雌犬とみたいですね。 それに気づいたわたしは、すぐさま包丁をお気に入りのバッグに入れ、その雌犬の家へ向かいました。 そして、雌犬に包丁を突きつけ尋問しました。 しかし、雌犬は「知らない!」「そんなことしてない!」「信じて!」と、認めようとしませんでした。 なので、わたしは彼女に言いました。 「明日、兄様があなたに告白するらしいので、今から言う言葉を言ってください」 わたしは、包丁を突きつけながら何度も雌犬にその言葉を練習させました。 雌犬のしつけが終わると、わたしはすぐに家へ帰りました。 もちろん最後に雌犬に念を押すのも忘れません。 その日の残りはは兄様を慰めるための言葉を考えることに費やしました。 次の日、わたしの計画通りに兄様は振られました。 兄様が去った後、雌犬がその場で泣き崩れていました。 わたしの兄様に手を出した報いですね。 唯一の誤算は兄様の中で雌犬の占める割合が大きかったことですね。 それが原因で兄様は一週間も学校を休んでしまいました。 いくらペットに嫌われたからといっても学校を休むのはダメですよ。 それに、兄様がいないとわたしが学校に行く意味がなくなりますからね。 なのでわたしは一週間かけて兄様を説得しました。 そういえばいつの間にか雌犬がいなくなっていました。どうでもいいですけどね。 まあそんなわけで、わたしは兄様との幸せな日々を取り戻すことができました。 五年程前のことです。 308 :僕は自分が大嫌いだ『裏』 ◆3BXg7mvLg0RN :2010/07/18(日) 11:59:58 ID:VORa63DL 今日は入学式。 兄様と同じ高校に入ることができたわたしは、今、とても幸せです。空も飛べそうです。 がんばって両親を説得した甲斐がありました。 兄様の産みの親ですから、尊敬できるなのですが、少々頭がかたいところが欠点です。 まあ当分関わるつもりはないのでどうでもいいですが。 さて、そろそろ兄様が待ちくたびれてそうな仕草を見せたので兄様を熟視するのを止め、兄様の方へ向かう。 「兄さ~ん!お待たせ~!」 本当は兄様にはもっと敬意をもって接すべきなのですが、兄様はこういう女性が好みなので、兄様の御期待に添えるためにこんな言葉遣いにしているのです。 気づけば兄様がわたしの顔を食い入るように見つめていました。 あまり見つめられると恥ずかしいのですが……。 「どうしたの?」 わたしが首を傾げながら聞くと、兄様は、 「いや、なんでもない。行こう」 とわたしを促しました。 わたしはそれに対して返事をし、兄様と歩き出す。兄様の隣はわたし専用の場所です。 兄様と歩くとき、いつも兄様と手を繋いで歩いたときのことを思い出して、兄様の手に意識がいってしまいます。 「どうした?」 それは今日も例外ではなかったようです。 「う、ううん。なんでもないよ」 「そう」 兄様の返事は基本的にはいつも素っ気無いもので、少し悲しくなります。 そういえば、今わたしたちは二人きりで歩いてますけど、周りの人から見るとどのように見えるのでしょうか。 や、やっぱり、その、恋人として見られているのでしょうか。 兄様に聞いてみました。 309 :僕は自分が大嫌いだ『裏』 ◆3BXg7mvLg0RN :2010/07/18(日) 12:25:53 ID:VORa63DL 「その、わ、わたしたちって、さ。周りから見るとどんな風に見えるのかな?」 「そりゃあ兄妹だろ」 兄様の返事はやはり素っ気無いものでした。 「そ、そっか。そうだよね…」 そういう返事がくるって分かっていても、いざ言われると少し落ち込んでしまいます。 でも、兄様は優しい。 まだ学校まで時間があるからそれまで兄様にかまってもらいましょう。 「ね、ねえ、兄さん」 「なんだ?」 少しうつむき加減にして言う。 「て、手ぇ、繋いでいい?」 「却下」 予想どうりの答えです。 「む~、なんで?」 機嫌が悪くなったふりをする。 「もうそんな年でもないだろ。大して仲が良いわけでもないし」 「ふ~ん。じゃあ兄さんはわたしのことが嫌いなんだね」 嘘でもこんなことは言いたくないですが、仕方ないです。 「ねえ兄さん。聞いてるの?」 無視されました。めんどくさくなってきたらしいです。 「兄さん?どうしたの?」 もう兄様がわたしにかまってくれなくなるんじゃないかと不安になってきます。 「ねえ、に、兄さん?」 無言の兄様。 でもこれは一種のチャンスです。ここで嘘泣きをすれば…。 「う、うう、ぐすっ、ひっく」 やっぱり兄様が動揺しはじめた。 兄様は昔からわたしが泣くとどこからでも飛んできて慰めてくれました。 「あ、藍里!?冗談だから!ゴメン!ほ、ほら!大丈夫だぞ!」 兄様が頭を撫でてくれました。 上目遣いで兄様を見ました。 「ほ、ほんとに?ぐすっ」 「あ、ああ。僕が悪かったから」 兄様は本当にお人好しです。 こんな嘘に騙されるなんて…。 ちょっと不安です。 「わ、わたしのこと、ひっく、きらいにならない?」 「あ、ああ。嫌いじゃない嫌いじゃない」 わたしが落ち着いてきたフリをすると、兄様も安心してきたようです。 「じゃあ、わたしのこと、好き?」 頬が熱くなってきます。 心臓の鼓動も速くなってきます。 「あ、ああ。好きだから。大好きだ。あれ?」 心臓が飛び出しそうになるほどうれしいです。 「ふふ、うれしい…」 いつの間にかわたしの口から言葉が漏れていました。 「もう、ツンデレなんだから…。兄さんのばか」 兄様、兄様、兄様。 「い、いや、今のはだな!その場のノリというかな!」 兄様が何か言っていますが、おそらく照れているんでしょう。カワイイ♪ 「もう、照れちゃって。大丈夫だよ、わかってるから♪」 やっぱり兄様はわたしのものです。そして、わたしは兄様のものです。 ずっと一緒ですよ。兄様。

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