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671 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/10(月) 19:38:37 ID:zUmWkgcA  久々に投稿&埋めネタします、今回もまた変化球ですのであしからず。  「ヤンデレ観測者」  大人になってからは時間の流れが速くなるとは言うが、よもや自分がそれを経験する日が 来るとは思っていなかった。  気がつけば私ももう二十代後半を過ぎ、更に季節はもうクリスマスに程近くなっている。  一人身にとっては心身ともに大変辛い季節だ、だからこそ早く家に帰りたかった、それに 家に帰ればモニターの中で…こんな私でも微笑んで手をとってくれる少女たちがいるからだ。  いつからだろうか、現実の女性に興味をもてなくなったのは…高校一年の夏、ようやく告白 が実って付き合い始めた女の子に、実はキープ扱いされて手ひどく振られた日からだろうか? それとも職場恋愛で結婚寸前まで持ちかけられた同僚を出張中に上司に寝取られた日からだろうか?。  それでも、そんな日でも…少女たちはモニターの中で微笑を絶やさないで私に愛をささやいてくれた あるものは恋敵を殺し…またあるものは邪魔になれば肉親すらも殺し…あるときは私の分身である少 年を監禁し、そして私を殺して…捕食までしてくれた。  怖くはないのか?怖いわけがない…こんな私をそこまで思ってくれるのだ、愛のある殺意の どこにおびえればいいのだ…そんな考えが普通に浮かぶ。   まあ自分でいうのもあれだが、私は精神を少々病みながらも…ヤンデレというものの魅力に 完全に取り付かれていたのだ。  そんな事を考えながら自宅である安アパートに向かう。急ぎ足で入り組んだ路地を抜けて アパート近くのバス停前にたどり着いたとき…私は変なもの…いや、人を目撃した。  その女性は深夜、こんなに遅い時間に大荷物を持ってバス停に腰をかけているのだ… 間違いなくバスを待っているということはないだろう、しかもその服装ときたら… メイド服ときているのだ。  異常だ、明らかに何かおかしい、でも…ゲームとの天秤が揺らぐくらいに興味を引かれた のは事実だった。 672 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/10(月) 19:43:45 ID:zUmWkgcA 「こんばんは…バスを待っているんですか?」  私は彼女に話しかけてみることにした、こういうことは仕事柄よくなれている。 空ろな目をした彼女はいきなり話しかけられたことに対して動揺したようだったが それから作り笑いを絵に描いたような表情を浮かべるとこう切り替えした。  「いえ、少し疲れたので…眠っていたんです」  「そうですか…ああ、それじゃあこれをどうぞ…体が温まりますよ」  「あ…はい、ありがとうございます」  そういって彼女は私が手渡したコーヒー缶を受け取ると、念入りに缶の 尻の部分を観察して…それからプルタブをひねってコーヒーを飲み始めた。  「…あったかい、ありがとうございます」  「いえいえ、この程度…しかしあれですねぇ、どうしてまたこんなところで こんな格好を?」  私はどうしても気になっていたことを尋ねてみた、よくよく見れば臭いこそし ないが…そのメイド服と、大荷物である巨大なスポルディングバッグには、どう見ても 血にしか見えないシミがところどころについていたのだ。  「…私のお話、信じてくださいますか?」  「ええ、どんな話でも信じますよ…たとえば…そうですね、そういえばこの前は 彼氏の生首を持って海外逃亡をする、なんていってる血まみれの女の子がここに座っ てましてね…私、不憫になったのでいくばくかお金と食料を上げちゃいまして…まあ そんな感じなので大丈夫ですよ、それに誰にも絶対言いませんし…何でも言ってください、 どんな話でも信じますから」  「ふふ…お優しいんですね、大変失礼ですが…馬鹿なくらいに…」  「まあ、そうですねえ・・・」  そういって彼女は少し笑う、どうやら私の話を信じていないようだ。  実際私はその彼氏の生首を見せられたと言うのに、それにそんな経験は一度や二度ではないと 言うのに…。  そもそもこの街はなんだか治安がよろしくない、そのせいなのか何なのかこのアパート周辺だけでも かなり変な人が多い分…わたしはこのバス停で幾度となく、そんな少女や女性たちの話を伺う羽目にな っていたのだ。  あるときは彼氏だと言うミイラを背負った少女に出会い、明らかに変質的な馴れ初め話しを聞かされ た、またあるときは彼氏を殺してしまい、泣きながら包丁を持っている少女と対話して、彼氏の事を悔いる少女を諭した事もあった…酷いときには明け方まで監禁した彼氏の写メを見せて自慢話をしてくる 少女もいたくらいだ…そして三度目くらいにわたしはこう仮定した、どうやらここには何かヤンデレを 集めるオーラか何かがあって、わたしはそれらから上手く話を聞きだせる条件を有している、と…どう せ暇人だし、命もあんまり惜しくはない…それになにより彼女たちは愛する人がいる分…絶対にほれら れる事もない。  そんな少々悲しい仮定をして大体月に一度、わたしはこうしてヤンデレてしまった人たちの観測を 行っていた。  「…私、出身は東北の貧しい魚村の出でして…」  少々押し黙った後、彼女はそういって語り始めた。  「家は六人兄弟で…十歳のときに父が事故で死んでからますます生活が苦しくなって…とうとう 奴隷として売りに出されそうになったときに…偶然拾われたんです、ご主人様に…」  そういう彼女の目は空ろだったが、顔は必死に作り笑いを浮かべていた…そしてその視線の 先は、大きな大きなスポルディングバッグに…いや、違う、コレはどこからどう見ても…死体袋じゃないか …ストラップついてるから気づかなかったなぁ…に向けられていた。  「ご主人様はさる貴族の末裔の大金持ちだそうで…たまたま村の再開発部分を視察しに来たときに私をみて …一目で気に入ってくれたらしくて…そのまま私をメイドとしてお雇いになってくれたんです…勿論、凄く うれしかったですよ、私…ふふふ」  「一目ぼれ…だったんですか?」  「ええ…でもそれはあの人も同じだったみたいですね…暇なときに私を呼びつけてはよくお話してい ましたよ…私は早逝された妹さんにそっくりだとかで…ふふ、きっと恥ずかしかったんでしょうね そんな事をいって照れ隠ししていたんですよ…」  私は頷きつつもそのご主人様とやらに少し嫉妬した。 111 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 01:55:35 ID:Ehhjl25M それでは貼らせていただきます、ダイノボーグとはノリが違いますがあしからず。 ヤンデレ観測者③  やはり世の中は金と地位なんだろうか…暗がりでもよく生える聡明そうな顔のメイドさん…こんな人を そんな簡単にも雇えるなんて…なんてうらやましいんだ、と私は不謹慎にもそんなことを考えていた…。  「二人でいるときは本当に幸せでした、私ってドン臭いからよく先輩メイドさんに苛められたりもしましたけど …そんなのも全然苦にならなくて…でも」  少し彼女の声のトーンが落ちる、どうやら話は核心に迫ってきたようだ。  「幸せは長くは…続かなかったんです」 「あの日、私が雇われて一年ぐらいして…ようやくご主人様は私を…夜に、部屋に呼んでくれたんです…私…うれしくて …初めては、とても痛かったですけど…それでも、私…嬉しかったんです」  話終わると同時にぐう、と彼女のお腹がなった、恥ずかしがる彼女に私は無言で夕飯用に買っておいたタマゴサンドを差し出した。  「…はむ…ありがとうございます…」  「いえいえ、お気になさらずどうぞ…」  しばし彼女は食事を続け、一息をつくと話を続けた。  「でも、その日からだんだんご主人様はやつれ始めて…日に日に痩せこけていったんです…元々病弱な人だった分、心配はしていた のですが…最後には仕事も出来なくなって、山奥のお屋敷で、私と数人の使用人を引き連れて隠居生活をするようになって…」  彼女はぽろぽろと涙を流す、散々世知辛い人生を生きていた分、せっかく手に入れた幸せが壊れたと言う事は…未を引き裂かれる事 よりも辛かったのだろう。  「最後に彼はずっとわたしに謝ってました、妹と君を重ねてしまってすまなかった、って……ご主人様の初恋の人は血の繋がっていない 妹さんで…禁断の恋が妹さんの早逝で実らなかった分、容姿の似た私を、せめてもと思って、抱いていたって…ふふふ、あはははは、そんなこと 言わなくても、よかったのに……はははははは」  聞いていてとても辛い話だった、久々に胃が痛くなる…しかし、多分彼女がここまで私にこの話をしてくれていると言う事は…私にこのことを 話すことでなにかをはらす事になるのかもしれない…そう、私が一生好かれることはないであろう。人を愛する事で一線を飛び越えた少女たちの… その叫びを聞いてあげることで彼女たちが癒されるのなら、何かの踏ん切りがつくのなら…ある意味この観測も意味があるのではないか…なら、ここで 更にその話しの続きを聞いてあげるべきだ、胃の痛みをこらえて私は必死にそう思った。  112 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 01:58:55 ID:Ehhjl25M  ヤンデレ観測者④  「それでその後は…どうしたんですか?」 「色々調べました…ご主人様の死因と、ご主人様の周りを取り囲む状況を…結果、死因は毒殺で… 犯人はメイド長と…ご主人様の両親と、ご主人様の遺産と保険金目当ての親戚筋である事が解りまして… 私、やるせなくなって…ご主人様の、いいえ…彼の墓を掘り起こしたんです…だって酷いじゃないですか? そんな人たちが作った墓の中で、偽りの涙を流されて冷たい土の中に閉じ込められてるんですよ?そんなところ にいるのなら…私が助けなくちゃ、って…私と同じ、あんな金ごときで…家族に捨てられて、命も奪われた 可愛そうな彼を、せめて私が助けなくちゃって…」  「そうして彼を助け出して…今はこうして、きちんと防腐処理して、剥製にした彼と二人で復讐の旅に出てるんです… うふふ…もうこれで、永遠に、墓穴の中でも二人は一緒なんですよ」  そう言うと彼女はいとおしそうに…その、彼の入っているであろう死体袋を撫で回した。 113 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 02:08:16 ID:Ehhjl25M ヤンデレ観測者⑥ そうか、それで血まみれだったのか…私は頷くと、自分の分である缶コーヒーを飲んで一息ついた。  「それで…首尾の方は」  「ええ…もうそれは、常にできるだけ急所ををはずして、苦しめて惨めに殺してやったのですが… あと残り一人がどうにも…警戒を強めているようで…」  そういうと彼女はポケットに入れていたものを見せた。彼女の手に握られていたのは古びたコルト ウッズマンのロングバレルバージョンだった…。  「大勢のボディーガードを相手に…これ一丁でどこまでいけるのか…」  装備は拳銃一つのみ…確かにそれのみで大勢のボディーガードに囲まれた復讐相手を殺すのは大変 なうえに、精神的にも不安なのだろう。  …なら仕方ないな、協力してあげるとするか。  「コレ、少ないですけど使ってください…」  そういうと私はバッグのポケットから柄付手榴弾を二つほど取り出して渡した、この前やはりここで 知り合った「魔物と戦える、彼氏を食べてしまった少女」が私にくれたものだ。  何でくれたのかわからない上にちょうど持て余していたのだが、必要な人がいるのならその人にあげ るのが一番だろう。  「…いいん、ですか?」  「ええ…これはあなたにとって必要なものでしょうし…それに、貴方が死んでしまったら…またその 彼氏と…今度こそ永遠に引き剥がされてしまいますからね」  「…ありがとうございます、ありがとうございます…」  彼女はぽろぽろと涙を零すと何度も何度もお辞儀をした。  僕の手を握る彼女の手は冷たく、血なまぐさく…そしてかさかさに荒れていた。  本来ならとめてあげたかった、引き止めてあげたかった。  でも彼女はもうその未来を、死体袋に入った剥製と、握った拳銃と共に放棄し てしまったんだろう…それが何より悲しかった。  僕はそれからもう少し彼女と話をすると、その場所を後にした。  彼女は僕の姿が見えなくなるまで、手を振っていてくれるような気がした。 114 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 02:21:24 ID:Ehhjl25M ヤンデレ観測者⑦  数日後、急いでアパートに帰ると玄関先に彼女の持っていたウッズマンが、ホールドオープンしたままの状態で置いてあった。 きっともう、使う必要はなくなったから…多分そういう意味なのだと僕は思った。  文鎮代わりのそれの下に置かれた…南の島の写真と、ありがとう、二人はここにいます…そのうち、生きていればまた…と書かれた 文を見て、私は…そこまで思われているそのご主人様がとてもうらやましかった…。  ああ、いつか私もそんな目にあってみたいものだと。  そして、彼とやっと安住の地にたどり着いて、幸せそうに微笑む彼女の姿を想像して…私は少しだけ泣いた。  そしてそれから一年が過ぎたが、まだ私の前に私を愛してくれる素敵な女性は現れてはいない、しかし相変わらず アパートの前のバス亭には、一線を越えた女性達が現れて続けていた…。  「と、いうわけで…あの人を振り向かせるために、このバトルロワイアルゲームに参加したんです…なのに ゆーくんは振り向いてくれなくて…大変だったんですよ、40メートルもあるロボットに乗ってエイリアンと、ほかの子達と 戦うのって…しかもあと二人倒せば全ては終わるっていうのに…あの妹、あの妹…絶対いつか殺してやる殺してやる殺して やる!!!」  「あなたは…そう、とっても素敵ですねえ…自分の命も、人の命もかけて彼のために戦えるなんて…その彼氏がうらやま しいくらいだ…」  たとえそのロボットの攻撃で、私のアパートがぶち壊されても…バス停だけは偶然に残り…そして何故か、そこに私が住み 着いていても…彼女たちが途絶える事はなかった。  ああ誰か、早く素敵なヤンデレ女性に出会いたい…。  FIN  
671 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/10(月) 19:38:37 ID:zUmWkgcA  「ヤンデレ観測者」  大人になってからは時間の流れが速くなるとは言うが、よもや自分がそれを経験する日が 来るとは思っていなかった。  気がつけば私ももう二十代後半を過ぎ、更に季節はもうクリスマスに程近くなっている。  一人身にとっては心身ともに大変辛い季節だ、だからこそ早く家に帰りたかった、それに 家に帰ればモニターの中で…こんな私でも微笑んで手をとってくれる少女たちがいるからだ。  いつからだろうか、現実の女性に興味をもてなくなったのは…高校一年の夏、ようやく告白 が実って付き合い始めた女の子に、実はキープ扱いされて手ひどく振られた日からだろうか? それとも職場恋愛で結婚寸前まで持ちかけられた同僚を出張中に上司に寝取られた日からだろうか?。  それでも、そんな日でも…少女たちはモニターの中で微笑を絶やさないで私に愛をささやいてくれた あるものは恋敵を殺し…またあるものは邪魔になれば肉親すらも殺し…あるときは私の分身である少 年を監禁し、そして私を殺して…捕食までしてくれた。  怖くはないのか?怖いわけがない…こんな私をそこまで思ってくれるのだ、愛のある殺意の どこにおびえればいいのだ…そんな考えが普通に浮かぶ。   まあ自分でいうのもあれだが、私は精神を少々病みながらも…ヤンデレというものの魅力に 完全に取り付かれていたのだ。  そんな事を考えながら自宅である安アパートに向かう。急ぎ足で入り組んだ路地を抜けて アパート近くのバス停前にたどり着いたとき…私は変なもの…いや、人を目撃した。  その女性は深夜、こんなに遅い時間に大荷物を持ってバス停に腰をかけているのだ… 間違いなくバスを待っているということはないだろう、しかもその服装ときたら… メイド服ときているのだ。  異常だ、明らかに何かおかしい、でも…ゲームとの天秤が揺らぐくらいに興味を引かれた のは事実だった。 672 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/10(月) 19:43:45 ID:zUmWkgcA 「こんばんは…バスを待っているんですか?」  私は彼女に話しかけてみることにした、こういうことは仕事柄よくなれている。 空ろな目をした彼女はいきなり話しかけられたことに対して動揺したようだったが それから作り笑いを絵に描いたような表情を浮かべるとこう切り替えした。  「いえ、少し疲れたので…眠っていたんです」  「そうですか…ああ、それじゃあこれをどうぞ…体が温まりますよ」  「あ…はい、ありがとうございます」  そういって彼女は私が手渡したコーヒー缶を受け取ると、念入りに缶の 尻の部分を観察して…それからプルタブをひねってコーヒーを飲み始めた。  「…あったかい、ありがとうございます」  「いえいえ、この程度…しかしあれですねぇ、どうしてまたこんなところで こんな格好を?」  私はどうしても気になっていたことを尋ねてみた、よくよく見れば臭いこそし ないが…そのメイド服と、大荷物である巨大なスポルディングバッグには、どう見ても 血にしか見えないシミがところどころについていたのだ。  「…私のお話、信じてくださいますか?」  「ええ、どんな話でも信じますよ…たとえば…そうですね、そういえばこの前は 彼氏の生首を持って海外逃亡をする、なんていってる血まみれの女の子がここに座っ てましてね…私、不憫になったのでいくばくかお金と食料を上げちゃいまして…まあ そんな感じなので大丈夫ですよ、それに誰にも絶対言いませんし…何でも言ってください、 どんな話でも信じますから」  「ふふ…お優しいんですね、大変失礼ですが…馬鹿なくらいに…」  「まあ、そうですねえ・・・」  そういって彼女は少し笑う、どうやら私の話を信じていないようだ。  実際私はその彼氏の生首を見せられたと言うのに、それにそんな経験は一度や二度ではないと 言うのに…。  そもそもこの街はなんだか治安がよろしくない、そのせいなのか何なのかこのアパート周辺だけでも かなり変な人が多い分…わたしはこのバス停で幾度となく、そんな少女や女性たちの話を伺う羽目にな っていたのだ。  あるときは彼氏だと言うミイラを背負った少女に出会い、明らかに変質的な馴れ初め話しを聞かされ た、またあるときは彼氏を殺してしまい、泣きながら包丁を持っている少女と対話して、彼氏の事を悔いる少女を諭した事もあった…酷いときには明け方まで監禁した彼氏の写メを見せて自慢話をしてくる 少女もいたくらいだ…そして三度目くらいにわたしはこう仮定した、どうやらここには何かヤンデレを 集めるオーラか何かがあって、わたしはそれらから上手く話を聞きだせる条件を有している、と…どう せ暇人だし、命もあんまり惜しくはない…それになにより彼女たちは愛する人がいる分…絶対にほれら れる事もない。  そんな少々悲しい仮定をして大体月に一度、わたしはこうしてヤンデレてしまった人たちの観測を 行っていた。  「…私、出身は東北の貧しい魚村の出でして…」  少々押し黙った後、彼女はそういって語り始めた。  「家は六人兄弟で…十歳のときに父が事故で死んでからますます生活が苦しくなって…とうとう 奴隷として売りに出されそうになったときに…偶然拾われたんです、ご主人様に…」  そういう彼女の目は空ろだったが、顔は必死に作り笑いを浮かべていた…そしてその視線の 先は、大きな大きなスポルディングバッグに…いや、違う、コレはどこからどう見ても…死体袋じゃないか …ストラップついてるから気づかなかったなぁ…に向けられていた。  「ご主人様はさる貴族の末裔の大金持ちだそうで…たまたま村の再開発部分を視察しに来たときに私をみて …一目で気に入ってくれたらしくて…そのまま私をメイドとしてお雇いになってくれたんです…勿論、凄く うれしかったですよ、私…ふふふ」  「一目ぼれ…だったんですか?」  「ええ…でもそれはあの人も同じだったみたいですね…暇なときに私を呼びつけてはよくお話してい ましたよ…私は早逝された妹さんにそっくりだとかで…ふふ、きっと恥ずかしかったんでしょうね そんな事をいって照れ隠ししていたんですよ…」  私は頷きつつもそのご主人様とやらに少し嫉妬した。 111 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 01:55:35 ID:Ehhjl25M ヤンデレ観測者③  やはり世の中は金と地位なんだろうか…暗がりでもよく生える聡明そうな顔のメイドさん…こんな人を そんな簡単にも雇えるなんて…なんてうらやましいんだ、と私は不謹慎にもそんなことを考えていた…。  「二人でいるときは本当に幸せでした、私ってドン臭いからよく先輩メイドさんに苛められたりもしましたけど …そんなのも全然苦にならなくて…でも」  少し彼女の声のトーンが落ちる、どうやら話は核心に迫ってきたようだ。  「幸せは長くは…続かなかったんです」 「あの日、私が雇われて一年ぐらいして…ようやくご主人様は私を…夜に、部屋に呼んでくれたんです…私…うれしくて …初めては、とても痛かったですけど…それでも、私…嬉しかったんです」  話終わると同時にぐう、と彼女のお腹がなった、恥ずかしがる彼女に私は無言で夕飯用に買っておいたタマゴサンドを差し出した。  「…はむ…ありがとうございます…」  「いえいえ、お気になさらずどうぞ…」  しばし彼女は食事を続け、一息をつくと話を続けた。  「でも、その日からだんだんご主人様はやつれ始めて…日に日に痩せこけていったんです…元々病弱な人だった分、心配はしていた のですが…最後には仕事も出来なくなって、山奥のお屋敷で、私と数人の使用人を引き連れて隠居生活をするようになって…」  彼女はぽろぽろと涙を流す、散々世知辛い人生を生きていた分、せっかく手に入れた幸せが壊れたと言う事は…未を引き裂かれる事 よりも辛かったのだろう。  「最後に彼はずっとわたしに謝ってました、妹と君を重ねてしまってすまなかった、って……ご主人様の初恋の人は血の繋がっていない 妹さんで…禁断の恋が妹さんの早逝で実らなかった分、容姿の似た私を、せめてもと思って、抱いていたって…ふふふ、あはははは、そんなこと 言わなくても、よかったのに……はははははは」  聞いていてとても辛い話だった、久々に胃が痛くなる…しかし、多分彼女がここまで私にこの話をしてくれていると言う事は…私にこのことを 話すことでなにかをはらす事になるのかもしれない…そう、私が一生好かれることはないであろう。人を愛する事で一線を飛び越えた少女たちの… その叫びを聞いてあげることで彼女たちが癒されるのなら、何かの踏ん切りがつくのなら…ある意味この観測も意味があるのではないか…なら、ここで 更にその話しの続きを聞いてあげるべきだ、胃の痛みをこらえて私は必死にそう思った。  112 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 01:58:55 ID:Ehhjl25M  ヤンデレ観測者④  「それでその後は…どうしたんですか?」 「色々調べました…ご主人様の死因と、ご主人様の周りを取り囲む状況を…結果、死因は毒殺で… 犯人はメイド長と…ご主人様の両親と、ご主人様の遺産と保険金目当ての親戚筋である事が解りまして… 私、やるせなくなって…ご主人様の、いいえ…彼の墓を掘り起こしたんです…だって酷いじゃないですか? そんな人たちが作った墓の中で、偽りの涙を流されて冷たい土の中に閉じ込められてるんですよ?そんなところ にいるのなら…私が助けなくちゃ、って…私と同じ、あんな金ごときで…家族に捨てられて、命も奪われた 可愛そうな彼を、せめて私が助けなくちゃって…」  「そうして彼を助け出して…今はこうして、きちんと防腐処理して、剥製にした彼と二人で復讐の旅に出てるんです… うふふ…もうこれで、永遠に、墓穴の中でも二人は一緒なんですよ」  そう言うと彼女はいとおしそうに…その、彼の入っているであろう死体袋を撫で回した。 113 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 02:08:16 ID:Ehhjl25M ヤンデレ観測者⑥ そうか、それで血まみれだったのか…私は頷くと、自分の分である缶コーヒーを飲んで一息ついた。  「それで…首尾の方は」  「ええ…もうそれは、常にできるだけ急所ををはずして、苦しめて惨めに殺してやったのですが… あと残り一人がどうにも…警戒を強めているようで…」  そういうと彼女はポケットに入れていたものを見せた。彼女の手に握られていたのは古びたコルト ウッズマンのロングバレルバージョンだった…。  「大勢のボディーガードを相手に…これ一丁でどこまでいけるのか…」  装備は拳銃一つのみ…確かにそれのみで大勢のボディーガードに囲まれた復讐相手を殺すのは大変 なうえに、精神的にも不安なのだろう。  …なら仕方ないな、協力してあげるとするか。  「コレ、少ないですけど使ってください…」  そういうと私はバッグのポケットから柄付手榴弾を二つほど取り出して渡した、この前やはりここで 知り合った「魔物と戦える、彼氏を食べてしまった少女」が私にくれたものだ。  何でくれたのかわからない上にちょうど持て余していたのだが、必要な人がいるのならその人にあげ るのが一番だろう。  「…いいん、ですか?」  「ええ…これはあなたにとって必要なものでしょうし…それに、貴方が死んでしまったら…またその 彼氏と…今度こそ永遠に引き剥がされてしまいますからね」  「…ありがとうございます、ありがとうございます…」  彼女はぽろぽろと涙を零すと何度も何度もお辞儀をした。  僕の手を握る彼女の手は冷たく、血なまぐさく…そしてかさかさに荒れていた。  本来ならとめてあげたかった、引き止めてあげたかった。  でも彼女はもうその未来を、死体袋に入った剥製と、握った拳銃と共に放棄し てしまったんだろう…それが何より悲しかった。  僕はそれからもう少し彼女と話をすると、その場所を後にした。  彼女は僕の姿が見えなくなるまで、手を振っていてくれるような気がした。 114 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/12/13(木) 02:21:24 ID:Ehhjl25M ヤンデレ観測者⑦  数日後、急いでアパートに帰ると玄関先に彼女の持っていたウッズマンが、ホールドオープンしたままの状態で置いてあった。 きっともう、使う必要はなくなったから…多分そういう意味なのだと僕は思った。  文鎮代わりのそれの下に置かれた…南の島の写真と、ありがとう、二人はここにいます…そのうち、生きていればまた…と書かれた 文を見て、私は…そこまで思われているそのご主人様がとてもうらやましかった…。  ああ、いつか私もそんな目にあってみたいものだと。  そして、彼とやっと安住の地にたどり着いて、幸せそうに微笑む彼女の姿を想像して…私は少しだけ泣いた。  そしてそれから一年が過ぎたが、まだ私の前に私を愛してくれる素敵な女性は現れてはいない、しかし相変わらず アパートの前のバス亭には、一線を越えた女性達が現れて続けていた…。  「と、いうわけで…あの人を振り向かせるために、このバトルロワイアルゲームに参加したんです…なのに ゆーくんは振り向いてくれなくて…大変だったんですよ、40メートルもあるロボットに乗ってエイリアンと、ほかの子達と 戦うのって…しかもあと二人倒せば全ては終わるっていうのに…あの妹、あの妹…絶対いつか殺してやる殺してやる殺して やる!!!」  「あなたは…そう、とっても素敵ですねえ…自分の命も、人の命もかけて彼のために戦えるなんて…その彼氏がうらやま しいくらいだ…」  たとえそのロボットの攻撃で、私のアパートがぶち壊されても…バス停だけは偶然に残り…そして何故か、そこに私が住み 着いていても…彼女たちが途絶える事はなかった。  ああ誰か、早く素敵なヤンデレ女性に出会いたい…。  FIN  

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