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245 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ [sage] :2010/08/09(月) 02:26:51 ID:qEkFWaaR 神添紅麗亜でございます。 憤懣やる方ない思いで、私は雌蟲その1の巣を後にしました。 なぜ、メイドがご主人様から離れるなどという、言語道断な事態が起きなければならないのでしょう? なぜ? ご主人様も、「紅麗亜が一緒じゃないなら帰る」と言ってくださればよかったのですが。 結局ご主人様は、雌蟲その1の婚約披露会をキャンセルすることなく、巣に入ってしまわれました。 律儀なご主人様です。 しかし、その律儀さはメイドだけに向けるべきなのです。 ご主人様がお帰りになったら、しっかりとそのことをお教えしなければならないでしょう。 もっとも、今は他にやることがあります。 角を曲がり、雌蟲その1の巣が見えなくなったところで、私はポケットからイヤホンを出し、耳に差しました。 ご主人様の服には、盗聴器と発信器がそれぞれ複数仕込んであります。ご主人様の安全と貞操を守るメイドとして、当然の配慮です。 受信機を操作して電波を拾うと、雌蟲その1の子分共の、耳障りな声が響いてきました。 『お姫様抱っこで運んで差し上げた方がいいですか?』 『何なら、正面から抱きかかえて運んでもいいですよ?』 私が手をついていた塀がひび割れ、倒壊しました。 雌蟲その1の子分共が、あろうことかご主人様をからかっています。 私とご主人様を引き離しただけでも万死に値するというのに、何という罰当たりの所業でしょう。 ご主人様は、屈辱を必死に耐えておられます。 おいたわしい。 やはり、お連れするべきではなかったのかも知れません。 今すぐ舞い戻ってご主人様を奪還したいのは山々ですが、さすがの私といえども、死者を出さずに雌蟲その1と子分共を突破してご主人様を連れ出せる見込みは、あまり高くありません。 と、突然音声が途絶えました。 盗聴器の故障かと思い、別の盗聴器から電波を拾おうとしましたが、やはり何も聞こえません。故障ではないようです。 金だけは無駄にたくさんある家のようですから、電波を遮断する手立てでもしているのかも知れません。 全くもって、ろくなことをしない雌蟲一味です。 致し方なく、私はご主人様のお屋敷へ戻りました。 ご主人様を諦めた負け犬の分際で、雌蟲どもがご主人様を辱めているのかと思うと、掃除も洗濯も手に付きません。 私は鏡の前に立ち、メイド服の胸をはだけました。 ご主人様専用の乳房が、勢いよく飛び出します。 雌蟲その1や子分共の胸など、私に言わせれば貧乳です。大きさは私の方が勝っています。 もっとも、私は普段きつい服をきて、故意に胸を小さく見せています。ご主人様以外のオスを誘惑しても鬱陶しいだけだからです。 あんなくだらない招待状に気を取られなければ、今ここでご主人様に、この胸を荒々しく揉んでいただいていたはずなのに。 あるいはまた、逞しい肉棒をお挟みし、しごかせていただくこともできたでしょう。 そればかりではありません。 忠実なメイドの私が誠心誠意お願いすれば、縄で絞り上げていただいたり、鞭や蝋燭で責めていただいたりもできたはずです。 ……申し訳ありません。想像したらつい、股間を濡らしてしまいました。 246 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ [sage] :2010/08/09(月) 02:28:12 ID:qEkFWaaR そのとき、私の携帯電話が鳴りました。 メールの着信です。見ると上の妹からでした。 『ご主人様をお迎えする準備ができました。早くお連れしてください!! 早く!!!!』 火を吹くような文面です。準備ができたのはいいのですが。 上の妹は、とてつもなく強欲で狡猾です。 一度血の臭いを嗅いだら、どこまでも追い詰めて喰らい付く、人喰い鮫に似ています。 当初彼女は、ご主人様の弱みを握って脅迫し、メイドとして認めてもらうことを主張していました。 あまりに常識外れなので、姉である私が押し止めましたが。 ちなみに下の妹は、男性経験が皆無にも関わらず、筋金入りの変態です。 ご主人様に屋外で調教していただくだの、性欲処理便器にしていただくだの、刺青だのピアスだの排泄だのと、私でさえ引くような内容を滔々と語っていました。 やはり彼女も、いきなりご主人様に会わせるわけには行きません。 正統派にして清純派なメイドのこの私が、最初にご主人様にお仕えするのが理に適っているというものです。 ピンポーン と、呼び鈴が鳴ります。誰でしょうか。 私は服装を直し、玄関に出ました。 外に立っていたのは、雌蟲その2こと、晃でした。 自分の表情が引きつるのが分かります。 雌蟲その2は、何やら殺気立っています。この私と一戦交えようとでも言うのでしょうか。 それならば望むところ。返り討ちにして差し上げようと思ったとき、ふと疑問が浮かびました。 雌蟲その2は、雌蟲その1の婚約披露会に行かないのでしょうか。 単に興味がないだけかも知れませんが、一応聞いてみることにしました。 「おや、あなたは行かれなかったのですか?」 「行くってどこに?」 妙です。雌蟲その2は、婚約披露会のことを知らないのでしょうか。 「めすむ……中一条様の婚約披露会ですよ」 「なりき……中一条が婚約? 誰と!?」 ますます異様です。雌蟲その1の婚約も知らないとは。 嘘を言っているようには見えませんし、その必要があるとも思えません。 「どこぞの政治家の御曹司だそうですよ」 「え?」 「新聞にも載っていましたが。ご覧になっていないのですね」 私がそう言うと、雌蟲その2ははっとした表情になり、続いてにやりと笑いました。 どういう意味でしょうか。 「じゃあ、詩宝は今いないんだな?」 「その通りです。お引き取りください」 「分かったよ」 雌蟲その2が退散した後、私は部屋に戻って考えました。 雌蟲その2が、記事や招待状を見落としている可能性は、もちろんあります。 しかし、ご主人様の万一に備えなければならないメイドに、そのような楽観は許されません。 ここは何としても、雌蟲その1の婚約が事実かどうか、確かめる必要があります。 247 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ [sage] :2010/08/09(月) 02:29:42 ID:qEkFWaaR 私はまず、図書館に向かいました。 昨日の新聞に、雌蟲その1の婚約記事が載っていることを、確認するためです。 まさかとは思いますが、雌蟲その1が、偽の新聞を届けてきた可能性も、ないではありません。 図書館に着くと、昨日の日付の新聞を見ました。もちろん、ご主人様がお取りになっている新聞です。 雌蟲その1の記事は、ありませんでした。 頭に血が昇りました。 全ては、雌蟲その1が仕組んだ罠だったのです。 私はまんまと引っ掛かり、ご主人様を外にお出ししてしまいました。 矢も楯もたまらず、図書館を飛び出します。 早く、手を打たなければ。 具体的に何をしたらいいか、まだ分かりませんでしたが、私はとにかく走りました。 すると、ご主人様からお預かりしている携帯電話が鳴りました。 立ち止って見てみると、知らない番号です。しかし出ないわけには行きません。 道路は騒々しいので、すぐ近くの銀行に入って通話ボタンを押しました。 「もしもし?」 『く、紅麗亜……』 ご主人様のお声です。いつお聞きしても心地よい声ですが、今は何かを堪えているように聞こえました。 「ご主人様! 今どちらにいらっしゃるのですか!?」 私は慌ててお尋ねしました。ご主人様からお電話をかけられるということは、まだ雌蟲その1に監禁されていないのかも知れません。 それならば、お助けする望みがあります。 『先輩の、お屋敷だよ……』 「すぐに逃げてください! 雌蟲の婚約は欺瞞でした。そこにいては危険です! 私もすぐ迎えに参ります!」 『ご、ごめん。紅麗亜……』 ご主人様のお声は、泣いているようでした。 「ご主人様?」 『僕もう、紅麗亜のこと、雇ってあげられないんだ……』 鉄棒で頭を殴られたような衝撃が走りました。 忠誠を誓ったご主人様に捨てられる。そんな馬鹿なことがあっていいはずはありません。 『聞いたわね? あなたはお払い箱よ』 雌蟲その1の不快な声が聞こえてきました。 『今すぐ詩宝さんの家から出て行きなさい。ちなみに、詩宝さんの家は今、私の名義になっているから、居座るなら不法占拠で警察を呼ぶわ。それじゃ』 通話が切れました。 何ということでしょう。 至高のメイドたるこの私が、雌蟲ごときの計略にひっかかり、命よりも大切なご主人様を奪われてしまったのです。 メイドにとって、これに勝る屈辱はありません。 怒りのあまり、視界が赤く染まります。 パーン! そのとき、後ろの方で何かが弾けるような音がしました。 「全員動くな!」 何事でしょうか。誰かがわめいています。 ただでさえ怒りが制御できそうにないのに、ますます苛々します。 「動いた奴は撃ち殺す! 金を出せ!」 メイドがご主人様を奪われるという、世界を揺るがす大事件が勃発したのに、何がお金ですか。 どれだけ大金を積んでも、世界でただ1人のご主人様は買えないのですよ。 「おいこら! そこのメイド! 電話なんかかけてんじゃねえ!」 メイド? それは私のことでしょうか? 何という身の程知らずのオスでしょう。 私を呼んでよいのは、この世でご主人様だけだというのに。 私は、振り向きました。 248 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ [sage] :2010/08/09(月) 02:31:04 ID:qEkFWaaR 目が覚めたとき、僕は柔らかいベッドの上にいた。 服は何も着ていない。 そして、これまた裸の中一条先輩とエメリアさんが、僕の左右から抱き付いていた。 僕の両腕は2人の枕にされており、感覚がない。 頭で血管が押さえられてしまったのだろう。 見ると、エメリアさんの向こうには、ソフィさんが寝ていた。 伸びた僕の手は、ソフィさんの特大のおっぱいを掴んでいる。 「うわ……」 驚いて手を引こうとしたが、痺れているのと、ソフィさんが僕の手をがっちり掴んでいたのとで、どうにもならなかった。 「お早うございます、詩宝さん」 目を覚ました先輩が、僕ににっこりと微笑みかけてきた。 「お。お早うございます……」 僕が挨拶を返すと、エメリアさんとソフィさんも起き出してきた。 「んっ……」 「ああ……」 「ソフィ、いつまで詩宝さんにおっぱい揉ませてるの?」 「ああん。失礼しました……」 やっと、僕の腕は解放された。まだ動かないけど。 「私、お食事の支度しますね。詩宝さんはここで待っていてください」 「は、はい……」 先輩は、ガウンを着て出て行った。 エメリアさんとソフィさんも、同じように出ていく。 1人になった僕は、昨日のことを考えていた。 先輩には取り返しの付かないことをしてしまったし、紅麗亜にも申し訳ないことをした。 紅麗亜は今、悲しんでいるだろうか。 落ち込んで、泣いているのかも知れない。 やっぱり一度会って、面と向かって謝りたい。 そう思っていたとき、ソフィさんが戻ってきた。 「詩宝様。新聞です」 「あ、ありがとうございます」 「では、また後ほど」 だんだん腕の痺れが取れてきたので、僕は新聞を読み始めた。 そして僕は、自分の考えが甘かったことを知った。 甘いも甘い。大甘の皇子だった。 “銀行強盗 メイドに睨まれショック死” 社会面をでかでかと飾る紅麗亜の記事を見て、僕は縮み上がる。 紅麗亜は悲しみに沈んでいるどころではなかった。 極限まで怒りを膨れ上がらせ、人を殺してしまうまでになっている。 死んだのが犯罪者で、一種の正当防衛だからよかったものの、まかり間違えば一般の人に被害が及んでいたかも知れない。 このままでは、絶対に済まない。 僕はベッドに潜り込み、しばらく震えていた。

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