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80 名前:玲子(2) ◆w9U6Ms6d42 投稿日:2010/10/02(土) 17:19:48 ID:s6WUu45c 気がつけば俺は公園にいた。 無我夢中で我武者羅に走っていたら、近くの公園についたのだ。 昼間の公園には誰も居らず閑散としていた。俺は公園のベンチを見つけると そこへ玲子を引っ張っていき一緒に座った。 俺には幼稚園から公園までの距離はどうってことなかったが、玲子には きつかったらしく、「ハァ・・ハァ・・」と辛そうに息をしていた。 玲子はしばらくすると息を整え黙りこんでしまった。 公園にはそよ風が吹いていた、走ってすこし汗ばんだ体に涼しい風を当てる のはとても心地よかった。 どれくらいそうしていただろうか?俺と玲子はまだ一言も口をきていいない。 逆にあまりにも静か過ぎて、その沈黙を壊すことが怖かったのだ。 俺は遠くの高層ビルや雲を見るフリをしながら、玲子を尻目に観察していた。 玲子はベンチに弱弱しくベンチにちょこんと座っていて、 腰まで届く長くて艶のある髪は顔をすっぽり隠してしまっている。 服には餓鬼3人による、痛々しいイジメの傷跡が残っていた。 ハサミか何かで切られたのか、ところどころ服が無造作に破けていて 背中にはくっきりと上履きの跡がついている、それも何個も・・・・ それだけでなく、あちらこちらにサインペンで「死ね」だの「消えろ」 だの「貞子」だの悪口のオンパレードだった。 気がつくと無意識に自分の手が動き、玲子の背中を撫でていた。 ゆっくり子猫を撫でるように、やさしく・・ 玲子は怯えているのか、体が小刻みに震えていた。 俺なんと声をかけたらいいのかわからず、ただただ玲子の背中を撫でていた。 俺はなけなしの勇気をふりしぼって玲子に話しかけた。 81 名前:玲子(2) ◆w9U6Ms6d42 投稿日:2010/10/02(土) 17:20:31 ID:s6WUu45c 「あ、あのさ!れ、れいこちゃん・・」 「・・・・・・」 「あ、あの・・ごめんね?・・変なとこ勝手につれてきちゃて・・・は、はは! なんかあの時暴走しちゃって・・なんか・・その・・ごめん・・」 「・・・・・・」 玲子はなにも言わない。 「あの・・その・・」 「・・・・・・」 「な、なんでさっ!そ、その・・・いじめられてない・・って言ったの?」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「あ!無理して言わないでいいよ!!ごめん・・」 玲子は最後までしゃべらなかった、なんだか自分が余計な事して玲子を傷つけてしまったの でわないかと思いとても心配になった。 気がつくと、空に赤みが差してきて夕陽が俺と玲子の長い影を作っていた。カラスの鳴く声や、遠くで子供が騒ぐ声 豆腐屋の独特なラッパの音・・・ 俺は寂寥感と重い沈黙に耐えられず、ベンチから立ち上がろうとした。 そのとき服の袖になにかが引っかかった。驚いて振り向くと玲子が俺の袖をつかんでいたのだ 82 名前:玲子(2) ◆w9U6Ms6d42 投稿日:2010/10/02(土) 17:21:16 ID:s6WUu45c れいこちゃん?・・」 突然のことに慌てながらも、恐る恐る聞いてみた。しかし玲子は無言で袖をつかんだままだった、心なしか掴んでいた 指の力が強くなった気がした。 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 「・・・・・・・」 長い沈黙が流れる。 「・・あの・・れいこちゃん・・・」 「・・・・・・・」 「ずっとこうしてるのも暇だからさ・・・お、お砂場で・・遊ぼうよ」 今思えばなんでこのとき砂場で遊ぼうだなんて言ったか検討もつかない。 「・・・・・・」 「ほら・・行こう・」 俺はなかなか動こうとしない玲子を半分引きずるようにして砂場に連れて行った。 砂場には誰もいなかった。誰かが忘れていったのだろうか?プラスチックのおもちゃのスコップが寂しく転がっていた。 俺は玲子を座らせ、もくもくと砂でお城を作り始めた。 「ほら、れいこちゃんもてつだってよ」 「・・・・・」 玲子は最初はためらっていたが、か細い手で砂をいじり始めた。 始めに砂で山を作り、トンネルを掘り、木の枝などで扉や窓を表現する。 山を作るところは俺がやって、トンネルは玲子がやり、木の枝で扉や窓をつくるのは難しいので、二人で協力 してやった。完成したお城はなかなかの出来栄えだった。 「できたね・・・」 「・・・・・うん・」 物凄く小さな声だったけど玲子は初めて返事をしてくれた。俺は驚いて玲子を見て息を呑んだ 玲子は微笑んでいた、楽しそうに。俺もつられて笑ってしまった。 俺と玲子はまだなんにも会話らしい会話をしていなかったが、どこか心が通じ合った気がした。

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