「天使のような悪魔たち 第13話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

天使のような悪魔たち 第13話」(2011/01/03 (月) 13:02:13) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

210 名前: 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:13:03 ID:SKB/54JEO 冬が次第に近づき、寒さが厳しくなっていく。 就寝前に風呂に入って体を暖めてから、熱が冷めないうちに布団に潜るのが寒季の俺の日課だ。 もちろん、髪はドライヤーでしっかり乾かす。 でなければ翌朝寝癖で髪がえらい事になり、下手すれば風邪を引いてしまう。 目覚まし時計だけはしっかり三つセットする。三つも使うようになったのは、この家に俺一人だけになってからだ。 昔から俺は朝が弱い。特に冬は暖かい布団からなかなか出られずに二度寝を繰り返し、 時間ギリギリになって明日香に叩き起こされる、なんてのは日常茶飯事だった。 …迂闊。自分で言っておきながら、なんだか悲しくなってしまった。 明日香は気が狂うほどに実の兄である俺を愛し、幸せの絶頂で姉ちゃんの力で死んだ。 だけど俺はたまに思う。明日香は本当に幸せだったのか?と。 * * * * * 『………で、またここかよ。』 前回に引き続いて、真っ暗闇の空間。自分が立っているのか、はたまた浮いているのか、なんとも気持ち悪い。 だが前回の経験を生かし、俺は対策を練っていた。それは… どうせ真っ暗なんだから、いっそ寝転んで目を閉じてしまおう!と考え、さっさと実行に移した。 …うん、立っている時よりははるかにマシだ。気を抜けば凄まじく気持ち悪くなりそうだが、 俺は必死に自分に「俺は寝てるんだ」と言い聞かせて、ごまかした。 211 名前: 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:13:52 ID:SKB/54JEO 『どうせいるんだろ?灰谷。さっさと来てくれよー。』 『僕ならもうそばにいるよ?』 『のわっ!?』 び、びっくりした…。いきなり耳元に話し掛けられたんだから。 脅かすなよバカ、と内心で悪態をつき、俺は目を開けた。 『三日ぶりだね、飛鳥。今日は君の疑問に答えにきたよ。ただし、僕の知ってる範囲でね。』 『! まじか。』 『うん。とは言っても、あまり時間はないけれど。』 言うと灰谷は自分の髪を手で掴み、即席ツインテールを作ってみせた。 『じゃあまず、前回の君の質問から答えようか。なぜ僕が亜朱架や明日香に似ているのか。 それはね…亜朱架は僕の子供だからだよ。』 『……は?』 本当に、言っている意味がわからなかった。だって俺の、俺たちの母親はこいつじゃない。 もう何年も会ってないが、その程度で母親の姿を忘れる、思い違うわけがない。 『ああ、彼女は…君が母親と思ってる人はね、代理母なんだよ。 亜朱架から聞いたと思うけど、亜朱架は普通の人間との間には子供を作れない。 それは染色体の数が異なるからなんだけど…僕も"そう"なんだ。 だから翔(かける)は、僕のコピーを二つこしらえ、片方には遺伝子操作を加えて、性別を改変した。 将来その二人がアダムとイヴになるために、ね。』 ---衝撃だ。灰谷の語っている事は、あまりに次元が違いすぎる。 そして灰谷が語った中にあった人物、"翔"とは…恐らく神坂 翔。俺達の父親にして、遺伝子学のプロフェッショナルにちがいないだろう。 何より、俺がずっと母親だと信じてた女性が…代理母だったなんて。 『翔の唯一の誤算は、生まれた子供たち"も"特異な能力を宿していたこと。 その能力を研究するためだけに、明日香は作られた。 そして明日香は亜朱架の…つまり、コピーのコピー。故に脆弱な身体に生まれついた。 ではなぜ、実験動物として生を受けた明日香が、君と一緒に暮らしていたと思う? その間、オリジナルの亜朱架は、何処で何をしていたと思うかい?』 『………まさか、そんなわけ』 ないよな、とは言えなかった。 そこまで言われてしまったら、答えは一つしか思い浮かばない。 『…姉ちゃんは、明日香の身代わりになってたんだな。』 213 名前: 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:14:51 ID:RU+w7x9wO 『そのとおり。幸い、亜朱架は僕と同じ要素を持っていたから、いくら実験されようと、"身体は"無事だった。 ときに飛鳥、君には僕は何歳に見えるかな?』 灰谷は左目でウインクをして、可愛い娘ぶってみせた。 『正直…大学生くらいの歳にしか見えん。』 チチは姉ちゃんとは比べものにならないくらいデカいが。 『ありがとう。亜朱架も、あと5年歳をとれれば僕くらいの大きさになったんだけどね。』 『…もしかして、俺の思考が読めるの?』 『今頃気づいたのかい?ホント、結意ちゃんといい、君はでかチチが好きだねぇ。』 …頼むから、"だっちゅーの"のポーズはやめてくれ。 『まあ冗談はさておき。明日香には、僕や子供たちに備わっている、"不死"の要素が引き継がれなかった。 だから明日香は、力の使いすぎで身体がズタスタになって…亜朱架に介錯されたんだ。』 『ま、まてよ!さっきから姉ちゃんや明日香の事ばっかだけど、俺は!?』 『…知りたいかい?』 灰谷はふっ、と冷ややかな笑みを浮かべた。 ぞくり、と背筋に悪寒が走る。まるで蛇に睨まれたかのように。 『率直に言おう。君は僕の子ではない。』 『…なん、だって。』 『つまり飛鳥、君は亜朱架や明日香とは、血が繋がっていない。染色体の数も、普通の人間と同じ46本だ。 本当の僕の息子は、亜朱架と同じく49本の染色体を持ち、亜朱架と対極の力を持っていて、 かつ、歳をとらない。…ここまで言えば、わかるかな?』 『---馬鹿な。それじゃああいつが!?』 心当たりは一人しかいない。中学時代に出会い、苦楽を共にし、つい先日対立こそしたが、 かけがえのない俺の親友………斎木 隼。 『隼が、姉ちゃんの弟なのか?』 『正解。』 『じゃあ俺はなんだ…俺はなんなんだよ! なんで明日香は、兄貴を好きになった事を悩んで死んでいったんだ! こんなの…ありかよ…!』 『…君は、隼の替え玉なんだよ。 亜朱架たちの代理母の名前は、斎木 静香。そして、君の実の母だ。 皮肉だろうね…つい今しがた、実の母親ではないんだ、とショックを受けたのに、実際は真逆。 君は亜朱架の弟ではなく、代理母の実の息子。…可哀相に。』 『---俺を哀れむなッ!』 悔しい?悲しい?そんな言葉では今の俺の感情は語り尽くせない。 強いて言えば、信じていたもの全てが虚だった。ただそれだけだ。 『まあ悲しいことばかりではないはずさ。君にはちゃんと、実の姉が存在する。 名前は斎木 優衣。優しい衣、と書いてユイと読む。 ただ、最後に会ったのは彼女が小学校に上がったときだったから、今はどうしているかは知らない。』 『…結意の事は知っているのに、か。』 『隼は僕とは波長が合わないんだよ。僕は基本的に、亜朱架の夢を介して外の様子を見ている。 僕は今、自分の意志では指一本動かせない状態だからね。 そして飛鳥、君は亜朱架と明日香の力を受けすぎた。そのせいで、僕と波長が合うようになったのさ。 ただそれはやはり、弱いつながりでしかない。あと数回、夢の中で会えばつながりも消えてしまうだろう。』 214 名前: 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:15:44 ID:6PxfUAJkO 実の姉が存在する、なんて、なんの慰めにもならない。 見たことも会ったこともない姉など、俺が姉弟(兄妹)だと信じてきた二人に比べれば、 俺にとってはなんの価値も見いだせない。 『………! そろそろタイムリミットだ。』 『…そう、か。』 『またね、飛鳥。どうかくじけずに、普通の人間としての生を全うしてくれ給え。 それは僕や子供たちが、どんなに願っても得られない生き方なのだから。 それと、最後にひとつ。僕は今年で36歳になるんだよ。…身体は歳をとらないんだけどね。』 その言葉を最後に、灰谷は暗闇の中に吸い込まれるように消えた。 瞬間に襲い掛かる、奈落に吸い込まれそうな感覚も、今の俺にはなんの脅威ですらない。 どうか早く目覚めてくれ。そしてどうか、全てジョークだと言ってくれ。 でなければ、あまりに寝覚めが悪すぎるだろう? * * * * * 「…頭痛ぇ。」 215 名前: 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:17:09 ID:6PxfUAJkO 三つの目覚ましが鳴るよりもわずかに早く、俺は目を覚ました。 朝の日差し窓越しに浴び、ここが夢の世界ではないことを実感して、ひとまず安堵した。 独りになってから約十日経ち、朝の静寂さにも慣れた。 最初は漠然とテレビをつけ、空虚さをごまかしていたが、次第にそれすらしなくなった自分がいた。 誰もいない家に時間ぎりぎりまでいる必要性はない。 俺は台所に降り、トーストを仕込んで、その間にシンクで洗顔をすませた。 チン、とトーストが焼き上がった音がしたが俺はそれをスルーし、制服へと着替える事を優先した。 食事にありついたのは、7時半。トーストにマーガリンを塗っただけの、簡素を通り越して貧乏くさい食事だ。 口元のパン屑を払い、俺は玄関に向かう。手に持っているのは、筆箱しか入っていない、 およそ学生らしくない軽さの学生鞄だけ。 鍵を開けて外に出ると、家の前に誰かが立っていた。 いや、"誰か"と言っては随分なご挨拶だろう。家の前で待っていたのは、昨日退院したばかりの、結意だ。 「おはよ、飛鳥くん。」 「結意…」 「お弁当作ってきたよ。今日は飛鳥くんの大好きな---きゃっ!?」 俺は言葉を待たなかった。 結意の腕を掴み、強引に引き寄せ、力いっぱい抱きしめた。 「あ、飛鳥くん…どうしたの…?」 「…ごめん。しばらくこうさせてくれないか。」 「………何か、あったの?」 「…なんでもないよ。ただ---」 俺の信じていたものはすべて幻だった。そしてこの俺自身も。 俺は結意の胸元に顔をうずめ、さらに腕の力を込めた。 別にやましい気持ちからじゃない。…泣き顔を見られたくなかっただけだ。 それでも結意の体温は心地よくて、ずっとこうしていたい、と思ってしまう。 「独りが寂しくなっちまったんだ。父さんも母さんも、姉ちゃんも…明日香も、帰ってこない。 今、俺一人ぼっちなんだよ。」 「…私はずっと、飛鳥くんのそばにいるよ。」 結意は優しい手つきで、俺の頭を撫でてきた。 これじゃあ、こないだと丸っきり逆じゃないか。 216 名前: 天使のような悪魔たち 第14話 ◆ UDPETPayJA 2010/12/04(土) 01:18:34 ID:SKB/54JEO * * * * * 俺こと佐橋歩は、チャイムぎりぎりに学校に着くのが当たり前の人間だ。 ろくに授業に出てないのだから遅刻してもいいんじゃないか?と思ったかもしれないが、甘い。 俺はこれでも、遅刻"は"してないんだ。 そんなわけで今日も、ぎりぎり間に合うくらいの時間に到着した。 「よう、佐橋歩!」 「---なぜ、あんたがいる。」 俺が"あんた"と呼んだのは、県内屈指のお騒がせ芸人、瀬野 遥だ。 瀬野の他に、瀬野と同じ制服を着た男が一人、見受けられる。 瀬野たちは、怪しげなキャリーバッグを四つ持っていた。 「誰が芸人だ!それより、手伝え!」 「何をだ。」 「こいつを運ぶのをだよ!さすがに20人分にもなると重くて仕方ねえ!」 「中身はなんだ。」 「メイド服だ。」 瀬野のその言葉を聞いて俺は、ひとつの決意をした。 ---よし、通報しよう。 「もしもし110番…」 「だー待て待て!神坂だ!神坂に頼まれたんだよ!文化祭で使うから、って!」 「どちらにせよ俺には関係ないな。俺のクラスはメイド服など使わん。」 「いいから手伝ってくれよ!そしたら、いいモン拝めるぞ!?」 「なんだよ、変態。」 「それはな………結意ちゃんのメイド服姿だ。」 ああ、そういやこいつら、織原のファンクラブがどうとか言ってたな。 変態もここまでくると、畏敬の対象にすらなるぜ。 「よしわかった。手を打とう。」 「そうか、助かるぜ!」 「ただし………光の分ももらってくぞ。」 「て、てめぇ!」 当然だ。世の中ギブアンドテイクなんだ。 それに…自分の彼女ながら、僕っ娘メイドが見れるなんて、朝からツイてるじゃないか。 そうして、初めての遅刻と引き換えに、俺はメイド服を入手(半ば略奪)したのだった。
203 : 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 00:51:34 ID:8HvnfPjAO 「メイド服が欲しいだぁ?何言ってやがる。」 と、語尾を荒げながら言ったのは瀬野だ。 「ちょっと神坂くん、いくらうちの兄さんが変態のバカでも、メイド服はさすがに持ってないでしょ。」 「まあ、な。いくら瀬野が変態でバカでストーカーで露出狂でも、持ってないだろうな。」 「おい、好き勝手言ってくれるなおまえら!」 露出狂とはずいぶんとかけ離れているのに、露出狂と言うのは単なるボケ、 という事を瀬野は察してくれなかったようだ。 だが俺は瀬野を無視して話を続ける。 「瀬野は持ってなくても、ファンクラブの連中なら誰かツテがあるかもしれない。 おい瀬野、ちょっと探してくれないか?」 「命令すんな!第一、文化祭は俺らには関係ないだろうが!」 「まあ待て瀬野。もちろんタダとは言わないさ。」 この交渉なら、瀬野はもちろんファンクラブの連中もノってくるはず。 むしろ、持ってなくてもメイド服を調達してくるだろう、という自信が俺にはあった。 「………一週間以内にメイド服をうちのクラスの女子の分用意してくれたら、 結意にもメイド服を着させてやる。」 「よし、乗った!」 こいつ、やはりバカだ。 速攻で携帯を出し、仲間内に連絡網を回しているらしい瀬野。 それを尻目に、俺と穂坂は小声で会話をした。 (ちょっと、神坂くん。大丈夫なの?) (大丈夫だ。こいつは結意のためなら何でもするからな。) (まあ…確かに、ね。というか神坂くんは、織原さんの事避けてたと記憶してるけど?) (うーん、いろいろあって、ね。俺達付き合うことになったの。) (……………………そう。) 詳しい説明をするのはやめておいた。 穂坂のような一般人には、あの事件の顛末を話したって、信じないだろうから。 だが、「そう」と呟いた穂坂の声色が、いやに冷たいような気がした。 「………私、そろそろ帰るわね。メイド服の心配はいらないみたいだし。」 かと思うと、穂坂は急に帰る、などと言い出した。 …気分を害しているのは、見てすぐわかった。 やはり、穂坂は結意を毛嫌いしていたようだ。 まあ色んな意味で問題児だからな、結意は。 「お、送ってくぞ吉良。」 「あなたみたいな変態の手を借りなくても帰れますッ!」 「な…なんか機嫌悪くね?」 そう言って穂坂はさっさと歩を早めていってしまった。 「わりぃ、なんか心配だから後追ってくわ。…メイド服の件は、任せとけ。」 「頼んだぜ、瀬野。」 瀬野も慌てて穂坂のあとをついていった。 結局、俺一人だけがぽつりと街中に残されてしまったのだ。…ちくしょー! 仕方ない…今からでも結意の見舞いに行くとしよう。 もともと俺は、携帯を買ったらその足で見舞いに行くつもりだったのだ。 余計な用事がなくなった分、好都合というものだ。 204 : 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 00:54:37 ID:5raIXZYwO * * * * * 市内病院----- 結意が運び込まれたのは、佐橋の友人の知り合いが勤めている病院だったらしい。 かつて佐橋も、ここでお世話になったのだと、以前聞かされた。 その知人とやらのお陰なのか、腹部を刃物で刺されるという、 明らかに事件性を匂わせる傷だったのに大騒ぎにはならなかった。 その結意は、二階の病室で入院している。病室には他に誰もおらず、とても静かなもんだった。 俺は病室のドアを軽く二回ノックしてから、中に入った。 「…すぅ……くぅ………むにぁ……」 なんとも可愛らしい寝息がかすかに聞こえてきた。 ベッドに近づいてみると、布団がややはだけ、結意は赤ん坊のように丸まって眠っている。 「ちくしょー………悔しいけど、やっぱ可愛いなこいつ。」 そう、喋れば変態だが、こうして眠ってれば美少女なんだ。それも、かなりハイレベルの。 俺は何となく、無防備に眠る結意のほっぺたをつねってみた。 「んっ……ひゅぅ……」 ぴくりともしない。どんだけ深く眠ってるんだこいつは。…つか、やわらけぇ。 「んにゃ……あひゅはふん……らめらよぉ……」 「!?」 今、俺の名前呼んだ!? いや…結意は眠ったままだ。…すると、寝言か。…どんな夢見てんだか。 しかし、悪い気はしない。夢の中でさえ想われてるなんて、意外と嬉しいもんだ。 「もぉ………あひゅはくんのえっひ……♪」 …前言撤回。夢の中でさえナニされてんだかわかったもんじゃねえ。 とは言え、外は大分薄暗い。俺まで少し眠たくなってきた。 …どうせ家には誰もいないんだ。少しだけ、ここで寝かせてもらおう。 俺はそばにあった椅子に腰掛け、ベッドに突っ伏して、目を閉じた。 205 : 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 00:56:48 ID:VEHMP8H2O * * * * * 薄暗い。いや、漆黒の空間が視界に広がる。 夜の星さえ見えず、足を付けている地面すら、黒。 まるで暗闇に放り出され、さ迷っているような錯覚を覚えた。 もちろん、こんな空間は現実では有り得ないだろう。俺はこれが夢である、ということを自覚した。 それにしても、ここはなんて異質な場所なんだ。一歩踏み出そうにも、足が地面に飲み込まれるような錯覚がして、まともに動けない。 一切の光が射さない空間。それがこんなにも不気味だなんて。 『くくく………悪いね、こんな場所まで呼んで。』 女性の声がした。だけど、どっちから聞こえたのか、その判別がつかない。 『ああ、無理に探さなくていいよ。見つけるのは無理だろうからね。僕が君の傍に行くよ。 この場所はもう慣れたからね。』 言うと、女性は確かに俺の真正面に現れた。何故か、自分の体すら目視できないのに、 その女性の姿だけははっきりと映った。 『初めまして。僕は灰谷 瞳と言います。 今日は君にひとつ、教えておかなければいけない事があるんだ。』 『あんた……なぜ』 何故、灰谷と名乗った女性は、姉ちゃんや明日香にそっくりなんだ。 唯一違う点と言えば、二人よりは幾分か成長していて、ある程度成熟した女性の姿だという部分だけだ。 『…その理由は、今は教えられないね。残念ながら時間が限られているんだよ。 今回は、僕の話を聞いてほしい。大丈夫、いずれ話すからね。』 『あ…ああ。』 ん?俺今、喋ったか? 『言わなくてもわかるさ。君の言いたい事はね。さて、本題に入ろうか。 亜朱架のいた研究所から、刺客が送り込まれた。 近いうち、君達のもとへ現れるだろう。用心することだ。』 『だ、誰だよ刺客って!』 『僕にはわからない。ただ、亜朱架はこの事を知っている。"後始末をつける"と言っていただろう?』 『…どこまで、知ってるんだ。』 『知ってるのはそれだけだよ。…では、またの機会に。そろそろ眠り姫がお目ざめだよ?』 灰谷と名乗った女性は、言いたいことだけ言うと、再び宵闇に消えていった。 同時に、俺の平衡感覚が失われる。灰谷という"目印"をなくした事で、一気に感覚が狂ったようだ。 『う…うあぁぁぁぁぁぁ!』 落とし穴に吸い込まれる様な錯覚は、俺の(夢の中での)意識を奪い去った。 206 : 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 01:00:06 ID:VEHMP8H2O * * * * * 「………かくn……飛鳥くん!大丈夫!?」 ぐらぐらと体を揺さぶられて、俺は目を覚ました。 「あれ……結意?ここは…」 「もぉ……心配したよぉ…すごくうなされてたんだよ…?」 結意はベッドの上にちょこん、と正座して、俺を涙目で見ていた。 「はは…何泣いてんだよ。大丈夫、俺はちゃんと、ここにいっからよ。」 少し気だるい体に鞭打ち、俺もベッドの上に腰掛け、結意と並んだ。 強がってはみたものの、頭がふらふらする。夢を見てこんなに疲れたのは、生まれて初めてだ。 「結意。わりぃ、ちょっと肩貸して…」俺は隣に座る結意の肩に、頭をもたげた。 「ひゃっ!?」 「変な声出すな。…ったく、ほんと………やわらけー。」 あ…ひとつ発見。こうしていると、恐ろしく幸せな気分になる。 「………ばか。」 「ん…? 「私だって………ずっと寂しかったんだよ?でも、また嫌われるのが怖くて… 頭では「そんなことない」ってわかってても、心のどこかで、怖がってるの…! だからずっと我慢してたのに…こんなに近くにいたら我慢できないよぉ………ぐすっ」 「結意…」 「ごめんね……嫌いにならないでね……。」 結意は俺を半ば突き飛ばすようにベッドに押し倒した。 そのまま、覆いかぶさるように、マウントポジションをとった。 「飛鳥くんは動かなくていいからね。」 「馬鹿。傷口開くかもしんねーぞ。」 「それでもいいよ。……もう、自分でも止めらんない。」 口調が、雰囲気が少し、以前とは変わったような気がする。…いや、これが結意の本質なのか? 俺に見放される事をひどく怖がり、今もこうして、俺を無理矢理犯そうとしている。 別に、振りほどこうと思えばできるのだが。 俺の意思を聞かずに一方的に押し倒すのは、ぱっと見て勇気あるように思える。 だけどその実、勇気がないからこうせざるを得ないのかもしれない。 結意は壊れ物を扱うようにそっと、俺の頬に手を触れ、そっと唇を重ねてきた。 牛乳を舐め取らんとする仔犬さながらに、必死に舌を絡めてくる。 「んっ…っは、ぴちゃ……じゅる……」 咥内をなぶられる度に、背筋がぞくり、とざわつき、身体の芯から熱を持つ感覚を覚える。 何もするな、という方が無理だ。媚薬並にタチが悪い。 「ぷは……飛鳥くんも、元気になったね。」 結意は舌を出しながら、妖艶な笑みを浮かべた。 その舌先からは唾液が糸を引き、いやらしさをより一層引き立てる。 「そう言えば以前、"男の子が好き"とか言ってたよね。…お尻、試してみる?」 「バカ、あれは嘘に決まってんだろ……。ヤローなんかより、結意の方が1000倍いいさ。」 「あはっ…冗談だよ。でも、シタくなったら言ってね。ちゃんと準備しとくから。」 結意は冗談を交えながらも、パジャマのズボンを下ろした。 …既に純白の下着は、水分でひたひたになっているのが見てわかる。 結意は股下の部分をずらし、俺の手をとり、その指を一本、自らのナカへ導いた。 207 : 天使のような悪魔たち 第13話 ◆ UDPETPayJA 2010/11/27(土) 01:05:47 ID:ndQabWYgO 「すげ………熱い。」 「あん…飛鳥くんの…ゆ…びぃ…♪」 俺の指を使って秘裂を弄りながら、器用にも片手で俺のズボンのベルトを外し、チャックを下げた。 指先で下着の窓を開き、俺の愚弟を外気にさらけ出す。…ホントに器用だな。 「えへへ…前よりおっきいね。」 「…なんだかんだ、十日ぐらい溜まってるからな。」 「じゃあ…いっぱい濃いのちょうだい?」 結意は俺の指を抜くと、俺のモノをしっかり掴んだまま跨がった。 先端が、入口に擦りつけられる。その刺激だけで、限界を迎えてしまいそうだ。 「いくよ………うっ、あ、ぁっ」 結意は入口で固定し、一気にすとん、と腰を落とした。 じゅぷり、と粘着質の音を立て、俺のモノは根元まであっさり飲み込まれた。 「ふぁぁ、あっ、にゃあぁぁぁぁん!」 「くっ………声、抑えろよ…」 にゃあん…って、猫かよ。などという余裕も俺にはなかった。 結意はすぐに激しく腰を振り始めた。肉と肉がぶつかり合う音は、水音を若干含む。 肉壷の奥の奥、子宮口にがつがつ当たる感覚がした。 「だ、だって、これ、すごくいいよぉ………ひぁ、あん、あんっ!」 歯をがちがち震わせ、すっかり蕩けきった顔をして結意は、さらにペースを上げた。 結意の自慢の巨峰が、ぶるんぶるん震える。 …本気で、傷口開くんじゃねえかと心配になってきたが。 それよりも、俺もいつ限界を迎えてもおかしくなかった。むしろ、必死で堪えている状態だ。 気を抜けば、二秒と保たない。 だって仕方ないだろう?結意とセックスするのは、十日ぶりなんだから。 セックスはおろか、自己処理すらしてなかったんだから。 「らめぇ…こし…とまんないよぉ……ま、もう…わらひ……」 つうか、無理だ。気持ち良すぎる。 「ごめん…結意、俺もう…保たない…っ!」 「うんっ!いいよっ、一緒にぃっ…ふぁ、イこっ!?」 「結意…ゆいぃ……うぁっ…!」 「ひっ---!?」 どくん、どくん、と俺の相棒が脈打つ。それは、結意のナカに、溜め込まれた欲情が一気に放たれた事を意味していた。 「…ごめ、ん…俺、早っ……」 俺は前回よりもはるかに早く限界を迎えてしまったことを詫びようとした。 だが結意は、 「んにゃ、あぁぁぁぁぁん!」 ここが病院であることを忘れたかのように、絶頂しながら喘ぎ叫んだ。 「バカ…声…」と俺は促してみるが、結意はベッドに手をつき、肩で息をしながら余韻に浸っている。 時折、身体をぶるっ、と震わせているのは、小刻みに絶頂が続いているからだろう。 実際、結意の膣壁は俺をこれでもか、と締め付け、最後の一滴まで搾り取らんと蠢いている。 「あひゅか…くん……もう…はなさない…から…ね…」 虚ろな瞳で俺を見据えて一言いうと、結意の両手から力が抜け、重力に従って俺の胸板にダイブしてきた。 「…こし…ちから、はいんなぃ…」 「前も同じ事言ってたよな…。」 二人揃って、ぐったりしていた。これから後始末をしなきゃいけないし、 ベッドシーツを交換してもらって、気まずい雰囲気になるのが目に見えているのに。 …もうどうでもいい。今はこの幸せな時間を満喫していたい。 「俺だって……離したくねえよ…。」 俺はもう、この天使から離れられないんだろう。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: