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517 :弱気な魔王と愛され姫様・前:2011/01/01(土) 15:01:52 ID:ZHemnHzc 「王よ、貴様の大事な姫はもらっていくぞ!」 「おのれ魔王め! 姫を帰せーっ!」 「フハハハハ!!」 お姫様をさらう魔王 クラシカル、と言えば聞こえはいいが、簡単に言ってしまえば単に古臭い話だ 魔王に就任してすぐにそれをやった本人が言う言葉じゃないかもしれないが、僕に関しては仕方ない 父が死んで、世襲制で魔王に就任した僕には、どうしても何か実績が必要だったのだ なにせ実績の無い魔王は何だかんだと理由をつけ、次期王を就任させるために処刑されてしまうからだ 死にたくない 次期王を就けるために処刑するくらいなら、世襲で魔王になんてしてほしくないのに 僕は姿も、筋力も、魔力も普通の人間程度 力だって空を飛ぶことができるくらい。でも、生きるためになんとかそれを駆使して大国のお姫様をさらってきたのだ 「……あなたは、魔王ですか?」 「いちおうね。ごめん、そのうちにきっと理由をつけて家に帰してあげるから」 僕の部屋で、さらってきたお姫様が怯えてた 無理も無いよね、まだ10歳くらいの女の子だもん 140センチ弱、りんごみたいなほっぺた、腰まであるさらさらしたブロンドの髪。見まごう事なき幼女 実は始めは20歳くらいの長女をさらおうと思ったんだけど、斬り殺されかけた 後で知ったんだけど、あのお姫様は国開催剣術大会の毎年優勝候補だってさ 僕、剣なんて握ったことないもん 危うく魔王就任早々死んじゃうとこだった だから子供のほうをさらってきたんだ 卑怯だとは思うけど僕も死にたくないし、すぐに帰してあげようと思ってたから それが、ほんの一週間でこんなことになるなんてね 思ってもみなかったよ、ほんと 518 :弱気な魔王と愛され姫様・前:2011/01/01(土) 15:02:41 ID:ZHemnHzc 「まおー! これの続きあるー?」 「はいはい。21巻だよね」 「ありがと」 僕は漫画やゲームが大好きだ 父からは次期魔王らしくないからやめろとよく怒られてたけれど、結局やめられていない だから僕の部屋は巨大な本棚とゲーム入れが大きな顔をしてる それを、姫(本当はすっごく長い名前があるけど、覚えられずにいまだに姫と呼んでる)が見てすっかり気に入ってしまったのだ なんせあの王家はものすっごく厳格で、漫画やゲームどころか面白い話もろくに聞いたこともないみたい しかも家族の仲は冷え切っていて、大人は財産のことばかりで、娘をどこの資産家の下に嫁がせるかなんてことしか考えない 彼女はそんな家が嫌いで心を許せる家族も一人もいない そんな時、僕にさらわれたみたいだ 「あははははは!! まおー、これみてみて! すっごいおもしろいよ!!」 「ははは。喜んでくれて嬉しいよ」 それからずっと僕の部屋で彼女は楽しんでくれている 始めは良家のお姫様の一人らしく丁寧に話してたけれど、今ではすっかり喋りも砕けた感じ 嬉しいは嬉しいんだけど、ちょっと問題がある 姫、あの家に帰りたくないって言うのだ 「ご本もゲームも面白いし、ごはんもおいしいし、まぞくのみんなも、まおーもやさしいし。ボク、すっとここに住みたいな」 「姫、そんなこと言っちゃ駄目だよ。僕は人間そっくりでも魔族、姫は人間なんだから」 「ぶー」 なついてもらえるのは嬉しいんだけどね 幼女に振り回されてるって言うのは魔王としてどうなんだろう? さらってきたのは実績を積むためだったんだけど、これじゃよけいに権威を失墜させちゃった気がする 姫は部下のみんなにも可愛がられてるし、大丈夫かなとは思うんだけど 「でもボク、もうおうちはやだ。楽しいこともうれしいこともなんにもない。あんなつまんないとこには帰りたくない」 「でもね、姫……」 「いいじゃないっッスか。お姫がここに住みたいってんなら、住ませてやれば」 「さすがスーさん、話がわかる!」 「スカルエンペラー、四天王の君でも言っていいことと悪いことがあるよ」 「おおむねスカルに同意」 「魔王軍でも可愛いは正義だしな」 「お姫を見に来るのが私たちの最近の癒しなので」 「ブーさん、ポイさん、ガンさんもこう言ってくれてるよ。ボク、ここの子供になってもいいよね?」 父が設立した、魔物の中でもエリートのみを選りすぐって作られた魔王直属軍 そこの幹部スカルエンペラー、ポイズンタイガー、エレキインセクト、デッドガンマン 彼らは四天王と呼ばれながら血気盛んな連中をまとめあげ、魔王である僕に近い権限と人望を集めている 僕に敬語を使わない珍しい魔物。別に敬ってほしいわけじゃないけどね もっとも、こうやって姫を可愛がってるのは僕同様部下には内緒にしてるけど ほら、沽券に関わるし 「あのねぇ。姫は王家の一員なんだから、僕らの決定でどうかできることじゃないよ」 「魔王が人間みたいなこと言うッスね」 「んなら俺が姫ちゃん引き取ろうか? お世話は隷蟲にお任せだがね」 「あなたの隷蟲は高電圧で、触るとすごく痺れるんですよ。ここは私の養女に」 「あんたの家、居間も寝室も銃で埋まってんじゃねえッスか。あんな家にお姫住まわせられねえッス」 「んなら結局娯楽もいっぱいで一番なつかれてる魔王さんのとこに居てもらうのが一番だな」 「意義ねーッス」 「私も異論はない」 「未練はあるが、まあここに来ればいつでも姫ちゃんには会えるしな」 「じゃあまおー、ボクのこと、ひきつづきよろしく!」 「……あれー?」 519 :弱気な魔王と愛され姫様・前:2011/01/01(土) 15:04:19 ID:ZHemnHzc それからまた一ヶ月 姫はますます僕たち魔族になじんでいった もともと子供らしくあんまり物怖じしない娘だったし、皆にも比較的好印象だったしね 四天王のほうは最初の週こそ時々来る程度だったけど、二週目以降にもなると毎日来るようになった そのせいで軍部部下にもすっかり姫の存在がバレてしまう そうなれば、姫の待遇をもっと変えねばならない。そんな意見が出ると僕は懸念していた でも蓋を開けてみれば、すっかりみんなのマスコット的存在 姫も遊び相手が増えてすごく満足そうだ よかったよかった………と言っていいのかな? よけいに帰りたくないって言われちゃいそうなんだけど 「魔王様、報告があります」 「ん?」 郵便係の伝令烏が、泳ぎ疲れて姫とプールサイドでのんびりしている僕の肩に止まる 「お父さん。そのカラスさんは?」 「ああ、郵便係みたいなものだよ。……あとお父さんはやめなさいってば」 「以後、お見知りおきを」 「ちえー。ねえまおー、カラスさんってプール入らないかな?」 「烏は水はあんまり好きじゃないからね、嫌だと思うよ」 「すみません」 「ざんねん。いっしょに入ろうと思ったのに」 「………たまには水浴びも乙なものです」 「いいから、伝令」 ちょっとイラッってしたので、伝令烏の首を掴んでプール行きを止める 文字どおり、鳥が締められるような声が聞こえた 「……ゴホン。えー、姫様を奪還すべく、王国は伝説の戦士カニマヨを筆頭に編成された全騎士団をここに向かわせた模様」 「えっ。カニマヨって、二年前軍部に強襲をかけて、デッドガンマンとエレキインセクトを追い詰めたっていうあのカニマヨ?」 「その通りです。このままでは到着はおよそ三日後。我らも戦闘態勢に入るべきかと」 「なら、その前に姫を帰してあげれば」 「ヤダ! ボク帰らないから!」 「でも、姫が帰らなきゃ人間も魔族も、いっぱい死んじゃうんだよ」 「もっとヤダ! ここにいるのはみーんなとってもいい人たちだもん! 死ぬなんてぜったいやだ!」 「姫様、何とお優しい……魔族冥利に尽きるお言葉です」 「……………」 伝令烏は感動してるけれど、僕にはどうしても気になることがあった 姫はすっかり僕たち魔族を愛し、愛されている じゃあ、人間は? 「姫、どうしたらいいと思う?」 「決まってるよ! そのカニミソっていうのときしだんをみんなやっつけちゃえばいいんだよ!」 「姫様、カニマヨです」 「………それでいいの? 戦うのは、姫とおんなじ人間なんだよ?」 「いいよ。あんなきたない人間なんかよりも、やさしくて楽しいまぞくのみんながぶじでいてほしいもん  あ、でもいちばん大切なのは、お父さんだからねっ」 「お父さんって言うのは……」 「魔王様、もうお父さんでいいじゃありませんか」 いいとは思えない 姫は人間で、すぐに帰してあげるはずだったのに 何でこんなことを言うようになっちゃったんだろう 僕たちが悪かったんだろうか でも、姫を本当に可愛がってあげたことが間違いだとは思いたくない
517 :弱気な魔王と愛され姫様・前:2011/01/01(土) 15:01:52 ID:ZHemnHzc 「王よ、貴様の大事な姫はもらっていくぞ!」 「おのれ魔王め! 姫を帰せーっ!」 「フハハハハ!!」 お姫様をさらう魔王 クラシカル、と言えば聞こえはいいが、簡単に言ってしまえば単に古臭い話だ 魔王に就任してすぐにそれをやった本人が言う言葉じゃないかもしれないが、僕に関しては仕方ない 父が死んで、世襲制で魔王に就任した僕には、どうしても何か実績が必要だったのだ なにせ実績の無い魔王は何だかんだと理由をつけ、次期王を就任させるために処刑されてしまうからだ 死にたくない 次期王を就けるために処刑するくらいなら、世襲で魔王になんてしてほしくないのに 僕は姿も、筋力も、魔力も普通の人間程度 力だって空を飛ぶことができるくらい。でも、生きるためになんとかそれを駆使して大国のお姫様をさらってきたのだ 「……あなたは、魔王ですか?」 「いちおうね。ごめん、そのうちにきっと理由をつけて家に帰してあげるから」 僕の部屋で、さらってきたお姫様が怯えてた 無理も無いよね、まだ10歳くらいの女の子だもん 140センチ弱、りんごみたいなほっぺた、腰まであるさらさらしたブロンドの髪。見まごう事なき幼女 実は始めは20歳くらいの長女をさらおうと思ったんだけど、斬り殺されかけた 後で知ったんだけど、あのお姫様は国開催剣術大会の毎年優勝候補だってさ 僕、剣なんて握ったことないもん 危うく魔王就任早々死んじゃうとこだった だから子供のほうをさらってきたんだ 卑怯だとは思うけど僕も死にたくないし、すぐに帰してあげようと思ってたから それが、ほんの一週間でこんなことになるなんてね 思ってもみなかったよ、ほんと 518 :弱気な魔王と愛され姫様・前:2011/01/01(土) 15:02:41 ID:ZHemnHzc 「まおー! これの続きあるー?」 「はいはい。21巻だよね」 「ありがと」 僕は漫画やゲームが大好きだ 父からは次期魔王らしくないからやめろとよく怒られてたけれど、結局やめられていない だから僕の部屋は巨大な本棚とゲーム入れが大きな顔をしてる それを、姫(本当はすっごく長い名前があるけど、覚えられずにいまだに姫と呼んでる)が見てすっかり気に入ってしまったのだ なんせあの王家はものすっごく厳格で、漫画やゲームどころか面白い話もろくに聞いたこともないみたい しかも家族の仲は冷え切っていて、大人は財産のことばかりで、娘をどこの資産家の下に嫁がせるかなんてことしか考えない 彼女はそんな家が嫌いで心を許せる家族も一人もいない そんな時、僕にさらわれたみたいだ 「あははははは!! まおー、これみてみて! すっごいおもしろいよ!!」 「ははは。喜んでくれて嬉しいよ」 それからずっと僕の部屋で彼女は楽しんでくれている 始めは良家のお姫様の一人らしく丁寧に話してたけれど、今ではすっかり喋りも砕けた感じ 嬉しいは嬉しいんだけど、ちょっと問題がある 姫、あの家に帰りたくないって言うのだ 「ご本もゲームも面白いし、ごはんもおいしいし、まぞくのみんなも、まおーもやさしいし。ボク、すっとここに住みたいな」 「姫、そんなこと言っちゃ駄目だよ。僕は人間そっくりでも魔族、姫は人間なんだから」 「ぶー」 なついてもらえるのは嬉しいんだけどね 幼女に振り回されてるって言うのは魔王としてどうなんだろう? さらってきたのは実績を積むためだったんだけど、これじゃよけいに権威を失墜させちゃった気がする 姫は部下のみんなにも可愛がられてるし、大丈夫かなとは思うんだけど 「でもボク、もうおうちはやだ。楽しいこともうれしいこともなんにもない。あんなつまんないとこには帰りたくない」 「でもね、姫……」 「いいじゃないっッスか。お姫がここに住みたいってんなら、住ませてやれば」 「さすがスーさん、話がわかる!」 「スカルエンペラー、四天王の君でも言っていいことと悪いことがあるよ」 「おおむねスカルに同意」 「魔王軍でも可愛いは正義だしな」 「お姫を見に来るのが私たちの最近の癒しなので」 「エレさん、ポイさん、ガンさんもこう言ってくれてるよ。ボク、ここの子供になってもいいよね?」 父が設立した、魔物の中でもエリートのみを選りすぐって作られた魔王直属軍 そこの幹部スカルエンペラー、ポイズンタイガー、エレキインセクト、デッドガンマン 彼らは四天王と呼ばれながら血気盛んな連中をまとめあげ、魔王である僕に近い権限と人望を集めている 僕に敬語を使わない珍しい魔物。別に敬ってほしいわけじゃないけどね もっとも、こうやって姫を可愛がってるのは僕同様部下には内緒にしてるけど ほら、沽券に関わるし 「あのねぇ。姫は王家の一員なんだから、僕らの決定でどうかできることじゃないよ」 「魔王が人間みたいなこと言うッスね」 「んなら俺が姫ちゃん引き取ろうか? お世話は隷蟲にお任せだがね」 「あなたの隷蟲は高電圧で、触るとすごく痺れるんですよ。ここは私の養女に」 「あんたの家、居間も寝室も銃で埋まってんじゃねえッスか。あんな家にお姫住まわせられねえッス」 「んなら結局娯楽もいっぱいで一番なつかれてる魔王さんのとこに居てもらうのが一番だな」 「意義ねーッス」 「私も異論はない」 「未練はあるが、まあここに来ればいつでも姫ちゃんには会えるしな」 「じゃあまおー、ボクのこと、ひきつづきよろしく!」 「……あれー?」 519 :弱気な魔王と愛され姫様・前:2011/01/01(土) 15:04:19 ID:ZHemnHzc それからまた一ヶ月 姫はますます僕たち魔族になじんでいった もともと子供らしくあんまり物怖じしない娘だったし、皆にも比較的好印象だったしね 四天王のほうは最初の週こそ時々来る程度だったけど、二週目以降にもなると毎日来るようになった そのせいで軍部部下にもすっかり姫の存在がバレてしまう そうなれば、姫の待遇をもっと変えねばならない。そんな意見が出ると僕は懸念していた でも蓋を開けてみれば、すっかりみんなのマスコット的存在 姫も遊び相手が増えてすごく満足そうだ よかったよかった………と言っていいのかな? よけいに帰りたくないって言われちゃいそうなんだけど 「魔王様、報告があります」 「ん?」 郵便係の伝令烏が、泳ぎ疲れて姫とプールサイドでのんびりしている僕の肩に止まる 「お父さん。そのカラスさんは?」 「ああ、郵便係みたいなものだよ。……あとお父さんはやめなさいってば」 「以後、お見知りおきを」 「ちえー。ねえまおー、カラスさんってプール入らないかな?」 「烏は水はあんまり好きじゃないからね、嫌だと思うよ」 「すみません」 「ざんねん。いっしょに入ろうと思ったのに」 「………たまには水浴びも乙なものです」 「いいから、伝令」 ちょっとイラッってしたので、伝令烏の首を掴んでプール行きを止める 文字どおり、鳥が締められるような声が聞こえた 「……ゴホン。えー、姫様を奪還すべく、王国は伝説の戦士カニマヨを筆頭に編成された全騎士団をここに向かわせた模様」 「えっ。カニマヨって、二年前軍部に強襲をかけて、デッドガンマンとエレキインセクトを追い詰めたっていうあのカニマヨ?」 「その通りです。このままでは到着はおよそ三日後。我らも戦闘態勢に入るべきかと」 「なら、その前に姫を帰してあげれば」 「ヤダ! ボク帰らないから!」 「でも、姫が帰らなきゃ人間も魔族も、いっぱい死んじゃうんだよ」 「もっとヤダ! ここにいるのはみーんなとってもいい人たちだもん! 死ぬなんてぜったいやだ!」 「姫様、何とお優しい……魔族冥利に尽きるお言葉です」 「……………」 伝令烏は感動してるけれど、僕にはどうしても気になることがあった 姫はすっかり僕たち魔族を愛し、愛されている じゃあ、人間は? 「姫、どうしたらいいと思う?」 「決まってるよ! そのカニミソっていうのときしだんをみんなやっつけちゃえばいいんだよ!」 「姫様、カニマヨです」 「………それでいいの? 戦うのは、姫とおんなじ人間なんだよ?」 「いいよ。あんなきたない人間なんかよりも、やさしくて楽しいまぞくのみんながぶじでいてほしいもん  あ、でもいちばん大切なのは、お父さんだからねっ」 「お父さんって言うのは……」 「魔王様、もうお父さんでいいじゃありませんか」 いいとは思えない 姫は人間で、すぐに帰してあげるはずだったのに 何でこんなことを言うようになっちゃったんだろう 僕たちが悪かったんだろうか でも、姫を本当に可愛がってあげたことが間違いだとは思いたくない

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