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116 :猫のきもち。:2011/01/06(木) 14:39:48 ID:Rv4EezCF 彼女を動物に例えるとするならば、猫だ。 気まぐれで、 計算高くて、 嘘吐き。 いつも、寂しそうに温もりを求めている。 そんな彼女だから、僕は好きになったのだろう。 その、寂しそうな横顔を和らげてあげたかった。 「佐伯っていつもここにいるよね」 「そんな嫌な顔をするなよ」 南校舎の屋上で鉢合わせをする。 ここは彼女のお気に入りの場所だ。 立ち入り禁止なので、人は来ない。 「優希が来なければいいんじゃないかな」 「ここはあたしの縄張りなの」 「ここは公共の場所で、しかも立ち入り禁止だよ」 「あんたもいるじゃない。立ち入り禁止なんだから早く出て行ってよ」 「嫌だね」 「ほんっっと嫌なやつよね、佐伯って」 憎まれ口を叩きながら僕の隣に座る。 また、日が暮れるまで他愛の無い話をする。 それは、優希がここにいる事を知ってからの僕の日課となった。 優希と話せるだけで満足している。 悪態を吐きながらも優希は、話している時にとても嬉しそうな顔をしてくれる。 その顔を見るために、毎日ここへ通っている。 「龍真って結構前から放課後にいなくなるよね?」 授業が終わり、屋上に行こうとしたら幼馴染に引きとめられた。 「あぁ、大事な用事があるからね」 「その大事な用事とやらは可愛い幼馴染のデートよりも大事なの?」 「自分で可愛いとか言うな。まぁアホな幼馴染とデートするより重要だね」 「アホとは心外だね、今ならいちゃいちゃできる権利もつけてあげるけど」 「恋人でもないのにいちゃいちゃなんてできないよ」 「そう・・・じゃあまた明日ね、龍真」 「またね、美弥」 屋上に行くと先に優希が座っていた。 美弥と話をしすぎたみたいだ。 「遅かったじゃない」 「あれ?待っててくれたの?」 「・・・っ!馬鹿!!そんな訳無いじゃない!むしろいなくなって清々したわよ!!」 「はいはい」 「何よその言い方!本当に待ってなかったんだからね!!」 「分かってるよ、優希」 「うぅ~~もう帰れ!その顔見てるだけでムカつく!」 顔を赤くしながら反論してくる優希。 ・・・やっぱりこの時間が一番大切だよなぁ その日は雑談している時も、優希の顔は終始赤く染まっていた。 117 :猫のきもち。:2011/01/06(木) 14:42:06 ID:Rv4EezCF 今日は休日。 帰宅部の僕はやることがなく、暇だ。 「優希は休日に何してるんだろ」 休みの日には会えない優希。 ・・・今度映画にでも誘おうかな。 そう思った時、ポケットに入っていた携帯が震えた。 着信、美弥。 「もしもし」 「もしもし!龍真は今暇だよね!暇だね!分かった!!」 「・・・おい」 一方的に喋って一方的に切られた。 どうせ五分も経たない内にチャイムを鳴らされるに決まってる。 僕は観念して、出かける支度を始めた。 「で、龍真は今日何をするの?」 「美弥から誘ってきたじゃないか」 何も考えてなかったみたいだな、この幼馴染は。 「何もする事無いなら私についてきなさい!」 「別にいいけど、どこに行くの?」 「いいからいいから」 強引に連れられて来たのは喫茶店。 ファンシーな外装をしていて男が入るにはなかなか勇気がいりそうだ。 「ここのパフェが絶品なんだよ」 「僕は甘いもの苦手なんだけど」 「まぁコーヒーでも飲んで見ていればいいよ」 美弥が喫茶店に入っていく。 席に着いたところでメニューを見ずに注文していく。 ・・・慣れてるなぁ。 しばらくして、机の上に並べられていく甘い物達。 見てるだけで胃が重たくなる。 「後で欲しいって言ってもあげないからね!」 「いらないよ!」 美弥が机の上の甘い物を守るよう態勢になった。 そんな事しなくても食べないのに。 コーヒーを飲みながら美弥が食べ終わるのを待つ。 凄い勢いで食べ進める美弥。 結局、僕がコーヒーを飲み終わる位で完食した。 「いやぁ良く食べたね~」 「見てるこっちが胸焼けしそうだよ」 喫茶店をでた帰り道。 学校の近くを通った時、 (優希はいるかな・・・) ふと、そう思った。 一度気になると居ても経ってもいられなくなった。 「ねぇ、龍真?聞いてるの?」 「ごめん!美弥、用事ができた!」 「えっ?ちょっと待ってよ龍真!」 「本当にごめん!今日は楽しかったよ!」 来た道を戻り、学校に向かう。 部活があるためか、校舎は解放されていた。 急いで屋上へ向かう。 優希はきっと居ないのに、階段を駆け上がる。 屋上の重たい扉を開ける。 いつも二人で話していた定位置へ向かうと、 優希は、そこに、居た。 初めて会った時のような寂しげな表情を浮かべながら。 優希を見た時、顔が緩んだ。 顔を手で押さえ、表情を整えながら声をかける。 118 :猫のきもち。:2011/01/06(木) 14:42:59 ID:Rv4EezCF 「こんにちは、優希」 優希は最初驚いた顔をして、嬉しそうな顔に変わり、そしてやっぱり不機嫌そうな顔になった。 「休みの日まで来るなんてよっぽど暇なのね」 「優希だってここにいるじゃないか」 「減らず口叩かないで。せっかくの休日が無駄になったじゃない」 「はぁ、分かったよ」 優希の隣に腰を下ろす。 こんな事なら誘えば良かったかな? そのまま優希と屋上で過ごした。 いつもより長い時間話してしまったため、かなり遅い時間になったな・・・ 「優希、送って行こうか?」 「あんたの口からそんな言葉がでるなんて思わなかった」 優希が凄く驚いた表情になっていた。 「折角だけどお断りするわ。狼となんて怖くて帰れないじゃない」 「僕が狼になんてなる訳がないじゃないか」 「はいはい、それじゃ龍真。また明日ね」 「じゃあね、優希」 優希と別れて家へ帰る。 そういえば優希から名前で呼ばれたのは初めてだった。 少しは心を開いてくれたかもしれない。 充実感を得ながら帰宅した。  次の日、家を出ると美弥がいた。 「昨日は何で帰ったの?」 「そ、それは・・・」 美弥は笑っているけど間違い無く怒ってるだろうな・・・ 弁解しようにも、優希に会いに行ったとは言えないな。 「本当にごめん。忘れてた用事があって」 「また用事か・・・今日も放課後は用事あるんでしょ?」 「う、うん・・・」 美弥には悪いが、優希との時間は邪魔されたくなかった。 「・・・許さない」 「え?何か言った?」 「ううん、それより早く学校に行こうよ」 「そうだね」 時間が無くなってきたので、学校へ向かう。 美弥はまだ怒ってたし、 また今度、美弥になにか奢らないとな・・・ 119 :猫のきもち。:2011/01/06(木) 14:44:02 ID:Rv4EezCF 放課後になった。 直ぐに屋上へ向かう。 名前で呼んでくれたし、少しは会話に進展が・・・ 「うわ、また来たの?」 無かったみたいだ。 「龍真も暇よね。毎日毎日」 「そういう優希も暇だよね。暇人同士仲良くしようよ」 「そうね」 まぁ一応名前で呼んでくれるようになったから一歩前進かな。 態度は相変わらずそっけないけど。 僕は優希との会話に夢中になっていて、気付けなかった。 美弥が僕らを見ている事に。 次の日も美弥は迎えにきた。 「早く学校に行かないと遅れちゃうよ」 美弥は笑っているが、表情が硬かった。 学校へ行く時、いつもなら絶えず美弥が喋り続けるが、今日は何か思いつめた表情をしていて話さない。 沈黙が続き、しばらくすると美弥が口を開いた。 「今日も放課後は空いてないの?」 「うん・・・ごめん」 「またあの子に会いに屋上に行くんだね・・・」 「そうだよ」 美弥が優希を知っていた事に驚いたが、事実なので肯定をする。 「龍真、お願い。あの子に会う前に少しだけ時間をちょうだい」 真剣な目をして美弥は僕に言った。 「少しなら、いいよ」 「ありがと。じゃあ放課後体育館の横に来て」 「うん。分かった」 美弥の真剣な願いは断れなかった。 今日、優希に会うのは遅くなりそうだな・・・ 120 :猫のきもち。:2011/01/06(木) 14:44:59 ID:Rv4EezCF 授業が終わり、体育館の横へ行く。 「何でこんな半端な所に呼び出したんだろ?」 「知りたい?」 いつの間にか美弥が来ていた。 「何でこんなところで待ち合わせするの?」 ここは土地が開けていて教室や廊下から丸見えだ。 「教えてあげてもいいけど、一つ質問に答えて」 「いいけど・・・」 「いつも屋上に行くのはあの子が好きだからなの?」 「・・・っ!?それは・・・」 「早く答えて」 美弥は不安そうな顔をしている。 僕は屋上で待っているであろう優希の事を思い、自分の気持ちを正直に話す事にした。 「あぁ、好きだよ」 「・・・そう、やっぱりね」 美弥は俯き、表情は読めない。 少し間を空けて、美弥が喋りだした。 「私、龍真の事が好きだったんだよ」 突然の、告白だった。 「今、龍真の気持ちを聞いて諦めがつくと思った。・・・でもやっぱり無理だよ」 美弥が泣いている。 慰めるべきなのだが、美弥の気持ちには答えられない。 僕は優希が好きだから。 「龍真ぁ・・・」 美弥が抱きついてくる。 手は、まわせなかった。 「美弥、ちょっと・・・!」 「龍真、こっち向いて」 言われるままに美弥の方を向くとキスをされた。 「美弥!やめてくれ!」 美弥を突き放す。 今起こった事が信じられなかった。 倒れた美弥を置いて、僕は走った。 「何であの子なの?ずっと私は龍真を見ていたのに!」 後ろから投げかけられる言葉は美弥のものだと思いたくなかった。 混乱しながらも、足は勢いよく階段を上がっていく。 優希に、会いたい。 屋上の扉を開け、いつも二人で話した位置まで進む。 優希はいなかった。 いつも僕が座る位置に腰を下ろす。 下を見ると先程自分がいた所で美弥が泣いているのが見えた。 優希は多分ここから見ていたのだろう。 僕と美弥が話している様子を。 「じゃあキスしてる所も見られたんだろうな・・・」 頭を抱える。 ここで、優希を待とう。 優希が来たらこの事を説明した後、告白をする。 そうしないと、このモヤモヤは取れそうにない。 121 :猫のきもち。:2011/01/06(木) 14:45:35 ID:Rv4EezCF その日、待ち続けたが優希は来なかった。 次の日からも放課後は屋上で優希を待ち続けた。 優希は一向に来ない。 学校も休んでいるらしい。 焦りばかり募っていく。 待ち続けて一週間が過ぎた頃、優希が屋上へ姿を現した。 酷くやつれていて、フラフラとこちらへ向かってきた。 「ようやく来たか」 「・・・!?何でここに?」 優希は驚いていた。 「優希に言い忘れてた事があってね」 「・・・早く言って。どうせ話したら彼女の所に行くんでしょう?」 「先に言っておくけど、美弥は彼女じゃないからね」 「本当?」 「あぁ、僕が好きなのは優希だからね」 優希の返事を待つ。 「龍真っ!」 優希に抱きつかれた。 二人で目を合わせ、キスをする。 長いキスが終わった後、二人でいつもの場所に座る。 優希と手を絡める。 ずっとこうしたかった。 「でも、良かった」 「何が?」 「龍真も私を好きでいてくれて」 「あぁ、大好きだよ」 「これから龍真にする事の所為で、嫌われちゃったらどうしようかって悩んでたの。でも大丈夫そうね。」 「・・・!?」 何をするのか聞こうとした所で身体に鋭い衝撃が走る。 薄れゆく意識の中、見えた優希はとても恍惚とした表情を浮かべていた。 「あたしと龍真は恋人だもの、怒らないわよね?」 目を覚ますと、そこは見た事の無い部屋だった。 首に違和感を感じ、手を当てると首輪がついていた。 「起きたみたいね」 「優希、これはどういう事なの?」 「たとえ二人が愛し合っていても邪魔な存在は幾らでも湧いてくる」 優希が僕の肩に手をかけた。 ゆっくりとキスをする。 「だからね、龍真はここでずっと暮らすの。邪魔の入らないこの部屋で」 僕もキスに応える。 舌を絡めてお互いの存在を確かめる。 「さぁ愛し合いましょう?」 彼女は猫だ。 気まぐれで、 計算高くて、 嘘吐き。 寂しさを和らげるために僕はいる。 僕は今、幸せだった。

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