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199 名前:シスターズ!!五話:兄として。 ◆rhFJh.Bm02 :2011/01/10(月) 01:02:21 ID:mIhtMsQj ~フランスの何処かにあるマンション~ 「なぁ文子。俺が愛してるのはお前だけなんだよ」 「えぇ、そうね」 「・・・だからこの手錠を外してくれないか?」 「駄目よ。目を離したらどんな害虫がつくか分からないもの」 「仕事はどうするんだ?このままでは孝康達の生活費さえ稼げないじゃないか」 「しっかりと社長さんに、隆さんは体調不良のためしばらくお休みすると伝えてあるから大丈夫よ」 「あいつに嘘が通用する訳がないじゃないか・・・」 「あいつ?」 ピンポーン 「やっぱり来たか」 「居留守を使えばいいのよ」 「ここをどこの会社のマンションか分かればそんな考えは起きないさ」 「そうね、そんな愚行考えるだけ無駄よ」 「久しぶりだな、蜜柑」 「えぇ、久しぶりね隆」 「また隆さんに虫が・・・」 「それで?どう見ても体調不良を訴えているようには見えないけれど?」 「他人の貴方が勝手に判断しないでください!隆さんの妻である私が夫の体調を管理しますから」 「私はね、隆が幸せに暮らせればそれでいいの。少し前まで隆が私以外の女と幸せになっているのが許せなくて何度も襲ってしまったけど、後悔はしてないわ」 「隆さんは今も幸せですよ?私がいるのに不幸な訳がないですか」 「・・・とてもそうは見えないわね。手錠で繋がれて、監禁されて、子供達のために仕事をする事さえできない。はっきりいって貴方は隆の妻に相応しくないわ」 「ねぇ、隆さん?今、幸せですよね?」 「・・・すまない、文子。俺は子供達のためにも働きたい」 「決まりね。さぁ行きましょうか隆」 「文子。行ってくる」 「・・・隆さん、行かないで」 「文子、仕方が無いんだ。俺はお前や子供達を養うためには働かなければならない。ずっと一緒にいる訳にはいかない」 「隆さん!?行かないでよ!私を一人にしないで!!」 200 名前:シスターズ!!五話:兄として。 ◆rhFJh.Bm02 :2011/01/10(月) 01:03:33 ID:mIhtMsQj 「ありがとう。蜜柑」 「感謝の言葉より行動で示して欲しいわね」 「俺は文子の事を愛している。だから、できない」 「分かってるわよ。隆を独占することは諦めたもの。行動って仕事のことよ、隆が休んでいた間にどれだけ溜まっているか分かる?」 「うわ、聞きたくないな」 「しっかりしてよね、貴方は私の右腕なんだから」 「精々期待に応えられるように努力しますか」 「えぇ、頑張って頂戴。後、貴方の妻だけど注意したほうがいいわ」 「文子が?」 「あの子、昔の私と同じ匂いがするわ。独占欲が暴走し始めている」 「あぁ、何とかする」 「気を付けなさいよ、隆が幸せに生きるためなら私は全力でサポートするから」 「本当に蜜柑には世話になりっぱなしだな」 「いいのよ、その代わり柚子の事を隆からも助けてやって欲しいの」 「柚子ちゃん?」 「隆の子の康孝君の事が好きみたいなのよ。中々素直にならないから隆と私の関係を教えてあげて、一緒に住まわせたのよ」 「それは難しいな・・・」 「どうして?」 「彼方も孝康を好いているし、三つ葉ちゃんも一緒に住んでいる」 「修羅場ね、孝康君」 「俺みたいにならないで欲しいが・・・」 「あら、自覚はあるのね」 「当たり前だ。罪悪感を感じない日は無い」 「孝康君はきっと大丈夫よ。反面教師がここにいるもの」 「蜜柑は厳しいな・・・」 「何で隆さんは私だけを見てくれないの?」 「私に何が足りないの?」 「どうしてあの女の所へ行くの?」 「他の女に盗られるぐらいなら・・・」 「ふふふ・・・何で今まで気が付かなかったのかしら」 「これなら隆さんとずっとずっと一緒になれるじゃない」 「隆さん早く帰ってきてくれないかな」 「早く二人で幸せになりましょう?」 201 名前:シスターズ!!五話:兄として。 ◆rhFJh.Bm02 :2011/01/10(月) 01:04:46 ID:mIhtMsQj 「で、お兄様。その子は誰ですか?」 今日は休日。 テーブルを挟んで妹達に事情説明。 「あぁ、この子は柚子ちゃん。もう一人の義妹で伊野財閥の社長の一人娘だ」 「お姉ちゃん達よろしくね!」 柚子ちゃんが椅子を近づけて俺と腕を組みながら挨拶をした。 ・・・彼方と三つ葉の殺気が怖い。 特に三つ葉は笑顔だけど、周りを包むオーラがどす黒い。 「伊野財閥とかどうでもいいけど、たか兄から離れてくれないかな?」 「え~何で?」 「そんなにひっついたら、たか兄が話せないじゃない」 「そんな事無いよね?お兄ちゃん?」 「いや、柚子ちゃんごめん。少し話にくいかな」 このままだと彼方と三つ葉の圧力に潰されそうだ。 柚子ちゃんが渋々自分の位置へ戻り、説明再開。 「それで、こちらに立っているのが柚子ちゃんの付き人のセリナさん」 「宜しくお願いしますね皆さん」 セリナさんがお辞儀をする。 洗練された動きに目を奪われた。 「あぁ~!またお兄ちゃんセリナの胸見てる!」 「えぇ!?孝康さん!困りますよ~!?」 「やっぱりたか兄は大きいほうがいいの!?嘘だよね?」 「お兄様が大きい方が好きなのは嬉しいです」 柚子ちゃんの一言で騒がしくなる。 (もう静かな朝は訪れないな・・・) 俺は懐かしい日常に別れを告げた。 202 名前:シスターズ!!五話:兄として。 ◆rhFJh.Bm02 :2011/01/10(月) 01:07:04 ID:mIhtMsQj 「お兄ちゃ~ん、朝ですよ~」 「・・・うぅ」 「彼方お姉ちゃんの言った通り朝は弱いみたいだね」 「・・・すぅ」 「つんつん」 「・・・うぐぅ」 「っ!可愛い~」 「・・・ぅん」 「それじゃあ今度は下の方に・・・」 「何をするのですか?」 「悪戯を・・・って三つ葉お姉ちゃん!?」 「起こしてくるのが妙に遅いと思ったら・・・お兄様もさっさと起きてください!」 「うわぁ!」 目が覚めた。 布団を剥がされたみたいだ。 布団を持って赤くなっている三つ葉と、ズボンを下げながら笑っている柚子ちゃんが・・・ 「おはよう・・・って、何してんだよ!?」 「うん?お兄ちゃんを起こしに来たんだよ?」 こんな起こし方は正直、勘弁してもらいたい。 ゆっくりと柚子ちゃんを退ける。 「お兄様も起きたし、柚子ちゃんも行きますよ!」 「う~、分かったよ。三つ葉お姉ちゃん」 部屋を出ていく三つ葉に柚子ちゃんも付いていく。 「あっ、そうそうお兄ちゃん」 ドアの前で柚子ちゃんが振り返る。 「朝からすっごい元気だね!」 それだけ言って去っていった。 ・・・柚子ちゃんの印象がどんどん変わっていく。 最初に会った時は無邪気で可愛かったのになぁ。 懐かしみながら着替えた後、朝食を食べるためにリビングへ向かった。 「私の仕事を奪わないでください~」 「私がお兄様の栄養バランスを考えた食事を作ります」 「今までたか兄のご飯は私が作ってたんだから私が作るの!」 リビングへ入って直ぐ、キッチンで言い争っている三人がいた。 「あの三人は何を争ってるの?」 「朝ごはんを誰が作るかだって」 「柚子ちゃんは行かないの?」 「だって柚子、料理作れないもん」 柚子ちゃん、お嬢様だしな・・・ 「だったら俺が教えながら一緒に作ろうか?」 「本当に!?」 「あぁ、柚子ちゃんだって料理位覚えた方がいいだろうし」 「うん!お兄ちゃんと一緒ならやる!」 「おし、決まりだ」 軽く柚子ちゃんの頭を撫でた後、三人の所へ向かう。 まだ言い争っているみたいだ。 203 名前:シスターズ!!五話:兄として。 ◆rhFJh.Bm02 :2011/01/10(月) 01:08:20 ID:mIhtMsQj 「おはよう。皆」 「あ、おはよう!たか兄」 「おはようございますお兄様」 「孝康さん、おはようございます~」 「話し合っても決まらないだろうし、当番制にしようか?」 真っ当な提案をしてみる。 異論は無さそうだ。 「とりあえず、今日はセリナさんにお願いして貰っていいですか?」 「はいっ!頑張ります~」 セリナさんが準備に取りかかる。 二人は不満そうにしていたが、仕方が無い。 今にも泣き出しそうな顔をしてたしな、セリナさん。 その間に順番を決めておこう。 「明日の当番は彼方と三つ葉、どっちがやりたい?」 彼方と三つ葉が同時に手を挙げる。 二人とも譲る気は無いのか。 結局、二人にジャンケンして貰った。 「じゃあセリナさん、彼方、三つ葉、俺と柚子の順番でいこうか」 「え?たか兄は柚子ちゃんと一緒にやるの?」 「あぁ、柚子ちゃんは料理出来ないし」 「それなら私が教えますよ、お兄様」 「それでも良いけどね。でも俺から持ちかけた事だし、責任持って柚子ちゃんに教えるよ」 「そうですか・・・」 「・・・たか兄から言ったんだ・・・」 「彼方?何か言った?」 「・・・ううん、何でも無いよ。それより明日のご飯に使う食材を買いに行くから荷物持ちをたか兄に手伝って欲しいな」 彼方からお願いされるなんて久しぶりだな・・・ 「いいよ、荷物持ち位なら」 「三つ葉は?」 「私も行きたいですが・・・一度、実家の方に帰らなくてはいけないので」 少し暗い表情で答える三つ葉。 「用事が有るのなら仕方が無いよ。また今度一緒に出かけような」 「すみません。では、失礼します」 朝食を食べ終えた後。 浮かない表情のまま、実家へ行く三つ葉を見送った。 柚子ちゃんとセリナさんは荷解きで忙しいし、久しぶりに彼方と二人での買い物になりそうだな・・・ 204 名前:シスターズ!!五話:兄として。 ◆rhFJh.Bm02 :2011/01/10(月) 01:11:22 ID:mIhtMsQj 「彼方。行こうか」 「うんっ」 彼方が嬉しそうについてくる。 こんなに嬉しそうな彼方は久しぶりだ。 商店街に着き、しばらく店を見て回る。 彼方は終始、笑顔だった。 「彼方は明日何を作るんだ?」 「ん~、何にしようかな?たか兄は何が食べたい?」 「俺は別に何でも良いんだけど・・・」 柚子ちゃんは来たばかりだし、柚子ちゃんの好きな物を食べさせてあげよう。 「じゃあ、唐揚げで」 確か唐揚げが好きって言ってた気がする。 「あれ、珍しいねたか兄。普段唐揚げなんてあまり食べないのに」 「柚子ちゃんの好きな物だよ。早く馴染める様にしてあげたいからね」 「・・・また、柚子ちゃんか」 彼方はそう言ったきり、無言になってしまった。 いつも明るい彼方だが、最近は暗い表情をよく見かける。 彼方なりにストレスが溜まっているのかもしれない。 今度、さり気無く聞いてみよう。 暗い雰囲気の中、買い物を進める。 「なぁ彼方、雑貨屋に寄って良いかな?」 「雑貨屋?」 「ほら、柚子ちゃんとセリナさんが・・・」 言いかけたところで止まる。 彼方が俯いたまま動かない。 「彼方?大丈夫か?」 「・・・加減に・・・してよ」 「え?」 「いい加減にしてよ!!」 彼方に押されて倒れこむ。 顔を上げた時、彼方は走りだしていた。 彼方は・・・泣いていた。 泣かせたのは、俺だ。 「くそっ」 素早く立ち上がり彼方を追う。 既に彼方はかなり遠い所まで行っていた。 追いつくか? いや、追いつかなきゃ、駄目だ。 彼方の兄は俺だけだから。 俺があいつの心の支えになってやらないと・・・ 彼方の背中を追いかけて走り続ける。 公園の中へ入っていった。 追って中へ入る。 彼方は、公園で、泣きじゃくっていた。 「やっと追いついた」 彼方の背中に話しかける。 205 名前:シスターズ!!五話:兄として。 ◆rhFJh.Bm02 :2011/01/10(月) 01:12:47 ID:mIhtMsQj 「もう嫌なの!どうして、たか兄から他の女の子の名前が出るの!?どうして、そんなに嬉しそうに話すの!?私にはたか兄しかいないのに!」 彼方が叫んでいる。 泣きながら、自分の思いを吐き出している。 しばらく、彼方のすすり泣く音が公園に響いていた。 「彼方・・・」 「・・・っ!」 背中から抱き寄せる。 「ごめんな、こんな駄目な兄で」 「ううん、たか兄の所為じゃない。私が勝手に嫉妬して、たか兄に迷惑かけてるだけだもん」 「それでも、俺は彼方の気持ちを考えてやれなかった」 「うん・・・」 彼方を抱いたまま、泣き止むのを待つ。 「ありがとう。たか兄」 温もりが離れる。 彼方は笑顔に戻っていた。 やっぱり彼方には、笑顔が似合う。 「彼方。帰ろうか」 「うんっ」 彼方が元気よく走り出した。 と、思ったら戻ってきた。 「どうした?」 「言い忘れてた事があったの」 そう言って彼方は、 俺の頬に手を添えて、キスをした。 「・・・!?」 「・・・ん♪」 数秒間だけの子供っぽいキス。 「愛してるよ!たか兄」 彼方は唇に指をあてながら微笑んだ。

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