「弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 6」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 6」(2011/02/12 (土) 03:17:29) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

576 :弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 6:2011/02/11(金) 19:39:13 ID:7YkSHtBO 今日一日でいろんなことがあった 今朝突然、父様から魔王のお嫁に行くようにと点字手紙を受け取った すごく混乱したけれど、こんなわたしをずっと育ててくれた父様のお願い せめて、この役立たずのわたしが少しでも役に立てるのならば、行こうと決意するまでに五分も必要なかった もっとも、わたしは時計なんて見えないから、正確な時間なんて分からないのだけれど 噛み付かれるか、犯されるか、悪くすれば殺されるのか そんな不安をはらみながらも、わたしは笑顔だけは崩さずにいようと誓っていた 殺されたとしても、せめて父様たちの印象は悪くしないようにと ……結論から言えば、取り越し苦労もいいところだった まだわたしの眼が見えていた頃、御伽噺に登場する魔族というものはたいがいが粗暴で悪意に満ちていた でも、手をつないで連れてきてくれた者も わたしを背中に乗せて飛んでくれた者も 震えるわたしを後ろから抱きしめてくれた者も みんなみんな、悪意に満ちている魔族というものの印象からほど遠いものだった そして、空の散歩が終わって連れてこられた場所で、私は生まれて初めて 声? を聞くことになった [空の旅、お疲れッス] [!?] [あ、挨拶が遅れたス。ワシは魔王直属軍スカル部隊総司令官のスカルエンペラーッス。そんでここは魔王城の医務室ッスよ] [!!???] [そんなに混乱しなくても大丈夫ッスよ。ワシは伝心魔法で心に直接語りかけてるッス  言葉がわかんなくても意味は伝わってるッス……よね?] なんなの。どういうことなの。よく分からないよ ずっと闇の中にあったわたしの心 光が見えなくなってからは、指先に感じる文字だけ それがわたしが他者の感情を感じることのできる唯一のツール なのに、それなのに わたしの頭に、優しく乗せている硬くて細い手の魔族の人は どうしてこんなことを、わたしの諦めていたことを、容易にしてしまうの 577 :弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 6:2011/02/11(金) 19:39:33 ID:7YkSHtBO [……やめて、ください] [えっ? なにがッスか?] [女の子の心を覗くなんて、デリカシーがないです] こんなことを恩っちゃ駄目 悪印象を持たれちゃう そう心のどこかで思いながらも、わたしは止めなかった 希望を持たせないで 暗闇の中にいさせて 戻らない光や、わたしの知らない音というものに希望を持たせないで そんな拒絶の感情は、確かに伝わったと思う その証拠に、あっ と大きな声が頭に響いたと思うと 慌てたような弁解の言葉が矢継ぎ早に頭に届けられた この人、魔王直属軍の部隊総司令官だってさっき言っていたよね それなのにこんなふうに慌ててるんだと思うと少しおかしくて、ぷっと吹き出してしまった それは、今日に入ってからはじめての、わたしの心からの笑いだった [なんかおかしかったッスか? ワシ、またなんかやっちまったッスか?] [そうではないの。ごめんなさい。わたし、こんなふうに誰かと伝え合うのは初めてだったんです] [伝え合うッスか。エリスちゃん、こういうのは[話す]って言うッスよ] [話、す?] 聞いたことはある どんなものなのか分からない でも、今わたしがしていることがその[話す]ということなのだとしたら [なんて、すてきなことなんだろう] [気に入ってくれたッスか? よかったッス。これで読心のことは許してもらえると嬉しいんスけど] [ええ。でも、もう一つあります] [?] [突然、相手を[エリスちゃん]なんて呼ばないでください。びっくりしましたよ] [ああああああああああ] そうしてまた弁解と謝罪の言葉が飛んでくる まだわたしはここの魔族の方々を信用したわけじゃない それでも一つだけ分かることは わたしに言葉をくれた彼は、とても優しく、とてもあわてんぼうだということ 578 :弱気な魔王と愛され姫様・第四幕 6:2011/02/11(金) 19:39:54 ID:7YkSHtBO すると突然、彼の硬い手とは別の、ふわふわした柔らかい手がわたしの頬をつついてきた なに、誰なの 邪魔をしないで わたしは生まれて初めて、とっても素敵な、お話しをしているのに [ああ、こいつはワシと部署は違うけど同じ魔王直属軍総司令官ッス  名前はエレキインセクト。態度や口は悪いッスけど、悪人じゃねーッスよ] [………] 彼がそう言うならきっとそうに違いない でも突然ほっぺたをつっつくなんて、デリカシーがないのは彼にそっくりみたい ああ、今度は軽く引っ張ってきているし [エリスちゃんのほっぺた、柔らかくてよく伸びると笑ってるッス] [……やめさせてください] [まあまあ。悪気はないんスし、勘弁してやってほしいッス。これからこいつにも協力してもらうんスから] 協力? 何をするの? わたしに害を加える、とかの類じゃないことは分かってる もしもそうなら、彼はこんなふうにわたしに接したりなんかしない でも、怖いよ 意味ありげに言わないで はっきりと、言葉でわたしの心に伝えて [これからワシとこいつで、エリスちゃんの目を治すッス] [えっ] [怖がらないでほしいッス。口幅ったいこと言うッスが、ワシは魔族きっての回復魔法のエキスパートッス  そんで、エリスちゃんの体の中にワシの回復呪術法で育てたこいつの超微細蟲を入れて、体内から眼機能を回復させるッス] [蟲を、わたしの体に、入れる?] [大丈夫ッス。会って早々無理かもしれないッスが、ワシを信じてくれるなら、大きく口を開けてほしいッス] [……はい] ほんの少しだけ、躊躇った それでも、彼が大丈夫と言うのなら信じよう 会ったばかりの、人間とは相容れない存在と言われてきた魔族 その頂点に君臨する魔王直属の司令官。スカルエンペラー、って言っていたっけ 彼への信頼と、光への希望を持って、わたしは大きく口を開けた

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: