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16 :青鬼の鬱日和 ◇jdkhkhftr:2011/01/30(日) 23:10:07 ID:FjisnD19  「なぁ、智弘」  「どした?青崎」  「アレ、何だと思う?」    俺はやや後方にある曲がり角を指し示した。  そこには物陰からこちらを窺う人影があった。  おおよその目視計測で、背はそれほど高くない140ちょっと。あと細身。    「え……と、ストーカー?」  「お前に惚れてる女子とか?」  「いや、ありえないでしょ。てか女子なの?」  「男子だとしたら小柄なヤツだな」  「お前に恨みを持っていて、奇襲をかけるつもりかもよ?」  智弘が深刻そうな顔で言う。  「オイオイ」  俺は肩をすくめた。  「俺が人に恨みを買うような人間に見えるのか?中学時代の渾名はMr.人畜無害だぜ?」  「嘘付け。去年、暴走族十数人を病院送りにしたくせに」  「待て待て、俺はもうケンカは辞めたんだ。足を洗ったのさ。その話は蒸し返さないでくれ」  「全然足洗えてねーだろ、一昨日、裏路地で他校の不良5人ボコっただろうが」  一昨日の記憶が蘇える。  たしか見ず知らずの高校生5人に突然因縁吹っかけられて殴り合いに発展したんだった。  「いや、あれは正当防衛ってヤツだ。突然襲われて必死に抵抗したんだ。」  「必死の抵抗のわりにはお前だけ無傷だったよなぁ?オイ」  話がずれているのを感じる。  現状、いまだに人影はこちらを窺っており、緊張が抜けない。    「まぁお前なら襲われても平気だろ」  「無茶言うな。自衛グッズの一つでも無いと不安だ」  「そんな物いらねーだろ。中学時代の渾名で『青鬼』なんて呼ばれてたくせに」  「やめてくれ、俺はもう足を洗って…「まだ言うかソレ!?」    そう言っているうちに校門に着いた。  さりげなく後ろを見ると、それらしき人影は無かった。   17 :青鬼の鬱日和 ◇jdkhkhftr:2011/01/30(日) 23:10:41 ID:FjisnD19  昼休み、智弘は落ち着かない様子で購買という名の戦場から帰還した。  そして唐突な話題を振ってくる。  「なぁ、澤本絵里って知ってるよな?」  「あぁ、知ってるけど」  澤本絵里は全校の男子のおよそ6割から告白を受け、それを須らくフったという逸話を持つ先輩だ。  成績は優秀、所属する剣道部では県下無敗の腕。そして先の逸話から察せられるように、とて も容姿が良い。男なら100人に90人くらいは振り向く美貌だ。……と智弘が熱く語ってい た。  ちなみにその他の10人は不能か男色だという。  「で、その澤本先輩がどうした?」  「告白しようと思う……!」  「マジで?」  「おうともよ」  智弘の表情は難く、真剣そのものであると解る。  「しかしなんでこの慌しい時期に?春休みまで一週間だぞ?」  「そこだよ……」  智弘はニヤリと口の端を吊り上げて語る。  「成功した暁には春休みという自由によって先輩と俺の仲は一気に階段を昇るであろう!」  「失敗したらどうするんだよ」  言いつつも、何となく答えが見えていた。  「春休み使って傷心旅行……。傷を乗り越えて一歩大人になった俺の姿に乞う御期待!」  「…………」  「アレ?反応なし?ツッコミ職人の青鬼さんは何処にいったの?」  「いや、だからその青鬼ってのやめてくれ。俺はもう…「ハイハイ、同じネタで笑いを取れる ほど大衆の笑いは安くないですよ~」  さすがにムカついたので拳を振り上げる。一発殴ってやる。  「ちょ、待っ!お前のパンチってマジで重いから!ベテランボクサーの拳と同列だから!」  「Go to……」  「ヘルなの!?それともヘブン!?何にせよどこかへ行かされるのか!!?」  「黙れ」  ゴツッと鈍い音がして智弘は頭を抑えてのた打ち回る。  「っづあぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!」    「ちょっとー、静かにしてよー」「うるせーぞ智弘」「バカだねー智弘」  加えてクラスメイトの何人かから追い討ちを受けた智弘は完全に沈黙した。 18 :青鬼の鬱日和 ◇jdkhkhftr:2011/01/30(日) 23:11:54 ID:FjisnD19 午後の授業を終え、俺は我が家へと帰還を果たした。  夕日の差し込む玄関には見慣れない真新しいスニーカーが一足。  「誰のだ?」  俺の家族は大学の講師をやっている父親が一人。  それも県外の大学で、築7年の一軒家に俺一人で暮らしている。  父親はマンションの一室を借りているらしい。この家に来るのも月に一度あるか無いかだ。  母親は俺がまだ幼き日、父親と反発して一つ上の姉を連れて出て行ったと聞いている。  と、まぁ以上のことから家族の靴ではないことは明らかだ。  万が一、空き巣の類だったなら大変なことになる。  細心の注意を払って家の中を見回ることにした。  居間、台所、風呂場、縁側、父親の書斎、お手洗い。  何処にも人のいる気配は無く、ついに見ていないのは俺の部屋だけになる。  覚悟を決めて俺は扉を開いた。    やはりというか侵入者はそこに居た。    鎖骨まで届く長い髪。  背は高く、均整の取れた体つき。  俺の通う高校の女子用の制服。  智弘曰く『100人に90人が振り返る美貌』。  澤本絵里、数年前まで『青崎絵里』だった女。  ……俺の姉がそこに居た。  「なんで居るの姉さん」   19 :青鬼の鬱日和 ◇jdkhkhftr:2011/01/30(日) 23:12:21 ID:FjisnD19  澤本絵里は今気づいたようにハッとこちらを向く。  「コウちゃん!」  俺に気づいた姉さんが凄い勢いで抱きついてきた。  学校での大人びた『澤本先輩』の姿なんて何処にも無い。  そして決して貧しくは無い、むしろ同学年の女子より大分発育の進んでいる双丘が押し付けられる。  「お母さんがね……再婚するの!」  「はぃ?」  突然振られた話題に困惑し、同時に苛立ちが沸いた。  何故俺が顔も忘れたような女の事を聞かなきゃいけないのか。  しかし姉さんの手前、苛立ちは内に潜めた。  「誰とさ?」  「お父さんと!」  ……と言うことは、離婚していた両親がよりを戻すという事か。  いつの間に父さんは母さんと会っていたんだろうか。  仕事は平気なのだろうか。  ていうか顔も知らん実母だって?実感わかねーよクソッタレ。  「それでね、お母さんとお父さんは婚前旅行に出るって!」  「ちょっと待って姉さん」    俺は両手で姉さんを引き剥がし、待ったをかける。  「どうしたの?コウちゃん」  「まずその『コウちゃん』って止めてくれ」  「いいじゃん、孝助だからコウちゃん。可愛いでしょ」  「……」  「あれ~?ツッコミ職人の青鬼さんは何処に…「ちょ、何処まで広まってんの、その渾名!?」  「きっとこの辺で知らない人居ないんじゃない?」  「マジですか……」  「うん、マジ」  「まぁいいや……で、父さんと母さんが再婚するの?」  「そうだよ~。あ、式は2ヶ月後に挙げるって」  「いや、それは聞いてないけど」  「エヘヘ、これでまた私たち姉弟なんだね」  「で、姉さんはどうして家に?報告なら電話で済むでしょ」  「お姉さんはね、今日からこっちの家で暮らすのです!」  「は?」  「あ、お料理とかは任せてね!すっごい練習したんだから」    こうして俺と『他人同然の実姉』との暮らしが始まった。  

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