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ヤンデレの小説を書こう!Part12埋めネタ②」(2008/01/11 (金) 22:53:02) の最新版変更点

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703 :埋めネタ [sage] :2008/01/11(金) 21:37:05 ID:oxt0kF95  彼は日々、ブログに日記を書きつづることを習慣にしていた。  何が楽しいのか、と問われるとなんとも答えがたい。  それでも、彼は自分の日記をウェブに公開することが楽しかった。  ブログを書き始めてから数日が経った頃、彼は日記を入力する際に変換ミスをよくすることに気づいた。  そして、パソコンに最初からインストールされている日本語入力ソフトではなく、市販の入力ソフトを 使えば日記を書くのが楽になるのではないか、と思いついた。  思い立ったが吉日という格言にならい、彼は市販の日本語入力ソフトを購入した。  財布の中身がすっと軽くなる錯覚がするほどの金額ではあったが、彼は満足だった。  そのような感じでブログにこり始めた彼は、次第に日記を書かなくなった。  日記ではなく、自分の妄想をブログに載せ始めたのだ。  いわゆる、SSというものだ。  既存の商業作品の二次創作ではなく、自分の頭の中で一から構築した話だ。  SSを書き始めてみると、実は日記よりも楽しいことに気づいた。  日記は、書くに値するネタがなければ書かない、ということを彼は決めていた。  例えば、朝起きて、学校に出かけて、帰ってきて眠る、という一日では日記を書けない。  しかし、SSであれば別だ。  頭の中にふっと思いついた話を書けば、毎日ブログを更新することができた。  SSの内容は、一話完結の短編作品。いや、短編と呼ぶことすらふさわしくない、掌編だった。  一編書くにあたって浪費する時間は三十分から一時間程度。  初日は一時間で二十行程度しか書くことはできなかった。だから、二時間かけてようやく完成させた。  日を重ねていくうちにSSを書くコツをつかみ始めた彼は、早ければ三十分で書き上げられるようになった。  そのことを自覚した時は、友人に自慢したくなった。  しかし、彼がそうすることはなかった。  自分の書いた文章なんて知り合いには見せたくない、見せられない、という思いがあったのだ。  話は離れるが、彼には姉がいた。  一つ年の離れた姉で、自分と同じ大学に通っている。  姉であるが、初めて彼と彼の姉を見る人々は、彼女の方が年下だと勘違いした。  それもそのはず、彼の姉の身長は150cmを下回っていたのだ。  その上、容姿は中学生のように幼かった。  髪の毛は黒く艶々で、鼻は小振りな大きさで、目はぱっちりと開いていた。  加えて、姉の声は小学生かと聞き間違うほどにキーが高く、舌足らずだった。  彼と姉が並んで歩いていると、兄妹というより親子が一緒にいるようだった。  彼ら二人を見る者は、仲のいい親子が並んで歩いている、と微笑ましく思った。  それは、彼の容姿が姉とは対照的に大人びていることも一つの要因だっただろう。  もっとも、当事者である彼と姉は特に気にもしなかった。  彼にとって姉は姉でしかなく、姉にとっても彼は弟でしかなかった。  だが、姉の方には少しだけ問題があった。  見た目は幼いとはいえ、実年齢は二十歳である。とっくに弟離れをしている年齢だ。  なのに、姉は弟にべったりくっついて離れなかった。  まるで、肉体が彼女の精神までも幼くしてしまったように、姉の行動は無邪気だった。  例えば、毎日一緒にお風呂に入ることを弟に要求したり、夜起きた時は一緒にトイレへ行ってくれと頼んできたり。  まるで妹であるかのような甘えっぷり、頼りっぷりだった。  彼はというと、そんな姉を微笑ましく思っているだけだった。  これから先、自分が就職してからも姉がこんな調子では困る、もっとしっかりしてほしい、 と思ってはいたが、それもまだまだ先のことであると気楽に考えていた。 704 :埋めネタ [sage] :2008/01/11(金) 21:41:04 ID:oxt0kF95  話を戻して、彼が管理しているブログについて語ろう。  彼はSSを書いていたが、次第にネタに詰まるようになってきた。  書き始めて三ヶ月以上過ぎれば、さすがに彼の妄想も底をつき始める。  彼の書いている話は、ちょっと心が温まるような小話が多かった。  だが、そればかり書いていては上手くいかないようになってきた。  日によってはブログを更新できないこともあった。  いくらパソコンの前に居ても、今まで書いてきた話ばかりが浮かんできて、一向にキーボードを打てないのだ。  そんな日は諦めて、話の構成を考えながら布団の中に入る。悔しい思いをしながら。  今回の話は、そんな人並みの悩みを抱える若者が体験した奇妙な出来事だ。  ブログを更新できなかった日の翌日、彼が朝食をとるためリビングへ向かうと、香しい匂いが嗅覚をついた。  テーブルの上には、いつもの朝食よりバリエーションに富んだ料理たちが並んでいた。  白米、味噌汁、卵焼き、焼き魚、漬け物、それとお茶の入った急須が置かれている。  彼の家では姉が料理を作っている。おそらく、今日も姉が作ったはずだ。  だが、いつもならもっと軽めの朝食がテーブルの上にあるはず。  今日は何かの記念日というわけではない。昨日何かいいことがあったわけでもない。  ではなぜ? と思い、彼はキッチンに立つ小さな姉に問うた。 「おはよ! え、なんで今日の朝食が豪華なのかって?  それはね、弟君がなんだか元気なさげに起きてくるんじゃないかな、と思ったからよ」  彼は特に元気がないわけではない。朝の生理現象も体にあらわれていた。  自分が元気だと言うことを伝えると、姉は少し首を傾げた。 「ありゃ、そうなの? んー……ま、私の勘も外れることだってあるってことで。  さ、ご飯食べよ。今日は腕によりをかけて作ったんだから」  姉に背中を押されて椅子に座る。姉は彼の左隣の椅子に腰掛ける。  椅子のサイズは同じだが、二人の間に身長差があるせいで、彼の方が頭一つ飛び抜けて高い。  それでも、姉は彼に向けて箸を差し出して、食べさせようとする。  彼はいつもやめてくれ、と言っているのだが、姉はどうしても聞かない。 「弟君は、私が面倒を見るの。それがお姉さんのつとめなんだから。  その見返りに、お姉さんをハグしてくれればいいよ。こう、ぎゅー……って」  手本を見せるように、自分の腕で体を抱きながら実演する。  姉の言葉を耳に入れながらも、彼は朝食をつつく手を休めない。  姉にそんなことをするような年齢ではない。それに、彼はシスコンでもない。  こんな幼く見える姉に抱きついている様を人に見られたら、彼の評判が下がる。  ただでさえ、友人の間では彼と姉の仲を疑われているというのに、これ以上悪化させるわけにはいかないのだ。  彼が味噌汁を飲む。すると姉が彼の脇腹を突いた。脇が敏感な彼は激しくむせる。 「そうやって無視するのはお姉ちゃんどうかと思うな。自分で自分が冷たい人間だと思わない?  最近は手を繋いでくれないし……私が高校生のころまでは繋いでくれたのに……」  姉の言っているとおり、姉が高校を卒業するまで、彼は姉と手を繋いで登下校していた。  しかしそれは、最大限譲歩した結果だ。  この姉と手を繋いで歩いていても、すでに彼と姉の存在は生徒に知れ渡っているので見られても構わなかった。  高校生活こそ、そうやっていられたが、大学に通うようになってからはそうはいかない。  大学という場所はオープンな場所なので、いろんな人間が出入りする。  そんな場所で、身長差が30cm以上はあろうかという彼と姉が手を繋いで歩いていたら、どんな目で見られるのか。  さしずめ、大学に妹を連れて行って案内している最中、というところだろう。  それならまだいい。通学途中で警官に職務質問される可能性も無いとは言えない。  身分証明書を持っていなかった時、果たして口頭で説明して自分達が姉弟であるということを信じてもらえるのか、 彼には不安でならないのだ。 705 :埋めネタ [sage] :2008/01/11(金) 21:42:28 ID:oxt0kF95  彼は朝食を食べ終わると、両手を合掌させてごちそうさまをした。  まだ食べ終わっていない姉を置いて、茶碗をひとまとめにしてキッチンの流し台に持って行く。  水を浸した流し台にお椀を入れていると、後ろから姉のすすり泣く声が聞こえてきた。 「うう……弟君が冷たいよぅ……昔はお姉ちゃん大好き、僕将来お姉ちゃんと結婚する、とか言っていたのに……。  どうしてこんな子に育っちゃったのかしら。いつのまにか不良さんと付き合ってたりしていたんだわ……」  姉の言っていることはすべて捏造だと、彼は知っている。  彼は昔、姉のことをお姉ちゃんと呼んだことがなかった。むしろ、妹扱いしていたぐらいだった。  そして、大好きとか、結婚するとか言っていたのは姉の方だった。  彼は小さなころ、お母さんと結婚する、と言っているような人間だった。  今ではもちろんそんなことは言わない。  母とは、困ったときに姉よりも先に相談する程度に親しい。  余談ではあるが、母も弟に色々と相談する。内容は、娘のことに関して。  娘の弟離れを促すため、彼によく協力を持ちかけるのだ。  今までやってきた対策は、彼に恋人ができたと伝えることと、一人暮らしをすると伝えること。  前者に関しては親しい女友達にも協力してもらった。だが、結果は逆効果で、四六時中くっつくようになってしまった。  後者の場合、姉はむしろ喜んだ。なぜかというと、実家を離れて二人暮らしができると思ったから。  このように、彼と彼の母の苦労は水泡となってかき消えてしまった。  今では、母はこの一件に関してあまり触れなくなった。彼はあるがままを受け入れるようになった。  これから先彼ら姉弟がどうなるかは、ひとえに姉の成長にかかっているのだ。 706 :埋めネタ [sage] :2008/01/11(金) 21:45:32 ID:oxt0kF95  大学から帰ってきて、彼は姉をひっぺがして自室に籠もった。  何をするかというと、自分のブログの更新作業だ。  大学で授業を受けている最中に思いついたネタを、まだ暖かいうちに書き記すつもりだったのだ。  思いついたネタは、今までとは趣を異にするものだった。  彼が今まで自分自身に課してきた、禁忌とも言えるもの。  それは、『妹』に関する妄想だった。  なぜ妹のネタが禁忌であるのかは、言うまでもあるまい、姉のことを思い浮かべてしまうからだ。  だが彼は今日、その禁忌を破る。全ては、SSを書くため、ブログを更新するため。  推敲もほどほどにしながら、手慣れた手つきでタイピングしていく。  帰宅してから二時間ほど経った、午後七時過ぎ。ようやく禁断の妹SSが完成した。  内容は以下の通り。 『僕の妹はとても背が高い。  僕の身長は友人と比べても遜色のない高さだ。だけど、妹はそんな僕よりも背が高い。  正直、自分は同じ家に住んでいる両親から生まれた子供じゃないんじゃないか、とまで思っている。  戸籍謄本はもちろん確認済み。今の両親は僕の実の親だ。  それでも、どうしても疑いが晴れない。きっと、僕が妹に対してコンプレックスを持っているからだ。  弁解しておくと、僕は一般的にイメージの強い、妹を溺愛しているという意味でのシスコンではない。  劣等感を持っているという意味でのシスターコンプレックスだ。  妹のことをどう思っているか、と聞かれたら、僕は返答に困る。  劣等感を持っていますとも、コンプレックスを持っていますとも言えない。  妹のことは大事に思っています、と答えると妹好きのシスコンと思われそうで嫌だ。  妹はいつだって僕を悩ませる。今日だって、そうだ。 「アニキ。そろそろ手ぇ繋いで歩こうよ」  妹様は今日もそうやって僕を困らせることを口にする。  手を繋ぐのは好きじゃない。  だって、10cm以上身長差があるということは、手の位置ももちろん違うわけだから、 僕が妹の手を握ろうとしたら少し肘を折り曲げなければならない。  なんだか、親と手を繋ぐ子供みたいで屈辱なのだ。  僕が妹を無視しててくてく歩いていると、妹が後ろでぼそっ、と呟いた。 「そんなこと言うんなら、また今日も抱きつくからね。……覚悟しといてよ」  この台詞だけを聞くと、世の妹好きの男性に羨ましがられそうだが、僕は嬉しくない。落胆する。  抱きつく、と妹が言った場合、柔道の寝技のような動きでの押さえ込みをするぞ、という意味になる。  この妹は身長に見合ったのか、運動能力に優れている。僕なんかあっという間に取り押さえてしまう。  男なのに、兄なのに、妹に負ける。それはかなりの屈辱だ。肘を折り曲げて妹と手を繋ぐ行為以上の屈辱。  だから、僕は傷の浅い方を選ぶ。その方が、一晩越した翌朝の寝覚めがいいと経験で知っているから。  妹の右手と、僕の左手を繋ぐ。妹の指が、僕の指の間に入り込む。いわゆる恋人繋ぎだ。 「アニキって、私より手が大きいよね。やっぱ、握り心地がいいよ。最高。ご機嫌だね!」  僕はご機嫌じゃない。  ため息を吐いて、学校からの帰り道、同じ方向に向かって歩く人たちに合わせて歩く。  こんな様子を見て、僕と恋人になろうとする人なんかいないよな。  だから僕、妹以外の女の子と手を繋いだことがないんだ。  ブラコンの妹を持つと、本当に苦労する。                                            』  彼は恥ずかしい想いをしながらSSを書き上げた。  途中、姉の顔が思い浮かんで来てどうしても上手くいかなかったのだが、奥歯を噛みしめて踏ん張った。  ブログにSSをアップして、誤字脱字のチェックをする。その後、リビングへ夕食を食べに行く。  リビングでは、姉が先に夕食をとっていた。  しかし、いつもなら用意してくれるはずの彼の分の夕食がなかった。  疑問を顔に出していると、姉が不機嫌そうに口を開いた。 「たまには、自分で夕食を準備したらどう? ……ふん。どうせ、運動オンチで、チビですよ」 707 :埋めネタ [sage] :2008/01/11(金) 21:48:10 ID:oxt0kF95  翌日も、彼は学校から帰って来るなりパソコンの前に腰を下ろした。  一度妹ネタを書くと、堰を切ったようにネタがあふれ出してくる。  今日は、そのうちでもっとも危険なものを書こうと決めていた。  どれほど危険かというと、それこそ、姉への見方が変わってしまうようなものだ。  彼は、部屋の電気を消してからSSを書き始めた。  灯りがない方が書きやすいと思ったのだ。これから書くものは。 『小柄な妹の体を抱きしめると、腕の中で軽く抵抗されるのを感じた。  けれど、僕は抱く力を弱めない。強く、しかし壊してしまわないように、抱きしめる。 「お兄ちゃん、駄目だよ……私たち、兄妹なんだよ? 兄妹でこんなことしちゃいけないよ……」  もちろん僕だってそれは知っている。だけど、今日はどうしても妹を抱きしめずには居られなかった。  頭の中が沸騰したみたいに熱い。ジーンズの中にあるペニスが痛いくらいに膨張している。  夕食を食べ終わってから、ずっとそんな感じだ。  いつも通りのメニューだったのに、どうしてここまでおかしくなってしまったんだろう。  妹が風呂上がりにバスタオル一枚で歩いている姿なんて、見飽きているのに。  今の僕は、小さな妹の体を壊してしまいたくなるほど、妹に興奮している。  妹に口づける。風呂上がりらしく、唇まで熱っぽかった。 「ぅん、ん……舌、だ、め…………おに、ぃちゃん……んん……ん、ちゅ……」  身をよじりながら、唇を懸命に離そうとしてくる。だけど、もちろん僕は放さない。逃がさない。 「こんなことしちゃ、私、わたしぃ……、我慢できなくなっちゃうよ。あそこが、もう……濡れ、て……」  妹の太ももを撫でる。汗で少し湿っているけど、滑らかな感触なのは変わらない。  手を少しずつ妹の体へと動かしていく。タオルに包まれた体は、風呂上がりだという条件を除いても熱すぎるように思えた。  僕の手が、妹の股間へとたどり着いた。                                                    』  ここで、彼の手は止まった。  無理もない。なにせ、彼は女性経験もなく、官能小説を書いたことさえないのだから。  時刻を確認すると、七時をとうに過ぎていた。  昨日よりも書いた量は少なかったが、書いてしまった以上アップしないのももったいない。  彼はブログに注意書きをしてから、SSを載せた。  リビングへ向かおうとしたら、携帯電話にメールが着信した。  送り主は同じ大学に通う友人。内容はこれからボーリングに行こう、というもの。  断る理由もなかったので、彼はOKだという旨をメールに記し、返信した。  リビングに顔を出すと、姉といきなり目が合った。  姉は昨日とうってかわって上機嫌な様子で、すでに夕食を用意して待っていた。  罪悪感を覚えつつ、夕食はいらない、ということを姉に告げた。  すると姉は、座っていた椅子を飛び越えて彼の元へやってきた。 「そんな! 今日のはとってもイイものが入っているんだよ!  この日がくることを一日千秋の思いで待っていたんだから、食べなきゃ駄目!  え、なんで必死なのか? ……それは、その、ね。あー……変なものは入ってないよ。安心して」  首を傾けつつ可愛らしい笑みを浮かべる姉を見て、彼の第六感とも言うべき感覚が閃いた。  今、姉の誘いを断らなければまずいことになるぞ、という警告が脳内に響き渡った。  それは、今日書いたSSの内容――夕食に媚薬を混入された兄が妹を犯してしまう――が浮かんだせいかもしれない。  姉を無理矢理引きはがし、愛用の靴の踵を踏みつぶしながら外へと飛び出す。  門から出ても、姉の引き留める声が聞こえてきた。  彼がその日に戻らなかったのは、言うまでもない。 708 :埋めネタ [sage] :2008/01/11(金) 21:58:56 ID:oxt0kF95  翌日、彼は朝帰りをしてから大学へ通い、半ば眠りつつ授業を受けきった。  いつも通りに自宅へ帰り、パソコンの電源を入れる。テキストエディタを前にしながら、彼は腕組みをした。  最近、姉の行動がおかしい。おかしいのは元からだが、情緒が不安定すぎる。  そう、一昨日に妹が登場するSSをブログに載せ始めてからこうなった。  まさか姉がブログを見ているのか、とも思ったが、姉はパソコンを持っていない。ブログを見ているはずがない。  やはり気のせいだと結論づけ、彼は今日も妹SSを書き始めた。  ――彼は常識的なことを忘れていた。携帯電話でブログを見ることが可能だということを。  そして、一番大事なことも忘れていた。姉が、彼のことをどれほど想っているのか。  彼への依存心が、姉の心にどれだけ強く根付いているのか。  知ってさえいれば、こんなSSを書くことなどなかったかもしれない。 『 「私、言ったよね、お兄ちゃん。ずっと私だけを見ていてね、って。  頷いた? 頷いたよね? ……じゃあ、どうしていきなり転校してきた女と仲良く話していたの?  いくら昔から知り合いだったって言っても、そんなこと関係ないんだよ?」  右手の人差し指の爪に、針がさし込まれていく。  まだ先端が入り込んだだけなんだろうけど、これだけで指先から肘までの神経を傷つけられたように痛む。  事の発端は、今日、学校に転校生がやってきたことから始まった。  原田と名乗る女の子は、元気な声で自己紹介をしていた。  僕はその時、窓の外をずっと見つめていた。だから、転校生の女の子を見ていなかった。  それがどうやら転校生の目に留まったらしい。  いきなり僕は抱きつかれた。驚く僕を、転校生は涙目で見つめていた。その顔を、僕は見たことがあった。  小学校四年生の時に、親の都合で引っ越していった女の子がいた。  その子と僕は幼なじみで、ほぼ毎日一緒に遊んだ。時には同じ家で寝泊まりすることもあった。  過去の記憶を思い出してから、僕が彼女のあだ名を呼ぶと、彼女も僕をあだ名で呼んだ。  それから、僕と転校生はすぐに打ち解け、積もる話に花を咲かせた。  僕は突然の再会のせいで浮かれて、油断していたのだろう。  廊下に立って、僕を見つめている妹がいたことに気づけていなかった。  気づけてさえいれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。いや――ならなかった。  帰宅している途中、僕と一緒に歩いていた転校生は車道に突き出され、ダンプにはねられた。  呆然とする僕の後ろにいたのは、妹だった。  僕が誰よりも恐れなければならず、誰よりも優先して相手をしなければならない人間。  小学校に入る前から拷問と調教をされてきた僕は、妹に逆らえない。  どうしようもないのだ。妹を前にすると、腰が引けて、脚がすくむ。  僕は、幼なじみのことを思うならば、彼女を突き放すべきだった。  そうしていれば、彼女は命を落とすことなどなかった。 「今日はどうしよっか。尿道にロートを差し込んでぇ、ロウを入れてあげようか?  あは。そんなに怯えなくってもいいよ。痛みをゆっくりじっくり味わわせながらしてあげるから。  もちろん、あとでちゃんと吸い出してあげる。お兄ちゃんの大好きな、私の口で、ね」  口、と聞いただけで僕の股間は固くなってしまう。全て、妹の調教によるものだ。  死にたくなるほどの屈辱と苦痛を与えた後で、慈愛と癒しの心をもって快感を与える。  それが、妹の調教法。僕をのめり込ませ、抜け出せなくさせた狡猾な罠。  今夜もまた、僕の口から猿ぐつわは外れない――――。                          』 709 :埋めネタ [sage] :2008/01/11(金) 22:01:10 ID:oxt0kF95  妹が出ている意味のない、特殊なSSを彼は書き上げてしまった。  自分の姉がやりそうのないことを思い浮かべていると、こんなネタが思い浮かんだのだ。  ブログにアップして、十分が経った頃、部屋のドアがノックされた。   「……弟君、開けてくれるかな……」  ドアをノックしたのは、彼の姉だった。  すでに時刻は八時近く。いつまでもリビングに来ないから呼びに来たのだろう。  パソコンの電源を入れたままにして立ち上がり、こった背中を伸ばす。  ドアの前にたどり着いた彼は、無防備に開いた。  翌日、彼のブログは更新されなかった。  定期的にブログを訪れていた人たちは、たまにはこんな日もあるだろう、とだけ感想を持った。  管理している彼本人の身を案じている人間など、誰一人としていなかった。 これにて終わり&埋め!

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