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天使の分け前、悪魔の取り分第一話」(2011/04/20 (水) 13:09:20) の最新版変更点

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39 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/08(金) 01:16:02 ID:FRUSX36M [2/29] 「あの蔵には近づいてはいかん。悪魔がおるでな。」 おじいちゃんにそう言われたのに、近づいちゃったのはなんでだろうか。 あまつさえ、かってにカギをあけて、中に入っちゃったのはなんでだろう。 ヒマだったからかな? ぼうけん心がくすぐられたからだろうか? それとも、…さびしかったからかな。 ギギギッときしむドアをあけ、おさけのニオイがたちこめるくらの中で、 ぼくはなぜか一人の女の子と出会った。 そのかみはハチミツみたいな色をしてて、 その目は真夏の空のような真っ青な色で、 そのすがたは、まるでおはなしの国のようにしんじられないほどかわいかった。 「何だ貴様は。誰に断って我の前に立つ。」 声もかわいい。 ――なに言われてるか、よくわからないんだけどね。 40 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/08(金) 01:17:35 ID:FRUSX36M [3/29] とりあえず、なんかモンク言われてるのは分かったので、とりあえずはんげきしてみた。 「おまえこそ、このくらにはいっちゃだめだって大人の人に言われてないのかよ?」 どうだ、ぐうの音もでまい。 しかし、目の前の女の子はケロっとした顔で…いや、はなで笑ったような顔でぼくに言った。 「じゃあその大人に言えばよかろう?『ぼくは蔵の中で女の子を見ました。あいつは悪いヤツです。』…とな」 こんどはぼくがぐうの音も出なかった。 そんなこと言ったら、ぼくがこっそりくらに入ったことバレちゃうじゃないか! でもぼくはあわてない。なぜならクールだからだ。ホームズもあわてなかった。ふふん 「じゃあ、ていせんきょうていだ。ぼくも言わないから、きみもだまっててよ。」 「…はぁ?」 なんだこいつ、これほどじょうほしても気にくわないってのか。 それとも、ぼくの言い方が悪かったのかな? なら、これならどうだ! 「つまり、ぼくと遊ぼうってことだよ。どう?」 「…貴様は、何を、言ってるんだ?」 もっとへんなこと言われた。くやしい。 でも一人前のネゴシエーターはこんなことじゃくじけない。スマーイル。 「今なら、ぼくのお母さんが作ってくれたチョコもついてくるよ?」 「……いや、だから」 彼女がなにか言う前にたたみかけろ!足りないものは気合だー! 「それにぼくのもってるオモチャもかしてあげる。」 「………あのな」 「それにぼくのとっておきのおもしろい話もついてくるよ!ほーら、一緒に遊びたくなってきただろう?」 チラッと彼女を見ると、ポカーンとしている。 なんだろう、すごくみじめになってきた。泣きたい。 「………ぷっ、あははははははは!」 なぜか彼女が泣きながら笑い出した。泣きたいのはぼくなんだけどね。 「……なにがおかしいのさ」 「ふふ…貴様…いや、君があまりに必死だったのがつい…ね」 彼女の笑顔はとってもキレイだったんだけど、言ってることがなかなかにざんこくだった。 ぼくは心にけっこうなダメージを受けた。…気がする。 「でもまぁ、君の努力に免じて、我は君と遊ぶことを特別に許してやろう。」 や、やった!ともだちゲットだぜ! 「じゃあ、よろしくね!…ええと、ええと………」 あれ?ぼくは彼女の名前知らないや。 「あの、名前は?」 彼女は少しうでを組んで考えた後、サラッと言った。 「好きに呼べ。」 彼女みたいなの、あんまり見たことないな… なんて呼べばいいんだろう……ううん…… ふと、頭にひらめいた。 昨日読んだじゃないか。あのおはなしを。 「………アリス。君はアリスだ。」 「アリス?まぁ、ネーミングセンスは悪くはないな。」 よかった。彼女も気に入ったようだ。 ぼくは、前もって練習していたトモダチへのとびっきりの笑顔で、彼女にあくしゅを求めた。 「よろしくね!アリス!」 「ああ、よろしくな。」 ――こうして、ぼくは初めてのトモダチを手に入れた。 41 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/08(金) 01:18:17 ID:FRUSX36M [4/29] その日から、ぼくは何度もこっそりくらをおとずれた。 なぜか彼女…アリスはいつもそこにいた。 ぼくはアリスとかくれんぼをしたり、 アリスの知っている昔話を聞いたり、 ぼくのとっておきの話をしたり、毎日のことを話したり、将来のゆめを語ったりした。 ………後半はぼくしか言ってないんだけどね。 ある日、ふとタルの中が気になってのぞいているとアリスに怒られてしまった。 「子供が触れていいもんじゃない。もっと大人になってからだ。」 しぶしぶタルからはなれると、アリスがおもしろい話をしてくれた。 「天使の分け前というのを知っているかな?  ワインやブランデー、ウィスキーが作られる時、ほんの少し量が減ってしまうんだ。  これは天使がお酒を作るのを手伝う代わりに、お酒を貰っていくということから来ている。」 アリスはゆびを立てて、ぼくにウンチクをたれている。ぐぬぬ。 「あくまには取り分はないの?」 う、なんかどうでもいいしつもんをしてしまった… しかし、アリスにはこうかはばつぐんだ! 「悪魔…悪魔…か…」などとブツブツ言いながら下を向いてしまった。 これはやばい!トモダチをがっかりさせるなんてオトコのハジだ! 「あ、あくまにも何かいいのがもらえるよ!」 ま、またもいい受け答えができてない。っていうかアリスも顔あげてよっ! ……と思っていると、アリスがキッとこっちをむいた。ちょっとこわい。 「なぁ、もしも我が悪魔だとしたら……君はどうする?」 「べつに?それよりなんかしようよ!」 アリスの目に光がない。めっちゃこわい。 「真面目に答えろ。  我が悪魔だったとしたらどうする?  泣いて逃げるか?命乞いをするのか?  それとも何か要求するのか?契約するのか?  我を倒すか?悪魔を殺して名声を得たいか?  君ならどうする?我をどうしたい?」 何言ってるかよくわからないっていう。 ただ、アリスをどうしたい?って言われると、答えはひとつだけ。 「ぼくはアリスと遊びたいんだけど、それは答えにならないの?」 「……ッ!!!」 アリスがすっごいおどろいた顔を見せた。ぼくはなんかまずいことでも言ったかな…… 「アリスがあくまだと、ぼくと遊べないわけじゃないんでしょ?  トモダチっていうのは、そんなのでこわれるものじゃないよ!」 …ってお父さんが言ってた。ぼくもそう思う。 アリスはためいきをつくと、なぜか笑い出した。 「……くっ…あはははは!君は本当に面白いな!  こんなことで悩んでた自分がバカみたいだよ……ありがとう………」 やっとアリスは笑顔にもどってくれた。……よかった。 しかしアリスは今度は悔しそうにしていた。なんで? 「君は我に色々なものをくれるが、我は君に与えられるものが無い……  せめて、我が天使であれば…「天使の分け前」のようなことができれば……  すまない…」 ああ、前にあげたチョコのことを言ってるのか。 あれはおいしかったし、なんかお返ししたくなる気持ちもよくわかる。うんうん。 「トモダチは見返りを求めないものさ!」 これもお父さんの言葉だけど、ぼくもだいたい同意。 チョコはちょっとおしかったけどね。 「……そう…なのか……いや、そうなんだな!  そう、我と君はトモダチなんだな!」 「そのとおり!それじゃ星を見に行こうよ!」 「ああ!見に行こう!」 その日はずっとアリスははなうたを歌っていた。トモダチ、トモダチと口ずさんで。 42 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/08(金) 01:19:12 ID:FRUSX36M [5/29] アリスとトモダチになってから3ヶ月がすぎた。 アリスがこわくなった日から、アリスはやけにぼくのとなりに座ってくる。 ぼくだってオトコなんだから、となりに女の子が座るのははずかしい。 なので、ちょっとはなれようとする。 するとすごい泣きそうな顔をされる。弱った。 そして、ぼくがお気に入りの本を持ってきた日に、ちょっとびっくりすることが起こった。 ぼくが持ってきた本を二人で読んでいると、ふとアリスの首にチョーカーが見えた。 黒いベルトに、ロザリオがぶら下がっているチョーカーだ。…気づかなかった。 「アリスって、首にチョーカーつけてるの?」 「あ…ああ、付けているっていうより付けさせられてるというか…」 つけさせられてる?どういうこと? 「なんで、つけさせられてるの?」 「こ、これはその…な…」 アリスがゴニョゴニョとしたあと、なにか決めたように自分のひざをたたいた。 「ああもう!君とはトモダチだから、我は隠し事をしない!」 なんかかくしてたのか。きのうポストを緑にしてたのを、見てたとかじゃないといいな。 「これは…封印だ。」 ふういん?実に聞きなれないです。 「前に言ったな……我は悪魔だと。  これは、とある聖職者に付けられた封印術具だ。  このチョーカーが外れない限り、私はこの蔵から離れられない。  力を行使できない。何も出来ない。  ……これがなければ…くそぉ……」 だから、何言ってるかわからないってば! 「ええと、ええと、つまり…チョーカー外したいってこと?」 「ああ、この忌々しいチョーカーさえなければ…!」 もったいないなぁ。だって… 「にあってるのになぁ……」 「………えっ?」 アリスの顔が真っ赤だ。なんかトマトみたい。 「アリスが困ってるなら手伝う!そのチョーカー外そう!」 ぼくが決意して立ち上がると、アリスがあたふたとしだした。 「あ、い、いやこれは術者以外がとると外した者に呪いをかけるっていうか、  べ、べつに無理してとらなくてもいいっていうか、  そ…その……君が気に入ってくれてるなら………そのままでいいっていうか………」 うん、よくわかんない。 むしる! 43 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/08(金) 01:19:56 ID:FRUSX36M [6/29] アリスの首に手をかけると、アリスが真っ赤になって、 「はぅっ」とか「ふぁっ」とか、 とってもなやましい感じの声をあげる。 それにつられてぼくも顔真っ赤なんだけど、チョーカーがベルト式だったおかげで、すぐ外すことが出来た。 ――最初に僕が見たのは。真っ赤な閃光だった。 くらがはげしくゆれる。 まばゆすぎて目の前が見えない。 つんざくようなひめいがあちこちから聞こえる。 もう何が何だかわからない。ぐるぐるといしきが回った後、 ぼくはジャイアントスイングよろしくいしきをどっかに飛ばした。 目がさめると、青い目がぼくをのぞきこんでいた。 目にはなみだがたまっている。 「よかった……もう起きないのかと思った………」 外を見ると、そろそろ朝日がのぼろうとしていた。これは大目玉だなぁ。 「アリス、きみは大丈夫だった?」 「あぁぁ…君が生きている…生きている………」 アリスがぼくを抱きしめる。すごくいいにおい。 ふと、手にいわかん。 手を広げてみると、アリスのつけていたチョーカーをにぎっていた。 ずっと抱きしめているアリスをなんとかひきはがして、話を聞いてみることにした。 「あの光ってなんなの?」 「…封印が解けた証だ。今、私は力に満ち満ちている。」 なにやらアリスさん、やけにふきげんですね。 「それよりも体はどうだ!?痛いとか!苦しいとかおかしいところはないのか!?」 今度は必死な顔でぼくのかたをゆさぶる。今とってもかたがいたいです。 「べつになんもないよ!むしろたくさんねて早起きしちゃったよ!」 アリスさん今度はホッとしたようです。女の子ってこわい。 ぼくがぼやーっとアリスを見ていると、アリスが真っ赤になって立ち上がった。 「き、君には本当に感謝している。まさか封印まで外してくれるとは思わなかった。  そこで、なにか一つ君の願い事を叶えてやろう。  何でもかなえてやる。  力が欲しいか?ならばくれてやろう。  それとも金が欲しいか?  それとも永遠の命が欲しいか?  …何でも言え。君が望むことをかなえてやる。………やっと………」 ぼくのねがいごと…ううむ… とくに今ほしいのはないんだよね……… でも、叶えてくれるなら。ぼくはこれを言おうかな。 「それじゃあ、ぼくとずっとトモダチでいてください。」 またもアリスはポカーンとした顔をした。 なんだよ、ぼくとトモダチはいやだっていうのかよ………ちぇっ… 「れ、歴史に名を残す英雄とかになりたくないのか?  死ぬまで金に困らない大富豪になりたいとも思わないのか?  この世の終わりまで、生きていたいと思わない…のか?」 え、えいゆう………ちょっと心が動いた。 でもオトコは一度決めたことを曲げない。だって男の子だもの。 「きょ、興味ないよ!ぼくはただ君といっしょにいたいだけだし!」 少し声がプルプルしてる。仕方ないよね。えいゆうだもの。 「ほ…本当に……本当…なのか……?」 アリスは目になみだを浮かべている。…かわいい。 「おとこに二言はない!」 「う…ぁ…うわああああああああっ!」 アリスは僕に抱きついて大泣きしてしまった。女の子を泣かせちゃうとは一生のふかく…… 44 名前:天使の分け前、悪魔の取り分 ◆STwbwk2UaU[sage] 投稿日:2011/04/08(金) 01:20:25 ID:FRUSX36M [7/29] ぼくはアリスの気が済むまでいっしょにいてあげた。 やっと話が出来るふいんきになったので、ごはんを食べるために帰ることを伝えた。 「それじゃアリス、ぼくは朝ごはん食べてくる。」 「あぁ、いってらっしゃい。………また、夜中来てくれる…か?」 やけにアリスが弱々しい。一体どうしたんだろう。 「あたりまえだよアリス。ぼくらトモダチだもの。」 「ああ!我と君はトモダチだ!ずっとずっとトモダチだ!」 ああ、そういえばアリスに言わないとダメだな。トモダチなんだから。 「アリス、女の子は我とか使っちゃだめだよ。私とかいうのがふつーなんだ。」 「そ、そうか!次からそういうことにするよ!  だ、だから今夜も一緒に遊ぼう!絶対だからなっ!」 …やっぱなんかオドオドしてる。なんで? 「…じゃあ、また夜中にね?」 ぼくはアリスに手を振って、ご飯と二度ねをたのしんでくることにした。 だから、 「私…私私私私私私私私私私私私私私私私……  私は……アリス………  彼の………トモダチ………  ふふっ…早く会いたいな………」 彼女のひとり言を聞くことはできなかった。

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